高度20000フィートの大空で   作:イーグルアイ提督

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空輸のお仕事

「すまない、助かるよ」

 

「大丈夫。それに命の恩人だし」

 

私達は今、前に出会った駆逐艦ハルゼーの甲板に居た。

私は前回の傷がまだ完全には治っておらず、戦闘機に乗って激しい機動は控えろとの事だった。

そして今回は艦長から艦の整備部品を送ってほしいという依頼を受けてそれをブラックホークで輸送してきた。

しかし、一応海賊船と接触ということになるためなるべくバレないように飛行してきた。

途中からハルゼーが監視の王国軍機を警戒してくれていたため、まぁバレてはいないだろう。

しかしマヤは海賊船に近づく事を快く思っておらず少し不機嫌だ。

当たり前だが。

ちなみにこの後、前に警備の依頼を受けたエルフ達の街を作るために尽力しているエルフの少女、カエデの屋敷に物資輸送の依頼がありそちらにも行く。

・・・その物資はFGM-148ジャベリンを発射装置1つとミサイルを2基、何でもいいので口径7.62mm以上の機関銃2基と弾薬を2000発、カエデのメイドの1人が短く室内戦闘に適したカスタマイズのAR-15系ライフルと45口径拳銃を欲して居るということでその小銃と拳銃、あとカエデ本人が携行したいということで私が選んだ拳銃とホルスター、弾薬、マガジンポーチを持ってきて欲しいという事だった。

機関銃と小銃は艦長から報酬という形で弾薬や光学照準器などフルセットで渡してくれるそうなのでそこの調達はなんとかなった。

 

「ところで荷降ろしと給油に時間がかかる。本艦の見学でもどうだ?」

 

「どうする?」

 

「私は別に・・・」

 

「私は見たいです!」

 

「私も」

 

マヤはやはり信用できない部分があるのか警戒気味だが一緒に来たエルフのミオ、獣人のエルは艦内の見学に興味津々だった。

今回、リリアは実家に用事があるということで帰省していた。

・・・今回もいうか、対地兵装満載で。

 

「ここが本艦で最も優秀な部署だ」

 

艦長が案内してくれたのはCICという部屋。

それよりも艦内を見て至る所に書いてある英語、そしてクルー達の話す言葉を聞いて、ここだけ異世界にいるような感覚になる。

 

「すごい・・・」

 

部屋の中はレーダー等、とにかく色々な情報が表示されたディスプレイがあり、クルー達は一人一人何かを監視していた。

 

「どうだ?」

 

艦長は自慢げに聞いてきた。

さっきまで不機嫌だったマヤもCICを見て感動でもしたのか少し機嫌が治っていた。

5分ほど艦長から色々聞いていたりしていた時だった。

 

「艦長!レーダーが何かを補足しました!」

 

「何?」

 

クルーの1人が英語で艦長に話しかけた。

何か少し慌ただしくなる。

 

「何を補足した?」

 

「いえそれがまだ正確には・・・」

 

艦長がヘッドセットを付けたその時だった。

 

「ヴァンパイア、ヴァンパイア、ヴァンパイア!!」

 

「ミサイル捕捉!ミサイル高速、高高度!!」

 

ヴァンパイア。その言葉は辛うじて聞き取れた。

その後のミサイルという単語も。

たしか英語で吸血鬼という意味だったはずだが・・・ミサイル?

 

「スタンダード4基用意!ターゲットにロックオン!」

 

「スタンダード了解!迎撃ミサイル4基、発射に備えます!」

 

「ミサイルはどこから発射された!」

 

「現在解析中!」

 

「対象を識別!!対象は弾道ミサイル!」

 

「弾種はスカッドミサイルです!!核弾頭かは不明!!」

 

「弾道ミサイル、マッハ12で飛行中!」

 

慌ただしくなるCIC。

私達には何が起きているのか全く分からなかった。

ただ、レーダースクリーン上にやたらと高速で移動する赤い光点があった。

 

「ダメです!迎撃できません!!」

 

「クソっ!!艦内を封鎖!核爆発に備えろ!」

 

艦内に警報が鳴り響きアナウンスが流れた。

 

《艦内封鎖!艦内封鎖!!核爆発に備えよ!これは訓練ではない!繰り返す!これは・・・》

 

「弾道ミサイルの軌道から弾着点割り出せました!弾着まで20秒!!」

 

「ブリッジ要員、目を覆え!!」

 

艦長は電話機で何かを伝えたあと手を組んで何かを祈るように呟いた。

 

「神よ・・・救いたまえ・・・」

 

そして数十秒の沈黙の後クルーが艦長に何かを報告していた。

 

「艦長、弾道ミサイルの着弾を確認しました。核爆発は確認できてないそうです。恐らく通常弾頭かと・・・」

 

「弾着点は」

 

「ここです」

 

「こんな森に・・・?いやまて、ここの航空写真はあるか?」

 

「スクリーンに表示します」

 

スクリーンに写真が表示されると艦長は私たちを呼んだ。

 

「ここに建物があるんだが何か分かるか?」

 

「んー・・・教会・・・?」

 

マヤがそう答えた。

確かに教会に見える。

 

「教会に弾道ミサイルなんて・・・罰当たりもいい所ですね」

 

「全くだ・・・発射地点は割り出せたか?」

 

「発射予測地点の解析は完了しています。トマホーク2基を準備中」

 

「了解。すまない、発射予測地点も写真を頼む」

 

「了解です。発射予測地点は・・・この屋敷です」

 

写真に表示された屋敷。

それを見て私とマヤは思わず声を上げる。

 

「ど、どうした?」

 

「ここ・・・知り合いの屋敷」

 

「知り合い!?」

 

「えと、エルフの街を作るために頑張ってる子が居るんだけど、そのエルフの村を出る時にこれで悪い奴らと戦えって弾道ミサイルを渡されたって・・・たぶんカエデさんブチ切れて撃ったみたい・・・」

 

「艦長、たぶんそこ人間至上主義教団の教会」

 

「・・・君らの知り合いに弾道ミサイルは気軽に発射するもんじゃないって言っといてくれ」

 

「了解、言っとくよ」

 

「はぇー・・・私の同志って弾道ミサイル配備してるんですね・・・さすがです・・・」

 

ミオは何かよく分からないところに感心していた。

 

「というか、君たち今からそこに行くんだよな?」

 

「うん。物資輸送でね」

 

「了解・・・。戦術、トマホーク発射中止」

 

「了解、トマホーク発射中止」

 

「これからその座標からの弾道ミサイルについては無視でいい」

 

「無視ですか?」

 

「彼女らの知り合いで悪い連中ではないそうだ。ただし本艦上空を通過もしくは港町に着弾する可能性が少しでもあるなら迎撃する」

 

「了解です。」

 

艦長はクルーに指示を出したあと、CICの中は落ち着きを取り戻した。

 

「すまない」

 

「大丈夫だよ。それよりもういいの?」

 

「大丈夫だ。それより、もう補給は終わる頃だな。次の場所に行くんだろ?」

 

「うん。ありがと。銃まで用意してくれて」

 

「お易い御用だ」

 

艦長に案内されてヘリ甲板まで行き、ハルゼーから受け取った物資を確認して発艦した。

 

「艦長、信頼できるでしょ」

 

「まぁ・・・ハルが信頼するなら信じる」

 

「じゃあ大丈夫」

 

そんな話をしていると後ろからミオが話しかけてきた。

 

「ねぇ、ハルさん。ミサイルが落ちた地点って教会ですよね?」

 

「うん、そうだよ」

 

「そうしたら地下にまた同志が・・・」

 

「・・・あ」

 

ミオから言われるまで忘れていたが地下室にはエルフじゃ獣人達が捕まっている事がある。

・・・教会そのものに直撃していなければ地下はたぶん無事だと思うが・・・。

 

「救助・・・行けないですかね・・・」

 

「・・・マヤ」

 

「・・・行くしかないかぁ・・・位置は?」

 

「機種方位300に向けて。ここら10分」

 

「了解・・・なーんかそっちほうから煙見えるもんね・・・」

 

少し気が乗らないが行くしかない。

何せミサイルが落ちた地点だ。

地獄絵図になっているに違いない。

 

「エル、銃は撃てる?」

 

「この位の揺れなら問題ない」

 

「了解。ミオと・・・私で行くか」

 

「ハル、無茶はダメだからね!」

 

「分かってる」

 

武器はP226しかない。

弾薬はいつも通り9mmRIPなのでまぁ大丈夫だろう。

ヘリはその間にも目標に近づく。

 

「エル、何か見える?」

 

「見える。一応動くものは無いけど・・・下に降りた時は注意して」

 

「了解」

 

「ハル、あそこに下ろすよ」

 

「了解、お願い」

 

ヘリは着弾地点のすぐ傍に降りる。

爆風で木々がなぎ倒されヘリが一機降りれるくらいの広さになっていた。

また着弾地点は教会より少しズレたところにあり、爆風で教会は1部を残し破壊されていた。

そして・・・想像通りだが周りには吹き飛ばされた構成員だったものが転がっている。

 

「はぁ・・・なんか慣れてきた・・・」

 

「慣れるなんて強いですね」

 

「そういうミオは?」

 

「慣れっこです!」

 

ミオはM4を片手に笑顔でそういう。

この場所でよく笑顔が出来るものだ・・・。

 

「地下は無事だといいけど」

 

「うーん・・・生きてはいると思うんですけど・・・」

 

ゆっくりと教会に近づく。

すると近くに倒れていた構成員が小さく呻いた。

 

「うぅ・・・助けて・・・」

 

「今助けますよ」

 

ミオは助ける。

そう言って銃口を相手に向けた。

私は一瞬何をしているのか分からなかった。

次の瞬間引き金を引いた。

森の中に銃声が響く。

 

「ミオ!」

 

「どうせあの傷じゃ無理です。下手に苦しませるくらいなら楽に死なせてあげた方が優しさだと思いますよ」

 

「・・・」

 

ミオの目には感情が篭っているように見えない。

 

「すみません、私の叔父からこう教わりました」

 

「叔父?」

 

「はい、この教団に昔家族を殺されたらしくて・・・昔からこの教団には容赦するな、生かして返すなって教えこまれて・・・」

 

「・・・そっか」

 

私は仕方ないと自分を納得させて教会内に入る。

10分ほど中を捜索してみたが、偶然と言うべきかここには地下室は無かった。

近くに檻のような物もないので本当にただの礼拝所か何かだったのだろう。

ただ、周辺に武器の破片のようなものが落ちており、ここからカエデの屋敷が近いこともあるので襲撃用の拠点だったのかも知れない。

何にせよ、救助しなければならない対象が居ないなら仕事に戻ろう。

私はヘリを呼び、乗り込んだ。

 

「ふぅ、ただの礼拝所だった」

 

「良かったー・・・」

 

「カエデもさすがに分かってるんじゃないかな」

 

「だと信じたいんだけど・・・」

 

ヘリはそのまま離陸して屋敷に向かう。

屋敷の庭には空になった弾道ミサイルの発射機があった。

・・・まぁ撃ったんだから当たり前だが。

着陸するとカエデが迎えてくれた。

 

「お久しぶり!」

 

「久しぶり。言われた品は用意したよ」

 

「ありがとう!ところで、あの子は?」

 

「あぁ、ミオ?この前出先の街で出会った」

 

「へぇー!そうなんだ!よろしくね!」

 

「あ、はい、よろしくです!」

 

カエデは立ち話もなんだから・・・と雇っていたお手伝いに荷降ろしを頼み私達は屋敷の中に案内された。

 

「今街の壁を作ってるの」

 

「へぇ、調子は大丈夫なの?」

 

「うん。国王様が軍を派遣してくれてその人たちも手伝ってくれてるからね!」

 

「あの物好き国王もすごいよね・・・」

 

何せ、エルフがエルフ達の街を作る!って言った瞬間、国王は王国陸軍の戦力の1部を警備と街づくりの支援で派遣したのだから。

おかげて教団は街には全く近づけないらしい。

だからストレートに領主になるカエデを狙ってくるようだが・・・。

 

「まったく執拗いから困ったものよ」

 

「・・・で、撃っちゃったの?」

 

「あ、あはは・・・ついカッとなって・・・で、でも凄いんだよ!」

 

「何が・・・?」

 

「協力してくれてる村人さん、潜伏斥候?っていうのやるって言って教会の位置を教えてくれたんだから!」

 

村人のスキル高くないですか。

 

「まぁ、元が騎士団の偵察部隊だったって言うからね」

 

納得。

なんて話をしていたらトイレに行きたくなりカエデにトイレの場所を聞いた。

 

「あ、えと、そこの角を曲がった先だよ!」

 

「了解、ありがと」

 

私は言われた通りに進むとトイレの近くの部屋から何かが聞こえてきた。

私は興味本位に少しだけドアを開ける。

すると・・・。

 

「恥じよ!我らの同胞への殺戮を!呼ぶがいい!人の敵と!人の敵はお前らだ!」

 

・・・なんだあれ。

よく見たら椅子に教団の構成員が縛り付けられ、横にはメイドの1人が立っていた。

 

「そしてこれが、その代償だ!」

 

メイドはナイフを出し構成員の首を切ろうとした。

私はビックリして声を上げてしまった。

 

「きゃっ!?」

 

メイドは可愛らしい悲鳴を上げる。

・・・でっかいナイフを持って。

構成員は涙目でこっちを見てきていた。

 

「な、何してるの・・・?」

 

「いえ、ちょっと処刑を」

 

「ちょっとじゃないよね!?」

 

私はいくらなんでもやりすぎだと近寄る。

よく見たらビデオカメラまで用意してる。

 

「・・・これ撮ってどうするの?」

 

「教団に送り付けます」

 

「過激派冒険者みたいな事しないで!」

 

私は縛られていた構成員の近くまで行く。

・・・当たり前だが酷く怯えている。

 

「だ、大丈夫・・・?」

 

敵にかける言葉でもないが・・・。

構成員は助けて・・・と目で訴えていた。

 

「法律で無抵抗の相手に危害を加えちゃダメってなってるんだからダメだよ」

 

「はぁ、仕方ないですね・・・命拾いしましたね。私が然るべき機関に責任を持って引渡します」

 

「お、お願いね・・・」

 

私は一安心したところで尿意が増し、急いでトイレに駆け込んだ。

 

「危なかった・・・」

 

私はさっさと用を足してカエデの所に戻ると机にはケーキや紅茶が置いてあった。

 

「どうぞ食べて!あ、そうだハルさん、お願いした品は全部あったから後でお金振り込んでおくね!」

 

「うん。ありがと」

 

「あとこれ・・・使い方教えて貰える?」

 

「うん。せっかくだしいいよ」

 

カエデは私が渡した私とお揃いの拳銃、P226を片手にどう扱っていいか困っていた。

少しの間、ティータイムを楽しみ、私達は庭に出た。

エルやミオは屋敷に居た他のエルフや獣人たちと庭で楽しそうに色々と話していた。

マヤは操縦の疲れがあるので少し寝たいという事で部屋を借りていた。

そのため今日はカエデの家に1泊して明日帰るというコースにした。

 

「そうそう、そう構えて・・・」

 

「こ、こう?」

 

「うん、そんな感じ」

 

1時間ほど拳銃の扱いと射撃の練習をしていたら夕食の時間になった。

久しぶりに平和に夕食が取れる・・・。

私は安心して夕食を楽しんだ。

今日は教団が来ませんように・・・。

心の底からそう願った。

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