高度20000フィートの大空で   作:イーグルアイ提督

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旅行 1

「・・・・・」

 

いつも通りの朝・・・なのはいいが一昨日の事のせいで気まずい。

あの後エルは念の為病院に連れていき検査のため1日入院した。

とりあえず命に関わるものでもなく本当にどぎつい発情期が来ただけだそうだ。

そのせいで色々とあったのだが・・・。

 

「・・・エル?」

 

「ひゃいっ!?」

 

普段のエルとは思えない声を上げた。

 

「どうしたの、そんなに私の方チラチラ見て」

 

「え、えと・・・」

 

エルはさっきからチラチラと私を気にするように見ていた。

まぁ・・・理由は分かっているが・・・。

 

「・・・もう、怒ってないし気にしてないからいいよ」

 

「そう言われても・・・・」

 

エルが見た方向には末代まで呪ってやるという目でこっちを睨みまくっているエルフのハルがいた。

ドアから顔だけ出しているがショットガンの銃口が見えている。

・・・殺る気だコイツ・・・。

 

「リリア」

 

「・・・はいはい、私がやるのね・・・」

 

パンを食べ終わったリリアが呆れた感じに立ち上がる。

そしてハルのほうに歩いていった。

 

「ハル、あんたいい加減にしなさいよ」

 

「な、なんですか!私はご主人様を見守ってるだけです!!」

 

「普通、ショットガン持ちながら見守る・・・?」

 

「守ってるんです!警護です!!」

 

「はぁ・・・分かったからこっち来なさい」

 

「な、なんでですかぁ!!」

 

リリアはハルを引っ張って行く。

 

「ち、ちくしょう!!覚えててくださいよエル!!」

 

「あんた全然見守ってないじゃないの!!」

 

「ご主人様とのチョメチョメをするのは私の特権なのにぃぃ!!」

 

「あんたホント何言ってんの!?」

 

そのあと3時間くらいハルは帰ってこなかった。

帰ってきた時は何があったのかエルに謝り倒していたが・・・。

 

「それで、今日は暇だけどどうする?」

 

「んー・・・」

 

私はどうしようと悩んでいた時だった。

マヤが1枚のチラシを持ってくる。

 

「ここ行きたい!」

 

差し出してきたのはこの国の観光地のチラシ。

オールドウエストという街だった。

この街はつい1年ほど前に作られた街で異世界の国、アメリカの昔の風景を再現した街だった。

この街が作られたのは異世界好きの大金持ちの権力者が西部開拓時代の本を読んだことから始まったらしい。

その魅力に取りつかれ、5年かけて街を作った。

そして街は居住エリアと観光用のエリアに別れており、観光用のエリアでは、その西部開拓時代の様々な体験ができるそうだ。

一般人を体験することも出来れば、ガンマンや保安官なども体験できると話題の街だった。

私もこの街はテレビで見てから1度行きたいと思っていた。

 

「いいね、どうせ滑走路直るまで仕事出来ないし」

 

「でしょ!」

 

せっかくだ、2日ほど旅行しよう。

 

「もちろん、全員でいくよね!ね、ハル!」

 

「当たり前。だから気まずそうな顔しない」

 

「え・・・」

 

旅行の話を聞いていたエルはずっと気まずそうな顔をしていた。

きっと置いていかれると思い込んでいたのだろう。

 

「まったく、被害妄想が過ぎるよ。行かないって言っても強制的に連れていくから。ね、マヤ」

 

「うんうん!拒否権無しだよ!」

 

「・・・うん!」

 

エルは元気を取り戻したのか笑顔で返事をしてくれた。

そうと決まれば早速準備だ。

普段は家事をしてくれているアヤとルイにも声をかけた。

2人とも行くと返事をしてくれた。

 

「ねぇハル。ここから街までそんなに遠くないわよね」

 

「うん。だいたい260kmくらい」

 

「じゃあちょっと提案なんだけど・・・」

 

リリアはそう言って、道中模擬戦をしたいと言い出した。

格闘戦になった時の機動を自分なりに研究していて試してみたいということだった。

それと・・・という感じでリリアは小声で一言付け加えた。

 

「・・・エル、元気なさそうだし乗せてあげなさいよ」

 

「え?」

 

「街に行くにはヘリで行くしかないでしょ。そうなるとパイロットでマヤが取られちゃうから」

 

「なるほどね・・・でもエルを乗せるとなるとあんまり激しい機動は出来ないからリリアの思うとおりの動きは出来ないよ」

 

「大丈夫、今回は空戦機動を試してみたいっていうだけだから」

 

「分かった、それじゃそうしよ」

 

ということで、今回の後席はエルに決まった。

エルに後席に乗ってもらうことを伝えると少し戸惑っていたが喜んでくれた。

 

「リリアは優しいね、ほんと」

 

「あら、どっかの誰かさんほどじゃないわよ」

 

「誰のことやら」

 

そんな話をしながら旅行の準備をした。

久々の旅行ということでみんなウキウキとしていた。

そしてお昼ご飯を皆で食べ、14時ごろに空港に向かった。

荷物を格納庫でヘリに積み込む。

私はその間にエルにトムキャットの事を教えた。

 

「えっと、これがレーダーを操作するためのスイッチ。マニュアルもここにあるから飛びながら見て」

 

「分かった」

 

「あとは途中にリリアと模擬戦するからキツくなったら言ってね」

 

「分かった、そうする」

 

「じゃあ乗り込もっか」

 

タラップを登ってコックピットに入る。

 

「カタパルトで射出される時はしっかりと取っ手に捕まっててね」

 

「大丈夫、マヤみたいにぶつけない」

 

《エル、聞こえてるよ!》

 

「事実でしょ」

 

《そうだけどさ!!》

 

エルはマヤと笑顔で冗談を言い合っていた。

前みたいに元気になってくれて良かった。

心からそう思う。

 

「じゃ、行こっか」

 

今回リリアは誘導路から離陸するつもりだった。

離陸用に用意された誘導路はカタパルトの近くにあるため、リリアが先に離陸しその後に私たちが離陸する。

どっちが先に上がってもいいのだが、誘導路に被るようにカタパルトが設置されてあるのでもし離陸のタイミングが被ってしまうと衝突の危険もあった。

まぁ、管制塔からの指示があるので大丈夫だとは思うが・・・。

 

「戦闘機なんて初めて」

 

「楽しいよ。あとで綺麗な空も見せてあげる」

 

「楽しみにしてる」

 

ゆったりとタキシングしてカタパルトに向かった。

リリアは離陸位置までまだかかるのでタキシングを続けていた。

マヤ達のブラックホークは私たちの頭上を飛び越え、先に模擬戦のエリアに向かっていった。

 

「カタパルト接続っと・・・」

 

作業員がカタパルトに接続してくれた。

あとは作業員の指示に従って翼面をチェックした。

 

「よし、異常なし」

 

チェックが終わると作業員が頭の上で拳をクルクルと回した。

出力を上げろというサインだ。

私はエンジンの出力を全開にする。

アフターバーナーに点火されると前方、後方と作業員が確認しその場にしゃがみ、左手を前に伸ばした。

すぐにカタパルトから射出される。

 

「うわ・・・っ!」

 

後ろからエルの小さい悲鳴が聞こえた。

カタパルトから離れると機体はすぐに上昇した。

 

「どう?大丈夫?」

 

「だ、大丈夫だけどびっくりした・・・」

 

確かに初めて戦闘機に乗る人があんな加速経験すればビックリもするだろう。

私はもう慣れたが・・・。

 

「さて、リリア待ちだね」

 

街を離れて少ししたところでリリアを待つ。

ゆったりと旋回しているとエルはキャノピーの外を眺めていた。

 

「街が小さい・・・」

 

「ヘリだと基本低高度だからね。どう?」

 

「楽しい、空っていいね」

 

「でしょ」

 

そう話しているとリリアのフランカーも合流した。

 

《お待たせ!》

 

「ううん、大丈夫。それじゃどういう風にやるの?」

 

《んー・・・とりあえずヘッドオンからの交差でスタートでいいかしら》

 

「いいよ。エルは大丈夫?」

 

「大丈夫、ハルに任せるよ」

 

「了解」

 

そういうわけでお互い離れて再度向き合う。

交差した瞬間開始だ。

 

「エル、準備いい?」

 

「大丈夫、監視は任せて」

 

「頼もしいよ」

 

その会話の数秒後、高速でお互いの機体がすれ違った。

 

「行くよ」

 

「上昇して反転してる」

 

「了解」

 

私は右旋回して振り切ろうとするがフランカー相手ではさすがに無理があった。

 

「後ろ!」

 

「見えてるよ」

 

私は少し減速する。

エアブレーキは開かずにスロットルの調節でフランカーに接近した。

機内には模擬戦用の機材から相手のシーカー音が聞こえてくる。

10秒以上照準に収めるとロックオンし撃墜判定となる。

 

「ハル!」

 

「分かってる。捕まってて」

 

私は操縦桿を一気に引きスロットルを全開にした。

機体は急上昇と同時に急減速する。

その機体の下をフランカーが通り過ぎた。

 

「こっちの番だよ」

 

「ハルやっちゃって!」

 

少し熱くなってきたのかエルは大きな声を出す。

初めての空中戦、すこし興奮しているのかも知れない。

 

「逃げたって無駄だよ」

 

フランカーは左へ急旋回し逃げようとする。

機動性が違うとは言え、トムキャットだって負けてない。

私はフランカーをレティクルに収めようとした時だった。

 

「!?」

 

フランカーはコブラをするように機体を立てつつ少し上昇、そのまま左にラダーを切り機体はぐるんと一回転する。

ほとんど錐揉みに近い。

急減速したフランカーを私のトムキャットは追い越してしまった。

そして錐揉みから回復したフランカーは再び後ろにつく。

 

「嘘でしょ!?」

 

私も思わず大きな声を出した。

再びシーカー音がコックピットに響く。

 

「新しい空戦機動ってこの事?!」

 

「真後ろ!」

 

「分かってる!」

 

私は今度は操縦桿を思い切り引き、機体を無理矢理失速させる。

その時に少しだけラダーを踏み、錐揉みを起こすように機体をぐるんと回転させた。

ロールする際にフランカーを見るとフランカーは機体の下を通り過ぎた。

 

「もらった!」

 

すると今度はリリアは反転し降下する。

私もそれに追従した。

 

「よーし・・・そのまま・・・」

 

もう少しでシーカーが重なる。

そう思った瞬間だった。

フランカーが降下中にコブラをするような機動を行い視界から消えた。

 

「嘘!?」

 

上を見ると上昇し反転して背後につく。

 

「あんな機動はトムキャットじゃ無理・・・!」

 

かわそうにも降下中で速度も乗りすぐには出来ない。

とにかく上昇して引きはがそうとした時だった。

ロックオンされた時の電子音がコックピットに鳴り響く。

 

「嘘でしょ・・・」

 

「ハ、ハル?」

 

「負けた。撃墜」

 

《ふふっ、どう?》

 

「負けたよ。リリア」

 

《シミュレーターで練習したかいがあったわ!》

 

「でもそんな曲芸、機体は大丈夫なの?」

 

《・・・たぶん》

 

「ちょっと・・・」

 

さっきの機動を見る限り、リリアは基本的に操縦桿を思い切り引きリミッターを解除して機動を行っている。

そんなに何回も何回もあんな曲芸飛行をしたら機体にガタが来てしまうだろう。

 

「まったく・・・ちゃんと考えてよ」

 

《わ、分かってるわよ!》

 

《ねぇー、おわったー?》

 

「あ、うん。今ね」

 

《りょーかい!ていうか、模擬戦見に来たのは良いけど、高度高すぎて分かんなかったよー!》

 

「ごめん、今度はもっと低くするよ」

 

《それはそれで危ないからいい!》

 

「どっち・・・」

 

なんて話をしながら私たちはマヤ達と合流した。

合流とは言っても速度は私たちの速いので追い抜き旋回してもう一度ヘリの近くを飛ぶ。

さすがにマヤのブラックホークを追い抜いたまま放置は出来ない。

地対空ミサイルを持った山賊からしたら低空を単機で飛ぶヘリなどいい射撃練習の的だった。

 

「あと20分くらいかな」

 

「街まで?」

 

「うん。時間的にお昼時だしまずはお昼ご飯かな」

 

《賛成!お腹空いちゃったわ》

 

《こっちも!みんなお昼したいって!》

 

「了解、それじゃ降りたらお昼だね」

 

無線では何を食べるかという話で盛り上がる。

街に到着する寸前まで話は続き、結局多数決でステーキということになった。

 

「さてと、それじゃ着陸体勢に入ろうかな」

 

「分かった、手伝うことは?」

 

「んー・・・基本は私がやるから大丈夫だよ、景色眺めてて」

 

「分かった」

 

私はエルにそう言うと着陸の準備に入る。

その間に管制から許可ももらい、あとは降りるだけだ。

 

「よし、OK」

 

私はゆっくりと機体を下ろしていく。

リリアのフランカーもすぐ隣を飛行していた。

 

「エル、念の為鳥を監視してて」

 

「了解」

 

バードストライクを起こせば下手すると大事故になる。

わざわざ近づいてくる鳥もいないが稀に旅客機がバードストライクを起こして緊急着陸をしていたので念の為に監視をお願いした。

 

「200・・・」

 

残り200フィート。

もう滑走路は目の前だ。

 

「50・・・」

 

機体は何事もなく滑走路に接地する。

そこから指定された駐機場に向かい、エンジンを止めた。

 

「ん、くうぅぅ・・・!」

 

「お疲れ様、エル」

 

「ふぁ・・・!お疲れ様、ハル」

 

ずっと座っていたからキツかったのだろう。

エルは思い切り背伸びをしていた。

 

「で、この後は?」

 

「マヤ達が来るまで待機。ターミナルで待っとくって連絡はしたからお土産でも見よ」

 

「分かったわ!」

 

先に着いた私達はターミナルに向かい、そこにある土産屋に向かった。

そこはさすが西部開拓時代を模した街だけある。

その時代の料理を再現した店や服屋、銃砲店があった。

エルは銃砲店が見たいようでずっとそっちを見ていた。

 

「エル?銃砲店行く?」

 

「え?え、いや・・・私は・・・」

 

「行ってきなさいよ、私はそこの服屋にいるから」

 

「分かった、じゃあ行こ、エル」

 

「わ、私は行くなんて・・・」

 

「じゃあ私が行きたいから行く。それでいいでしょ?」

 

「も、もう・・・分かったよ・・・」

 

しぶしぶ・・・という顔はしているが尻尾は嬉しそうに左右に振れていた。

そして銃砲店に入るとそこには最新式の銃器もあるが大半はリボルバーやレバーアクション式のライフルだった。

 

「すごい・・・」

 

エルは目をキラキラさせて眺めていた。

さっき以上に尻尾が動いている。

 

「・・・すごい・・・けどこれは何・・・」

 

私が見たのは人間が撃てる銃では無かった。

モデルはダブルバレル式のショットガンだが弾薬が何回みてもおかしい。

30x173mm弾。

A-10攻撃機の機関砲の弾丸だ。

そしてその巨大な弾を撃てるのは筋骨隆々のオークくらいだった。

魔法で自身の筋力を100倍くらいにすれば撃てるだろうが・・・。

 

「これ・・・オーク専用じゃん・・・」

 

オークと言えば山賊などが主で敵という印象も強いが、大半のオークは普通に街で暮らしている。

何しろ3m近い身長に100kgくらいなら軽々持ち上げる筋力、大口径の銃でも軽々扱う彼らは建設業や街の防衛隊で重宝されていた。

またそのため王国軍にもオークの部隊があり、基本的に敵地への殴り込み部隊だった。

 

「ねぇハル、これすごい!」

 

「どれ?」

 

エルが指さしたのはレバーアクションタイプのライフル、ウィンチェスターM1895のようだが使用弾薬は.50AE。

デザートイーグルの弾薬を使うようだ。

 

「ここの店は大口径至上主義なの・・・?」

 

私は若干引いていたがエルは楽しそうだった。

そして興奮が冷めず、エルは1つ購入することにしていた。

選んだのはコルト シングルアクションアーミー。

私も本で読んだことはあるがこの西部開拓時代に主流だったリボルバーだ。

 

「買っちゃった!」

 

「良かったね。でも、使うの?」

 

「ううん、これは飾りと射撃して遊ぶ時用だよ」

 

「そっか。でもエルが楽しそうで良かった」

 

「ハルが連れてきてくれたお陰だよ。ありがと、ハル」

 

「どういたしまして」

 

そして店を出るとそこにはヘリ組も到着していた。

 

「お待たせ」

 

「ううん、今ちょうど来たところ!エルは何買ったの?」

 

「コルトSAA。カッコイイでしょ」

 

「お、これまた渋いね!」

 

「エルさんにお似合いですね!」

 

「え、そ、そんなこと・・・」

 

「ふふ、顔真っ赤ですよ?」

 

エルは似合うと言われて少し恥ずかしくなったのか袋で顔を隠していた。

 

「よし、それじゃご飯にしようよ!」

 

「賛成、行こ」

 

私達は空港を出てステーキハウスを探す。

するとこの後行く予定だった、観光地区の目の前に1件あった。

ここで昼食にしよう。

 

「ここでいいんじゃない?」

 

「うん、私は賛成」

 

「私も!」

 

皆ここで良いということだった。

旅行にきてまだ3時間くらいだがエルも元気を取り戻し皆楽しそうだ。

どうせテキサスの滑走路はまだ治らない。

存分にこの旅行を楽しもう

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