夕食を食べてカエデの持ってきたケーキと紅茶を楽しんでいた。
「美味しいね、これ」
「でしょ!村から送られてきたクルミを使ってみたの!」
カエデは嬉しそうに言う。
しっとりとした生地にクルミの食感がいい。
「はぁー・・・幸せ・・・」
マヤは紅茶を飲みながら幸せそうな顔をしていた。
その時だった。
エルの耳がピクっと動き、窓の外をじっと眺めていた。
「どしたの?」
「静かに」
傍に置いてあったKar98kを手に取り窓の外をゆっくりと見た。
「・・・黒いローブを来た不審者3人が門の外を彷徨いてる」
「黒いローブ・・・」
まさしく人間至上主義の連中だ。
やっぱり来た・・・。
「クソ・・・何人か入ってきた」
「今回は派手に来ないのね・・・」
カエデは襲撃に慣れてきたのかそんなことを言い出した。
「ど、どうする?」
「マヤ、ヘリでカエデとメイドを連れて脱出するよ。ヘリは裏庭だよね」
「破壊されてなければ・・・」
「分かった、行こう」
この前みたいに戦闘に長けたパーティがいる訳でもない。
脱出するのが正解だろう。
だが、なにかやり返したいのかカエデはメイドにある指示をだした。
「ハナ、マユ。貴女達の得意な事をして」
「得意な事?」
マヤはカエデにそう聞いた。
カエデは少し笑いながらこう言った。
「・・・狩りよ。2人とも、ウェポンズフリー」
「分かりました、お嬢様」
すると2人のメイドはスカートの中から集音機能のあるヘッドセット、ComTacIIを取り出して装着する。
そして私たちが持ってきた拳銃もスカートの中から取り出してスライドを引いた。
「無線チェック」
「感明よし、お姉様」
「分かった。マユ、今回捕虜は要らないわ」
「分かりました。殲滅戦ですね」
「えぇ、手加減無しよ」
初めてあった頃の2人と違う・・・。
「あはは、驚いた?」
「そりゃ前に見た時は拳銃持って震えてたのに・・・」
「あのあとお嬢様を守るために修行しました」
「はい。王国軍に鍛えてもらいました」
「あはは・・・心強い」
心強いとは言っても動きにくいメイド服に持っているのは私の渡したP226のみ。
そんな事を考えていたら・・・。
「接敵」
「後ろに」
2人は静かにそう言い私達の前に出た。
目の前の階段からは2人の教団構成員が出てきた。
「邪魔です」
素早く2発連射する。
弾丸は胸に当たり構成員の1人は崩れ落ちた。
だがもう1人は懐から古いタイプのリボルバー式の拳銃を取り出した。
「あら、銃なんて使い始めたのですね」
相手は牽制するように連射してきた。
こちらは隠れるところの何も無い廊下。
だがマユと呼ばれたメイドはそのまま前に出て射撃した。
弾は相手に命中し崩れ落ちるがマユにも2発当たった。
「マユ!」
私が駆け寄るとマユはケロッとした顔をしていた。
「え、あ、当たってたのに・・・?」
「お客様、今回の服は社交用ですので」
「はい。裏地がセラミックとカーボンの防弾仕様です」
「何その戦闘用メイド服」
「私の手作り!」
作ったのアンタかい。
カエデはドヤ顔でそう言う。
「私も1着欲しいです・・・」
ミオはこのやたら防御力の高いメイド服が気に入ったようだ。
「じゃあ作ってあげる!」
「ありがとうございます!」
カエデは乗り気のようだ・・・。
「それにしても遂に銃使い始めましたね」
姉の方のメイドのハナは射殺した教団員の拳銃を拾い上げた。
持っていたのはコルトM1848。
パーカッション式のリボルバーだ。
薬莢を持たず、マスケット銃のような銃だった。
この銃はプレミア価格でかなり高く売れる。
「ハル様」
「何?」
「あげます」
「え?おっと・・・いいの?」
ハナは拳銃をこちらに投げてきた。
「はい。小遣い稼ぎにはなるはずです」
「そりゃどうも」
銃をベルトに指して落ちないようにした。
持ち主には悪いが今月の食費にさせてもらおう。
「ハル、ここからどうするの?」
ライフルを構えて後方を警戒していたエルがそう聞いてきた。
「さっき言った通り、屋敷から一旦逃げる。でも敵の数が分からないから慎重に行こう」
「カエデさん達はどうするの?」
「ハルゼーまで・・・受け入れてくれたらだけど」
「あの駆逐艦!?ハル、一応海賊船なんだよ!?」
マヤは大きな声でそう言った。
「分かってる。でもあの人達はアメリカ海軍で海賊じゃない。信用出来る」
「まったく何がどうしたらそんなに信用出来るのか・・・まぁ、ハルがそう言うなら従うよ」
「ありがと、マヤ」
「その代わり帰ったら何か奢ってよ!」
「任せて」
そう話していると下の階の状況を見に行ったハナが帰ってきた。
「お嬢様、2階クリア。行けます」
「分かった、行きましょ!」
後方をマユとエルが警戒し私とマヤがカエデの傍で警護、ハナが先行して警戒という体制を取った。
「妙に静かね・・・」
「うん。もっといてもいいはず」
そんな事を話していた時だった。
ハナに剣を持った教団員が襲いかかる。
「っ!!」
拳銃を構えて援護しようにも動き回って狙いが定まらない。
「狙えない・・・!」
銃で敵を狙っているとハナは掴みかかっている男の股間を蹴りあげた。
「がぉっ!!」
凄い声を上げて男を跳ねる。
すかさずハナは剣を奪い取り男の後ろから胸に剣を突き刺そうとした。
だが男を刺されて溜まるかと必死に剣を抑える。
「ハナ、後ろ」
エルはそう静かに言い、ハナに近づいてきたもう1人の教団員を撃つ。
慣れた動作で次弾を薬室に送り込んでいた。
乾いた金属音が響く。
「ぐぅ・・・!ナイス……ですっ!」
ハナはそう言いながら男を転ばし馬乗りになる。
そして全体重を剣に掛けた。
しかし男と女。
教団員は何とか剣を押さえつけていた。
「っこの!!」
「あォっ!?」
ハナは剣を上から思い切り叩く。
すると剣先が浅くだが男の胸に刺さった。
「ッ!!!」
「ひィッッ!!」
2発目で更に剣は深く胸に刺さる。
男は情けない悲鳴を上げた。
そして痛みで力が抜けたのかそこからズブズブと剣が胸に入っていった。
「はぁっ・・・はぁっ・・・!」
ハナは突き刺した剣を握ったまま荒い呼吸をしていた。
彼女の額には汗で髪の毛がベッタリとくっついていた。
「ハナ、大丈夫?」
「はぁっ・・・はぁっ・・・大丈夫です・・・行きましょう」
ハナは落とした拳銃を拾い上げ、前に出た。
「そういえば、カエデさん。書類とか大丈夫なの?」
「うん!マユ、持ってるよね?」
「はい、こちらに」
マユはポケットからUSBを取り出した。
「こんなしょっちゅう邪魔されるのに紙で記録なんて残さないよ」
「あ、あはは・・・しっかりしてる・・・」
たぶんマヤも思っているだろうが、本来エルフは電気機器等は使わない部族だ。
最近は使い始めているエルフもいるが・・・。
それでも少数派だった。
だからカエデのようなエルフは珍しかった。
・・・弾道ミサイルぶっぱなすような所もだが。
「ハナ、近くにいる」
「了解しました、エル様」
エルは鼻と耳が効く。
すぐに近くの敵の気配を感じとっていた。
そして廊下を確認しようとした時、奥から2人出てきた。
「ふっ・・・!!」
ハナは振りかざされた剣を持つ手を左手で押さえ、腹に向かって数発発砲した。
「ぐぅっ!!」
教団員は呻き声を上げて倒れる。
すると倒れた奥からもう1人飛び出してきた。
手には禍々しい形をした剣が握られていた。
ハナは左手を相手に向ける。
すると手のひらに小さな魔法陣が出て一瞬だけ暗かった廊下が昼間のように明るくなるくらいの光が魔法陣から出た。
「ぐぁっ!!」
まともに光を見てしまった教団員は剣を落とし顔を覆った。
そこにハナは弾丸を叩き込む。
頭を撃たれた教団員は崩れ落ちた。
そして後ろに倒れて苦しんでいたもう1人の頭も撃ち抜いた。
「わーお・・・容赦ない」
「ハナ魔法使えたんだ・・・」
「知らなかったの!?」
「うん!今知った!」
カエデは今の今までハナが魔法を使えると知らなかったようで純粋に驚いていた。
「ふぅ・・・久々でしたが使えるものですね」
ハナは空になった拳銃の弾倉を横に吹き飛ばしリロードする。
そして近くにあった時計のドアを開ける。
「いざと言う時のために準備してて良かったです」
「え・・・そんな所にあったの・・・?」
「なんでご主人様が知らないの」
カエデはハナが時計からショットガンと弾薬を取り出す姿を見てまた目を丸くしていた。
「いえ、お嬢様に言うと遊ぶかもと思いまして」
「遊ばないよ!」
一体私達の見てないところでカエデはどういうキャラなのだろうか・・・。
そう思っていた時だった。
1階からまた教団員が登ってきた。
それを素早くハナはショットガンで撃った。
「うぇ・・・」
「・・・やりすぎ」
詰まっていたのはスラッグ弾。
直撃を受けた教団員の頭に大きな穴が空いていた、
超グロい。
「これくらいがちょうどいいんです」
ハナはシェルを再装填しながらそう言った。
1階まで降りたらあとは裏口からヘリのある庭に向かうだけだ。
「お嬢様、ここは私が守ります。ヘリに向かってください」
「で、でも!」
「勘違いしないでください、飛べるようになったらすぐに行きます。エル様、無線は繋げますか?」
「うん。大丈夫だよ」
「了解しました。飛べるようになったら教えてください」
「了解」
ハナは玄関が見える位置に陣取り外を警戒した。
私達はその間にヘリに急ぐ。
幸いヘリの近くに教団員は居らず、すぐに乗り込めた。
「マヤ、行こう」
「了解!」
「ハルさん、逃げたあとは?」
「一旦、海の上の駆逐艦に行く。そのあとそこの人にカエデの警護をお願いしてまたここに戻ってくる」
「異世界の軍隊に任せるのね!分かったわ!」
「抵抗はないの?」
「うん!それに面白いじゃない、異世界の人も暮らせる街を作るのって!」
カエデは嬉しそうにそう言った。
あの駆逐艦もきっとこの街作りを助ければ海賊船と呼ばれなくなるかも知れない。
私はそう期待した。
「よし、エンジンスタート・・・」
その時だった。
無線機からハナの声がした。
《はぁっ・・・はぁっ・・・やらかしました》
「ハナ?」
《はぁーい、人外さんと裏切り者さーん》
妙に高い男の声。
・・・捕まったか・・・!
「ハル、助けに行く」
「待って、私も行く」
「何言ってるの?!」
「見捨てれない」
「拳銃しかないのに無茶だよ!」
「ハル様、使ってください」
「え?」
マユはスカートの中からさっき渡したMk18を取り出した。
そのスカートの中どうなってるんだ。
「あ、ありがと」
「・・・お姉ちゃんをお願い・・・ハル様」
「任せて。必ず連れ帰る。マヤ、何時でも飛べるように」
「あーもう!分かったよ!無茶はダメだからね!!」
「分かってる」
ヘリを降りて警戒しながら建物に入る。
そして2階に上り庭を見渡せる位置に着いた。
《人外が人外の街を作ろうなんて考えるのが間違っているのですよ。街は人だけの物。人外は野山で暮らすべきです》
《そういうアンタらが野山で暮らすべきですよクソッタレの原始人め》
「見つけた。噴水の近く」
「確認」
エルは気づかれないようにライフルを構える。
私は階段と廊下を警戒した。
《ほら、貴方達の仲間を殺されたくなかったら出て来なさい。エルフの人外》
《お嬢様がそんな事で出てくるわけないですよ。頭沸いてるんですか?》
《うーん・・・口汚いですねぇ・・・》
《ぐっ・・・!!》
無線機から何かを殴る音が聞こえハナのうめき声のような声が聞こえた。
「・・・あの野郎ハナを殴りやがった・・・!」
エルは怒りに震えた声を出す。
「撃てる?」
「撃てない、アイツが後ろを振り向きさえすれば・・・」
その時こちらの考えが分かっていたのかハナはこう言った。
《女の子を殴ることしか出来ないのですね。それも人間の女の子を。貴方みたいな低脳蛆虫が私と遊んでくれているおかげで仲間が貴方を後ろから狙える位置に着く時間を稼げました》
《なにっ!?》
ハナを殴った男は後ろを少し立って振り返った。
射線クリア。
《ふふっ、真正面ですよバーカ》
「真正面だよ、バカ」
ハナとエルの声が被る。
それと同時にエルが発砲した。
弾丸は男の首を撃ち抜いた。
《かっ、あぁぁぁ・・・!!》
即死できずに失血と気道を損傷した事で苦しむ声がする。
《苦しんで死ね》
「ハル、行こう」
「うん」
私はエルと階段を駆け下りハナのところに向かう。
ふと周りを見ると増援の教団員が集まり始めていた。
ハナの手に巻かれていたロープを切り、ライフルを手渡す。
「ありがとうございます」
「お易い御用だよ。これで血を吹いて」
ハンカチをハナに手渡した。
「ありがとうございます・・・いたた・・・」
「鼻、大丈夫?」
「ちょっと鼻血が出てるだけです。大丈夫」
そして私達は威嚇するように発砲しヘリに逃げる。
ヘリは何時でも飛べる状態だった。
「お待たせ!」
「ハナ!」
「お姉ちゃん!」
「お待たせしましたお嬢様。ごめんね、マユ。心配かけた」
「ううん、大丈夫・・・」
それでもマユは姉のことが心配だったのか涙目で抱きついていた。
「ふぅ・・・カエデ、ここの地形を変えていい?」
「・・・いいわよ。私もそうして欲しかったわ。この屋敷を壊すのは勿体無いけど・・・」
「あの・・・ハル?何する気・・・?」
「さて、ここでクイズです」
「なに!?」
「ハルゼーに火力支援を要請したらどうなるでしょーか」
「あぁ・・・そゆこと・・・」
マヤは私の考えている事が分かったようだ。
ハルゼーはこの近くの洋上にいる。
そしてここは主砲の射程内。
私は無線をハルゼーに繋ぐ。
「こちらエンジェル0-1、駆逐艦ハルゼーへ」
無線はすぐに繋がった。
出たのは艦長だ。
《こちらハルゼー。火力支援の要請かな?》
「なんで分かったの?」
《こんな事もあろうかと無人機を飛ばしていたんだ》
「なるほど。さすが艦長」
《さて、ご注文は?》
「効力射の1番強いヤツを適当にお願い」
《了解した!戦術、主砲発射。方位角2640、射角205》
《戦術了解、主砲発射。方位角2640、射角205。撃ち方用意!撃て!!》
無線機からは何発も発射される砲弾の音がした。
《こちらハルゼー、射撃終わり。初弾弾着まで30秒》
「了解。マヤ、砲弾が飛んでくるから少し離れて」
「りょーかい!」
下を見ると教団員が何人も屋敷に突入していった。
だがそこには今から砲弾が降り注ぐ。
《初弾だんちゃーく・・・今!》
庭の噴水に砲弾が直撃し土煙と水柱が上がる。
「あぁぁぁ!!いきなりアレにぶつける!?お気に入りだったのにぃぃ!!」
キャビンではお気に入りだった噴水をまさか初弾で吹き飛ばされると思ってなかったカエデが頭を抱えていた。
その間にも砲弾は次々と着弾する。
カエデには屋敷に当たってもいいと許可を取ったがハルゼーは気を使ってか屋敷に1発も当ててこない。
それに気づいた教団員は弾着の合間を縫って屋敷に逃げ込む。
《最終弾だんちゃーく・・・今!》
《エンジェル0-1、効果を評定してくれ》
「こちらエンジェル0-1、効果は・・・今ひとつ、屋敷に砲撃の合間を縫って逃げ込まれた。屋敷を撃って」
《屋敷?いいのか?》
「家主から許可貰ってる」
《了解した。戦術、トマホーク4機用意。屋敷を狙え》
《トマホーク了解。巡航ミサイル4機に諸元入力、VLS、発射に備えます》
「マヤ、次はトマホークが来る」
「わーお・・・」
「ハル、手加減してあげて」
「する必要ある?」
「ないと思います!」
「だよね!」
私とマヤ、エル、ミオはそう言って笑いあった。
《エンジェル0-1、本艦よりトマホークが発射された。直ちに退避しろ》
「了解。マヤ、少し高度あげて」
「了解!」
さっきより高度を上げてホバリングする。
そして数十秒後、次々とミサイルが屋敷に着弾した。
屋敷は完全に崩壊し瓦礫の山になった。
「わーお・・・」
「ふふ、マヤ、そのわーおって口癖になってない?」
「え、そ、そうかな・・・」
私がそう言うとマヤは少し顔を赤くした。
《エンジェル0-1、効果評定を待つ》
「こちらエンジェル0-1、やりすぎだよ。火力支援感謝」
《ふっ、了解した。この度は本艦の火力支援サービスをご利用いただき誠にありがとうございます。次回のご利用を心よりお待ちしております》
艦長は笑いながらそう言い無線を切った。
「ね、気さくな艦長でしょ」
「ま、まぁね・・・でも、悪い人じゃないのは分かってるから。ハルを助けてくれたし」
マヤもあの駆逐艦のことを信用してきたようだった。
「それじゃ、ハルゼーに向かおっか」
「うん!よろしくね!ハルさん!マヤさん!」
「まっかせて!」
ハルゼーまでここから30分。
・・・今日は疲れた。