「・・・報酬分は買いすぎた」
「・・・ごめん」
「・・・いや、私も調子に乗りすぎた・・・」
王都から村、そしてそこからテキサスに帰る帰り道で私たちはコックピットで嘆く。
さすが王都というだけあって様々な店と豊富な品揃えがありしかも、物価がそこまで高くなかったので色々と買い込んでしまった。
私はふらっと立ち寄ったガンショップで滅多に出回ることの無いアサルトライフルであるAK-12、しかも従来のAKシリーズと同じ操作に改良されたいわゆるAK-12 2016verがあり購入してしまった。
弾倉も弾薬も私の74Nと同じ5.45mm弾。
さらにこの銃を作った国のホロサイトである1p87も購入した。
この1p87は普段使っているEotechと違い、流通数が極端に少ないのでかなりのレアアイテムだった。
普段は銃に対してこだわりは無かったのだが雑誌を読んでる最中に見つけたこの銃に私は一目惚れしていた。
自分でも何でかは分からないが。
「まぁでも、軍拡も大事だよね」
「オシャレもね!」
そういうマヤは銃を買った私を服屋に連れていった。
私が普段からあまり女の子らしい格好をしないからと色々と試着させられて3着ほど購入することになった。
ズボンやらパーカーやらスカートやら・・・。
まぁそのうち着るだろう。
なんて思いながら次は航空機ショップに行ってみたらF-14Dのアップグレードキットが販売してありそれも購入してしまった。
内容はF-14Dの対地攻撃能力を向上させるものだった。
近接支援のために機首のカメラを最新式のサーマルカメラにアップグレードしそのカメラが捉えた映像をHUDやHMDに投影できるようする。
また事前に攻撃する対象や機銃掃射する範囲を設定しておくとそこを攻撃できるタイミングで自動的にバルカン砲が発射される、もしくは爆弾や対地ミサイルが発射されるようになっていた。
そのアップグレードキットが約40万ドル。
服や銃を合わせると55万ドルほどになった。
「・・・まぁ必要な物だし仕方ない・・・」
《食費くらい何とかしてあげるわよ》
「まった、お父さんを脅すとかじゃないよね」
《違うわよ!!お見合い相手の人のお父様が副業で農家やってるらしくて私に食べたいものがあったら送るからいつでも言ってって言われてるのよ》
「・・・すごい可愛がられてるね」
《実の娘のようだ!って喜んでたけど》
《リリアさんリリアさん!結婚はいつですか?!》
《ぶっ!!》
「それ気になってた」
《ま、まだあの後会ってないのよ!!忙しくて!!》
「なんだ、もう愛の一晩を過ごしたと・・・」
《マヤあんたした事ない癖に何言ってんのよ!!》
「はぁ!?」
「私たちは純血だから」
《私が穢れてるみたいな言い方やめてくれない!?》
「だって実際・・・ん?」
《何?》
突然コックピットに警報がなる。
そしてMaster Cautionが点灯した。
「Master Caution」
「なんで!?あ、待って・・・やばい!」
《だ、大丈夫ですか!?》
「第2エンジン推力低下・・・外から見える?」
《いえ、煙とかは・・・》
「なんでいきなり・・・」
その次の瞬間だった。
次は第1エンジンの推力が低下し始めた。
「嘘!?第1エンジンも!?」
「なんで両方が・・・でもエンジン自体は停止してない・・・」
「ど、どうする!?」
「この高度だと滑空でもテキサスまでは・・・マヤ、操縦桿を保持してて」
「え、えぇ!?」
「落ちないように機体を支えるだけでいいから!」
「わ、分かったよ!」
私は無線で緊急事態宣言をする。
「テキサス、こちらエンジェル0-1!メーデー、メーデー、メーデー!両エンジン推力喪失!繰り返す、両エンジン推力喪失!」
《エンジェル0-1、こちらテキサス。メーデー了解。現在位置を教えてください》
「現在位置・・・テキサスから160km南!」
《了解。どこかに着陸できる空港は・・・》
「無理!今のままだと滑空してたどり着ける場所ない!」
《了解・・・乗客、乗員、貨物の量を教えてください》
「乗客と貨物は無し、乗員2人!」
《0-1、了解。草原に降りますか?》
「このままだと・・・」
《了解。救難依頼は発注します》
そう言って無線は途切れた。
そうだ・・・いくら民間機に乗ってるとはいえ、これは正規の民間機ではない。
冒険者としての仕事だ。
捜索となると依頼になってしまう。
《ハル・・・》
「ミオ、アヤはヘリ飛ばせるんだっけ」
《と、飛ばせると思います!》
「飛ばせるよ!私が教えたから!」
「分かった、ミオ!今すぐ帰ってアヤとマヤのブラックホークでここに来て!」
《りょ、了解しました!》
「リリアは警戒お願い!」
《了解、でも出来てもあと3時間よ》
「・・・分かってる」
私は必要な指示を終えて操縦桿を握る。
「ありがと、マヤ」
「う、うん・・・」
マヤはかなり怯えていた。
それもそうだ。
戦闘機と違って脱出なんて出来ない。
パラシュートも積めば使えるだろうがそれを使うために後方まで移動しなければいけないしそんなことしてる余裕もない。
不時着するしかない。
「くそ・・・なんでエンジンは回ってるのに・・・!!」
何故かエンジンは突然アイドリング状態まで戻ってしまった。
スロットルは70%の位置で止まっているのに・・・。
私はゆっくりとスロットルを戻しもう一度ゆっくりと開いた。
その時・・・
「うわぁぁ!?今度は何!?」
新たな警報音とベルの音。
火災警報が点灯した。
《ハル!!第2エンジン出火!!》
「分かってる!!マヤ、合図したら消化剤のレバー引いて!」
「ど、どれ!?」
「上のパネル!」
「あ、あった!」
「第2エンジンカットオフ・・・!引いて!」
マヤが消化剤のレバーを引く。
10秒ほど経つと火災警報が消えた。
「ふぅ・・・リリア、損傷はある?」
《見たところだと・・・エンジンが焦げたくらいね》
「了解・・・」
これだと第1エンジンも同じかもしれない。
早いところ降りてしまおう・・・。
幸い下は街まで続く草原だ。
「マヤ、ここに降りるから」
「あぁもう全部任せた!」
「・・・任せて」
私は第1エンジンも切る事にし着陸体勢に入る。
「マヤ、第1エンジンに愛着は無いよね」
「こんなクソの役にも立たないエンジンに愛着なんてないよ!!」
《酷い言いようね・・・》
「事実でしょ!!」
マヤは逃げ場がないという恐怖からか涙目だった。
「大丈夫だよマヤ、絶対に地上に下ろしてあげる」
「イケメンかよ抱いて!!」
「冗談言ってないでAPU動かして」
私は第1エンジンを停止してAPUを始動させた。
これで飛行計器は見れるしランディングギアも動かせるはずだ。
「高度3000・・・」
「ほ、ほんとに大丈夫だよね・・・」
「信じて。何があってもマヤだけは助けるから」
「やめてよ!それだとハルに何かあるみたいで・・・!」
「操縦桿を握ってる私の責任だよ」
《まったく相手が男なら即落ちよ》
「女の私でも落ちそうです!!」
「飛行機は落ちて行ってるけどね」
「笑えないよ!!」
《それは笑えないわよ!》
2人が同時にそう言った。
『2500』
2500ftの読み上げが聞こえた。
抵抗が増えるがそろそろギアを下ろそう
「マヤ、ランディングギアダウン」
「りょ、了解!」
「ブレーキは・・・使わなくていいか」
下は広大な草原。
地面の抵抗で停止するだろう。
「風も穏やか・・・行けるね」
私はいつもの何倍も慎重に操縦する。
高度はいつの間にか200ftだ。
『200』
「200・・・」
「神様・・・どうか私とハルを助けて・・・!」
『100』
「マヤ、耐ショック姿勢」
「とっくに耐ショック!」
「・・・操縦桿には頭押し付けないでよ」
「わ、分かってるよ!!」
『50』
地面がゆっくりと近づいてくる。
私は機首を少しあげてフレアの姿勢を取る。
『30』
『20』
私も衝撃に備えた。
備えたと言っても・・・心の準備だが。
『10』
10ftの読み上げの数秒後に機体の右が跳ねる。
右のメインギアが岩か何かを踏んだようだ。
機体は少しバランスを崩し強めに左から接地した。
「うっ・・・!!」
「きゃぁぁぁ!!!」
左のメインギアが地面に埋もれたのだろう。
鈍い音と共に機体は左に回転した。
たぶん左のギアが折れたようだ。
《ハル!!》
衝撃で右が浮き、左が下がる。
その時に主翼を地面に擦り付けた。
バキンっという嫌な音もする。
そして10秒ほどたった時に機体は停止した。
「・・・止まった・・・」
「うぅ・・・」
隣を見るとマヤが頭から血を流していた。
操縦桿に頭をぶつけたようだった。
「マヤ!!」
呼びかけるが応答がない。
恐らく気絶したのだろうが負傷箇所が頭だ、何が起こるか分からない。
「私は・・・大丈夫、リリア!マヤが負傷!!」
《大丈夫なの!?》
「わかんない・・・頭を怪我して意識不明!」
《了解・・・ミオ達が戻ってくるまであと2時間、私はあと2時間と30分はここを飛べるわ!》
「分かった、でも絶対に燃料で嘘はつかないで」
《分かってる、救助の手間は増やさせないわ》
私はシートベルトを外してマヤに近寄る。
機体は左に傾いてしまったので少し歩きづらい。
「マヤ・・・ごめんね、怪我させて・・・」
そう言うがやはり返事はない。
怪我の程度は頭部の打撲だけのように見えるがもしかしたら頭蓋骨を骨折している可能性もある。
ただ呼吸もあるしさっき少し呻いていたのですぐに命に関わる事はない・・・と思いたい。
「とにかく銃を取らないと・・・」
私は買ったばかりのAK-12を取る。
コックピットの後ろに置いておいて良かった。
弾がフルで入ったプラスチック製弾倉が4本・・・それと旅客機が不時着した際に備えて元から機体に搭載されていたMP7とその40発入弾倉が2本。
副操縦士と合わせて4本ある。
《・・・ハル、やばいわ》
「どうしたの?」
《どうやらここはアンデットが湧くポイントだったみたいよ》
「嘘でしょ!?」
アンデットは俗に言うゾンビだ。
何故かは分からないが死後に突然蘇り生者を襲う。
基本的に街で死亡した場合は火葬され遺骨のみを埋葬する。
だが、例えばこう言った草原で死亡した冒険者や山賊、村人などは土葬されたり放置されたりしていた。
研究では精霊・・・その中でも人を襲うような悪霊が死体に寄生し動かしているのではとなっていた。
厄介なのは頭を撃っても死なず、足を破壊することで移動できなくするか完全に遺体を焼却しないと倒すことは出来ない。
リリアのフランカーの30mmならバラバラに出来るので一撃だが、5.45mmやMP7の4.6mm弾ではそんな簡単な話ではない。
ショットガンや対物ライフルでもあれば話は別だが・・・。
「なんだってこんな場所に・・・」
《・・・ここら辺は元々墓地よ。大昔の・・・何百年も前の》
「だったら骨に・・・」
と思ったが悪霊に寄生された遺体は腐敗が止まるという事が研究で分かっていた。
おまけに異世界映画のゾンビみたいに肉を食うよりも略奪や女性を攫い強姦したりと山賊のような事をする。
犯されるのも嫌だが個体によっては人を殺すことを楽しむアンデットもいる。
それに、いくら腐敗が止まってるとはいえ何年も、何十年も草原や森を徘徊しているのだ、よく分からない病原菌やウイルスを持っていたりする。
何が嫌かというとただ略奪して帰っていくだけならいいがよく分からない病気を感染させられたらたまったものじゃない。
「くそ・・・ホントに来てる・・・」
窓の外には30体以上のアンデットが居た。
機体は傾いているせいで翼を登ればドアに到達できる。
確認まではしてないがドアが破損し開いている可能性だってあった。
「リリア!掃射できる?!」
《やってみるけど・・・あまり弾は無いわよ!》
「大丈夫!」
リリアのフランカーがゾンビの群れに2秒ほど機関砲弾を浴びせた。
その攻撃で半数以上は動けなくなっていた。
「Goodhit、いい腕だよ」
《これじゃいくら弾があっても足りないわよ・・・!》
私はコックピットの窓を開けてそこから銃を出す。
「セミオートで・・・」
私は足を狙って何発か射撃した。
だが元々貫通力の高いライフル弾。
おまけに痛覚の鈍ったゾンビだ。
1発2発では止まりもしない。
「・・・ん・・・いたッ・・・!」
「マヤ!」
マヤが目を覚ました。
頭を抑えていた。
「大丈夫?!」
「な、なんとか・・・」
「良かった・・・今、アンデットの群れがこっちに来てる・・・MP7は使える?」
「ちょっとボーッとするけど、大丈夫・・・」
「分かった。手伝って!」
弾薬を確認するとMP7の弾薬はホローポイント弾。
肉体へのダメージが高いなら足を撃てば動きも鈍るだろう。
「マヤ、足を狙って」
「わ、分かった・・・!」
応戦を始めること20分。
数は減ったが別の緊急事態だ。
騒ぎを聞きつけた山賊が寄ってきた。
「次から次へと・・・!!」
「リロード!」
マヤは完全に意識を取り戻し応戦を続けていた。
頭の怪我は思ったほど深くはないようだ。
その時だった。
コックピットのドアがドンドンと叩かれる。
「クソ!!」
私はドアに向かって射撃する。
貫通した弾丸は向こうにいた何かに命中した・・・と思う。
その次の瞬間、応射されドアを貫通した弾がコックピットに流れ込む。
「山賊!?」
「きゃぁぁぁ!!」
突然の銃撃に悲鳴を上げるマヤ。
私も負けじとドアに向けて射撃する。
その時だった。
「ぐっ・・・!?」
腹部に鈍い衝撃と焼けるような熱さ。
・・・もう経験しないと思っていた。
お腹が赤く染まる。
「ハル!!!」
「うっ・・・!!」
私は思わず銃を落とす。
そこにドアを破って山賊が2人入ってきた。
「よくもハルを・・・!!」
マヤは山賊に銃弾を浴びせた。
倒れた2人の後には山賊は居ない。
とりあえずこの2人だけのようだが・・・。
「ハル!!大丈夫!?」
「はぁ・・・はぁ・・・」
「ねぇ!!何か言ってよ!!」
「だ、大丈夫・・・」
マヤは私のお腹を押さえる。
その手はすぐに真っ赤に染まった。
山賊が持っていたのはAK-47。
7.62mm弾をお腹に食らってしまった。
痛みと気持ち悪さ、色んなものが混じって今にも気絶しそうだ。
「リリア!ハルが撃たれた!!」
《え!?》
「お、お腹から血が止まんないよ!!」
《な、なんとか出来ない!?》
「なんとかって・・・」
《今はハルの治療に専念して!!そとは私が何とかする!!》
私は息苦しさを感じ始めた。
そして血の味が口に広がり始める。
「げほっ・・・はぁ・・・はぁ・・・」
「ハル・・・苦しいよね・・・今何とかしてあげるから・・・!」
マヤは座席の後ろにあったファーストエイドキットを取り出した。
「マヤ・・・」
「今は集中させて!」
マヤは注意書きを読む。
そして大きな包帯を取り出した。
「悪いけど脱がすよ!」
「うん・・・」
出血のせいか体が怠くて仕方ない。
腕すら満足に動かせない。
私はもうこれまでか・・・覚悟を決め始める。
「マヤ・・・」
「何?」
マヤは私のお腹に止血剤を入れて包帯を巻き始める。
「・・・みんなに、ごめんって・・・」
「今そんなこと言わないで!!それにお腹に1発だけだよ!!大した事ないでしょ!!」
マヤは怒鳴るようにそう言った。
外からは爆発音が響く。
リリアが必死に戦ってくれていた。
《くそ!どれだけ居るの・・・って!今度は空!?》
リリアがそう言った時、無線が聞こえた。
《お姫様の救出に来たぜ》
《街で姫様の救助要請みて速攻飛んできたよ》
《ファンクラブ会員が役立てる最高のシチュエーションだぜ!》
そう言って私のファンクラブだと名乗る冒険者が来てくれた。
私は失いかけた意識が少し戻る。
《さて、どうしたらいい?》
《機内でハルが撃たれた!それに外は敵だらけなの!近接支援を!!》
《な、う、撃たれただと!?》
《近接支援なら任せろ!A-10の出番だ!》
遠くからはジェット音が響いてくる。
《さて、そしたら俺はお姫様を助けに行くかな》
《そんなこと言ったってお前、どうやって降りる気だよ!》
《こうすんだよ!》
《ベ、ベイルアウト!?》
《機体なんざ幾らでも買えるがハルちゃんの命はひとつだろうがよ!!》
ベイルアウトまでしてこっちに降りてくる人がいるようだ。
私は内心呆れてしまう。
機体のほうを大切にしてくれ・・・。
そう思った。
「どうしよう・・・血が・・・」
だが無情にも血は止まらない。
「マヤ・・・いいよ」
「いやだ!!」
「私が居なくても・・・マヤは大丈夫・・・」
「そんな事言わないで!!!」
マヤは私の肩を掴んで叫ぶ。
その時、さっきベイルアウトした冒険者がコックピットに入ってきた。
マヤはびっくりして銃を向ける。
「うぉっ!?バカ撃つな!!」
「ハルに近寄るな!!!」
「お、俺は助けに来ただけだ!ほら、医療バックだ!」
そう言って男は医療バックを置き何かの注射器を出す。
「これは止血剤だ、患部に直接注入すれば動脈出血も止めれる」
「ハ、ハルは助かるの・・・?」
「もし助からなかったらそれで俺を撃て」
マヤは銃を下ろし男の前から退けた。
「その可愛い下着姿、こんな時に見たくなかったよ」
「げほっ・・・!どんな時だろうが・・・見せない・・・よ・・・はぁ・・・はぁ・・・」
「・・・かなり失血してるな・・・マヤちゃん、輸血バック取ってくれ!」
「だ、誰がマヤちゃんだ!!」
「いいから早く!」
マヤはそう言われて輸血バックを取る。
「ちょっと待った、なんで全部ハルの血液型なの」
「こんなこともあろうかと調べて保管しておいたのさ!」
「・・・げほっ!!・・・変態・・・」
「今罵られても嬉しくないから元気になってから言ってくれ!」
そう言って男は私のお腹の包帯を優しく取り注射器を銃創に入れた。
「少し痛いぞ」
そう言って薬を注入するが少しなんてもんじゃない。
撃たれた時と同じくらい痛い。
「ぐぅぅぅぅ・・・!!!」
「暴れるな・・・!今薬で強制的に血管が締められてるんだ!」
「はぁっはぁっはぁっ・・・!!うぅっ・・・何が少し・・・だよ・・・!」
「痛いって言われて打たれる注射よりはいいだろ」
「あの・・・ハルは・・・」
マヤは心配そうに私を見て言った。
「ひとまずは大丈夫だが・・・それまでの失血が酷い、急いで病院に運ばないとな・・・」
「・・・うん・・・」
《クソっ!山賊ども、やたらと護衛の多い旅客機だからお宝あると思って大量に来やがる!!》
《A-10で掃射できないの!?》
《無理だ!あいつら散開してるせいで効果的に攻撃できない!》
《そんな・・・!でも・・・絶対にハル達を守るから!》
「頼もしいよ・・・リリア・・・」
《その声が聞けたから余計に頑張れるわよ、ハルも頑張って》
「げほっ!・・・・うん、分かってる」
そう答えるが、痛みと気持ち悪さで頭がクラクラする。
目の前もチカチカする・・・。
「ハルちゃん、これ借りるぞ」
そう言って私を助けてくれた人はAK-12を持った。
「うん・・・使って・・・けほっ・・・」
《こちらノーマッド。ブラックホーク3機で墜落地点に接近中。お姫様の状態はどうだ?》
《ずいぶんと早いな!》
《なに、飛ばしてきたのさ!》
《ハルさん!もうすぐヘリが到着します!》
「了解・・・けほっ・・・うぅ・・・」
《ど、どうしたんですか!?》
《ハルが撃たれた、今容態は安定してるけど急がないと・・・》
無線のやり取りを聞いている時だった。
無傷で機体に近づいていた山賊が機内に入ってくる。
「来やがった!!」
「ハル!」
マヤは私を引っ張って遮蔽物の後ろに隠してくれる。
「クソ!元気な山賊だなオイ!」
「リ、リロード!」
「あいよ!カバー!」
激しい銃撃戦が機内で起きる。
壁を貫通した弾丸が何発もコックピットに入ってきた。
その時だった。
「あっ!?」
「大丈夫か!?」
「だ、大丈夫・・・!」
「マヤ・・・!!」
貫通した弾丸がマヤの足に当たった。
「クソッタレども・・・可愛い女の子2人も怪我させやがって!!」
「うぅ・・・撃たれるってこんなに痛いの・・・?」
「だ、大丈夫・・・?」
「ハルよりは大丈夫だよ・・・!」
そう言って銃を敵に向けようとした。
「ぐぅっ!?」
「え・・・?」
さっきまでAKを持っていた男が倒れた。
・・・頭から血を流して。
「そ、そんな・・・!」
私は何とか体を動かして倒れた男から拳銃を取る。
「・・・ごめんなさい・・・借りるね」
ゆっくりと近づいてくる山賊に向けて発砲した。
人数は3人。
「くそ!まだ生きてやがる!!」
「殺すな!相手は女だ!」
機内は絶望的な状態だ。
「マヤ・・・」
「ま、まだやれる・・・!」
銃を構えた時、マヤは腕に被弾した。
「あうっ!!」
「マヤ!」
「ぐぅぅ・・・!!」
低い声を出して痛みに耐えるマヤ。
私は撃たれた痛みも忘れるほどの怒りに襲われた。
絶対にマヤを撃った奴を許さない・・・!!
「殺してやる・・・!!」
そう言って銃を向けようとした時、突入してきた山賊のひとりに腕を蹴られた。
銃を落としてしまう。
「あっ・・・!」
「おら大人しくしろ!!」
「やめ・・・!やめて!!離して!!」
コックピットに入ってくる山賊。
もう何されるかなんてお察しの状態だった。
私は満足に動くことすらできない。
「へへ、こりゃ久々の上物だな」
「外の連中には悪いが先に味見させてもらおうぜ」
「離して!離せ!!この野郎!!」
「おいおい、そんな動くと怪我が広がるぜ」
1人はマヤを押さえつけ、もう1人が服を脱がそうとしていた。
「マヤ・・・」
私はそれを見ることしかできない。
1人が私の服を脱がそうとしてきたが抵抗する体力なんて無かった。
「・・・ごめんね・・・」
「お、どうしたお前は大人しいな」
私もマヤも下着まで取られ、もう終わりだと思った時だった。
コックピットの窓ガラスにクモの巣状のヒビがはいり、私を襲おうとしていた男が首から血を吹き出して倒れた。
そして立て続けに3発の弾丸が撃ち込まれ山賊は全員射殺された。
《・・・ターゲットダウン》
無線機からは聞きなれた声が聞こえる。
あたりが静かになるとヘリの音が聞こえていた。
いつの間にかヘリが到着していたようだった。
そしてその1機が状況に気づき、コックピット内を狙撃したようだった。
《ハル、マヤ。お楽しみのところごめんね》
「な、何が・・・お楽しみだよぉ・・・!」
マヤは泣きながらそう答えた。
「エル・・・来てくれたんだ・・・」
《うん、病院から帰ってる時にファンクラブの人に連れ去られた》
「ふふっ・・・なにそれ・・・けほっ・・・」
《すぐ回収して病院まで運ぶから》
その数分後機内に何人もの人が入ってきた。
私とマヤを担架に乗せてヘリまで運んでくれる。
この戦闘で私たちを助けてくれた勇敢な冒険者が1人死んでしまった。
名前も聞く前に・・・。
だけど、彼のおかげで私とマヤはこうして生きて帰れた。
後で必ず調べて彼のお墓には行こう・・・。
そう思いながらヘリの機内で墜落した767を眺めていた。