《回収する時は教えてね!》
「了解。リリア、近接支援よろしくね」
《任せて!さっさと見つけて帰るわよ!》
「そうだね。よし、トマホーク行くよ」
「わふ!」
墜落機の残骸がある場所にロープで降下した。
残骸は当たり前だが粉々になり焼け焦げていた。
だが近くにはパラシュートもある。
無事を祈りながら小銃に初弾を送り込んだ。
「暗い・・・」
使いたくはないが銃に付けたライトを点灯させる。
何とか視界は確保出来た。
おまけに今夜に近い時間だ。
今日はほぼ満月なため月明かりでかなり明るいがそれでも森の中ではかなり暗くなる。
「NVG持ってくるんだった・・・って思うけどあんな高価な物買えないよね」
暗視装置はまだ量産体制が整っておらず研究が完了したオリジナル品か研究所に提出せずに売りに出されたオリジナル品しか出回ってないため非常に高価な物だった。
安い戦闘機なら一機くらい買えてしまう金額だ。
「トマホーク、臭いは分かる?」
「わふ・・・わん!」
周囲の臭いを嗅いで何かを見つけたのかそちらに向かい始めた。
「そっちだね」
時々後ろを振り返りつつトマホークは前に進む。
その時私は近くの木に違和感を感じてライトで照らした。
「これ・・・」
木には紋章のようなものが書いてあった。
・・・人間至上主義の連中のものが。
「まずい・・・リリア、マヤ。緊急事態」
《どうしたの!?》
「この森に人間至上主義の連中が潜んでる。恐らく拠点がある」
《それ・・・ミオの安否やばくない?》
「もし捕まろうものなら・・・マヤ、FLIRで捜索を続けて。リリアはいつでも航空支援可能なように。私の位置は把握出来てる?」
《上からライトが光ってるのが何となく確認できるわ。でも正確な位置は分からない》
「了解、その時は曳光弾を何発か発射する」
《了解》
しかしかなりまずい状況になってしまった。
ミオはエルフ。
人間至上主義の連中からすると敵だった。
捕まったらどうなるか・・・。
「トマホーク、急ごう」
「わふ!」
トマホークは匂いを頼りに進む。
私は周囲の音に気を配り進んだ。
「・・・増えてる・・・」
明らかに紋章の刻んである木が増えてきた。
私は最悪のパターンを想像してしまう。
その時トマホークが何かを見つけて立ち止まった。
「どうしたの?」
「わふ・・・」
トマホークが見ている方向には教会のような建物があった。
私はライトを消して様子を見る。
教会には人間至上主義の連中の紋章があった。
「トマホーク・・・ここなの?」
「くぅん・・・」
「分かった。トマホークはここで待ってて。分かる?」
「わふ!」
「いい子だね。帰ったら美味しいものいっぱい食べさせてあげるから」
トマホークは美味しいものという言葉に反応してヨダレを垂らしていた。
本当に食い意地の張ったヤツだ。
「・・・行くしかないか」
建物の入口に見張りが1人。
銃にサプレッサーなど付けてないが・・・。
「はぁ・・・ふぅ・・・」
距離は目測で100m。
ゆっくりと狙いを付ける。
「・・・おやすみ」
周囲に銃声が響き渡る。
同時に入口の見張りが崩れ落ちた。
「リリア!近接支援準備してて!森の中に教会があるから!」
《教会!?分かった!探すわ!》
《リリア!私のヘリに着いてきて!見つけたから!》
《了解!ハル!こっちの装備はクラスター2発、20mmガンポッド2門、無誘導爆弾6だからね!》
「了解、戦車が来ても追い払ってくれそうだね」
私は全力で走り教会の入口に張り付いた。
「・・・中で歓迎会の準備してなきゃいいけど・・・」
ドアをゆっくりと開けて入る。
その時真横から信者がナイフを振りかざしてきた。
「くっ・・・!」
血走った目でこちらを睨む信者。
だがナイフを突き刺そうとすることで一生懸命なのか腹ががら空きだった。
「このっ!!」
思い切り腹を蹴り引き剥がす。
そして同時に拳銃をホルスターから抜いた。
「うっ・・・!」
引き剥がされ拳銃を向けられた信者は小さく呻く。
私は引き金を引いた。
「がぉっ!!」
獣のような声を上げて倒れる。
信者の胸に9mmRIPが命中した。
体内で弾芯から剥がれた無数の破片が肺などの重要な臓器を破壊したのだろう、すぐに絶命していた。
「銃なんか使うな卑怯者め!神の裁きを受けよ!!」
「大声で叫んでたら位置丸わかりだよバカ!」
大声で叫んでいた男に向けて発砲する。
倒れるのを確認して索敵した。
「・・・クリア・・・かな」
その時近くから物音がした。
ライトを付けてその物音がした方向に行くと私より少し年上に見える女性信者が震えながら隠れていた。
「・・・ねぇ、エルフの女の子はどこ」
「し、知らない・・・!」
私は足元に発砲しもう一度聞いた。
「もう1回しか聞かないよ。戦闘機に乗ってたエルフの女の子。知ってるでしょ」
「あ、あっちの階段から・・・」
「素直にそう教えてよ・・・。私の気が変わらないうちに消えて」
こくこくと頷き逃げていった。
私は彼女が教えてくれた階段を見つけて下に降りる。
いかにもな地下室に繋がってそうだ・・・。
「弾薬は・・・まだ大丈夫」
まだ10発も撃ってない。
大丈夫だ。
「不気味だねホント・・・敵以外にも何か出てきそう」
ライトで階段を照らしながら降りていく。
悪い連中の本拠地の教会・・・下に降りてもろくなことは無い・・・。
そう思いながら降りていく。
「牢獄・・・?」
階段を降り着るとそこは牢獄のようになっていた。
壁を掘り抜き鉄格子が張ってある。
何人か入ってるようだが・・・さすがは人間至上主義のクソッタレ共。
全員、エルフや獣人、とにかく人以外をぶち込んでいた。
おまけに全員怪我だらけで衰弱している。
「ミオ・・・ミオ!」
少し奥の牢でミオを見つけた。
フライトスーツはボロボロになっていて鞭で打たれたような跡もある。
「大丈夫!?今鍵を壊すから!」
M4のストック部分で思い切り南京錠を叩く。
古びた鍵はそれだけで破壊出来た。
「ハル・・・さん・・・?」
「怪我は?!大丈夫なの!?」
「わ、私よりも他の人を・・・」
「分かってる。皆連れて帰るから」
その時だった。
パチパチと拍手の様な音が階段付近から聞こえた。
「美しい・・・」
真っ黒なローブに身を包んだ男が降りてきた。
「人と人ではない者の友情というのも美しい」
「・・・動くな!」
私は銃をその男に向ける。
見た感じ武器は無さそうだが・・・。
「ミオ、拳銃は使えるよね。他の子を助けて」
「わ、分かりました・・・!」
「両手を分かるように上げろ!」
男は静かにゆっくりと手を上げる。
「そのまま跪け!」
男は命令に従い地面に膝まづいた。
・・・ここまでしたはいいがどうしよう・・・。
考え無しに制圧したまではいいが、まさか無抵抗の人間・・・こんなクソみたいなヤツだとしても撃ち殺すわけにはいかない・・・。
一応、冒険者の法律のようなもので例えそれが山賊だとしても武器を捨て、無抵抗になった者を殺傷することは許されていない。
それをすれば即刻刑務所行きだ。
「ハルさん・・・これで全員だけど、1人・・・」
「どうしたの」
私は目を話さずにミオの話を聞く。
「足の筋を切られてて動けない・・・ヘリに直接収容しないと・・・」
「了解。0-2、聞こえる?」
《わお、コールサインで呼ばれるなんて何かあった?》
「良かった、通じたね。重傷者1名・・・緊急で収容したい」
《了解!そっちはいいの?》
「・・・これから。とりあえず教会付近で待機」
さてほんとにどうしたのものか・・・。
何しでかすか分からないヤツに近寄りたくもない。
「・・・なんでエルフや獣人を嫌うの」
突然そう聞いたのは捕まっていたエルフの少女だった。
「くくく・・・分からんか。貴様ら人外が我ら人の寿命を食らってその命を伸ばしているのだと」
「何それ・・・そんな意味不明な理由で私達を捕まえたの!?」
「意味不明・・・か。やはり分からんか」
男はゆっくりと立ち上がる。
「立つな!!動くな!!」
私はもう一度警告した。
たが男はそれを無視して話し続ける。
「あれは私がまだ少年の頃だった。人の何倍も生きるエルフを見て心底羨ましいと思っていた。永遠に近い命、それがあれば何でも出来る。だが年を重ね調べていくうちに知ったのだ。貴様ら1人が100人の人間の寿命を食らいその寿命を延ばしているのだと」
「そんな話私達は知らない!」
「知らなくて当然だろう。1部の長老クラスでないと知らない話だ。これで納得したか?貴様ら1人を殺すことで100人を救う事が出来る」
「救う?アンタがやってる事は人身売買、それに殺人・・・ただのクソだよ!」
「ふふ・・・やはり・・・救いようのない人間には分からんか。それに答えろ。私とお前、何が違う」
男は私に対し強めの口調で言う。
「お前は私に人身売買、殺人者と言った。だがお前はこの人外たち数人を救い、我等の同胞数十人を殺した。そしてお前らの仕事には人の命を奪い、捕まえて売り捌く。どんな理由があろうと山賊になったもの、お尋ね者になったものは悪だと言いな。何が違う」
「・・・」
答えられない。
それもそうだ。
私はこのエルフ達を助けるために何人も撃った。
戦闘機に乗っている時だって何人殺したかなんて分からない。
「ふん・・・やはり答えられんか。自分は正義だと信じてきた悪人には」
男は手を下ろしていたが私は考え事をしたせいで気づかなかった。
そして・・・。
「危ないッ!!」
私はその声を聞いて前をみた。
男は短剣のような物を持ちこちらに突っ込んでくる。
そして横からさっき助けた名前も知らないエルフが飛び出してきた。
「あぐっ!!」
「ッ!!!」
「これで100人か」
男は短剣をエルフの足に突き刺したままそう言った。
「この・・・クソ野郎!!」
私は正論を突きつけられた怒りと目の前で私を助けてくれた子が刺された怒りで男にフルオートで弾丸を浴びせた。
「はぁ・・・はぁ・・・!これが私の答えだよ。私は正しいと思った事をする・・・!」
空になった弾倉を捨て新しい弾倉を装填した。
「大丈夫?」
刺されたエルフを見ると血が流れ出ていた。
動脈をやられている・・・。
「ハ、ハルさん!血が・・・!」
「分かってる!止血するからミオは周辺を警戒して!治癒魔法を使える子はいない?!」
「わ、私が・・・!」
「手伝って!大丈夫、すぐ血を止めるからね!」
メディカルポーチから止血帯を取り出して足にまく。
「あなたの治癒魔法の効果は?」
「ち、鎮痛と生命維持・・・!」
「分かった、今は鎮痛で痛みを抑えてあげて!」
「わ、分かりました!」
「ハルさん!今の銃声で上から人がくるかも!」
「クソ・・・こんな時に・・・!」
私は近くの牢屋に引っ張っていきそこに寝かせた。
「よし・・・止血帯を締めるけど少し痛いかもだから許してね」
「わ、分かりました・・・」
「大丈夫、必ず助けるから」
《ハル!教会の周辺に人が集まってる!》
《こちら0-2、FLIRで確認したけどコイツら教団の連中だよ!囲まれてる!》
「了解!リリア!近接支援!!追い払って!」
《了解、待ってました!!》
外から爆音が聞こえてくる。
私は急いで止血帯を締めた。
「ぐ、うぅぅぅ・・・!!!」
「ごめんね、痛いよね・・・!でも大丈夫、血の量は減ってるから!」
「は、はい・・・」
「生命維持・・・かけますか・・・?」
「まだ大丈夫。止血しないと生命維持は意味ないから」
「分かりました・・・!」
「クソ!降りてきた!!」
ミオは階段に向かって何発か射撃した。
拳銃だけでは分が悪い・・・。
「ミオ!ライフルは使える?!」
「使えます!!」
「使って!」
「はい!!」
M4を投げ渡して治療に専念する。
だけどまずい・・・血が止まらない。
「と、止まりました・・・?」
声も弱々しくなってきている。
「鎮痛は止めないで」
「わ、分かりました!」
「大丈夫、もう血は止まったからね。すぐ街の病院に行けるから」
「は、はい・・・」
「治ったら私が戦闘機で美味しいもの食べに連れて行ってあげるから」
「はい・・・あの・・・甘い物食べたい・・・」
「うん。行こうね」
・・・足の動脈を切られている。
おまけにその動脈が縮んだのかどこに行ったか分からない。
「あの・・・この子・・・」
「・・・動脈が切れてる。おまけに縮んでどこに行ったか分からない」
「そんな・・・」
「とにかく治癒魔法はかけ続けて。でもあなたの魔力が着きそうなら止めて」
「わ、分かりました・・・」
私はもう一度怪我をしたエルフに向く。
「ねぇ、名前聞いてなかった。なんていうの?」
「ハル・・・」
「驚いた。私と同じだ」
「ほんと・・・ですか・・・」
「うん。同じ。同じ名前同士だし一緒に戦闘機に乗りたいね。私の戦闘機、2人乗りだから」
「はい・・・絶対乗りたい・・・です・・・」
《ハル!周囲クリア!》
「了解」
《こっちもLZ確保!》
「ハルさん!こっちも入ってきた分は片付けました!でも念の為予備の弾下さい!」
「了解、投げるよ」
弾倉をミオに投げる。
ヘリは何とか到着したようだ。
もしかすると間に合うかも知れない。
「ハル、行くよ」
「だ、大丈夫ですか?」
「ヘリが着いた。間に合うかも知れない。生命維持も念の為かけて」
「りょ、了解です」
「もうすぐ脱出だからね。頑張って」
「は、い・・・」
声がさっきより弱々しくなってきた。
すこしまずいかも知れない。
「ミオ、先頭で警戒して」
「了解です」
《ハル!トマホークが今乗ったから!あとはハル達だけ!》
「了解、賢い犬だこと」
急いで階段を登り外に出ると、辺り一面血の海だった。
「・・・リリア、やりすぎ」
《やりすぎくらいが丁度いいわよこんな連中》
「・・・まあね」
ヘリは目の前に着陸していた。
「マヤ、なるべく急いで帰ろう。あと病院に直行して」
「了解!」
「ハル、もう大丈夫だから」
「もう大丈夫・・・」
目が虚ろになってきている。
血は・・・止まっていない。
「ねぇ、起きて、私を見て!」
「おきて・・・ます・・・」
「ハルさん・・・」
治癒魔法をかけていたエルフがゆっくりと首を降った。
・・・もう間に合わない・・・。
その時だった。
「わふ・・・」
「トマホーク?」
トマホークがゆっくりと近づいてきた。
揺れる機内だから少しふらついているが。
「どうしたの?」
トマホークはハルに両足を乗せた。
すると治癒魔法をかけていたエルフの子よりも大きな黄緑色の魔法陣が広がる。
「トマホーク!?」
トマホークは魔法陣が消えると同時にパタッと倒れ荒い息で呼吸していた。
「トマホーク!?大丈夫!?」
「わふ・・・」
「ハルさん!血が・・・!」
呼ばれてハルのほうを見ると足の血が止まっていた。
本人も何とか意識がある。
「トマホーク・・・血を止めてくれたの・・・?」
「わふ・・・」
「そのワンコ・・・何回も使えないですけど強力な治癒魔法を覚えてるみたい・・・です」
犬の獣人の少女がそう教えてくれた。
「え・・・初耳なんだけど・・・」
「えと・・・ご主人が大変そうだから今しかねぇ!!って思ってやった。反省も後悔もしてないけど死にそうだから肉くれって言ってる・・・」
「なにそれ・・・ていうかトマホークそんなキャラなの・・・?」
「ご主人のためならこの身を捧げても惜しくねぇぜ。とりあえず今日一緒に風呂入ろご主人とも言ってる・・・」
「・・・なんで風呂」
「俺好みの女の子・・・らしい」
「・・・トマホーク」
「・・・わふ」
トマホークはそっぽを向いていた。
心無しか冷や汗をかいているようにみえる。
「というかなんで心の中も読めるの・・・?」
「私、柴犬の獣人だから」
「あぁ・・・そういう・・・」
トマホークは心を読むな!と言いたげな目でその獣人の少女のほうを見ていた。
「ハル、調子は?」
「大丈夫・・・です・・・」
「治癒魔法で生命維持出来てるから大丈夫だと思います、少なくともあと3時間は私の魔力が持つから・・・」
「了解、マヤ病院までは?」
「あと30分かな。腕によりかけて飛ばしてるから!」
「了解、安全第一でね」
「分かってる!」
《ふぁ・・・疲れたわ・・・》
爆音がして横をむくとリリアのフランカーが通り抜けていった。
その様子を何人か釘付けになってみていた。
「・・・私、戦闘機に乗る」
「私も!」
捕まっていた子達はそのフランカーを見て戦闘機乗りになる事を決めたみたいだ。
「良かったねリリア、今リリアの機体を見て3人くらい戦闘機乗りになるって言ってたよ」
《うぇ!?ほ、ほんと!?》
「うん。ちなみにリリアに言ったわけじゃなくてフランカー見てだけど」
《知ってるわよ!!》
「ふふ・・・」
重傷だった子が助かってくれ私は心底安心した。
私はあの男の問いがまだ頭の中を回っていたが、私は私が正しいと思った事をする。
でもだからと言って誰これかわまず撃つとかそんな事ではないが・・・。
「ふぁ・・・疲れた・・・」
「あの・・・ハルさん、本当にありがとう・・・」
「ん?」
「あんな場所まで探しに来てくれて・・・それに仲間も助けてもらって・・・」
「いいよ。仲間でしょ、みんな」
「・・・はい!」
「ふぁ・・・でもほんとに疲れた・・・」
病院に着くまでの数十分、私は疲れきっていつの間にか寝落ちしていた。
長い1日だった・・・。