「いやー食べた食べた!」
「食べ過ぎ」
「仕方ないじゃん美味しいんだもん!」
「マヤを乗せたら最大離陸重量に引っかかりそう」
「それは普通にひどい!!!」
旅行2日目、マヤの提案で今日は食べ歩きをした。
いつも通りというか・・・とんでもない量を食べた。
「まったく・・・んで、満足した?」
「満足である!」
「なら良かった」
「それで、もう戻る?」
「うん。戻ったらちょっと大事な話あるから私の部屋に集まって」
「大事な話?」
「超大事な話」
「ん、分かったわ。お酒もそれが終わってからね」
大事な話、それはエルの友達の救出だ。
エル自身、友達については単独でどこに居るかを調べていたそうだが昨日の悪夢を見て何か嫌な予感がしたのかもしれない。
私たちはホテルに戻り私の部屋に集まった。
「それで、大事な話って?」
「うん。エルについてなんだけど」
「ちょっと、本人いるのにいいの?」
「ううん。本人が居ないとダメ。今から話すのはエルの友達の救出だから」
「・・・どういうこと?」
私はエルから聞いた話を話す。
そしてエルがそれを補足してくれた。
「つまりは・・・あのクソッタレ共が売ったエルの仲間を救出すればいいんですね」
「ちょっとハル、言葉汚いですよ・・・!」
「いいじゃないですか。クソッタレがお似合いですよあんな連中」
「とにかくエルの友達・・・えと、ナユって子がどこに居るかを探す必要がある」
「でもどうするの?この国の法律だと奴隷なんて厳罰・・・それこそ獣人なんて死刑レベルの重罪よ?そんな奴が痕跡残さないと思うけど・・・」
「それなら大丈夫、協力を得たから」
「ハル・・・協力って・・・」
何かを察したマヤは渋い顔をした。
「たぶんマヤの想像通り。駆逐艦ハルゼーに協力をお願いした」
「やっぱり・・・」
「でも、獣人を救助ってなるとハルゼーの乗組員に国王様から恩赦が出ると思う」
「・・・あの物好き国王ならやりそうね・・・」
実際、国王は例え偶然とは言え、捕らわれていたエルフを救出し街に引き渡した山賊に罪を許す恩赦を出し、さらにその街で暮らす権利と冒険者として仕事をする権利を与えた。
「それで、ハルゼーはもう動いてるの?」
「うん。さすが異世界とはいえ一流の軍艦ってところ。何件か目星を付けてくれた」
「早いわね、まだ半日よ?」
「隠れてる奴を探し出して排除するのは慣れてる軍隊だからって言ってたけど・・・まぁ、でもとにかく捜索するのは私たちは4件」
「4件?ほかにもあるの?」
「うん。ハルゼーの乗員がのこり5件を探してくれる。それと必要に応じて艦砲とミサイルとドローンで支援してくれるって」
「ドローン?」
「無人偵察機って言ってた。たまに精霊使いが使ってる戦術妖精ってあるでしょ?」
「・・・ごめんハル、知らない」
「あら、マヤは精霊に興味無いの?」
「専門外!」
戦術妖精とは文字通り偵察等を行う戦闘支援のための特殊な訓練を受けた妖精だ。
この戦術妖精は精霊使いと視界を同期し必要なら弾着の観測や空間制圧魔法を撃ち込むための観測、航空機のレーザー誘導爆弾を誘導するために必要なレーザーと同じ周波数のレーザーを照射出来たりと戦闘を支援するために必要な事のほとんどが出来る上に音を出さない、目に見えないということで敵に発見されることなく攻撃を誘導できる・・・が、この戦術妖精はとにかく人見知りが激しく、懐いた精霊使いじゃないと全く仕事をしてくれないという欠点もある。
「とにかく、ハルゼーは偵察機を上げてくれるから敵の情報は全部分かるよ」
「なるほど!」
「・・・ほんとに分かってる?」
若干マヤに不安になるがとにかく作戦は私とエル、ミオ、エルフのハルが地上で行動する。
リリアがフランカーで近接支援、マヤはアヤとルイ、もしナユが重傷だった場合に備えてトマホークをブラックホークに乗せる。
ブラックホークはミニガンで武装して必要なら近接支援だ。
「これで行くよ。明日早速帰りたいんだけど・・・いい?」
「もちろん、ここに来るなんてあと何回でも出来るけどエルの友達はその楽しんでる間にも苦しんでるかもしれないんでしょ?それなら助ける方が先だよ!」
「マヤ・・・」
「私もマヤに同意見。どうせ遊ぶならナユちゃんも連れてきましょ」
「・・・リリア」
エルはどんどん目が赤くなり涙を浮かべていた。
「エルには貸しがありますけど、これも貸しということにしときますよ!」
「ちょっと待った、その貸しはなに」
「ご主人様とチョメチョメしたことです!」
「・・・あんた地上じゃなくて家で留守番にするよ?」
「じょ、冗談ですよご主人様!・・・でも、これは成功したら貸しですから。ちゃんと、貸しにさせてくださいね」
「分かってる」
みんな、エルの為なら協力しようということだった。
トマホークもやったるで!って顔をしていた。
していたと言うかそう言ってたらしい。
ルイから聞いただけだが。
「・・・ね、みんなやってくれるでしょ?」
「うん・・・うん・・・」
「あはは、泣いちゃった」
「違うの・・・嬉しくて・・・」
エルは顔をおおって泣いていた。
「ほら、じゃあ飲も!」
そう言ってマヤは持ってきていたお酒を出す。
「ほら、エル」
「もうちょっと待って・・・」
まだエルは涙が止まらないようだ。
私たちはエルが泣き止むのを待ってお酒を飲んだ。
明日はもうすぐにでも仕事に取り掛かろう。
そう思い私たちは寝る準備をした。
「おはよ」
「おはよ。寝れた?」
「私は。エルは?」
「ばっちり。クソ野郎を今なら月まで吹っ飛ばせる気がする」
「頼もしい限りだよ」
私より先に起きていたエルは帰り支度を済ませていた。
きっともう早く行きたくて仕方ないのだろう。
「よし、マヤたち起こして行くよ」
「了解」
他の部屋を回るともう皆起きていて準備を始めていた。
寝てると思っていただけにびっくりする。
そして皆口を揃えてエルのためだからと言っていた。
「ほんと・・・いい仲間」
「でしょ」
エルはまた少し泣きそうになっていた。
私たちはそのまま準備を終えるとチェックアウトして飛行場に向かう。
そのまま一旦帰宅して装備を整えて再び出発だ。
目標の情報は私たちのケータイに直接送られてくる。
「ところでエル、そのナユって子以外には捕まってる子は居ないの?」
「・・・分からない。あの後私も気絶させられて捕まったから・・・」
「・・・そうなんだ」
「1回捕まった後にナユと一緒に変態野郎の家に売られたんだけど、その時何とか逃げ出せて・・・でもその後また捕まって・・・」
エルは私たちと出会う1週間前の話を始めた。
〜エル〜
・・・揺れる馬車の車内。
このご時世に馬車とは洒落ている。
・・・洒落ているのは見た目だけだが。
「・・・エル・・・」
私と一緒に捕まり奴隷服を着させられたナユが不安そうにこっちを見ていた。
「・・・大丈夫、私が何とかするから」
私は自分の手元を見る。
足枷と手枷を付けられてはいるが・・・。
手枷はある程度手が動くくらいの長さの鎖で作られている。
・・・まったくこれを付けたやつに感謝したい。
これなら人ひとりの首をへし折る事くらいならできる。
「到着したらなるべく相手に従うふりをして」
「・・・・わかった」
ナユは震え声でそう言った。
そして馬車に揺られること1時間。
森の中の小さな屋敷に到着した。
下ろされて連れていかれた先にはでっぷり太った金だけは持ってそうな中年男性が立っていた。
「これが商品かね?」
「えぇ、収穫したてですよ」
「さすが獣人・・・美人ぞろいだ」
舐めまわすように私たちを見る家主。
私は目を逸らしつつ警備の数を確認した。
恐らく山賊を雇っているのだろう。
AKMで武装した男が2人・・・。
腰には拳銃もある。
何とか奪えれば・・・。
「では来たまえ。これが君たちの家だ」
そう言われ首輪に着いた縄を引かれる
「っ・・・・」
強引に引くため少し痛いが・・・。
私はこの男の首をへし折るチャンスを伺う。
そして男が私たちを部屋に入れようとした時にチャンスが訪れた。
「では警備の君たちは屋敷の周辺を頼むよ。なに、ちゃんとあとで君たちの分もある」
「頼みますよ旦那。これが楽しみで警備してんだ」
「分かってるよ、さぁ頼むぞ」
「了解しやした」
「では君たちはこっちだ」
縄を引かれて中に入る。
その部屋は見ただけで何をする気か察しがつく。
妙な薬品にムチや雑誌でしか見たことない大人の玩具などが大量にあった。
ナユはそれを見て涙目になり始める。
「さてでは・・・どちらがいいかな?」
にやりと笑い私たちを見た。
「・・・」
ナユと目が合う。
・・・警備の足音は遠ざかった。
今なら・・・殺れる。
「・・・私が先に相手する。だからナユは助けて」
「いい友情じゃないか!感動したよ!」
男は喜んだのか大きな声を出した。
そして・・・私に背を向けて服を脱ぎ始めた。
「では、君の体でまずはマッサージしてもらおうか」
上着を脱ぎながらこちらを振り返った瞬間だった。
「ふっ・・・・!!!」
「ぐっ!??!」
体格上抱きつく形になってしまうが鎖を男の首に引っ掛け思い切り引き、捻じる。
「かっ・・・がっ・・・あっ・・・!!」
男は窒息の苦しみから逃れようと体を捻った。
だが私は鎖を外れないように捻り首に巻き付けている。
そして男が私を背負い投げの容量で投げようとした時首に思い切り力をかけて体をねじった。
「おッ・・・!」
ゴキンっという鈍く嫌な音を立てて男は崩れ落ちた。
「はぁ・・・はぁっ・・・はぁっ・・・」
私は少し息を整えて首から鎖を外す。
「ナユ・・・鎖を外して逃げるよ・・・!」
「う、うん!」
私は男の上着を漁る。
すると懐のポケットからM1911と予備の弾倉1つが出てきた。
薬室に弾は無し。
私はスライドを引いて弾を装填した。
そしてそれをナユの足枷に向ける。
「ナユ、銃声が響くと警備がすぐに来る。いい、迅速に鎖を撃ち抜いて破壊するよ」
「わ、分かった!」
「足開いて!」
鎖の限界まで足を開かせる。
鎖の長さは走るのに支障が出る程度なのでそこそこ長い。
そこを撃った。
そして手の鎖も。
「ナユ!私のも!」
銃を渡し私も同じように足を開いた。
そして鎖を破壊する。
「・・・逃げるよ!」
ナユから銃を受け取り残弾を確認する。
銃に3発と弾倉の7発。
10発・・・だが山賊の銃を奪えればそれに越したことはない。
外からは走る足音が聞こえてきた。
私は部屋の入口に銃を向ける。
「旦那!どうし・・・!」
ドアを開けた瞬間に2発射撃、胸に2発の弾丸を撃ち込んだ。
私は弾倉を捨て新しい弾倉を入れる。
そして倒した山賊からAKMとトカレフを奪った。
「ナユ!トカレフ!」
「私トカレフ嫌い!」
「文句言わない!」
トカレフをその弾倉を渡す。
私は山賊のポケットからAKMの弾倉を1つ奪った。
「居たぞ!!」
廊下に出ると2人の山賊がこちらに射撃してきた。
私は壁の柱に隠れてセミオートで射撃する。
だが・・・日頃からの手入れがされていないのか弾丸は思った通りに飛ばない。
それでも当たる時は当たるが・・・。
ほぼ1弾倉を空にするころに2人の山賊は倒れた。
それを確認し警戒しながら出口に向かったときだった。
「ぬぅぉら!!」
廊下の角から銃口が見えた。
こちらに拳銃を突きつけようとして手が伸びてきていた。
それに空いてる手でAKを押さえつけてきていた。
「このッ!!」
右手で銃を持っている手を弾く。
そして思い切りスネを蹴った。
鎖がちょうどスネに当たる。
「ぐっ・・・!!」
男は一瞬痛みで目を瞑るが次の瞬間には銃を抑えていた手で顔面を殴られた。
「うぐっ!!」
私も銃を投げ捨て負けじと顔面を殴った。
そしてそのままマウントを取ろうと思い切り押した。
「ぐぅぉぉぉ!!」
「・・・・!!」
男はすごい声を上げて抵抗する。
男は倒れずに壁に背中をつけていた。
私は撃たれないように密着して銃の弾倉を外そうとする。
ちらっとその時ナユを見たが銃を構えて撃とうか撃たまいか悩んでいた。
「ふっ・・・んっ!!」
「は、なせ・・・!このクソ犬が!!」
なんとかマグリリースボタンに手が届き弾倉を外す。
その時銃口がこちらを向こうとしていた。
私は咄嗟に足を蹴る。
だがその時トリガーを引かれて1発撃たれた。
弾は肩を掠めたがアドレナリンのせいか痛みを全く感じない。
それよりも耳元で撃たれて耳鳴りがする。
私が手を離すと男は弾倉を回収し弾を込めようとしていた。
ナユが慌てて射撃するが当たらない。
私は逃がすとまずいので追いかけてタックルをする。
「このやろ!!」
今度は上手く馬乗りになれた。
何発か顔面を本気で殴ってやるが向こうも同じだ。
私も何回も顔を殴られた。
「くたばれクソ野郎が!!」
私は罵声を浴びせながら殴る。
「こっちのセリフ・・・だ・・・!!」
男は私の首に腕を回す。
位置的に気道が締まる。
「かっ・・・は・・・!」
「そのまま、大人しく・・・!!」
私はこのまま死んでたまるかと男の股間付近を思い切り蹴りあげる。
「ぐぅぅぅ!!!」
男は悲鳴を上げる。
だがその時私のお腹を本気で殴った。
胃の中の物が込み上げてくる。
「げほっ!!」
私は思わず男の上から転げ落ちる。
たがすぐ近くにAKMがあったので手を伸ばすと男は逃げようとした。
私は銃を手に取り逃げる方向に数発射撃した。
そして弾薬が尽きる。
「くそっ!!」
近くに落ちていた弾倉を拾い上げて弾倉を交換した。
「アイツだけは殺してやる・・・!!」
私はそう言って銃を持って追いかけようとしたときだった。
「エル!」
「・・・・!」
ナユに大きな声で呼ばれて我に返った。
「もういいよ、エルもボロボロなんだし逃げようよ」
「・・・うん・・・そうだね」
少し冷静になる。
すると顔が痛み始めた。
殴られたお腹も・・・。
「あの野郎・・・顔ばかり殴って・・・」
私は裏口を探しながらボヤいた。
「とりあえず村かどこかに着いたら冷やそ?」
「うん・・・あたた・・・」
口の中も何ヶ所か切れてしまっている。
これじゃ明日はきっとご飯を食べると痛いな・・・。
「あ、裏口かな・・・」
「たぶん・・・私が先に行く」
「わかった」
ドアをゆっくりと開けて外に出る。
・・・これで自由だ・・・。
私とナユは周りに誰もいないことを確認して走り出す。
「ナユ、怖い思いさせてごめんね」
「なに言ってるのさ!エルのおかげで助かったんだよ!」
「そんなこと・・・」
私たちは走りながらそんな話をする。
その時遠くから食べ物の匂いがした。
シチューのような匂い・・・人が近くにいる。
話し声や笑い声・・・規模は分からないが近くに村がある。
「ナユ・・・分かる?」
「うん、たぶん村だよね」
「行こう!」
歩きだそうとした時だった。
「いたっ・・・!」
「ナユ?」
「ん・・・んぅ・・・」
「ナユ!?」
ナユは突然力なく倒れた。
急いで確認する。
「ナユ!」
「んん・・・すー・・・すー・・・」
「寝てる・・・?」
首元に違和感を感じて見る。
すると麻酔針のような物が刺さっていた。
「麻酔!?」
銃を構えようとしたその時だった。
私にも首にチクッとした痛みが走りすぐに強烈な眠気に襲われた。
「くそっ・・・!!」
体が言うことを効かない。
倒れ込んでしまった。
狭くなっていく視界には麻酔銃を持った人間至上主義の構成員が近寄ってきていた。
「逃げれたと・・・思ったのに・・・!」
私は薄れていく意識の中でそう呟いた。
〜ハル〜
「・・・で、その1週間後くらいにハルが見つけてくれた。」
「・・・そうだったんだ・・・」
「でももう大丈夫、さっきも言ったけどハルがいてくれるから」
「うん。絶対に1人にしないよ。約束」
「私ももう二度とハルが撃たれないようにする」
「頼りにしてるよ」
「マヤに取って代われるくらいになってやるから」
「ふふ、それはどうかな。マヤが居ないと私はダメだから」
「う・・・なんかそれはそれで悔しい・・・」
空港に向かう道中でそんな話をした。
マヤはちょっとだけ私の話を聞いたのか満足気にマヤも私が居ないとダメとか言い出し、エルフのハルがハンカチ咥えて悔しがっていた。
・・・若干目が血走っていたが・・・。
でも、そんなお気楽ムードもあと少しだ。
今からハルゼーの支援の元、エルの友達を救出する。
相手はどんな奴かも分からない。
だけど、私たちならきっと出来る。
そう思いながら空港へと歩いた。