高度20000フィートの大空で   作:イーグルアイ提督

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模擬戦

「増えたわねぇ・・・」

 

「増えたね」

 

「賑やかでいいじゃん!」

 

この前の人間至上主義の協会を攻撃し救出したエルフや獣人達。

全員村を襲撃され連れ去られておりその際村は全滅、住む家や家族を失った子ばかりだった。

それをウチで引き取った感じだ。

おかけでだだっ広い家が賑やかだ。

 

「で、今日はどうするの?」

 

「どうするってミオの機体を新しく買わないと。F-35はもう無いかもだけど・・・」

 

「大丈夫です!私は空を飛べればいいので!」

 

「じゃあ、フランカーね!」

 

「は?」

 

「今のハル怖かった・・・」

 

「なんでフランカーなの」

 

まるでフランカーが1番いいみたい。

納得いかん。

いや、フランカーもいい機体なんだけど。

 

「な、何よ!というかハル、3機もあるんだから1機くらいあげたらどうなの?」

 

「んー・・・全部複座だしワイバーンはあげたくないから・・・ミオ、副操縦士のアテはある?」

 

「副操縦士ですか?うーん・・・あ!」

 

ミオは小走りでどこかに向かった。

数十秒もしないうちに帰ってくる。

 

「この子です!」

 

連れてきたのは前トマホークの心を読んでいた柴犬の獣人。

名前はルイだった。

 

「え、乗れるの?」

 

「操縦は無理だけど・・・計器とかなら・・・」

 

聞くと村に航空機を導入した際に整備員として手伝いをしていたらしい。

その時、副操縦士席に座り計器類も操作していたことからマニュアルさえ読めればなんとかなる・・・だそうだ。

 

「じゃあ大丈夫かな・・・」

 

「何に乗せてもらえるんですか?」

 

「Su-24」

 

「フェンサーなら扱ったことある・・・」

 

「え、そうなの?」

 

「うん、村の人で乗ってる人が居た。整備も何回かしたことある・・・」

 

「それじゃ最適だね。ミオはいい?」

 

「はい!可変翼機ですね!大好きです!」

 

スホーイ仲間が増えるのはいいが可変翼のほうが好きと言われたリリアは少し悲しそうだった。

 

「ねぇ、ハル。せっかくだし2時間くらい練習飛行は?」

 

「いいね。教官機は私とリリア?」

 

「そうね。楽しそうじゃない?」

 

「楽しそうです!」

 

「楽しそう・・・」

 

「決まりだね!」

 

「だね。マヤ、後席頼むよ」

 

「任されよ!」

 

という訳で完全に街乗り専用となったLAV-25に乗り込み空港に向かう。

大型機が3機・・・。

楽しそうだ。

ワイワイと話しながら運転すること5分。

空港に到着する。

街の真ん中に空港までの大きく広い直線道路があるおかげでかなり楽だ。

 

「私はフライトの申請してくる。先に格納庫に行ってて」

 

「了解!」

 

ギルド内の受付にクエストでも何も無い飛行の申請を上げに行く。

正直、申請は別にしてもしなくてもいいのだが、この時間くらいまで飛びますという申請をしておくとその時間に帰ってこない、もしくはレーダーから消えた等の事があれば自動的に捜索依頼が出る。

それでも捜索は依頼形式な上、報酬もこの時点で決めていかなければならず、報酬次第では捜索されずに放置されることもある。

だが、何もしないとレーダーから消えようがいつまで経っても帰ってこない、行方不明になったとしても自己責任という形で処理される。

今回は初心者に新しい機体を扱わせるため、念の為の保険だ。

報酬は捜索救難の相場である50万ドル。

この額なら大体捜索に来てくれる。

私は申請を済ませて格納庫に向かった。

 

「さてと、準備いい?」

 

「OK!」

 

《OKよ》

 

《OKです!》

 

「じゃ、行こっか。マヤ、始動前チェック」

 

「了解!」

 

慣れた手順でエンジン始動前のチェックを終わらせていく。

 

「異常なし・・・OK!」

 

「よし、エンジン始動」

 

タービンの回転数が上がっていく。

心地よい音だ。

 

「テキサスタワー、エンジェル0-1」

 

《エンジェル0-1どうぞ。》

 

「タキシング許可願います」

 

《エンジェル0-1及び2.3、滑走路17へのタキシングを許可します。現在、誘導路が混み気味ですので注意してください》

 

「了解。みんな聞いた?」

 

《りょーかい》

 

《分かりました!》

 

スロットルを少しだけ開き、ゆっくりとタキシングを始める。

誘導路に出るとすでに前に3機ほど民間機が離陸待ちをしていた。

上空にはアプローチ中の定期便の輸送機C-5が居た。

それに連なって4機の護衛機も居た。

彼らの着陸街だ。

 

「結構かかりそうだねー・・・」

 

「仕方ないよ」

 

《それにしても、滑走路増やす気ないのかしら》

 

「前言わなかったっけ、景観がどうとかで増やさないって方向だって」

 

《景観ねぇ・・・私はそんなことより滑走路増やして欲しいわ。ただでさえ飛行機無いと暮らせないのに》

 

「まぁね」

 

《私の村は滑走路3本あった・・・》

 

「それ村より空港施設の方が大きいんじゃないの・・・?」

 

《うん・・・むしろ村が空港・・・》

 

そういえば時々そんな集落がある。

簡易的な施設にはなってしまうが、ターミナルにあたる部分を集落にして生活していた。

 

《もう無いけど・・・》

 

「・・・」

 

彼女の村は教団の襲撃のせいで壊滅していた。

稀に大きな廃棄された空港を空から見ることがあるがそこもそういった経緯があるのだろうか・・・。

 

《でも、ルイの家族はもう私達ですから寂しくないですよ!》

 

《・・・うん》

 

「そうだよ!」

 

そんな話をしながら離陸の順番を待つ。

待つこと30分。

ようやく滑走路が空いた。

 

《エンジェルフライト、風向150度、風速13ノット、離陸支障なし。離陸を許可》

 

「離陸許可、エンジェル0-1」

 

3機は滑走路に入り、編隊を組んだまま離陸する。

 

「ミオ、しっかり着いてきて」

 

《りょ、了解です!》

 

《ふらついてるわよ》

 

私が先頭、ミオは真ん中、リリアが最後尾の編隊で飛ぶ。

ミオはF-35とは違う機にのりやはり慣れてないからかふらつき気味だ。

 

「このまま300に旋回しよう」

 

《了解、それからどうするの?》

 

「特に決めてない。模擬戦でもしてみる?」

 

《も、模擬戦ですか・・・》

 

「大丈夫、手加減するから。機体に慣れるなら戦闘行動したほうが慣れやすいよ」

 

《まぁ一理あるわね・・・どうするの?》

 

「んー・・・リリアとミオが組む?」

 

《それ、ハルが不利じゃない?》

 

「リリアはミオの安全確認係。」

 

《それならいいわ》

 

「じゃ、決まりで」

 

《き、緊張します・・・》

 

「本当なら離れてヘッドオンで行きたいけど編隊を解いた瞬間からスタートで」

 

本当なら何十マイルも離れて行うが今回はスタートと共にお互いに旋回して戦闘開始だ。

 

「とりあえず高度25000からスタートだね」

 

《了解です!》

 

《ミオ、緊張しなくていいからね》

 

《そ、そうは言ってもですね・・・》

 

ミオの口調から緊張が感じられる。

さすがに本気で初心者と戦う訳にはいかないが、手を抜くにしてもその辺私は不器用でどうなるか・・・。

 

「ハル、ホントに手加減できる?」

 

「・・・約束できない」

 

「だよねぇ・・・スイッチ入っちゃわないように!」

 

「了解」

 

そうこう話してるうちに高度は25000フィート。

戦闘開始だ。

 

「それじゃ、ブレイク!」

 

お互い左右に急旋回した。

私はその後急降下する。

 

「さて、見つけられるかな」

 

「どうだろうね・・・ん・・・?」

 

マヤは後ろを警戒していると何かを確認したようだ。

 

「わーお、着いてきてる」

 

「意外とやるね」

 

私は降下をやめ水平飛行に移る。

向こうもそれに合わせて着いてきた。

 

「ハル!後ろ後ろ!!」

 

「了解!」

 

減速しつつ上昇、ハイヨーヨーを行ってみるが、まるでその行動を読んでいたかの様に着いてくる。

 

「回避出来てないよ!レーダースパイク!」

 

「まさかの・・・想定外!」

 

急旋回で振り切ろうとするが綺麗に追従してくる。

ミオは食いついたら離さないようだ。

 

「このままだと撃墜だよ!!」

 

「分かってる!バレルロールするよ!」

 

もう一度減速し相手をオーバーシュートさせるために螺旋状に宙返りした。

思いのほか接近していたため、ミオはそれに対応しきれず私たちの前に出てしまう。

 

「貰った!」

 

ガンキルのため照準を合わせようとするが合うと思った次の瞬間、向こうも同じようにバレルロールを繰り出した。

加速して逃げるものだと思っていた私は推力を最大まで上げてしまっていたのでまんまと追い越してしまう。

 

「嘘でしょ!?」

 

「ミオもやるね!!」

 

「また後ろ!!」

 

下手に戦闘機動を繰り返したせいで速度が失われている。

私は1度加速するために降下した。

 

「どうするの!?」

 

「フェンサーのほうがトムキャットより機動性は劣ってる!振り切るよ!!」

 

たがミオは絶対に離れない。

まるで飢えた肉食獣だ。

 

「クソっ!なんか猛獣に襲われてる気分!!」

 

「後ろ見てる私はずっと思ってる!」

 

何とかして振り切りたいが次の行動がまるで分かっているかのように追従してくる。

そして・・・。

 

「警告!!ロックオンされた!!」

 

「・・・やられた」

 

《スプラッシュ!勝ちです!》

 

《珍しい・・・ハルがやられた》

 

「ミオ、次リリアとやってみる?」

 

《うぇ!?私と!?》

 

「やってみたら分かるよ。色々と」

 

《リリアさんともやりたいです!》

 

《わ、分かったわよ・・・》

 

私は審判という形で編隊より少し離れた位置につく。

 

「それじゃ、スタート」

 

お互いに再びブレイクし、ミオはリリアに襲いかかった。

 

《うっそ、もう後ろ!?》

 

《ふふふっ・・・がら空きですよ》

 

今回は2人の無線が聞こえるようにしてある。

聞こえてきたミオの声はまるで別人だった。

 

《このっ・・・フランカーを舐めるな!》

 

リリアはフランカーが得意とする失速機動を行った。

機体をほぼ垂直に立てるコブラを行った。

急減速しミオはリリアを追い抜く。

 

《もらった!!》

 

《甘いですよ》

 

機体を立て直し照準を付けようとした瞬間だった。

ミオは反転に急降下する。

機体が立て直せれていないリリアはいきなりフェンサーが視界から消えたような状態だ。

 

《あ、アレ!?どこいったの!?》

 

「ミオ・・・エグいね」

 

「うん・・・あの子格闘戦は鬼だね」

 

ミオはリリアが必死に探してる間に真後ろに着く。

それに気づいたリリアも撃墜されないように必死に動き回った。

 

《い、いつの間に・・・!》

《ミオ・・・いつでも撃てる》

 

《もう少し相手の行動を確かめてからです》

 

《分かった》

 

ミオはリリアの機動の特性を見極めようとしているようだ。

 

《水平・・・ここで来ますね》

 

《来ると思う・・・》

 

何かを予想したミオは減速しフランカーから離れた。

 

《この・・・やろ!!》

 

減速し離れられた事に気づいていないリリアはクルビットを行った。

だが、フェンサーはフランカーより後方に着いていて、行動を予想していたため追い越すことも無かった。

 

《うそっ!?》

 

《悪くないパイロットだった・・・》

 

《ふふっ、ルイ、なんのキャラですか?》

 

《私の知り合いのおじいちゃん・・・》

 

にこやかに話しているようだが、ミオはその間もフランカーに食いついて離れない。

機動性ならフランカーがずっと上だがそれを感じさせない飛行をしていた。

 

《ミオ・・・そろそろ終わり》

 

《残念ですが・・・そうですね》

 

そして・・・。

 

《FOX2!》

 

《やられた!?》

 

「勝負ありだよ。ミオの勝ち」

 

《やりました!勝ちです!》

 

《優勝・・・》

 

《はぁっ、はぁっ・・・ふぅ・・・猛獣に食いつかれてる気分だったわ・・・》

 

「それ、私も」

 

ミオは1度食いついた獲物は絶対に逃がさず、どこまでも追いかけてきた上、相手の行動のパターンを学習し攻撃してきた。

1対1の格闘戦では化け物レベルで強い。

編隊になるとどうなるかは分からないが・・・。

ただ前のように長距離から攻撃されるのは苦手なようだ。

 

「帰ろ。ミオ、たぶん機体乗り換えた方がいいかも」

 

《え!?だ、ダメでしたか!?》

 

「ううん。違う。ミオならフェンサーよりももっといい機体に乗った方がいい」

 

《それ、私も思うわ。フェンサーは純粋に格闘戦をするような戦闘機じゃないから》

 

《そ、そうですか・・・でもお金が・・・》

 

《大丈夫、私たちで出してあげるわ。ね、ハル》

 

「うん。一機くらいなら」

 

《あ、ありがとうございます!》

 

《何がいいかしらね》

 

ちょうど、教団からエルフ達を保護したということで王国から戦闘機一機分くらいの報酬金が出た。

人道的行いをしたということでだ。

国王は人間以外も共存出来る国を目指しており特にエルフには思い入れがあるということでこうした行動は評価され報酬金も出ていた。

また、王国軍や騎士団を使って大規模な人間至上主義の連中の掃討作戦も行われているが、構成員が多く、拠点の位置も曖昧なため潰しても潰しても沸いてくるそうだ。

1度、教団の岩山に偽装された教会を見つけ、夜間に地中貫通爆弾、バンカーバスターで攻撃した事があったのだが、そこには構成員以外にも捕まっていた獣人やエルフも居て爆撃に巻き込まれたという事故もあり航空攻撃での拠点破壊より騎士団で強襲し構成員のみを排除という方針を取っていた。

そのため、あまり効率も良くないそうだ。

だからこうやって冒険者が教団の拠点を襲撃、構成員の排除と捕まっていたエルフ達の救助を行うと報酬が出ていた。

ただ、この報酬が高額な事もあり、これを目的に教団のみを攻撃する冒険者も増えてきてしまっている。

おまけに過激な者は構成員を捕まえて処刑する動画を撮りそれを教団本部に送り付けるという、もうどっちが悪者か分からないような行動を取る者も増えてきて国王の悩みの種となっているようだ。

一応、法律として捕獲もしくは投降するなど、戦闘の意思を無くすもしくは戦闘の継続が不可能になる等の状態になった相手は抵抗をしようとするか逃げようとしない限り攻撃してはならない。

処刑など以ての外だが・・・相手が相手という事もあり黙認されてしまっている部分がある。

山賊などは、そうなるしか生きていく道がない者もいる為山賊や空賊、海賊相手にこうした行為をすると即捕まるが、こういったカルト教団相手にはそれくらいしたっていいじゃないという考えを持つものが多く、教団狩りを行う冒険者も好き勝手始めてしまっている。

ただし、その後に捕まっていたエルフ達に手を出そうものなら証拠が1つでもある限り捕まる上に極刑だそうだ。

 

「ところで、何に乗りたい?」

 

《え、えっとですね・・・とりあえず複座で・・・ルイと乗りたいので!》

 

《ミオ・・・》

 

《もうバディですから!》

 

《・・・うん!》

 

ルイは普段あまり感情を出さないタイプのようだがミオからバディと言われ少しではあるが嬉しそうな声を出していた。

 

「複座かー・・・マヤは何がいいと思う?」

 

「んー・・・私は無難にホーネットかな」

 

《私はSu-30かしらね》

 

「そっか、複座のフランカーあるもんね」

 

《うん、おまけにカナードに推力偏向ノズルとかね!》

 

「ミオが乗ったら化け物みたいな事になるじゃ・・・」

 

なんて話をしていたら・・・。

 

《・・・私、フランカーに乗りたいです!》

 

「決まりだね」

 

《やったー!フランカー仲間ね!》

 

次に買う機体が決まり、ミオも喜んでいるようだ。

 

「っと、ハル、燃料がそろそろヤバいよ」

 

「了解、燃料も危ないから帰ろうか」

 

《了解!》

 

今日は短時間のフライトだったから増槽を積まずに出てきた。

おまけに戦闘でガンガンにエンジンを吹かしたからもう燃料があまり無い。

 

「寄り道せずに帰るよ」

 

《了解、こっちもあまり燃料に余裕ないからね》

 

私達は旋回して空港に機首を向ける。

今日の模擬戦・・・相手が実弾を積んだ敵戦闘機じゃなくて本当に良かった・・・。

心の底からそう思いつつ帰路に着いた。

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