「マヤ、気分は・・・?」
「痛みは無くなったけど・・・気持ち悪い・・・」
「治癒魔法で痛みは感じない様にしてあるんだけど・・・内臓まで治療できなくて・・・」
「・・・マヤは大丈夫なの?」
「定期的に治癒魔法をかければ2日は確実に・・・でも、この人も・・・」
ミーリは今、2人の負傷者を看護している。
マヤは腹部にロケットの断片が突き刺さり内臓を損傷する重傷。
もう1人は胸に貫通銃創があり肺を損傷している可能性があった。
今は治癒魔法で何とか命を繋いでる状態だが、ミーリの魔力もいつまで持つか分からない。
応急的に魔力を回復する薬剤も持ってきてはいるが量もそんなにない。
もって半日あればいい方だそうだ。
本人の疲労度も大きい。
「リリアが帰ってくるまであと30分・・・移動できるかな・・・」
すでに騎士団は戦死者が2人も出てしまった。
「ハル・・・これ」
「え?」
「弾薬・・・使ったでしょ?」
「で、でも・・・」
マヤは私に弾薬を渡してきた。
「どうせライフルは持てないもん。使って」
「・・・うん。ありがと」
「私なら大丈夫だよ。ちゃーんと家に帰るから」
「・・・そう言われてもね・・・ううん、そうだよね」
お腹から尖った破片が突き出している状態では大丈夫なんて言葉は信じれないが・・・。
「とにかくヘリの近くに行こう」
「だがどこから敵が来るか分からないぞ。せめて戦闘機を・・・」
「でもこれ以上2人をこのままに出来ない」
「・・・それもそうだな・・・」
その時だった。
下の階から銃声と悲鳴が響いてきた。
私達は急いで銃を持つ。
「1-2、下はどうなってる」
《こちら1-2。友好的じゃないお友達を片付けた。現在2階クリア》
「了解、こちらは3階だ。下に降りても大丈夫か?」
《しっかり確保してる。行ける》
「了解した。負傷者を連れていく」
私はマヤのお腹に気をつけて肩を貸す。
ミーリの仲間2人がもう1人の負傷者を担架で運び出した。
「・・・あとで迎えに来る」
横たわる戦死した騎士団員にそう言って部屋を出た。
「ねぇミーリ。空間制圧魔法ってどこまでなら届くの?」
「え、えっと・・・この街全体なら・・・でも威力はこの街の半分は吹き飛んじゃうので・・・」
「じゃあダメか・・・」
「どうしたの・・・?」
「その魔法で対空陣地を吹き飛ばそうかなって」
「ハル名案・・・」
「マヤ、無理して喋らないで」
「けほっ・・・喋らせてよ」
「くぅん・・・」
「ごめんね・・・すぐ元気になるから・・・」
トマホークは心配してるのかマヤをずっと見上げている。
「1-2」
「どうも。お友達はこれで全部です」
「・・・了解」
スナイパーチームの足元に2人の冒険者が転がっていた。
「とりあえず1階に降りよう。そこで立てこもって航空支援を待つ」
「そうだね。マヤ、まだ耐えれる?」
「正直言うとキツいよ・・・けほっ・・・」
「絶対に連れて帰るから」
「うん・・・分かってる」
時計を見るとリリアが帰ってくるまであと10分。
無線を入れてみる。
「リリア」
《ハル?もうちょいよ!》
「分かった。でもマヤが負傷した。急いで」
《マヤが!?何があったの!?》
「ロケットの断片がお腹に刺さってる。治癒魔法で何とか持ってるけど急がないと」
《分かった、燃料は近くの飛行場で給油できるのよね》
「うん。準備してある」
《分かったわ。あと5分待ってて。そうしたらミサイルの射程に入るから》
「了解。頼りにしてるから」
航空支援はあと5分。
リリアの事だ。もっと急いでくるから3分くらいだろう。
「もうすぐ来るよ」
「了解。頼もしいね」
「自慢の仲間だから」
私達は1階に降りて負傷者を遮蔽物に隠す。
そして外の様子を見ようと騎士団の1人が出た時だった。
「コンタクト!!」
真正面の建物から銃撃を受ける。
こちらも応戦に入る。
「ミーリは隠れて2人の治療を!トマホークも隠れてて!!」
銃を撃ちながら叫ぶ。
「ちくしょう!!アイツいつの間に!!」
「俺らが騎士団って分かってやってんですかね!!」
「じゃあ俺たち騎士団ですって旗振ってみるか?!俺は絶対にやんないがな!!」
「口なんかより指動かせ!!」
見た感じ建物には30人近くいる。
冒険者という感じはしないから山賊連中だろう。
そして運が悪い事に音に釣られたアンデッドまで寄ってきた。
「おいおい!!ここにきてフルコースか!?」
「冒険者まで寄ってきたらフルコースっすね!!」
「ゾンビは後回しにしろ!アイツらの流れ弾に当たらなかった奴だけ殺せ!!」
激しい銃撃戦。
その最中に遠くからジェットエンジンの音が響いてきた。
《ハル!!射程に捉えた!!やるわ!!》
「分かった!!やっちゃって!!」
《了解!ターゲット・・・ロック!!マグナム!!》
数秒で真上をミサイルが通り過ぎる。
そして遠くから爆発音。
《レーダー・・・消失!おっけー、次は助けに行くわよ!!》
「了解!!銃撃戦が起きてる建物は見えてる?!」
《えぇ!分かるけど・・・でもどっちがどっちか分かんないわよ!》
「いっぱい撃ってきてるほう!」
《どっちもいっぱい撃ってるわよ!!》
上空からは見分けがつかないようだ。
どうすれば・・・
「RPG!!」
「っ!!」
とっさに伏せる。
幸いにもロケット弾は不発で壁に突き刺さって止まった。
よく見たら弾頭の安全ピンが抜けていなかった。
「下手くそめ、ばーか!」
聞こえてるか分からないが私はそう罵倒してみた。
「誰かスモーク持ってない?!」
「スモーク?!それなら1つあるぞ!」
「ちょうだい!」
「ほらよ!」
「なにするの!?」
「今撃ってきてる奴らの所マークする!」
私は敵の位置をスモークグレネードでマークしてリリアに攻撃してもらう作戦を思いついた。
それを騎士団とミーリの仲間にも伝える。
「よーし了解!アイツらをひき肉にしてやるぞ!!」
私は頷き、入口近くの太めの柱に取り付いた。
銃弾が柱を削る。
「やれ!」
私はこんな時に限って焦って投げてしまう。
ピンが半抜けの状態で。
誰かに渡せば良かった。
だがもうグレネードは宙を舞っていた。
「しまっ・・・!!」
着地の衝撃で外れる事を祈ったが祈りは虚しく正確に敵のいる建物の真下に落ちたはいいが煙が出ない。
スモークグレネードはあの1つだけしかない。
「どうした!!」
「焦ってピンが半抜けで投げちゃった!!投げ直しに行く!!」
「1人だけじゃ無理だぞ!!」
「え、援護して!!」
私は仲間に援護射撃をお願いして、グレネードを取りに行くことにした。
マヤが見ていたら往復ビンタを食らってるところだろう。
・・・いや今も見てはいるだろうが。
「よし皆!3つ数えたら一斉に援護射撃するぞ!!いいか!」
「了解!!」
「1・・・2・・・」
私はいつでも飛び出せる準備をする。
心臓の鼓動が早くなる。
「3!!行け!!」
1階にいる全員が同時に引き金を引き弾丸を敵がいるであろう場所に浴びせる。
走り出した私のすぐ真横を弾丸が何発も掠める。
不思議と当たらないが。
敵の弾丸なんて当たらない時は当たりたくても当たらないし当たる時はどんなに祈っても隠れても当たる。
その言葉を思い出した。
今は当たりたくて当たらない。
その時だろう。
「はァッはァッはァッ!!!」
建物に取り付きグレネードを探している時目の前に山賊が1人現れた。
私はすぐに照準し射撃する。
「ぐぅっ!!」
胸を撃たれて崩れ落ちた。
それを見て再度グレネードを探す。
するとすぐ足もとにあった。
「よし・・・!」
ピンをもう一度しっかりと抜きレバーを外す。
「吹っ飛んでしまえ・・・!」
足元にスモークグレネードを落として仲間の元に走る。
再度弾丸が何発も近くを掠めた。
「リリア!!やって!!!」
《了解!目標位置確認!!》
フランカーが目の前の建物にアプローチしてくる。
《ファイア!!》
ドゴンドゴンという腹に響く音がする。
フランカーの腹部に搭載された40mm機関砲だ。
目の前の建物をみるみる破壊している。
銃撃はいつの間にか止んでいた。
《そのままいて!もう一度行くから!!》
フランカーは今出せる最大の角度で旋回して同じコースをアプローチしてきた。
《ファイア!喰らえ!》
今度は25mmと40mmを同時に発射した。
元々壊れて強度が無くなっていた3階建てのアパートのような物は空爆を受けて完全に崩壊した。
「リリア!最高だよ!!」
「いやっほー!!嬢ちゃん帰ったら連絡先教えてくれ!!」
目の前の脅威が消え、全員が喜んだ。
あとはここから飛行場まで500m。
急いで移動だ。
「よし!さっさと脱出するぞ!!」
「了解!!」
私はマヤに再び肩を貸してヘリに向かう。
「ハル・・・ヘリ、操縦出来る・・・?」
「大丈夫。飛ばせるよ」
「そっか・・・良かった・・・」
突然マヤが崩れ落ちた。
「マヤ・・・?マヤ!!!」
揺さぶるが返事がない。
「ミーリ!!」
「これは・・・ショックを起こしてる・・・!」
「ハルさん!マヤさんは私達が連れていくからヘリに急いでエンジンをかけてて!!」
「わ、分かった!!」
「マヤさんに治癒魔法はしっかりかけてるから命に別状はないはず・・・!こっちは気にせず急いで!」
私は頷きヘリに急ぐ。
飛行場に着くとヘリは無事に駐機してあったがヘリを守っていた騎士団の1人が腹から血を流していた。
「だ、大丈夫!?」
「はぁ・・・はぁ・・・あんたのヘリ・・・守ってやったよ・・・」
「あ、ありがとう・・・」
「いいってことよ・・・げほっ!!」
私はとにかく今は急ぐというこでコックピットに乗り込みエンジン始動の手順を踏む。
マヤに操縦を教えて貰っていて正解だった。
「よし・・・エンジンスタート・・・RPM・・・安定!」
ヘリのエンジンが安定した所に全員が到着した。
マヤは依然として気を失ったままだ。
「ミーリ・・・マヤをお願い・・・!」
「わ、分かってる・・・!」
コレクティブを上げてヘリは離陸した。
テキサスに機首を向けて加速する。
「ここから50分・・・マヤ・・・頑張って・・・!」
マヤの容態はあまりよろしいとは言えない。
このまま病院に急行するルートをとるべきだった。
「テキサスタワー、こちらエンジェル0-1」
《エンジェル0-1、どうぞ》
「こちらは重傷者数名を連れています。病院に急行し着陸を要請します!」
《了解。スタンバイ》
このヘリが固定翼のようにもっとスピードが出せないのが恨めしい。
今はとにかく急ぎたかった。
《エンジェル0-1、中央病院にそのまま着陸してください。領主様が病院を確保しているそうです》
「了解!感謝します!」
《幸運を》
《ハル、マヤは・・・?》
「今、意識を失ってる・・・どうなるか分かんない」
《分かんないなんて言わないでよ!》
「気持ちは分かるけど本当に分かんないんだよ!」
私は無線に向かって怒鳴った。
マヤも必死に頑張っている。
とにかく今は助かると信じて病院に向かうしかない。
こんな時にハルゼーが近くにいてくれたら・・・。
そう思うがここは草原地帯の上。
艦船が通るような場所は無かった。
「あと20分・・・」
私は時計を見て呟く。
このあと20分という時間が何時間にも感じる。
「ミーリ・・・少し休んで・・・」
「わ、私なんかよりこの人たちの命が大事なの!」
「だけど・・・」
キャビンではミーリが必死に治癒魔法をかけていた。
もう1人の重傷者も意識はあるが先ほどからたまに問いかけに答えなくなり始めた。
体力が限界に近いのだろう。
「街が・・・街が見えてきた・・・!」
街の壁が見えてくる。
私はここで1つ心配事を思い出した。
・・・離陸は出来ても着陸をした事がない。
オマケに今は日も暮れて暗くなってきていた。
冷や汗が垂れるが出来ないなんて言えない。
「・・・やってやる・・・!」
そう決意して操縦桿を握る。
街はどんどん大きくなってくる。
近づくにつれて2人は助かるという安心感と降りれるかどうかという不安が大きくなる。
だがその時だった。
「なにあれ・・・」
中央病院に続く大きな一本道、その脇にライトが立っていた。
あれは・・・。
「滑走路・・・?」
街中に滑走路が出来ていた。
これならホバリングから着陸しなくても固定翼機のように降りることも出来る。
「・・・よし!着陸するよ!」
即席の滑走路目掛けてゆっくりと高度を下げていく。
速度もなるべく落として50ノットまで減速した。
機体が滑走路真上に来ると同時にヘリに随伴するかのように何台かの救急車がついてきた。
「30・・・20・・・10・・・!」
慎重に操縦桿を操り機体を接地させた。
そしてヘリは減速し停止する。
病院まではあと100mの距離だ。
「着陸!!」
「よし!重傷者から下ろせ!!」
真横についた救急車に重傷者を載せる。
救急車には治癒魔法使いが1人乗っていて応急的な治癒魔法をかけていた。
応急的とはいえ、最低限の生命維持を可能にする魔法だ。
救急車は大急ぎで病院に向かっていった。
私はそれを見送りもう一度離陸する。
機内にはトマホークだけが残っていた。
「トマホーク・・・お疲れ様」
「わふ!」
私は明かりが灯り出した街の上を少し低めの高度で飛び空港に着陸した。
ゆっくりとタキシングして格納庫に向かう。
「ふぅ・・・はぁぁぁ・・・」
大きなため息が出た。
今すぐにでも病院に向かいたい。
そう思っているとリリアのフランカーが隣に停止した。
「・・・お疲れ様」
「お疲れ様なんていいわよ!早く病院に行かないと!」
「うん」
私もリリアと共に病院に向かった。
マヤは腹部の断片を取り除くために緊急手術となっていたが、命に別状はないそうだった。
また、胸を撃たれた女性冒険者も1時的に危険な状態になったが今は一命を取りとめたらしい。
私はその言葉を聞いて気絶したそうだ。
気がついたらマヤと同じ病室で寝ていた。
医師からは緊張が溶けたせいだという話を聞いた。
その時リリアは大泣きしながらナースステーションに駆け込んだらしいが。
その話をするとリリアは怒った。
「ほんっとにびっくりしたんだから!!」
「ごめんって。それよりもまだマヤは寝てるから」
「あ・・・そ、そうね・・・」
マヤは麻酔が効いてまだ寝ていた。
どうもロケットの弾片は小腸を貫通し内部で大量に出血を起こしていたそうだった。
治癒魔法で出血量が少なくなっていたおかげで助かったらしい。
それでもあと1時間遅かったら危なかったそうだ。
「もうあんな場所こりごりだよ・・・」
「私も・・・」
「リリアは空の上だったでしょ」
「私だって無線から聞こえる銃声聞いて気が気じゃなかったのよ!」
「知ってる。私だって同じ立場だったらじっとしてられないし」
その後もマヤが目覚める3時間後まで他愛もない話をしていた。
こうやってこんな話をしていられるのが信じられないくらい壮絶な体験だった。
もう・・・二度とこんな仕事はしないと心に決めた日だった。