高度20000フィートの大空で   作:イーグルアイ提督

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森の悪魔

「・・・・・・なんでこうなった」

 

暗い森の中、私とこの前助けたもう1人の柴犬の獣人、エルとトマホークと歩いていた。

私はAK74NとP226を持ち、エルはKar98kとP227、私の持っているP226の45口径バージョンを持っていた。

 

「ハルが報酬に目が眩んだ」

 

「いや、そうなんだけどさ・・・」

 

今回は・・・というか今回もだが、領主から直々に依頼された仕事をしている。

内容は、テキサスの近くに人間至上主義教団の教会らしきものが発見された。

それを地上から偵察し必要ならその教会の長を狙撃してほしいとの事だった。

今回は騎士団の支援があるそうだが、支援するなら本隊を出せと心の底から思っている。

しかし、依頼を受けた時は報酬のF-14Dという文字を見て速攻承諾してしまった。

なんでも領主がF-14Dを国中から探して新品の機体を用意してくれているそうだ。

 

「はぁ、私も結構チョロいのかな・・・」

 

「F-14って文字にはチョロい」

 

「言わないで・・・」

 

今回、リリアとミオ、ルイの2機のフランカーが上空警戒と近接支援、マヤとヘリに乗りたがっていたエルフのアヤがアパッチで支援してくれる。

そして私達の回収を騎士団が担当するそうだ。

 

「化け物が来ても追い返してくれそうな感じだね、上は」

 

「大丈夫、化け物が来る前に私が仕留める」

 

エルはライフルを手にそういった。

彼女は村で狙撃を得意として村を守っていたらしい。

だが、教団襲撃の時はあまりの物量に守りきれなかったそうだ。

 

「今度は大丈夫」

 

「期待してるよ」

 

私達は森をゆっくりと歩き、トマホークとエルが臭いと音で捜索してくれていた。

私は前と同じように集音効果のあるComTacというヘッドセットを付けてきたが、元々耳のいい2人は必要ないそうだ。

 

「こっち」

 

「了解」

 

森に入ってすでに2時間。

その時だった。

 

「人・・・」

 

「え?」

 

「あそこ・・・」

 

ここから100mほどの所に人が立っていた。

何かを探しているように見える。

 

「冒険者・・・かな?」

 

何となく感じ取る事が出来る。

身分証の敵味方識別のおかげだ。

 

「味方」

 

「たぶんね」

 

ゆっくりと近づく。

念の為だ。

距離が20mほどに近づいた時だった。

 

「うぉっ!?」

 

「!?」

 

相手はこちらを振り返りびっくりして銃を向けてきた。

 

「な、なんだ同業者か・・・音もなく近寄ってくるなよ・・・」

 

「ごめん、敵かどうか分からなかったから」

 

「いや、こっちもいきなり銃を向けてすまない。アンタらどうしたんだ?」

 

「仕事。人間至上主義の連中を探してる」

 

「なんだ、狩りの途中か」

 

「そんな所」

 

「だったらさっさと帰った方がいいぞ。そんな連中もう死んでる」

 

「え?」

 

男はその意味を話し出す。

ここには数ヶ月前から緑の死神という異名の賞金首が潜伏している。

そいつは狙撃を得意とし、正確にターゲットを撃ち抜いてくるそうだ。

やり方は残忍で、まずターゲットに仲間が居るならターゲットの足等、致命傷にならない部位を狙撃する。

そして助けに来た仲間の足をまた撃ち抜き、苦しんでいるところを眺めたあと、1人ずつ頭を撃ち抜いてくるそうだ。

男のパーティはそいつを狩りにきたそうだが・・・。

 

「な、悪い事は言わんから森から出た方がいいぞ」

 

私はその話を聞いて、さっさと森を出よう。

そう思った時だった。

 

「ハル伏せて!」

 

「え?」

 

エルに押し倒される。

そして・・・

 

「ぐおっ!?」

 

さっきまで話していた男が倒れた。

・・・膝を撃ち抜かれて。

 

「ぬぁぁぁ!!ちくしょう!!おい!お前らこっちに絶対に来るな!!」

 

「で、でも!」

 

「死にたいのか!!俺はいい!」

 

私達はすぐ近くにあった大きな岩に隠れる。

 

「誰か聞こえて・・・緊急!誰か聞いてる?!」

 

《ハル!?どうしたの!?》

 

「よかった・・・マヤ!この森に賞金首のスナイパーがいる!さっき1人賞金首狩りの冒険者が撃たれた!」

 

《え!?い、今ハル達は・・・》

 

「隠れてる!ヘリで探して!」

 

《りょ、了解!リリア、ミオ!聞いたよね!》

 

《聞こえてるわよ。そっちが見つけたターゲットに対して攻撃するわ》

 

《こっちも準備します!》

 

「了解!」

 

「なんだ、戦闘機がいるのか?!クソっ痛ぇ!!」

 

「止血は出来る?!」

 

「なんとかやってみる・・・ちくしょう痛ぇよ!」

 

助けたい・・・だけど、1歩も動けない。

 

「どうしたら・・・」

 

「おじさん!弾当たってから銃声まで何秒?!」

 

「エル?」

 

「当たってからだ!?確か4秒だ!!」

 

「分かった!」

 

「エル、どうしたの?」

 

「狙撃手の位置を割り出す。弾の角度さえ分かれば・・・距離はおおよそ割り出せた」

 

エルは概ねこの辺りだろうという所を監視しようと単眼鏡で覗こうとした時だった。

 

「っ!!」

 

「大丈夫!?」

 

「大丈夫、だけど監視されてる。でも・・・分かった」

 

「狙撃手の位置?」

 

「うん。あのバカ撃ってくれたおかげで。弾は・・・」

 

エルは地面に絵を描き始める。

 

「私達の位置はここ。距離はここから・・・概ねここ。弾丸は・・・この角度・・・」

 

さすが狙撃手・・・。

なんとかなるかも知れない。

 

「ちくしょう誰か血を止めてくれ!!」

 

「止血帯は!?」

 

「血が止まんないんだ!!ちくしょう、ちくしょう!!」

 

「仲間は呼べないの!?」

 

「そんな事したらみんな死んじまう!!クソ、痛えよ!!」

 

「だけど・・・」

 

その時、トマホークが男の方に走った。

きっと治癒魔法を使うためだろう。

だけど・・・狙われてしまう。

 

「トマホーク、ダメ!!」

 

私は反射的にトマホークを止めるために動いてしまった。

そして・・・。

 

「あぐっ!!」

 

足に強い衝撃と焼けるような熱さ。

 

「ハル!」

 

「このバカ!」

 

「ウチの・・・可愛い仲間を撃たせれない・・・!」

 

トマホークはその間に男に治癒魔法を使い倒れてしまう。

男の血は止まったようだ。

 

「ハル!早くこっちに!」

 

「ト、トマホーク・・・!」

 

私はなんとか手が届いたのでトマホークに腕をかけて引きずる。

 

「はぁっはぁっ・・・!!」

 

「お前の相手はこっちだ!!」

 

男は撃たれた方向に小銃を乱射した。

 

「そんな事したら狙われるよ!!」

 

「うるせぇ!!お前はさっさとその犬連れて隠れろ!!」

 

私は男にそう叫ぶが逆に怒鳴られた。

その間にも何とか岩まで逃げきれた。

だが・・・。

 

「がぁっ!」

 

短い悲鳴。

そして男の方を見ると頭を撃ち抜かれていた。

 

「そんな・・・」

 

「ハル!足が・・・!」

 

「痛い・・・!!」

 

撃たれた足を見ると酷いことになっていた。

直視したくない。

だが弾は抜けていない。

まずは弾を抜かないと治癒魔法をかけようが治る傷が治らない。

 

「トマホークもバカ!主人の命令に背くなんて!」

 

「わふ・・・」

 

「アンタのせいで撃たれたんだよ!」

 

エルはトマホークにそう怒る。

トマホークは申し訳なさそうにこちらを見ていた。

 

「大丈夫、トマホークは助けようとしたんだよ・・・悪くないよ」

 

私は頭を撫でてやる。

 

「はぁっはぁっはぁっ・・・」

 

焼けるように痛い。

弾を取り出すためにナイフで傷を触った。

 

「ぐうぅぅぅっ・・・・!!!」

 

感じたことない激痛。

 

「ハル・・・」

 

「大丈夫・・・そっちに集中して・・・!」

 

私は近くにあった太めの枝を咥える。

 

「ふぅ・・・ふぅ・・・」

 

意を決して傷にナイフを突っ込む。

 

「んぐぅぅぅぅ!!!」

 

地獄だ。

目の前が涙で歪む。

 

「ん・・・!ぐっ・・・!!」

 

時間にしたら10秒くらいだっただろう。

永遠にも感じたが、何とか足に入っていた弾丸は取り除けた。

 

「ぷはっ・・・!はぁ、はぁっ・・・」

 

幸いにも出血は大した事ない。

包帯で傷口を巻いて治療する。

 

「・・・ちょっとだけ顔見ないで」

 

「分かった」

 

涙と汗と・・・とにかく顔中の穴という穴から液体が出てきた。

 

「ごめん、ちょっと無線お願い・・・」

 

「うん、いいよ」

 

エルが代わりに無線でリリア達に支援を要請していた。

 

「これで撃たれるの何回目・・・?」

 

まったく疫病神でも着いてるのだろうか。

 

「ハル、救助に騎士団のヘリが来てくれる。あと2時間頑張って」

 

「うん・・・大丈夫」

 

大丈夫とは言うが、痛みでどうかなりそうだ。

下手に足の中で弾丸が止まったせいで傷口が大きく抉れてしまっている。

どうせならスパッと貫通してほしかった・・・。

 

「ごめん、治癒魔法は使えない」

 

「大丈夫だよ、それより敵は?」

 

「今音を聞いてる。恐らくずっと監視してる」

 

「移動してる感じは?」

 

「無い・・・とは言いきれない。距離はおおよそで1200m。でも周りは木ばっかりだから射線を確保できない」

 

「当たった弾は5.56だよ・・・足の中に残ってた奴」

 

「分かった、という事はAR-15系かな。連射速度からして」

 

「たぶん」

 

「了解。痛みは?」

 

「正直大声だして泣きたい」

 

「泣いていいよ。でもメソメソ系で」

 

「笑えないよ・・・うぅ・・・ホントに泣きそう・・・」

 

弾丸も抜いて止血もしたが痛みが消えたわけじゃない。

それどころか着弾したときの痺れが消えてきて余計に痛くなってきた。

おまけに頭には傷口が焼き付いている。

そのせいで更に痛く感じる。

 

「すこし横になってて。大丈夫、私が仕留める」

 

「まったく頼もしいよ・・・」

 

横になると涙が止まらなく溢れてきた。

それをトマホークが舐めとる。

慰めてくれてるようだ。

 

「ごめんね、トマホーク」

 

「トマホークはさっきからずっとハルに謝ってるよ。心読んで悪いけど」

 

「くぅん・・・」

 

私はトマホークを頭を撫でてやっていた。

ふとエルを見ると何かを作っていた。

 

「何してるの?」

 

「ダミー」

 

「ダミー?」

 

「まだ監視してるから見てみる」

 

棒に被っていた帽子を乗せて岩から出してみた。

すると・・・

 

「・・・っ」

 

帽子のド真ん中に穴が空き飛んできた。

しっかり監視してるようだ。

 

「相当自信あるみたい」

 

「え?」

 

「私が同じ立場の狙撃手なら絶対撃たない」

 

「なるほどね・・・移動してる感じある?」

 

「無い。弾の角度も距離も全く変わらない。すこし脅かす」

 

「脅かす?」

 

エルは無線を手に取り位置を伝えていた。

 

「空爆・・・」

 

「当たるかどうかは分からない。相手が調子に乗ってるならこっちには空の目があるって教えてやる」

 

「了解、ちょっと頼むよ・・・痛くて頭回んない」

 

「大丈夫。寝てて」

 

「寝れたら苦労しない・・・うぅ・・・」

 

ちょっと動かすだけで痛い。

激痛とまでは行かなくても動かしたくないレベルで痛い。

 

「投下」

 

エルがそう短く言うと、遠くで何度も爆発が起きる。

 

「弾着。何か見える?ヘリで見て」

 

私も状況を聞くためにヘッドセットを付け直す。

 

《何も・・・煙が激しくて・・・》

 

「了解、そのまま監視して。」

 

《マヤさんマヤさん!撃っちゃえば分かりますよ!》

 

《え、う、撃つの!?》

 

《生きてれば撃ち返してきます!死んでれば撃ち返してきません!》

 

《いや、アンタ無茶苦茶言うね!?》

 

《ヒャッハー!我慢出来ねぇ!ファイア!!》

 

《ちょっと!?撃ち方止め!!》

 

《ウェポンズフリー!》

 

《撃ち方止めつってんでしょうが!!》

 

《遠回しにOKって事ですよね!》

 

《ストレートにダメだよ!!》

 

・・・アヤはどうやらトリガーハッピーなようだ。

マヤの制止は全て無視し地上に30mmの雨を振らせていた。

 

《あー・・・エル?弾薬尽きたから1回帰るね・・・というかハルは?》

 

「撃たれた。今、隣で休んでる」

 

《え!?だ、大丈夫なの!?》

 

「足を撃たれた。重傷だけど止血出来たから大丈夫」

 

《わ、分かった・・・ハル、聞こえてるよね》

 

「聞こえてるよ・・・」

 

私は涙声で答える。

 

《・・・泣いてるの?》

 

「痛くて仕方ないの。お願いだから早く戻ってきてね」

 

《分かってる、騎士団のヘリももうすぐだから頑張って!》

 

「うん、ありがと」

 

真上をアパッチが通って行った。

 

「騎士団到着まであと何分?」

 

「1時間。だけどスナイパーがどうなるか・・・」

 

その時だった。

さっきとは違う方向から岩に着弾した。

破片でエルが顔に怪我をした。

 

「ッ!!」

 

「エル!!」

 

「大丈夫、かすり傷・・・ちくしょう、移動してる・・・」

 

エルは私を引きずって移動しようとした。

 

「ダメ!!私を引きずると撃たれる!!」

 

「でもあなたを置き去りには出来ない!」

 

「大丈夫、這ってでも移動する!トマホークをお願い!」

 

「・・・分かった、私が移動した所に来て、遠くへは行かないから」

 

「分かった。スモークあるから投げるよ!」

 

「お願い!」

 

私は持ってきていたスモークグレネードを投げる。

煙幕が展開させるとすぐにエルはトマホークを抱えて移動した。

私はエルが着いた位置を確認して銃を杖にして立ち上がる。

 

「ふぅ・・・ぐぅ・・・!」

 

ちょっとでも力を入れると痛い。

だけどそんな事言ってられない。

私は出せる限りの速度で急いだ。

 

「あと・・・ちょっと・・・!」

 

あと少しでエルの位置・・・その時だった。

 

「え・・・」

 

お腹に強い衝撃。

そして口の中に血の味が広がる。

私は気づけば倒れていた。

 

「なに・・・これ・・・」

 

腹部が真っ赤に染まる。

そしてまた焼けるような痛みがくる。

 

「うわぁぁぁ!!!」

 

「ハル!!」

 

「ふぅ、ふぅ、ふぅ・・・!!」

 

「ハル急いで!!こっち!!」

 

「はぁっ、はぁっ、はぁっ・・・!」

 

腕だけで体を引きずりエルの近くに行くとエルが私を引きずり込んだ。

そこは少し坂になっていて敵方からちょうど死角になっていた。

 

「げほっ!」

 

「ハル!!お腹が・・・!!」

 

「うぅ・・・どうなってる・・・?」

 

そこに行くだけで体力を使い果たした。

 

「弾は抜けてる・・・止血しないと・・・!」

 

「げほっ!げほっ!」

 

「苦しいけど頑張って!服捲るよ!」

 

「うん・・・」

 

「大丈夫、今度は綺麗に貫通してる・・・傷口は小さい・・・」

 

私はこのまま死ぬのかな・・・。

そう思ってしまっていた。

トマホークが心配そうにこちらを見る。

まだ治癒魔法を使えるほど体力が回復していないのだろう。

悔しそうな顔をしていた。

 

「緊急!緊急!!リリアかミオ、聞いてる?!」

 

エルは無線に向かって叫ぶように言う。

 

「ハルが撃たれた!足と腹部に銃創!!救難ヘリをすぐ呼んで!!」

 

きっとリリアの事だ私に何か呼び掛けてるだろう。

倒れた時に外れかけたヘッドセットを付け直す。

 

《ハル!!お願い、死なないで!》

 

「げほっ!・・・生きてるよ」

 

《すぐにヘリが来るから!だから頑張って!!》

 

「分かってる・・・」

 

分かってはいる。

だけど・・・とにかく苦しい。

 

「止血剤・・・これで・・・!」

 

粉末状の止血剤を傷口に振りかける。

これがとにかく痛い・・・。

 

「ぐ、うぅぅ・・・!!」

 

「ごめん、痛いけど許して」

 

「だ、大丈夫・・・!」

 

その後は優しく包帯を巻いてくれた。

だが包帯はすぐに赤く染まる。

 

「お願い・・・止まって・・・!」

 

祈るように包帯を巻いていた。

 

「エル・・・いいから敵を狙って」

 

「でも!・・・いや、分かった」

 

「ここを安全化しないと・・・」

 

「・・・任せて。終わらせる」

 

エルは銃を草の隙間から覗かせる。

 

「距離も方位も分かる・・・あとは位置・・・」

 

幸い草のおかげで発見はされていない。

だが相手はゆっくり移動していたとは言え、1キロ以上先の目標を正確に射抜いた。

しかも全部命中させている。

 

「撃ってこい・・・そうすれば分かる・・・」

 

エルはそう呟きながら銃を構えた。

その時願いが通じたのか銃声が響く。

弾丸はこちらには飛んできていない。

別の目標を撃ったようだ。

 

「見えた・・・!」

 

森に銃声が響く。

エルはすぐにボルトを引いて次弾を装填した。

 

「当たった・・・?」

 

「・・・たぶん。木から何か落ちてきた」

 

「木?」

 

「木の上から狙撃してきてた。よくは見えなかったけど緑色だったからギリースーツ着てたのかも」

 

「そっか・・・」

 

「ハル、血は・・・」

 

「たぶん止まってる・・・」

 

包帯は最初に赤く染まったがそれ以上は染まっていない。

 

「良かった・・・」

 

エルは私の近くにしゃがみ込んだ。

 

「ねぇ、エル・・・ありがとね」

 

「ううん。狙撃手としての仕事しただけ。でも、相手が死んだかどうか分からない」

 

「うん・・・」

 

2度も撃たれたせいか私は今にも気を失いそうだった。

だが、痛みは全く消えていない。

おかげで気を失わずに済みそうだ。

 

「痛い・・・」

 

「痛いってことは生きてる証拠だよ」

 

「・・・まぁね・・・」

 

その時無線が入った。

騎士団のヘリだ。

 

《こちらセイバーホーク1、そちらの現在位置は?》

 

「現在位置の座標・・・」

 

エルはGPSを使って座標を伝えていた。

それから10分もしないうちにヘリは到着した。

 

「重傷だから急いで!」

 

「分かった!」

 

「あと何人か来て!それと2機目のヘリも待機してて!」

 

「どうするんだ?!」

 

「賞金首を仕留めたか確認したあと目標の教会に行く!仕事は終わってない!」

 

「了解!コブラチームが君に付く!」

 

「分かった!ハル、病院で安静にしててね!」

 

「・・・分かってる、仕事終わらせてトムキャットをよろしくね」

 

「任せて!」

 

そしてヘリは離陸した。

 

「腹部に貫通銃創と・・・大腿部に銃創!」

 

「点滴の用意だ!」

 

機内は慌ただしく私の治療をしてくれる。

 

「痛み止めを使う、眠くなるが安心しろよ!」

 

衛生兵が私に何かを注射してくれた。

すぐに私は眠くなり、そのまま意識を失った。

次に目覚めたのは病院のベッドの上だ。

 

「・・・・病院・・・」

 

「あ、起きた」

 

隣にはエルが居た。

 

「おはよ・・・」

 

「おはよ。ちゃんと仕事してきたから」

 

「・・・ありがと」

 

その後の話を聞いた。

エルはあの時賞金首の眉間をしっかりとぶち抜いていた。

結局あの賞金首は自分の腕を過信し調子に乗ったところで逆に狙撃されてしまったという事だった。

使っていたのはMk12。

その銃はエルが記念にと貰って帰ったそうだ。

そして人間至上主義教団の教会は想像通り、あの賞金首によって襲撃されていたそうだ。

あの賞金首は人を撃てれば何でもいいという考えだったらしく、とくに教会内部を漁ったりなどはしてないそうだ。

そして、教会の外に出てしまった、もしくは外にいた構成員は数人を除き、失血死だったそうだ。

全員足を撃たれ倒れているところを助けに来た仲間を狙撃、そして同じように・・・。

そして教会内にはどこから撃たれているか分からず、恐怖で閉じこもっていた司祭が居た。

エル達が教会内に踏み込んだ際、まず口にした言葉は「助かった・・・」だ、そうだ。

そのまま司祭は拘束、騎士団が連行していった。

また、教会には前と同じように地下室があり、数人のエルフ達を救出したそうだ。

そして、仕事は完遂。

おまけに賞金首を仕留めたということで多額の報酬まで貰ってしまった。

ミオのSu-30分の金額とさらにもう2機くらい買える金額が来てしまった。

当分お金には困らなさそうだ。

そして、F-14Dも受け取り、今は格納庫で整備中だそうだ。

F-14が2機・・・。

最高の気分だ。

 

「マヤ達は?」

 

「今別の仕事。というかハル。治療費知ってる?」

 

「え?」

 

「賞金首分の8割飛んだ」

 

「えぇ!?」

 

聞くとマヤとリリアが傷を残さないで!!と懇願し弾痕も綺麗に無くしてもらったそうだ。

その整形手術もあり賞金首分が無くなってしまった。

ただの手術なら大した額じゃないのだが・・・傷を無くすような整形となるととんでもない額になる。

・・・あの2人・・・

 

「まぁいいか・・・」

 

「ちなみにハルは運ばれてきてから4日は寝てた」

 

「そんなに・・・」

 

「うん。まぁでも良かった」

 

「助けられたよ・・・あの時1人だったら死んでた」

 

「それは間違いないね」

 

エルはそう笑顔で言った。

それにしても・・・もう数えたら4回は撃たれた・・・。

お腹を2回、肩と足を1回ずつ・・・。

よく生きてるものだ。

私はつくづくそう思いながらベッドに寝転がった。


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