高度20000フィートの大空で   作:イーグルアイ提督

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【番外編】異世界転生してミリオタ無双しようと思ったら既に銃と魔法と航空機の世界だった

「・・・なんだ、ここ・・・」

 

気を失っていて目を覚ますと何も無い空間に居た。

いや、正確には俺の目の前には美しい女性・・・まるで女神のような女性が立っていた。

 

「おはようございます、カズキさん」

 

「なんで俺の名前・・・」

 

「混乱していますね」

 

「そりゃね・・・」

 

そりゃそうだ。

気を失って起きたらこんな所に居るのだから。

 

「いきなり受け入れられないと思いますが、貴方は亡くなりました」

 

「へっ?」

 

「貴方は死んでしまったのです。交通事故で」

 

「交通事故・・・」

 

それで俺は思い出す。

友達と街のミリタリーショップに行った帰りのところだ。

 

「良いもん買えたぜ!」

 

「まったく買いすぎだろ・・・」

 

隣で大きな袋を抱えた友人を横目に車を運転していた。

 

「あー・・・くそ、霧がでてきた」

 

「おーこりゃ不吉な」

 

「案外霧を抜けたら異世界だったりして」

 

「そしたら俺ら最強だぞ!銃を使えるチートで!」

 

「そんな上手い話があるか・・・」

 

交差点で信号待ちしながら異世界にもしも転生出来たらどんなチート能力が欲しいかと話し合っていた。

その間にも霧は濃くなり50m先も見えないくらい濃くなってきた。

何とか信号機の色を識別できるがこんなに霧が濃くなるなんて嫌な雰囲気だ。

 

「青・・・?」

 

「青っぽいな」

 

俺は車をゆっくりと発信させて左右に注意していた。

その時右の道路から光る何かが動いているように見えた。

 

「なんだアレ・・・」

 

俺は目を細めてよく見る。

それは赤信号に気づいていない大型トラックだった。

 

「あのバカ来やがった!!」

 

「避けて避けて避けて!!」

 

咄嗟にハンドルを切る。

友人は頭を守るような体制を取った。

その数秒後、とんでもない衝撃を受けて気を失った。

 

「あの時・・・」

 

「あ、ちなみにご友人は無事でしたよ。でも貴方の死因は聞かない方がいいと思います」

 

「え、なにそれ・・・」

 

でも友達が無事なら良かった。

アイツには悪い事してしまったが・・・俺は天から見守ることにでもしよう。

彼女が出来そうなら全力で脱糞する呪いでもかけてやるが。

 

「あ、あのちなみになんだけど・・・死因って何?」

 

「え、聞いちゃいます?」

 

「まぁ・・・自分の死因だし・・・」

 

「・・・焼死です」

 

「・・・・・・・・・・・・・・・」

 

思った以上に酷かった!!!

気を失っていて良かったよ!!

 

「まぁ直接的な死因がってだけですが。なんだったら貴方がトラックとぶつかった時に頭に破片が突き刺さって神経を全部麻痺させましたから焼かれてる感覚は無かったと思いますよ」

 

「分かった!分かったからこれ以上言わないで!!」

 

「まぁ、そういう訳でして。あなたには転生をしてもらいます」

 

「何がどうそういう訳なのか小一時間くらい問い詰めたい」

 

「あら、不服ですか?貴方は生前望んでいた事だと思うのですが」

 

「いやまぁそうだけど・・・そんな事ある?」

 

そもそも異世界なんて存在するのか・・・。

 

「世界の面白いところですよ。それでよくあるチート能力も授けての転生でもよろしいですか?」

 

「待った待った!転生は強制なの?」

 

「強制です。というかココ最近転生予定者居なかったので勝手にやらせて頂いてます」

 

「なんだそれ!!」

 

「暇なんですよ。この場所って。転生者を見ることができる魔水晶とかありますけど、私転生させるの初めてですし」

 

「嘘だろ初めてなのかよ」

 

「私の初めてをあなたにあげます」

 

「なんかエロい」

 

話は通じにくいが、どうせ死んで第2の人生があるなら楽しませて貰おう。

チート能力はせっかくだしミリオタらしく現代兵器系で行こう。

俺はその能力を伝えた。

 

「え、ファンタジー世界にそんなもの持ち込んじゃいますか・・・」

 

「いいじゃん。チートなんだし」

 

「まぁそうですね・・・では、準備はよろしいですか?」

 

「OKだよ」

 

「分かりました。それではいってらっしゃ・・・あっ・・・」

 

「なにその、あっって」

 

「い、いえなんでもありまーーーー」

 

聞き終わる前に光で包まれた。

俺は目を覚ます。

 

「目を覚ました・・・?良かったぁ・・・」

 

「ここは・・・」

 

目の前には魔法使いのような女の子が居た。

 

「ここは、えと・・・」

 

女の子は近くの村の魔法使いだと言った。

ここはその村から近い洞窟で中には希少な薬草が生えているから採取に来たら倒れていた俺を見つけたらしい。

 

「あ、自己紹介遅れたね・・・!私は、サキ・・・あなたは?」

 

「俺はカズキだよ」

 

「よろしく・・・」

 

サキと名乗った女の子は少し人見知りらしく下を向きながら呟くように言った。

何この子くっそ可愛い。

 

「君1人なの?」

 

「ううん、まだ仲間が・・・」

 

すると奥からバタバタと急いでくる音がした。

出てきたのは2人の女の子。

この2人も魔法使いのような見た目だった。

 

「サキ!逃げるわよ!」

 

「え、え?」

 

「オークの連中が・・・あら、あなたは・・・」

 

「さ、さっき倒れてた人・・・」

 

「そうなのね、私はマオ。よろしく!」

 

「あ、えと、カズキ。よろしく」

 

「カズキね!あ、そうだ、それでオークの連中が居て・・・」

 

「サキ!マオ!来るよ!!」

 

「分かったマリ!逃げて!」

 

「カズキさんも一緒に・・・!」

 

「分かった、でも、俺にも戦わせてくれ」

 

「あら心強いわね。男の人はそう出なくちゃ!」

 

俺は武器を使えるチート能力がある。

そんなオークなんざ敵でもない。

武器を召喚する前に少し憧れていた敵の前で俺を倒してから女の子を襲いなという感じのセリフを言ってやろうと思っていた。

 

「来た!!」

 

「おい緑のバケモ・・・・」

 

「RPG!!」

 

おい緑のバケモノという言葉に重なるように聞こえたオークの様子を見ていた魔法使い、マリがそう叫ぶ。

しかもやたらと聞きなれた単語だ。

 

「ふせて!!」

 

サキに押し倒された。

女の子のいい匂いがした直後、頭上をロケット弾が飛んで行った。

 

「・・・はァ!?」

 

俺は驚愕のあまり大声を出す。

そりゃそうだ。

剣と魔法の世界に来てミリオタ無双をしようと思ったらRPG-7で攻撃されたのだ。

 

「クソっ!魔法じゃ間に合わない!」

 

マオはそう言ってスカートの下から拳銃を取り出した。

 

「9mmで効けばいいけど・・・!」

 

マオはM92Fをオークに指向して射撃するが、効果は今ひとつだった。

俺はそれを見て硬直している。

するとサキが俺に銃を渡してきた。

 

「カズキさん、私が魔法を準備する間に援護してください」

 

「え、あ、あぁ・・・」

 

俺は渡された拳銃、SIG P226を構える。

そして同時に、あれ?普通俺が銃を召喚してアイツら撃退して周りの女の子にチヤホヤされるんじゃないの?と思っていたのだが・・・。

 

「あんなクソでかいの拳銃なんかで・・・」

 

隣でサキは呪文を唱えている。

俺は彼女を守るために発砲した。

 

「クソっ!やっぱ拳銃じゃ当たんねぇ!!」

 

ならばと、俺は貰った能力を使わせてもらう事にする。

武器の召喚方法は分かる。

拳銃弾くらいじゃビクともしないならいっそ大口径で撃てば倒せるはすだ。

俺はバレットM82を召喚した。

それを見たマオは目を丸くした。

 

「え・・・あなた、どうやって・・・」

 

「俺の魔法さ!」

 

「い、いえ、それは分かるけど・・・」

 

「とりあえずアイツらぶっ倒すぞ!」

 

俺はオークの胸目掛けて射撃した。

12.7mm弾はオークの胸の中心に命中し、大きな穴を開けた。

オークはそのまま力尽きた。

 

「よし!さすが50口径!!」

 

次を撃とうと思った瞬間、サキがオークの集団に魔法を放った。

光の玉がオークに命中した瞬間、周りにいたオークは炎に包まれる。

洞窟内にオークの断末魔が響いた。

 

「い、今のうち!」

 

サキは俺たちを連れて走り出した。

 

「ねぇカズキ!あなた、どういう頭してるの!?」

 

「はぁ!?」

 

「武器をそのまま召喚なんて全てのパーツがどういう素材で出来ていてどういう動きをするのか完璧に覚えてないと無理なのよ!!」

 

「え!?なにそれ!?」

 

どうやら武器召喚魔法はあるそうだが、まさかの高難易度だった。

俺はそれを全ての武器に使えるようだ。

 

「な、なんか分かんないけど使えるんだよ!記憶ないけど!」

 

とりあえず記憶喪失ということにしておこう。

 

「ふふっ、あはは!!記憶喪失なのに武器の素材と構造覚えてるのね!あなた最高よ!私たちのパーティに入ってよ!」

 

逃げながらパーティの勧誘を受ける。

もちろんOKだ。

むしろこっちからお願いしたいくらいだった。

 

「じゃあ決まりね!よろしく!」

 

「こちらこそ!」

 

新たな1歩だ。

俺はそう思った。

俺たちは洞窟から逃げ出して一息つく。

 

「はぁ、はぁ、はぁ・・・・」

 

「はぁ・・・ふぅ・・・インドア派にはきついよぉ・・・」

 

「サキ、これありがと」

 

隣で荒い息遣いをしているサキに拳銃を返した。

 

「あ、ありがと・・・」

 

サキは少し顔を赤くしながら受け取りスカートの中のホルスターに仕舞った。

その時のスカートをあげる動作がエッチすぎる。いっぱいしゅき。

 

「ここでひと休憩・・・?」

 

「そうね、そうしたら村に・・・なんの音?」

 

「・・・エンジン・・・?」

 

俺はまさかと思った。

剣と魔法の世界が銃と魔法だけでも十分なのに車まであるのか!?

 

「・・・偵察精霊を飛ばします」

 

「お願い、マリ」

 

マリは精霊を呼び出して飛ばした。

なんだか運用がドローンみたいな感じだが・・・。

そこから数分後、悪い知らせが入った。

 

「不味い、銃声を聞きつけた山賊だよ」

 

「まったく・・・どこにでも沸くわね・・・何乗ってるの?」

 

「ZSU-23-4」

 

「!?」

 

俺はぶっ倒れそうになった。

車かと思ったら対空自走砲だった。

 

「人狩り専用ってとこかしらね。どうする?」

 

「進路はこの洞窟。迎撃しか・・・」

 

「仕方ないわね・・・カズキ、あんたのバレットの弾薬は?」

 

「徹甲弾だけど・・・いやもっといいのあるよ」

 

俺はオークが使っていたのと同じRPG-7とその弾薬を召喚した。

 

「驚いた・・・あなたどういう魔法使ってるのよ・・・」

 

「さぁ・・・俺にも武器の召喚が出来るって事しか・・・」

 

「まったく面白い人ね・・・まぁいいわ、とりあえず隠れましょ」

 

俺たちは近くの茂みに隠れる。

それにしても銃と魔法の世界なだけあってRPGの後方には近づかない。

俺はRPGを構えて敵の出現を待っていた。

エンジンの音と木を踏みつぶす音が大きくなる。

 

「来たわよ・・・外したら命はないからお願いね」

 

「分かってる・・・」

プレッシャーがかかる。

 

「はぁー・・・ふぅー・・・」

 

呼吸を整えていると敵が現れた。

緑色の車体に凶悪な4連装の機関砲が見えた。

 

「カズキ!」

 

「あぁ!」

 

俺は引き金を引いた。

弾体は対空砲の砲塔と車体の隙間に直撃する。

 

「やった・・・?」

 

2秒もしない時だった。

砲塔のハッチと運転席のハッチが吹き飛び炎が吹き出た。

そして俺は見たくも無いものを見てしまう。

砲塔からは火達磨になった人が。

運転席からは燃えながら這い出そうとしている人が見えた。

そして車内から恐ろしい断末魔が聞こえてきた。

 

「うっ・・・!」

 

運転席の人はすぐに力尽きていたが砲塔から出てきた人は燃えながらこっちに助けを求め這ってきた。

するとサキは拳銃を取り出す。

 

「・・・楽にしてあげないと」

 

サキは這ってきた人に照準を合わせて引き金を引いた。

森の中に銃声が響く。

そして油の臭いと肉の焼ける臭いが周囲に漂う。

 

「うぅ・・・おぇぇぇぇ・・・!!」

 

俺は思わず吐く。

人を殺したという罪悪感もあるが、生きたまま焼かれるという最も苦しい死に方を与えてしまったという罪悪感が強かった。

 

「・・・カズキ、大丈夫?」

 

マオは優しく背中をさすってくれた。

 

「なんで・・・逆に大丈夫なんだよ・・・」

 

「こんなの日常茶飯事よ・・・」

 

マオは焼け焦げた死体を見ながらそう呟いた。

俺は余りのショックにそのまま気を失った。

 

「ん・・・」

 

目を覚ますとどこかの家の中だった。

周りを見渡すとテレビが置いてあった。

俺は一瞬、夢かと思った。

 

「あ、お、おきた・・・?」

 

声をかけられそっちを見るとサキが俺のための食事を運んできてくれた。

 

「あ、お、おはよ・・・」

 

「良かった、あのまま死ななくて・・・」

 

「まぁ・・・怪我はしてないから」

 

「びっくりしたんだから・・・」

 

サキは近くの椅子に座りベッドの上に食事を置いてくれた。

 

「ここね、私の家なの・・・」

 

「へぇ、そうなんだ」

 

俺はこの時気付いた。

もしかしたら俺の転生した世界、生前の世界と生活水準一緒なのではないかと・・・。

 

「えと、サキ?」

 

「なに?」

 

「ケータイってある?」

 

「うん、あるよ」

 

あるんかい!!

サキはスマートフォンを取り出した。

 

「あ、あるんだ・・・」

 

「そんなに不思議?」

 

「い、いや、記憶喪失で・・・」

 

「ふふっ、ケータイって言葉は知ってるのに?」

 

サキは優しく笑う。

何この子超可愛い。

しかも優しい。しゅき。

 

「そういえば他の人は?」

 

「みんな家に帰ったよ。私、この家で一人暮らしだったからカズキを私の家に連れてきたの」

 

「そ、そうなんだ・・・」

 

何これ、イベント?イベント来た?

 

「カズキの家は覚えてる?」

 

「いや、記憶喪失で何もかも・・・」

 

記憶喪失という設定にしておこう・・・。

その時、ふと本棚に見慣れた言語を見た。

英語で書かれた本だ。

 

「英語・・・?」

「英語読めるの?」

 

「多少は」

 

「ほんと!?」

 

サキは今までで1番大きな声を出す。

俺は昔好きで英語を勉強していたから多少なりともは解読できる。

 

「というかなんで英語の本なんか・・・」

 

「扉から送られてきたの」

 

「扉?」

 

「うん、異世界に通じる扉」

 

そしてサキに扉の説明を聞かされた。

嘘やん。

俺たちの世界はこちら側の世界から異世界として認知されていたようだ。

確かにここ数年、空軍基地から戦闘機が消えただとか銃が武器庫から消えたというニュースが出ていた。

記憶に新しいのはロシア海軍の駆逐艦が停泊中に忽然と姿を消したのだった。

乗っていた乗員はなぜか全員、桟橋に倒れていた。

無人の船だけが消えたのだった。

そしてそれはどうもこの世界に来ているようだった。

 

「そんなことあるんだな・・・」

 

「面白い話でしょ?」

 

「まぁ、ね」

 

「それで・・・これ、教えて?」

 

サキは本を持ってきた。

本はアメリカ軍に関する本だった。

内容は戦闘のやり方に関してという感じだった。

だが、ただ昔に好きで少し勉強した程度なのであまり翻訳は出来なかったが。

 

「ねぇ、今度私にも英語を教えて欲しいな」

 

「うん、俺なんかで良ければ」

 

「ほんと?じゃあ約束!」

 

サキは笑顔でそう言った。

あかん惚れた。

異世界バンザイ。

 

「そうだ、今日ちょっと手伝って欲しいことあるの」

 

「何?俺で良ければ手伝うよ」

 

「ありがと!ちょっと頼まれ事で街まで買い物があったから!」

 

「了解!」

 

俺はきっと馬車に揺られてサキとデート気分で街まで行くのだろうと思っていた。

・・・思っていたんだ。

 

「じゃ、無線の担当をよろしくね!」

 

 

「・・・うん・・・」

 

「あれ、なんか元気ないよ?」

 

サキは慣れてきたのか俺と話をよくするようになった。

そして今はかなり生き生きしている。

俺はサキと馬車でデートだと思ってルンルン気分でサキに着いてきた。

そして案内された先が・・・。

 

「大丈夫だよ、私こう見えても飛行時間は2000時間超えるベテラン機長なんだから!」

 

「普通にすごい」

 

俺はなぜかAn-12という旧ソ連製の輸送機に乗っていた。

 

「あ、そうそう、そこのディスプレイは後部機関砲の操作画面だから敵機が来たらお願いするね」

 

「マジかよ・・・」

 

ディスプレイを操作すると機関砲のカメラ画面が表示された。

武装は23mm連装機関砲が後部に一基だった。

 

「じゃ行こっか!空の旅だよ!」

 

「そ、そうだな」

 

まぁ形は違えどサキと空のデートと行こう。

サキは頭上のパネルを操作し始めた。

時々、肩くらいまである綺麗な銀色の髪をかきあげたりしていてその仕草にドキッとしていた。

 

「エンジン回転数・・・よし。アンチアイスは・・・適時使用っと・・・」

 

慣れた手つきで計器類を操作していく。

まさか初めて乗った軍用機(?)が旧ソ連製でしかも副操縦士として座って機長は超美少女ときた。

こんな体験することなんて想像できただろうか。

こればかりはあの女神に感謝だ。

 

「よし、行こっか!カズキ、フラップ15」

 

「えと、フラップ・・・」

 

「これだよ、ここまで下げて」

 

「りょ、了解」

 

「OK、フラップよしっと・・・」

 

元々あまり飛行機は詳しくなく操作に手間取ってしまう。

 

「サキはこの機体をいつも1人で飛ばしてるの?」

 

「うん、この村で飛行機の免許持ってるの私だけだから。それに元々この飛行機って5人必要なんだけど、改造してもらって1人でも飛ばせるようになってるの!あ、そうだ、カズキも免許取らない?」

 

「え!?」

 

「大丈夫だよ、取るの簡単だから」

 

嘘だろ。

飛行機の免許なんて難しい事で有名な記憶があるんだが。

 

「それに飛行機ないと生きていけないからね」

 

「へ、へぇー・・・」

 

「どう?」

 

確かに異世界でパイロット・・・それはそれで面白そうだしサキと飛べるなら幸せだろう。

 

「うん、取るよ。俺も」

 

「ほんと!?じゃあ今度パイロットスクールに連れて行ってあげる!3ヶ月もあれば取れるから!」

 

「そんな短いの!?」

 

「ふふっ、記憶喪失で忘れちゃったの?」

 

サキは優しく笑った。

 

「そうだ、巡航中に操縦を教えてあげる!」

 

「え、い、いいの?」

 

「うん!空を飛ぶって楽しいから!」

 

「じゃ、じゃあよろしく」

 

「うん!っと、それじゃ出発しよっか!」

 

輸送機はゆっくりと前進を始めた。

 

「離陸前チェックリストやっちゃおっか」

 

「チェ、チェックリスト?」

 

「大丈夫、私の言ったところを確認して。今日は簡単にするから」

 

「り、了解」

 

「えーっと・・・」

 

サキの指示通りにチェックしていった。

パイロットの仕事は憧れていたがまさかこんな形で体験するとは・・・。

 

「よし!チェックリストコンプリート!」

 

「結構やること多いんだね」

 

「安全に飛ぶためには仕方ないよ」

 

サキは計器を確認しながらそう言った。

走行してる間に機体は滑走路に到着する。

滑走路とは言っても真っ直ぐな土の滑走路だ。

 

「えっと、じゃあ80ノットに達した時に80ノットって読み上げて」

 

「了解、速度計は・・・これ?」

 

「うん、それ。お願いね!」

 

「了解」

 

機体はゆっくりと加速を始めた。

土の滑走路なだけあって少し揺れる。

 

「えーっと・・・80ノット」

 

「チェック」

 

サキは真面目な顔をして前を見ていた。

そしてちらっと速度計を見る。

 

「V1・・・ローテート」

 

ローテートという言葉と同時に機首を上げた。

 

「ポジィティブクライム、ギアアップ」

 

「え、えっと・・・」

 

聞きなれない言葉に困惑した。

 

「あ、ごめん!えと、車輪を上げて!」

 

「車輪か・・・了解」

 

「ありがと!えと、フラップも!」

 

「フラップ・・・はい、OK」

 

「ありがと!やっぱりカズキ居ると助かるよ!」

 

たぶん俺は今気持ちの悪い顔をしていることだろう。

こんな美少女にそんなこと言われてニヤケない奴がいるなら見てみたい。

 

「さてと、もうちょっと上昇したらカズキが操縦してみよっか!」

 

「えぇ!?」

 

「大丈夫だよ、私が見てるから」

 

「い、いや、でも・・・」

 

いきなり飛行機の操縦なんて心の準備が出来ていない。

だがサキは俺に操縦を薦めてきた。

 

「じゃ、じゃあ・・・ちょっとだけ」

 

「ほんと!?これでカズキもパイロットになってくれると嬉しいな!」

 

純粋に喜ぶサキ。

この子と飛ぶなら良いような・・・。

そうこうしてる間に高度は上がり水平飛行に移った。

 

「じゃあカズキ、私がユーハブって言ったらアイハブって言って操縦桿を握って」

 

「了解、アイハブだね」

 

「そうそう。それじゃ、ユーハブ」

 

「ア、アイハブ」

 

サキはゆっくりと操縦桿を離した。

俺は緊張しながら操縦桿を握る。

 

「ひえぇ・・・」

 

飛行計器を見ながら呻いた。

姿勢指示器はサキが手を離した瞬間風で煽られたせいか少し傾く。

俺は傾いた姿勢を直そうと操縦桿を強く傾け過ぎて予想以上に旋回してしまう。

 

「大丈夫、落ち着いて。もう少しゆっくりと」

 

「こ、こう?」

 

傍からみたらこの機体は突然安定性を失うように見えただろう。

だがサキから操縦を変わって数分。

何となく感覚をつかみ始めた。

 

「上手い上手い!カズキすごいよ!」

 

「ほ、ほんと?」

 

「うん!もう私、カズキを副操縦士として雇っちゃおうかな?」

 

「それは是非ともお願いしたい」

 

俺は思わず心の声が出た。

だがその心の声は電子音と共にかき消される。

 

「何・・・?」

 

サキは何かの計器を見て近く呟いた。

 

「うそ・・・レーダースパイク!?カズキ、操縦桿を離して!」

 

「え、あ、あぁ!」

 

「それから後部銃座のスタンバイ!」

 

俺はサキから教えてもらったディスプレイを弄り機関砲の画面を出す。

サキの口ぶりから不味いことが起きたのだろう。

 

「こんな所に空賊が居るなんて・・・!」

 

「空賊!?」

 

「護衛機も居ない・・・カズキ、急降下するよ!」

 

「え・・・うわっ!?」

 

サキは操縦桿を押して急降下を開始した。

高度が一気に下がる。

ほんの数十秒後、コックピットに警報が鳴り響いた。

 

『Sink Rate!』

 

なんて言っているかは分からないがとにかくいい意味では無さそうだ。

 

「カズキ!警報は気にしないで!」

 

「気にしないでって言っても・・・!」

 

『Terrain Terrain Pull Up!』

 

新しい警報が鳴り響く。

目の前には地表が迫ってきていた。

サキはそこで機首をあげる。

 

「あの空賊・・・積荷が目当てだね・・・」

 

「な、なんで分かるんだ?!」

 

「落とす気ならもう落ちてる!」

 

落とす気ならもう落ちてるという言葉で俺は恐怖を感じた。

そうだ、相手は戦闘機だ。

もはやなんで戦闘機が出てきたなんて考えてる余裕が無くなっていた。

 

『Traffic Traffic』

 

トラフィックという言葉が辛うじて聞き取れたがそう示す警報が鳴る。

機関砲のカメラを見ると真後ろにMIG-23が2機居た。

翼にはミサイルがぶら下がっている。

 

「カズキ!少し操縦桿を保持してて!」

 

「りょ、了解!」

 

言われた通りにするとサキは無線機のスイッチを弄り叫んだ。

 

「メーデー!メーデー!メーデー!空賊に絡まれた!誰か援護を!!」

 

そのメッセージを何回か繰り返す。

 

「誰か・・・援護を!!」

 

すると応答がある。

だが明らかに声はあの空賊機だ。

 

《なんだ乗ってるのは女の子か?そのまま着陸しな、殺しはしねぇよ》

 

《殺しはしねえって言ったが機関砲撃とうなんて考えんなよ》

 

隣を見るとサキは青ざめている。

 

「サキ・・・」

 

「ダメ・・・下ろしたりなんてしたら2人ともどんな目にあうか・・・」

 

「でも反撃は・・・」

 

「どうしたら・・・私・・・こんな目に会うの初めてで・・・」

 

サキは震えながら操縦桿を握る。

 

「そ、そもそもこの航路は安全なはずなのに・・・」

 

サキは計器を見つめながら震えた声でそう言っていた。

どうしたら・・・敵は2機。

機関砲じゃせいぜい1機しか相手に出来ない。

俺は何か方法は無いか・・・そう考えていた時だった。

 

『Traffic Traffic』

 

再び、トラフィックという警報。

そして後ろから爆発音が聞こえた。

俺はやられたと思ったが機体は正常、何が起こったか分からなかった。

そして、驚いて離れようとしたもう一機のミグがバラバラに砕け散った。

 

「な、何が・・・」

 

そして無線機から女の子の声が聞こえた。

 

《こちらエンジェル0-1。そちらの援護に入る。助けに来たよ》

 

「た、助かった・・・?」

 

「あ、ありがとうございます・・・!」

 

サキは震える声で答えた。

 

《そちらのコールサインは?》

 

「こ、こちらは、えと・・・イーストカーゴ1」

 

《了解、イーストカーゴ。どこまで守ればいい?》

 

「あ、えと・・・ソルトシティーまで・・・」

 

《了解》

 

「はぁ・・・助かったぁ・・・」

 

俺は一息つく。

そして援護に駆けつけた戦闘機を見て、俺は再び異世界に来てよかったと思う。

駆けつけた戦闘機はF-14。

生前の世界では退役してもう見る事なんて出来ない機体だったからだ。

 

「サキ、これで安心だな」

 

「うん・・・カズキのおかげで助かった」

 

「俺のおかげじゃないよ」

 

サキは涙目になりながらも笑顔でそう言った。

 

《そういえば、イーストカーゴの機長・・・もしかしてサキ?》

 

「え、なんで知って・・・」

 

《やっぱりサキなんだ。私だよ。パイロットスクールで同期だったハル》

 

「ハル!?」

 

《こんな所で会うなんてね。大丈夫だった?》

 

「う、うん・・・!助かった・・・!」

 

「知り合いなの?」

 

「うん、飛行機の免許取るための学校通ってた時のお友達」

 

《もう戦闘機は降りたの?》

 

「私は輸送機のほうが好きだったかな。村の人の役にも立てるし」

 

え・・・サキって元々戦闘機乗り・・・?

というか魔法使いで戦闘機乗りの美少女ってどんな属性だよ!

でも好き!

 

《相変わらず優しいね。あ、そうだ。下りたらお茶しようよ》

 

《えぇー・・・ハル、下りたら私とご飯の約束ー・・・》

 

《サキも一緒でいいでしょ》

 

「あ、えと、副操縦士のカズキも連れて行ってもいい?」

 

《カズキ・・・男の人?》

 

「うん!昨日、仕事で行った洞窟で助けた人!いい人だよ!」

 

え、何、これ女の子3人の中に俺だけって感じ?

なにそのハーレム的なの。

最高かよ。

俺の脳内は下心でいっぱいになっていた。

 

《了解、いいよ。4人でお茶しよ》

 

「ありがと、ハル!」

 

《どういたしまして。ところで副操縦士君は?》

 

「あ、えと、はじめまして」

 

《はじめまして。私はハル。さっき後ろで文句言ってたのが相棒のマヤだよ》

 

《なんか私悪者みたいな紹介なんだけど!》

 

《違うの?》

 

《違うよ!!》

 

賑やかな2人組だ・・・。

でも、楽しそうだった。

俺は自分がパイロットになり後席にサキを乗せる妄想を少ししてしまった。

・・・めっちゃあり。

戦闘機乗る。

 

「なぁ、サキ。戦闘機ってそんなに安く買えるの?」

 

「ピン切りかなぁ・・・ハル達が乗ってるF-14は品薄で高いけど、F-16とかなら300万もあれば・・・」

 

300って車を新車で買うのと変わらない。

そんなに安くていいのか・・・?

 

「ちなみになんだけど、戦闘機乗りで仕事ってなるといくら貰えるの?」

 

「んー・・・それもピン切り。ハルに聞いてみたらいいかも」

 

《安いので20万くらい。高いと1000万とか》

 

「そんなに!?」

 

《でも1000万の仕事なんてろくなの無いよ。無茶苦茶な場所飛ばなきゃ行けないし》

 

《狭い渓谷とかね・・・》

 

「マジかよ・・・」

 

《まぁでも相場は50~80万。サキが乗ってる輸送機の仕事なら40万くらいかな》

 

「私は村の依頼だから燃料代くらいだけどね」

 

この世界・・・そもそもの基本報酬が高めなようだ。

1回で80万なら仕事さえ選べばいい機体を買えるだろう。

 

「そうだカズキ、今から行くソルトシティーにはパイロットスクールあるから通ってみたらどう?」

 

「え?」

 

「3ヶ月は通わないといけないけど、村からここまでなら私が練習ついでに送り迎えしてあげる!」

 

「え、いいの?」

 

「うん!パイロット仲間は増えて欲しいから!」

 

「じゃあ・・・お言葉に甘えて・・・あ、でもパイロットスクールに通うお金が」

 

「私が出してあげる!」

 

「い、いやいやいや!!悪いよ!」

 

「大丈夫、免許取って仕事始めてから返してくれればいいから」

 

「な、なんかヒモみたいで・・・」

 

「ヒモ?」

 

「あ、いやなんでもない・・・。でも、いいの?」

 

「うん!さっきも言ったけど、パイロット仲間欲しいから!」

 

「じゃあ・・・うん、お願いしようかな」

 

こうして俺はまさかの転生先で戦闘機パイロットになる第1歩を踏み出した。

・・・本当なら俺がミリオタ無双する予定だったんだがなぁ・・・。

まぁ、戦闘機に乗るなんてひと握りのエリートしか出来ない事を簡単にこの世界で出来るならそれもアリだ。

サキの操縦する輸送機の目的地、ソルトシティーに到着するまでの間に乗りたい機体は何かとずっと話し合っていた。

サキの村は滑走路が不整地なのでVTOLがいいのではという話になっていた。

それにVTOLならヘリの免許も同時に取れるからヘリパイロットにもなれるそうだった。

そして俺はパイロットスクールを終えたらF-35Bに乗るという事になった。

生前の世界で最新鋭のステルス戦闘機だ。

これは楽しみになってきた。

これから第2の人生を楽しませてもらうとしよう。

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