高度20000フィートの大空で   作:イーグルアイ提督

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遊覧飛行

「今日は暇・・・」

 

特に何もすることが無く、リビングのソファーに座りながらテレビを見ていた。

 

「いいじゃないですかご主人様!こんな日もありですよ!」

 

「まぁね・・・ふぁぁ・・・」

 

今日はリリアとマヤ、ミオは3人で街に買い物に出かけていた。

家にいるのは私とハル、エル、ルイだった。

ルイはトマホークと遊んでおり、エルは窓際でボケーっとしていた。

たぶん寝ているが。

 

「そういえばご主人様、私を戦闘機に乗せてくれる約束してくれたじゃないですか!」

 

「あ、そういえばしてたね」

 

「乗りたいです!」

 

ハルは洗濯物を畳む手を止めキラキラした目でそう言ってきた。

ちょうど、F-14Dが格納庫に届いたばかりで乗っていないしいい機会かもしれない。

 

「それじゃ、行く?」

 

「行きます!」

 

私はリリアとマヤにちょっと飛んでくると連絡し窓際で全く動かないエルに一言声をかけた。

 

「エル、ちょっと出かけてくるね」

 

「すー・・・すー・・・」

 

「・・・寝てますね!」

「寝てるね。まぁ今日は暖かいし」

 

とりあえずポンポンと頭を撫でてやると耳が少しピクンっと動いた。

可愛い。

 

「むー・・・私も撫でられたいです・・・」

 

「頭?」

 

「ここをお願いします!」

 

何を思ったのかスカートをたくし上げ始めた。

 

「本気で言ってるならミサイルに括りつけて飛ぶよ」

 

「そ、そのゴミを見る目・・・最高です・・・」

 

「・・・乗せるのやめるよ?」

 

「ごめんなさい冗談です!」

 

「・・・冗談に聞こえないんだけどね・・・」

 

あの助けた時の感じはどこに行ったのか・・・。

まぁ重傷だったのもあるが・・・。

 

「とりあえずフライトスーツは・・・私のでいっか」

 

「ご、ご主人様のスーツ・・・」

 

「・・・匂いを嗅ぐな匂いを」

 

頭を叩いて止めさせる。

 

「とにかくさっさと着替えて」

 

「わっかりました!」

 

私達はフライトスーツに着替えて、空港へ向かう。

 

「ご主人様、なんだかちょっと嬉しそうですね!」

 

「ん?なんで?」

 

「そんなオーラ出てます!」

 

「オーラね・・・まぁ実際ちょっと嬉しいよ。こんなド変態になるとは予想外だったけど助けた時にした約束が果たせるし」

 

「・・・あの時は本当に助かりました」

 

「いいよ。人助けも仕事のうち」

 

今日は受付を通さずに格納庫に向かう。

入ると私の可愛い可愛いF-14が2機並んでいた。

来たばかりのF-14Dは最初の整備を受けてピカピカだ。

 

「乗るよ」

 

「あ、はい!」

 

タラップを登ってコックピットに乗り込む。

そこからトーイングカーでエプロンまで引き出してもらった。

 

「後ろ、よろしくね」

 

「任せてください!」

 

私はエンジンをスタートさせる。

聞きなれたF-14のエンジン音・・・それもF-14Dの。

懐かしい音だ。

 

「回転数・・・よし。計器・・・異常なし。後ろは?」

 

「チェックリスト通り見ましたが大丈夫です!」

 

「了解。じゃあ行くよ」

 

管制に許可を貰いタキシングする。

今日は少し風が強い。

 

「いいお天気ですね」

 

「うん。ポカポカ。どこに行きたい?」

 

「とりあえずご主人様の飛びたい方向にお願いします!」

 

「了解」

 

念の為、空賊に遭遇した場合に備えてサイドワインダーとスパローを2発ずつ搭載してきた。

戦闘をする気は無いが、あって困るものでもない。

 

《エンジェル0-1、前方のトーネードが離陸したら滑走路に進入してください。進入後は滑走路上で一時停止》

 

「トーネード離陸後、滑走路に進入、滑走路上で一時停止。エンジェル0-1」

 

前にはトムキャットと同じ可変翼の戦闘機、トーネードが居る。

爆装を施しているので仕事だろう。

 

「ご主人様!前の戦闘機ってなんですか?」

 

「トーネード。えっと・・・異世界のイタリアって国が開発した戦闘機らしいよ」

 

「お詳しいですね・・・でもカッコイイです!」

 

「可変翼は正義」

 

なんて話してる間にトーネードは滑走路に進入、離陸した。

私達もそれに続き滑走路に入る。

 

《エンジェル0-1、離陸を許可》

 

「離陸許可、エンジェル0-1。行くよ」

 

「了解です!」

 

アフターバーナーに点火して急加速する。

速度は直ぐに離陸速度に達した。

 

「ギアアップ・・・ちょっとハイレートクライムするから」

 

「はいれーと・・・うわっ!!」

 

操縦桿を引いて約40度の角度で急上昇した。

いきなりの急上昇にハルは短い悲鳴を上げた。

 

「ご、ご主人様!びっくりしますよ!!」

 

「ふふっ、びっくりした?これから雲の上まで上がるよ」

 

そのまま上昇し、高度は25000フィートに達する。

キャノピーの上は雲のない青空。

 

「綺麗・・・」

 

「でしょ。この眺めはいつ見ても最高だよ」

 

「はい!最高です!」

 

「良かった、喜んでくれて。次は・・・どうしよ」

 

「あの、お願いいいですか?」

 

「うん、いいよ」

 

「私の・・・村に飛んでくれませんか?」

 

「村・・・」

 

ハルの居たエルフの村は襲撃を受けて壊滅していた。

だがハルはその中連れ去られ状況を見ていないのだろう。

 

「分かった。案内して」

 

「えと・・・テキサスから北東に進んだ森の中です」

 

「了解。」

 

降下して森を目指す。

 

「・・・ねぇ、村に行ってどうするの?」

 

私はどうしても聞きたい気持ちを抑えきれずに聞く。

 

「村の人に・・・祈りを捧げないと・・・です」

 

「・・・了解」

 

私はなるべく速度を落として飛行した。

ハルに言われた森は目の前だ。

 

「このあたり?」

 

「えと・・・少しだけ左に・・・」

 

「了解」

 

少しだけ左にロールしてラダーを踏む。

戦闘機はゆっくりと左に曲がった。

 

「このまままっすぐです」

 

「了解。もうちょい速度落とす?」

 

「大丈夫です!」

 

私はそのまま飛行を続ける。

すると下に開けた場所が見えてきた。

・・・壊れた建物も。

 

「・・・」

 

徹底的に破壊され、焼かれたような跡があった。

コックピットのミラーで後ろを見るとハルは手を組み祈りを捧げていた。

私も心の中で祈る。

 

「・・・ありがとうございますご主人様!」

 

「ううん。大丈夫。次はどうする?」

 

「もう満足したのでご主人様の飛びたい方向に!」

 

「了解。とは言っても・・・燃料そんなに積んでないし帰ろう」

 

燃料計は半分以下を示していた。

頃合だろう。

 

「了解です!」

 

「じゃあ帰るよ」

 

旋回して街を目指す。

久々ののんびりとしたフライトが出来た。

 

「ご主人様、今日はありがとうございました!」

 

「ううん。私も飛べて楽しかった」

 

「その、村に人にもお別れ出来たので良かったです」

 

「ちゃんと長生きして、村の人の分まで」

 

「分かってます!」

 

そして帰ったあと何か食べに行こうと話しながら飛ぶ。

するとレーダーを見ていたハルが何かに気づいた。

 

「あれ?ご主人様、なんか変な動きしてる飛行機が・・・」

 

「え?」

 

MFDを弄ってレーダーを表示する。

すると確かに右へ左へとフラフラ飛ぶ光点があった。

まるで制御不能のように・・・。

街の周波数に合わせた時に意味を理解した。

 

《離陸準備中の機体は注意してください!タンカーが緊急着陸します!》

 

《タワー!注意しろったってありゃ制御不能だぞ!!》

 

《滑走路から離れろ!!1mでも遠くに逃げろ!!》

 

遠くには黒煙を吐く物体があった。

 

「な、なにあれ・・・」

 

「給油機で火災・・・?」

 

絶望的な状況だ。

燃料満載の空中給油機・・・それで火災だ。

 

《おい・・・タンカーの尾翼なんかに噛まれてないか!?》

 

《クソッタレ!!チョッパーキラーの群れだ!!》

 

《街の防空は何やってんだ!!》

 

《そんなもんレーダーに何か写ってから起動するって知ってんだろ!!アイツらレーダーに映らない高度から入ってきやがった!!》

 

状況を理解してきた。

空中給油機はトラブルを起こして空中で火災が発生、それを見た航空機の素材が好物のチョッパーキラーは墜落を待って飛んできたのだ。

そして街に近づくと撃たれるということも学んでいたんだろう、低空で侵入してきた。

だが腹を空かした1匹が我慢できずに給油機に食らいつき群れが見つかったということだろう。

 

「ハル、レーダーに味方機は?」

 

「ち、近くには私達だけです!」

 

「クソっ・・・」

 

数は少なくても10匹、地上には民間機を含めて30機以上の航空機がいる。

翼竜からしたら宝の山だ。

オマケに街の防空網は突破されていた。

街の対空ミサイルは翼竜を相手にすることを想定されていて、あまり機動性の高いミサイルではない。

それに遠くから狙い撃ちするためのもので至近距離での使用を想定していなかった。

街には自走対空砲も配備されてはいるが・・・。

 

「今、初動で対処できるのは私達しかいない。やるよ」

 

「ご、ご主人様!?」

 

「私達の家もある。皆を守らないと」

 

「わ、分かりました!!」

 

使える武装はAIM-7スパローと機関砲のみ。

サイドワインダーは翼竜の体温ではシーカーが作動せず、最悪スクランブルしてきた味方機に飛んでいく可能性もあった。

武装は正直少ない。

だが今はとにかく戦闘機が上がってこれる時間を稼ぐ必要があった。

 

「テキサスタワー、こちらエンジェル0-1。現在街から50kmの位置にいる。翼竜を撃退する」

 

《こちらタワー、了解!現在近くには貴方の機体しか居ません!頼みます!》

 

「了解」

 

とにかく今は数を減らす必要がある。

スパローで先制攻撃しないと・・・。

 

「ハル、突っ込んだ後格闘戦になるから警戒お願い」

 

「了解です!」

 

「よし・・・やるよ。FOX1!」

 

ミサイルを翼竜にむけて発射する。

最大射程ギリギリだが翼竜なら大丈夫・・・。

そう願いながら撃った。

 

《タンカーが間もなく着陸!!》

 

《あれじゃ無理だ!!落ちるぞ!!》

 

《消防車をはやく!!》

 

空港から大きな火の玉が上がった。

・・・給油機が墜落した。

 

《滑走路上に落ちたぞ!!》

 

《クソっ!!落ちるなら場所くらい選べってんだ!!》

 

《こちら管制塔!滑走路閉鎖!上がれる機は誘導路からでも構いません!離陸してください!!》

 

《誘導路にも破片が飛散してるのに飛べってのか!?》

 

街はパニックだ。

それよりも滑走路が塞がれてしまった・・・。

最悪、この機は地上にワイヤーを引いてもらいフックで引っ掛けて降りることは出来るが・・・

この街に降りようとしている民間機はそうもいかない。

翼竜をはやく撃退して空港の安全を確保しないと。

 

「スパロー・・・命中です!」

 

「よし!もう1発!FOX1!」

 

2発目のスパローを発射した。

これでミサイルは弾切れだ。

バルカン砲しかない。

 

「なるべく節約しないと・・・」

 

バルカン砲の発射速度をLOWに設定した。

これなら普通に撃つよりは節約できる。

だが・・・中身は20mm榴弾。

撃つ場所を考えなければ・・・。

 

「ご主人様・・・1つ、いいですか?」

 

「なに?」

 

「相手が生き物なら音速で横を通過すれば・・・」

 

「音速・・・そうか・・・それなら」

 

マッハで飛ぶと機体から衝撃波が出る。

それは漁船くらいならひっくり返ったり地上の建物が損傷するレベルだ。

それを生き物のすぐ近くでやれば気絶・・・最悪内蔵を損傷して死に至るはずだ。

 

「OK、やろう。タワー、こちらエンジェル0-1。これから音速で通過します」

 

《音速!?》

 

「衝撃波で翼竜を気絶させる。そのあと対空砲で処理して」

 

《・・・了解!今は貴方達が頼りです!やれることは全てお願いします!》

 

私はスロットルを全開にして加速する。

速度はどんどんと増していった。

 

《クソっ!頼れるのはあの戦闘機しか居ないのかよ!》

 

《今あの戦闘機が俺たちが上がる時間を作ろうとしてるんだ!やれることをやれ!》

 

《大体上がった他の機体はどこで何してんだよ!!》

 

《そんなもん仕事に決まってんだろボケ!!》

 

下からはそんな声が聞こえてくる。

確かに上がった他の機体は・・・と思うが、その機体は帰ってきたところで武装と燃料が満足にあるとは思えない。

オマケに滑走路は閉鎖されてしまった。

 

「私達だけか・・・」

 

私はそう呟いた。

そんなこと言ってるうちに機体は音速を超えた。

そして狙い通りに翼竜の近くを通過した。

すると・・・。

 

《うおっ!?音速で通過しやがった!!》

 

《おい、翼竜が・・・》

 

《落ちてきた!狙え!!》

 

《エンジェル0-1!効果あり!!》

 

「了解!もう1回行くよ!」

 

《翼竜がビビって散った!今だ上がるぞ!!》

 

《本気で誘導路から行くのか!?》

 

《管制から許可だって出てんだ!行くぞ!おら、どいたどいた!!》

 

《あの野郎、マジで誘導路から離陸しやがった・・・》

 

《俺達も行くぞ!女の子だけに戦わせるな!》

 

戦闘機が何機か誘導路から離陸してきた。

だが今は頭数が増えるのはありがたい。

 

《エンジェル0-1、助けに来たぞ!》

 

《バカ助けられてんのは俺達だ!》

 

2機のF-16が離陸してきた。

だが他の機体は上がれていなかった。

だが、翼竜はあと8匹ほど。

 

《対空砲のレーダーが翼竜を補足できないってどうなってんだ!!》

 

《知るかそんな事!》

 

《乗ってるのがシルカだけに?》

 

《てめ、ぶっ殺すぞこの野郎!!》

 

《おー怖い怖い》

 

下にいるZSU-23-4からそんな声が聞こえてくる。

冗談は聞き流してレーダーが翼竜を補足できないのは少々問題だ。

目視射撃で撃つしかない。

 

《落ちてきたヤツを狙ってミンチにしてやろーぜ》

 

《どうせ上に向けて撃ったって味方機がいるんだ、その方がいい》

 

《そういう訳で頼むぜ上の飛行機野郎!》

 

《1人は女の子だがな》

 

下にいる対空砲はZSU-23-4のみ。

そもそも街の対空砲配備数は少なく、この対空砲も冒険者たちだった。

 

「なんだか・・・賑やかですね、ご主人様」

 

「こんな時だからだろうけど・・・」

 

私はある程度離れて旋回し、再度加速した。

 

「翼竜に向かって突っ込むのは結構怖いね!」

 

「ご主人様を信じてます!」

 

機体は再びマッハで翼竜の横を通過した。

翼竜は衝撃波は気を失い、地上に落ちる。

 

《なぁ・・・これ、撃たなくても死んでねーか?》

 

《あー・・・なんか曲がっちゃいけない方向に首曲がってんなこれ・・・》

 

《念の為撃っとくぞ》

 

《おぉ、これは胸が痛むね》

 

《言葉と顔が合ってねーぞ。嬉しそうな顔しやがって》

 

《サイコかよ》

 

どうやら頭から落ちたせいで首を折っているようだ。

これ、翼竜を狩るときに使えるんじゃ・・・とか思ってきた。

 

《こちらタワー、翼竜が逃げ始めました!エンジェル0-1、ありがとうございます!》

 

「ふぅ・・・良かった・・・」

 

《なぁ、そっちのパイロットさん、良かったら帰って今日の戦果を語り合おうぜ》

 

《ナンパか?ファンクラブのヤツに殺されるぞ》

 

《安心しな!俺はファンクラブの会員だ!》

 

「・・・」

 

「人気者ですね!ご主人様!」

 

忘れていたこのクソファンクラブの事を・・・。

 

《やっぱりあんたは天使だ!》

 

「・・・・・・・」

 

「わっ、ちょ・・・ご主人様!?」

 

《ん?なんでRWRが反応?》

 

「・・・遺言なら聞く」

 

《レ、レーダー照射は冗談が過ぎないか!?》

 

《ははっ!ほら見ろ!》

 

私はファンクラブがどうのこうの言うF-16の真後ろにつき、ロックオンした。

 

「ご主人様!落ち着いてください!」

 

「・・・はぁ・・・また目立つ・・・」

 

私は街を救ったのに憂鬱な気分になっていた。

 

《こちら消防!タンカーのパイロットを救助!無事だ!》

 

《こちらタワー、了解》

 

良かった・・・。

あれだけの大爆発の中生きていたのは奇跡だ。

旋回して墜落機を見ると偶然、コックピットのみが切り離されるように落ちたようだ。

そして柔らかい芝生の上をコックピットは滑って止まった。

機体は大爆発して焼け焦げていたがコックピットは無事で形を保っていた。

だから助かったのだろう。

 

「あ、ご主人様、燃料が・・・」

 

燃料警告が出ていた。

たがどうやって降りたものか・・・。

 

《こちら管制塔、エンジェル0-1、滑走路17の端にワイヤーを設置しました》

 

「こちらエンジェル0-1、了解」

 

《風はほぼ無風、着陸地点に残骸はありません、着陸を許可します》

 

「着陸許可、エンジェル0-1」

 

左旋回してフックを下げる。

ついこの間、空母に降りた。

それに比べたら地面のワイヤーは簡単なものだ。

いつもより少し手前を狙って着陸した。

 

「ふぅ・・・お疲れ様」

 

「お疲れ様でした!」

 

機体を格納庫に持っていき機体から降りたらそこにはみんな揃っていた。

 

「ハル!お疲れ様!」

 

「お疲れ様」

 

リリアとマヤ、エルが駆け寄ってきた。

 

「ただいま。とんだ遊覧飛行になった」

 

「おかげで助かったよ!意地でも上がろうとするリリア止めるの大変だったんだから!」

 

「そりゃあの状況なら上がろうとするでしょ!?」

 

「リリアはもっと冷静になるべきだったと思うけど」

 

「そういうエルが1番冷静さ失ってたじゃない!」

 

「なっ!?」

 

「あー・・・確かに、急いで家に帰ったらハルが居ないー!ってパニックになって泣いてたもんね」

 

「な、泣いてない!」

 

「トマホークに泣きついてたじゃん」

 

「あ、あれはトマホークが翼竜にビックリして・・・!」

 

私は賑やかな仲間を見て嬉しくなる。

この街を守りきれて良かった。

そう思った。

ただ、私は1つやらかした事を思い出す。

音速で何度も街の上を飛んだのだ、窓ガラスとかが大変な事に・・・。

私は恐る恐るギルドに顔を出すと窓ガラスは全て街が補償するとの事だった。

そして街の領主から直接報酬を受け取った。

ついでに街の英雄だと勲章まで渡されて・・・。

 

「ただ偶然居ただけだから・・・英雄とかでも・・・」

 

「いいからいいから貰えるもんは貰っとけ!」

 

領主は勲章を渡す側とは思えない事を言いながら勲章を押しつけきた。

おかげで目立ちたくないのに更に目立ってしまった・・・。

引っ越してやろうか・・・。

そんな事を思いながら家路に付く。

 

「ねぇ、エル?さっきの話はほんと?」

 

「え!?な、なんのこと?」

 

「私が居なくてパニックになったの」

 

「ち、違うから!」

 

「はい、これ見てハル」

 

マヤからケータイを渡され、動画を見せられた。

 

「な、なんで撮ってんの!?」

 

「リリア、押さえてて!」

 

「うぇ!?わ、私が!?」

 

マヤは動画を再生した。

 

『わぁぁぁ!!こんなときにハルどこ行ったのー!!』

 

『エルが取り乱してる・・・』

 

『翼竜が来てるのに・・・どうしよう・・・どうしよう・・・!!』

 

尻尾を垂らして耳はしょぼんとなった姿のエルが映っていた。

 

『もし翼竜にハルが襲われてたら・・・ううぅぅぅ、そんなのやだぁぁぁ!!』

 

『マヤ、あんた止めなさいよ・・・』

 

『リリアが止めれば?』

 

『あ!2人ともハルがぁぁぁぁ!!』

 

『エルが泣いてるの珍し・・・』

 

『翼竜に食べられちゃったぁぁぁ!!うわぁぁん!!』

 

・・・なんで食われたことになってんの私。

そこで動画は止まっていた。

ふと横を見ると顔を真っ赤にしてプルプルしているエルが。

 

「エル」

 

私はエルの方に行って軽く抱きしめて頭を撫でてやる。

 

「ごめんね、心配かけて」

 

「ハル・・・」

 

「ずるいですー!!」

 

「私もそんな事された事ないのにぃぃ!!」

 

「マヤは一緒によく寝てるでしょ」

 

「マヤさんもですか!?こ、こうなったらマヤさん殺して入れ替わります!!」

 

「どういうこと!?」

 

賑やかな2人は置いといて、家でそこまで私を心配してくれているのは思わなかった。

 

「まったく忠犬だね、エル」

 

「あ、当たり前でしょ・・・ご主人と決めた人に忠を尽くすんだから・・・」

 

「そっか。ありがとね」

 

エルの頭を撫でてやる。

今日は耳をペタンと伏せて尻尾はブンブン振り回していた。

 

「ずるいですぅぅぅ!!!」

 

後ろではハルがこっちを見てそう叫んでいた。

ほんと賑やかな仲間だ・・・。

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