「魔法がすごいのか医学がすごいのか・・・」
「私はどっちもだと思うよ」
あの事故から1週間、傷も完全に治り家へと帰ってきた。
私たちが知らない間にリリアが医者に膨大なお金を払って傷跡を残さないようにしてくれていた。
リリアは大したお金じゃないとは言ってくれたが・・・。
「撃たれた跡なんて残ってもないし・・・」
「この手の医療魔法って確か結構お金かかったよね・・・あはは・・・」
2人揃って傷跡なんてキレイさっぱりだ。
まぁ・・・傷跡がキレイさっぱりなのはいいが、とにかく今はお金が無い。
結局あの767は廃機になってしまった。
廃機・・・というか、私たちが救助されたあと、機内を探索していた山賊が金目のものが無いことに怒り銃を乱射した結果、燃料に引火して全部燃え尽きてしまった。
そのせいでなんでエンジンが壊れたのかも分からず仕舞いだった。
そして一応借りた機体であった為におじさんへの弁償が必要となってしまった。
それでもおじさんは馴染みだからと、一応金は取るが50万で良いとのことだった。
「どうする?お金も無いし・・・」
「何かいい依頼でもあればいいんだけど・・・」
2人でそう悩んでいると、エルがコーヒーを飲みながら1枚の紙を出てきた。
「なにこれ」
「依頼書。結構ハル好みだと思うけど」
「私の好み?」
私は依頼書を手に取った。
内容は指定空域のCAP。
報酬は200万ドル。
CAPにしてはいい方だ。
依頼内容の指定空域は近くにストロベリーという名前の小さな街がある空域だ。
そしてこのストロベリーに対して金を払わなければ攻撃すると匿名の脅迫が届いたそうだ。
また若くて美人の女数名も引き渡せとの事だった。
恐らくこの街がこういった連中に狙われた理由はジェット戦闘機が離発着できる飛行場を持っていない事だろう。
飛行場・・・というよりはヘリポートしか無かった。
そのため、運航しているのはヘリコプターのみだった。
稀に給油や休息のためにVTOL機が立ち寄るらしいが。
「なるほどね・・・」
「防空なら好みの仕事じゃない?」
「まぁね。守るのは好きだよ」
「その守るのは好きって言葉ちょっと録音させて」
「マヤは何言ってるの・・・」
「ケータイの着信音にしたい!」
「アホか」
なんて話をしながら依頼書を見ているとリリアとミオが買い物から帰ってきた。
「ただいま」
「おかえり。仕事の依頼あるけどどう?」
「仕事?」
そう言ってリリアは依頼書を見る。
「指定空域のCAP・・・」
「どう?私1機じゃキツイから」
「いいんだけど・・・私のフランカーは飛べないし・・・」
「飛べるのは私のフランカーだけですね」
「複座は?」
「ハルのを使うってこと?」
「うん。F-14BとX-02Sならあるけど」
「でもWSOが・・・」
「それならド変態の方のハルが使えるよ」
そう言った途端どこからともなくハルが出てきた。
「ご主人様からのド変態扱いはご褒美なのです!それで、呼びました?」
「・・・呼んでないと言えば違うけど・・・」
内心呼ばなきゃ良かったと思ったのも本心だ。
とりあえず私はハルにWSOの件を伝えた。
「いいですよ!トムキャットなら前乗りましたし!」
「あぁ、そういえば」
いつだったかハルを乗せて飛んだ事を思い出す。
その時に一通りの操作を覚えてくれたのでなんとかなるだろう。
「どうする?」
「んー・・・じゃあ私も行くわ」
「了解。それじゃ準備して行こう」
「今から!?」
「善は急げ。それよりもこの街、脅迫されてるみたいだし」
「ちょ、ちょっとだけ待って!」
リリアはそう言って自分の部屋に戻る。
10分ほどで準備したリリアが出てきた。
「お待たせ!」
「じゃあ行こ」
空港へと急ぐ。
今回はもしかすると防空戦闘の可能性があるのでAIM-54、フェニックスを積んでいこう。
せっかくだ、昔買ったアクティブホーミングタイプのフェニックスを持っていこう。
それを私とリリアのトムキャットに4発ずつ。
ミオはR-77とR-73を積んでいくみたいだ。
依頼書によると地上から敵が来た場合は対戦車ヘリと戦闘ヘリで対処するそうだ。
「ろくでもないのが飛んでこなきゃいいけど」
「ろくでもないのが飛んでくる以前に何も飛んでこないのが1番ありがたいけどね・・・」
「まぁ確かに」
依頼内容としては金の支払い期限である今日を上空から街を警護し夜が明けたら依頼は完了という感じだ。
そのため最低でも12時間以上飛び続ける必要がある。
近く・・・それでも300kmは離れているが、空中給油機が飛んでいる空域がある。
そこまで行けば燃料補給は可能だが・・・。
「トイレと食事だね・・・」
「それ。近くに街があるにはあるけど・・・」
近くにある街、ラズベリーはちゃんとした飛行場が整った街ではあるのだが、存在する場所が非常に高所で街自体が山を削って作っている。
さらに雲が発生しやすく悪天候や乱気流が発生しやすい上に飛行場自体も着陸寸前まで滑走路が山に隠れて見えない。
非常に着陸の難しい飛行場だった。
一応、雲の中でも視認出来るくらい強力な光を放つストロボが滑走路までの道案内に設置されていたり、管制塔の精霊使いが精霊が滑走路まで誘導してくれはする・・・が、この精霊は基本的に民間機に使っていてよほど暇な時でなければ冒険者は誘導してくれない。
そのため、頑張ってストロボを目印に降りてこいということだった。
「ラズベリー・・・」
「名前だけならいい街なんだけど・・・」
「あら、名前だけじゃなくていい街よ。あそこに降りてくる人少ないから降りてくる人にはすごい温かいし」
「そうじゃなくて着陸の難易度」
「まぁそうね・・・何だかんだストロボも雲の中じゃ地表スレスレに降りてこないと視認できないみたいだし」
「だいたいどれくらい?」
「確か電波高度計で200ft」
「・・・結構低い・・・」
「実際怖かったわよ」
「行ったことあるの?」
「1人で飛んでた時に、仕事でね」
「じゃあ今日の1番機はよろしく」
「なんでよ!」
「だって初めてだし」
「着陸時は私が先頭に立つからハルがやってよ!」
「・・・そんなに1番機は嫌か・・・」
まぁいいや、と思いながら格納庫へ急ぐ。
依頼を受けるという申請はエルにお願いしておいたので私たちはすぐに機体に向かった。
その時におじさんに武装のお願いをする。
「おう嬢ちゃん!怪我は大丈夫なのか?」
「なんとかね。武装のお願いをしたいんだけど」
「お、なんじゃなんじゃ、好きなの乗せてやるぞい!」
「そしたら私とリリアにAIM-54、あの前買ったアクティブホーミングタイプを」
「あぁあれな。1回も使ってなかったじゃろ」
「忘れてた。いい加減使わないとね」
「了解じゃ!ていうか、リリア嬢ちゃんは何に乗るんじゃ?」
「私の14B。フランカーはまだでしょ?」
「まぁの。派手にギアへし折ってるからのぅ・・・」
「うぐ・・・」
リリアはランディングギアをへし折ったという言葉を聞いて小さく呻いた。
格納庫の奥にはジャッキで持ち上げられたフランカーの姿があった。
「他の武器はどうするんじゃ?」
「9Xって使えたっけ」
「あぁ、14Dのほうならの。ワシが勝手に弄り回したからの!はっはっは!」
「勝手にはやめて欲しかったんだけど・・・14Bは?」
「ソフトウェアさえアップデートすれば使えるぞぃ、HMDにも対応させれるように改造されてるからの」
「んじゃ、そっちもお願い」
「了解じゃ!何発ずつ積むんじゃ?」
「私は9Xを2発、スパロー2発、胴体下に54を4発かな」
「了解じゃ!ちなみにリリア嬢ちゃんの14Bはどうする?」
「AMRAAMってどうだっけ」
「それもソフトウェアさえアップデートすれば大丈夫じゃよ」
「じゃあリリアにはスパローの代わりにAMRAAMで」
「え、いいの?ハル」
「アクティブホーミングのほうがいいでしょ?」
「まぁ・・・そりゃね」
「じゃあそっち」
「ありがと!」
スパローに比べたらアムラームのほうが値段は高いがそれでも1発2万ドル程度。
大してお財布に影響もない。
「じゃあちょっとコーヒーでも飲んで待ってろ!」
おじさんは早速作業に取り掛かる。
「ねぇハル、そういえばラズベリーってお菓子が美味しい街だよね」
「確かね。ベリー系タルトが絶品だとか」
「帰りに寄りたい!」
「いいわね!私も行きたいわ!」
「私もです!」
「んー・・・まぁいいんだけど、天候次第かな」
ほぼ1日飛んで降りる気力が残っていれば・・・だが。
ただでさえ難しい飛行場にクタクタで降りなければならない。
それに編隊機だって降りれるか分からない。
「準備も終わったみたいだし行こっか」
機体に武装や燃料が積み込まれた。
増槽も満タン、それでもなるべく節約して飛ぼう。
「リリア、戦闘時以外はなるべくアフターバーナー禁止で」
「燃料カツカツになるものね。了解」
分かれて機体に乗り込む。
「マヤ、今日はマヤの腕にかかってるから」
「任せて!たとえ虫でも見落とさないから!」
今回はF-14が目となって全ての兆候を警戒する。
攻撃はミオのフランカーだ。
ミオは自分で買っていたハードポイントに搭載出来るボックス型の兵装庫を搭載していた。
重量の関係で2つしか詰めないが、中には4発のAIM-120かAIM-7が搭載出来る。
R-77やR-73と合わせて10発以上のアクティブホーミングミサイルを積んでいる。
こっちにもフェニックスがあるし、可能な限り先制攻撃で撃破したいところだ。
「それじゃ、行くよ」
エンジンを始動してタキシングする。
街はここから約1時間。
補給地点のラズベリーまではストロベリーから20分・・・。
今日は長い1日になりそうだ。
《エンジェル0-1、離陸を許可》
「離陸許可、エンジェル0-1」
加速して離陸する。
目的の街はここから1時間と30分ほど。
そこからは補給以外は降りることなくずっと空中待機だ。
「マヤ、食べ物は大丈夫?」
「チョコレートにジャーキーにスナックもあるよ!」
「お菓子ばっかじゃん・・・」
「お腹には溜まるし!」
「・・・行きに食べすぎないでよ」
「分かってる!」
《隊長!おやつにバナナは入りますか!》
リリアの14に乗っているハルからそんな無線がくる。
「ちょっとまった、なんの話」
《行きがけは遠足みたいなものですよ!》
《今日は天気もいいですから、確かに行きは遠足気分ですね》
「まったく・・・調子乗って後で食べる分がないとか言わないでよ。みんな複座なんだし」
《大丈夫よ、特に私はしっかり管理してるから》
《私はご主人様に何もかも管理されたいです!!むしろ監禁されたい!》
「リリア、地下室作って閉じ込めたいんだけど手伝って」
《いいわよ。出口も塞ぐ?》
「そのまま埋葬する」
《処刑はやめてくださいよ!!》
「死ぬまでは監禁だよ」
《せめて!せめて!ご主人様も一緒に!》
「・・・なんで私も死ぬ事になるの・・・」
賑やかな話をずっとしながら目的地に向かって飛ぶ。
その時だった。
《ん・・・あれ?》
「どうしたの、ミオ」
《警告灯が・・・えと、油圧系に点灯しました》
「何か操縦に異常はある?」
《今のところは・・・念の為、降りたいです》
「分かった、けど近くってなるとラズベリーになるけど・・・大丈夫?」
《うーん・・・異常が出てる機体で難しい飛行場に挑戦するか遠くてもテキサスまで戻るか・・・》
《ハル、ラズベリーまで私が連れて行って誘導するのはどう?》
「リリアは行ったことあるんだもんね」
《えぇ、その後戻ってくるわ》
「了解。じゃあ任せるね」
《任せて。ミオ、私が連れてくから》
《了解です、でももし操縦不能になったらベイルアウトしますので》
「その時は仕事中止してでも助けに行くよ」
《頼もしいです!それじゃ、点検と整備終わったら戻ります!》
そう言ってフランカーとF-14Bは離れていく。
「1機だけ・・・か」
「まぁほら、最初の頃だってそうだったし!」
「まぁね・・・」
その頃に比べたら練度も上がってるし装備も良くなっている。
だが、そうは言っても弾が無くなればただの飛行機だ。
どれだけ頑張っても戦闘機相手なら6~8機が限界だ。
それ以上は対処出来ない。
単機でそれだけ撃墜できればいいのだが・・・。
それにこの計算はミサイル全てが命中し1発で撃墜出来てる前提だ。
「今から悪いことは考えないようにしよ・・・」
「悪いことって?」
「あ、ごめん、聞こえてた?」
「そりゃ無線が繋がってるし」
「不安にさせてごめんね」
「ううん、大丈夫。それよりどうしたの?」
「大した事・・・いや、大した事なんだけど、私1機の状態で戦える数を考えてた」
「・・・そっか・・・いつ帰ってくるか分からないもんね」
「うん。なるべく敵機が来たらビビらせて追い返そうかなって」
「そうだね!無理に攻撃する必要ないし!」
今私が考えているのが、もし敵が明らかにこちらより格上の機体でもない限り背後に食いつきロックオンしたままにする。
それもなるべく至近距離でだ。
そうすれば撃たれるとまず回避できないという恐怖心を与えられる。
そしてさらにロックオンを続ける事でいつ撃たれるのかという恐怖心も与えられる。
よほど自分の命を投げ出したい奴でもない限りそんな時間が続けば逃げるはずだ。
「でもこの戦法・・・敵の数が少なくないと無理・・・」
「確かに・・・何機も居たら撃てないことがバレちゃうね・・・」
「・・・とりあえず、リリアとミオ・・・最低でもリリアが帰ってくるまでの時間稼ぎだね」
「そうだね!」
そうして目的地に向けて飛行を続けること20分、ミオ達から無線が入る。
《ハルさん、無事にラズベリーに着陸出来ました。今日は天候が穏やかみたいなので着陸に支障はあまりなさそうです。でも少し気流が荒めです》
「了解、ストロベリーの上で待ってるから」
《了解です!》
「あ!ミオ!お土産でベリータルト買っといて!」
《今ですか!?》
「うん!帰って食べる!」
「・・・Gで潰れるよ・・・」
「お腹に入れば一緒!」
「・・・どうせ食べるなら綺麗な方がいいんだけど・・・ミオ、マヤの事は無視で」
《あ、あはは・・・了解です》
「無視はひどいよぉ!!」
「バカなこと言うから。ちゃんと帰りに寄ってあげるから」
「わーい!!」
「だから今は仕事に集中。レーダーは?」
「ちょっと待ってねー、レンジ切り替えるから」
ストロベリーまであと200kmも無いところまで来た。
この辺りからなら街上空をレーダーで監視できる。
F-14の本領発揮だ。
「どう?」
「んー・・・っとねー・・・」
私もディスプレイの1つをレーダー画面に切り替える。
特には何も写っていないが・・・。
「なーんか今一瞬写ったんだよね・・・ハル、ちょっとだけ高度下げてもらえる?機首をマイナス5度くらい下げる感じで」
「了解」
私は言われた通りに機首を下げた。
すると・・・。
「なにこれ・・・高度9000に何かいる!」
「え!?」
街に機首を向けているシンボルが表示されていた。
距離は約180km。
私は急いで街に連絡を取る。
事前の話ではこの街に今日は離発着機は居ないはずだ。
居るなら居ると連絡が入るはずだった。
「ストロベリー!こちらエンジェル0-1!」
だが応答がない。
「ストロベリー!こちらエンジェル0-1!」
《・・・・・・・・・・》
何かの声と雑音しか入らない。
「クソ・・・もう始まってるの!?」
「ハル!シンボルが増えてる!」
「こんな時に・・・!」
その時やっと無線が通じた。
《エンジェル0-1!こちらストロベリー!》
「良かった・・・状況は?」
《骨董品のV-1ロケットが大量に飛んできてる!迎撃は何とか出来ているが発射地点が分からない!》
「V-1!?」
資料でしか見た事ない物だった。
巡航ミサイルの始祖のような物だ。
飛行速度はレシプロ機程度なので何とか迎撃出来ているのだろう。
私は急いでリリア達に連絡する。
「リリア!今すぐペイブウェイを乗せて来て!」
《え、えぇ!?》
「街が巡航ミサイルに攻撃されてる!」
《りょ、了解!1時間で行くわ!》
「了解・・・何とかやってみる」
私はアフターバーナーに点火して加速する。
「ねぇハル、V-1って何十年も前のミサイルだよね」
「記憶が正しければ」
「そんなに昔のミサイルならソニックブームをマトモに喰らえば損傷するじゃ・・・」
「・・・・なるほど、マヤ帰ったらよしよししてあげる」
「ぬへへへ、やったぜ」
古いミサイルなら衝撃波を喰らえば何かしら損傷するはず。
確か弾頭部のプロペラで距離を測りそこまで飛ぶと自動的に突っ込む装置があるはずだ。
そのプロペラさえ破壊出来ればV-1は街を通り越すか墜落するはすだ。
作戦を決めて飛行を続ける。
街が見えてきた。
「何機いるの・・・?!」
見える限りでもV-1は20発以上。
街からは曳光弾が花火のように打ち上がっていた。
街の外壁にある対空砲が必死にミサイルを機関砲で撃っていた。
「こっちはどうする!?」
「もしかしたら発射母機がいる可能性もあるから撃たない!」
「了解!」
音速を突破した機体はV-1の何機かとすれ違う。
後ろを見ると衝撃波でV-1がひっくり返ったり破損したりして最低でも3機はあさっての方向に飛んでいったり墜落していた。
ただ、それは私が通り過ぎた時至近距離にいたV-1で他のV-1は無事だった。
「どこから飛んできてる・・・」
レーダーで捜索しているとここから120kmほどの場所からレーダー上に表示され始めていた。
「見つけた!!」
マヤは大きな声でそういう。
「発射機を潰すよ!」
リリアが来るまであと40分。
それまでに潰せるだけ潰すしかない。
「ストロベリー、こちらエンジェル0-1、発射地点を特定!これから発射機を破壊する!」
《了解!こっちはもうそろそろ限界だ!持ってあと1時間だ!》
「・・・1時間もかけないよ」
音速なら10分以内に発射地点に到着できる。
「マヤ、急減速して降下、機銃掃射するから掴まってて」
「了解!任せるよ!」
音速で飛行を続けたため目標にすぐに到達した。
減速し降下を始める。
「罪もない人を狙うクソ野郎め・・・!」
減速しながら降下をする。
その時私は自分の目を疑った。
巨大な化け物がV-1を投げていた。
その近くにはV-1を召喚する魔法使いのような姿が。
「まさか・・・」
魔王軍・・・?
そう思いつつも機関砲のトリガーを引いた。
「ガンズガンズガンズ!」
20mm榴弾が地面に降り注ぐ。
地面に召喚し置いていたV-1が誘爆し魔法使い事化け物は吹き飛んだ。
「GoodHit!ナイスだよハル!」
「よし・・・これで・・・」
新しく発射されるV-1は無くなったはずだ。
だがまだ空中発射するための母機が居るかもしれない。
「マヤ、レーダーは?」
「残りのV-1しか・・・っと、ちょっと待ってね」
何かを見つけたマヤはレーダーを操作していた。
街に向かうV-1は残り7機。
街の防空火器のみで何とかなるだろう。
そう思っていた時だった。
「ハル!街の東、20kmの位置から新たに出現!」
「20km!?」
「あ、まった・・・なにこれ・・・」
「どうしたの?」
私は街の方に旋回しミサイルを探す。
その時マヤはまた大きな声をあげた。
「ミサイルが1度レーダーから消えて20kmの位置で再補足・・・アイツら転移魔法を使ってるよ!」
「転移魔法!?」
「あっちは囮か・・・!」
「マヤ、発射地点をリリアにデータリンクできる?」
「任せて!」
「私たちは発射されたV-1を落とすよ!」
「待った!V-1より転移魔法を使うために転移先を観測してるやつをやっつけたほうが良いかも!」
「そんな事できる?」
「大丈夫、高度25000に何か飛んでるよ」
転移魔法は転移させたい先の地形等が正確に分からないと使えない魔法だ。
転移先の情報さえ分かればどんな物でも転移させる事ができる。
ただし、転移させる前の速度のまま転移先に送られるため、航空機等は1度離陸してあとに魔法をかける必要があった。
難しい魔法な上に転移先の情報を観測する手段が必要だが、航空機や通信手段が発達した現代なら現地に観測機や観測員が居ればどんな物でも送ることが出来る。
逆に観測手段を奪ってしまえば転移魔法は使用不可能になる。
それを狙う。
「マヤ、相手は航空機だと思う?」
「思わないかな。速度20で飛行してるし。ヘリはあの高度まで上がれないよ」
「という事は魔王軍の翼竜か・・・」
「魔王軍って決まったわけじゃないけど・・・たぶん翼竜だと思う」
「それならフェニックスの最大射程から撃っても大丈夫だね」
「RWR搭載した翼竜じゃなければね!」
「そんなハイスペックドラゴンいるかな・・・」
とはいえ相手は生き物。
下手な航空機より機動力は高い。
なるべく気づかれない距離から撃ちたいが・・・。
まさかミサイルへの対策を何もしてないとは考えにくい。
1発撃って様子を見よう。
「マヤ、最大射程で1発撃つよ」
「了解!ロックしたよ!」
「了解・・・20秒後に発射するから」
「発射権はパイロット側?」
「うん。私がやる」
「了解!何時でも撃てるよ!」
そう話しているうちに射程に入った。
「行くよ、FOX3」
発射してレーダーを見る。
今のところ動きは無いように見える。
「思いこみすぎかな・・・」
そう思った矢先にレーダーからミサイルが消失した。
マッハ3を超えて飛んでくるミサイルを迎撃したようだ。
「嘘でしょ!?」
「迎撃は予想外・・・」
「ど、どうする!?」
「こうなったらさっきと同じことする」
「まさかまたやるの!?」
「ついでに機銃掃射もしてやるよ」
私は音速で通り過ぎるついでに機銃掃射をしてやることにした。
相手が生き物ならいつかのテキサスのように落とせるかも知れない。
やる価値はある。
「しっかりレーダー見といてよ」
「わ、分かってるよ!」
私は加速して目標に向かう。
ここから50kmほど。
ほとんど直ぐに到達する。
私はロックオンしたマーカーを目印に飛行する。
「さて・・・何がいるかな・・・」
遠くに何か羽ばたいているように見える。
間違いない、大型の翼竜だ。
しかも恐らく魔王軍が生み出した新しいタイプの翼竜だろう。
「衝撃波と弾丸のお届け物だよ」
私はトリガーを引き、翼竜に弾丸を浴びせる。
すれ違う時に翼竜を見ると背中に通信機のようなものを背負った人のようなものが居た。
そいつはまさか航空機がこの速度で突っ込んでくると思ってなかったようで驚いた顔のままこちらを見ていた。
そして、衝撃波をモロに食らった敵の通信手はそのまま翼竜から転げ落ち地面に落下していった。
翼竜は20mm程度では効果が薄かったようだがそれでも数十発が一気に着弾した上にソニックブームを受けてバランスを崩し1時は落下したもののそのまま逃げていった。
「よし、上空クリア!」
そのあとレーダーには新たに転移魔法で送られてきたV-1は写っていなかった。
代わりに観測員を失ったためか地面からの発射に切り替えたようだ。
これで相手の位置がほぼ正確に分かる。
《ハル、もうちょいよ!》
「了解。データリンクは届いてる?」
《確認済、石器時代に戻してやるわ》
遠くからリリアのトムキャットが見える。
「それにしても、予定より早いんじゃない?」
《飛ばしてきたのよ!戦闘機だけに!》
《リリアさん・・・寒いです》
「これは有罪」
《ちょっと!!!ねぇ、マヤなら分かってくれるわよね!?》
「・・・リリア」
《な、何よ・・・?》
「有罪」
《うわぁぁぁぁん!!!》
満場一致でリリアの寒いジョークに有罪判決を渡した所で交差する。
私たちは残りのV-1を迎撃する。
「そっち任せたよ」
《任せてください!リリアさんはちょっと精神病んで喋れなくなってるので私が代わりに通信します!》
《喋れるわよ!》
そういうリリアは涙声だった。
「さてと・・・これ以上飛んでこないといいけど・・・」
「どうする?街の方は迎撃出来てるみたいだから新しい観測機が居ないか警戒する?」
「それもあり。街に連絡してみる」
飛来してくるV-1の数が減り花火のように打ち上がっていた曳光弾も少なくなってきた。
街にも余力が出てきたかもしれない。
「ストロベリー、こちらエンジェル0-1」
《エンジェル0-1、こちらストロベリー!》
「転移魔法観測機が居るかもしれないからそっちの警戒に回りたいけど、大丈夫?」
《こっちは何とかなる!あ、ちょっと待ってくれ・・・》
「どうしたの?」
《迎撃したV-1は街に落ちた!》
「え!?」
逆にここまで街に墜落したV-1が居ないのも奇跡ではあるが・・・。
だが、この後聞こえた無線は火災が起きただけだろうと思っていた私たちの想像を超えていた。
《何・・・もう一度・・・》
「ストロベリー、被害は?」
《墜落したV-1から何かの魔道具のような物が散らばった!》
「魔道具・・・?」
なぜそんな物が弾頭に・・・。
《自警団から報告が・・・あの魔道具にはアンデット化の呪いがかかっていたようだ!ちくしょう!!着弾地点の住人がアンデット化した!!》
「!?」
「なにそれ・・・!?」
私は急いで高度を下げて街の上をゆっくり通過する。
着弾は街にあった建物のようだ。
破片が見えた。
だが、今言われた通り下には明らかに人とは思えない動きをする何かが無数にいた。
アンデット化させる魔法やその道具を持つ事は人道に反する罪として禁忌とされていた。
それこそ、人間至上主義者の連中ですら使わない魔法だ。
「マヤ、この通信記録は残しといて」
「録音はレコーダーに入ってると思うけど・・・でも・・・」
「・・・これ以上やらせない・・・!!」
V-1の大半が空中で爆散しているが街以外にも墜落している。
恐らく飛散した魔道具はずっと効果を維持できるとも思えないが・・・それでも数日は付近が汚染されてしまう。
「マヤ、観測機は後回し。なるべく遠くで落とすよ」
「分かった!」
「こうなったら武器を使わないなんて言ってられない・・・」
私はバルカン砲で狙い撃つ事にする。
攻撃準備をしているとリリアから目標に近づいたと報告が入った。
《エンジェル0-2、投下まで30秒》
《ターゲットにレーザー照射します》
《了解、ハル》
向こうの攻撃終了後はこっちの手伝いに回ってもらおう。
私はすれ違いざまに何機かのV-1を撃墜する。
《エンジェル0-2、ペイブウェイ》
爆弾投下のコールが入る。
発射機さえ潰せばそれ以上は来ないはず・・・。
こっちのV-1はあと15機・・・。
「マヤ、撃墜数記録してる?」
「やってるよ!ていうかミサイルって入るの?!」
「巡航ミサイルは撃墜数に入るよ。もう20は落としてる」
「またランク上がっちゃうね!」
「今は素直に喜べないけど」
街の様子が気になって仕方ない。
街から聞こえてくる無線は守っていたはずの住人が牙を向いて襲いかかってくる事に対しての悲鳴や怒号など地獄絵図だった。
アンデット化の呪いは解くこと自体は出来るのだが、1度アンデット化されられてしまうと脳に深刻なダメージを受け、運が良ければ記憶障害程度で住むのだが重篤な後遺症の場合、突然自分が何をしているのか理解出来なくなり人や動物を襲ったりする。
そうなったら最後、もう殺すしか手段が無くなってしまう。
「・・・ねぇハル」
「何?」
「今話すことじゃないかもなんだけど・・・いい?」
「うん、いいよ」
「私がもし突然アンデット化したら迷わず撃ってね」
「・・・それは私もだよ」
「・・・うん、分かった」
そんな事・・・ないと信じているが。
「フラグじみてるからやめやめ!」
「言い出したのそっちでしょ」
私は話しながらもV-1を撃墜していく。
その時ストロベリーからアンデットを鎮圧したと報告が来た。
《アンデット化した住人を何とか鎮圧した・・・こちらの死傷者は13名、アンデット化した住人の3名が死亡、残り30名は捕獲した》
「0-1了解。この後は?」
《ラズベリーの教会で何とかしてもらう。そこまでの護衛をお願いしたい》
「了解。ヘリはあるの?」
《輸送会社のCH-46を2機借用できた。被害者ともしもと時の為に武装した自警団員を搭乗させる。2時間後には離陸予定》
「了解、こちらの燃料はギリギリ持つはず」
《了解、そちらの燃料を優先してもらって構わない。・・・協力に感謝する》
「いえいえ。仕事だから」
「だから、報酬は弾んでね!」
《払える限り払わせてもらうよ。君たちは街の英雄だ》
「最後まで油断しないで。まだV-1は飛んでるよ」
《分かってる。だが、先に感謝の言葉を述べておく》
そう話しているうちにリリアから破壊の報告が入った。
《0-2、BDA100%。動いてるものは何もなしよ。誘爆して派手に吹っ飛んだわ》
《ざまーみやがれです!》
「了解、リリア合流して残りのV-1を落とすよ」
《了解!あ、そうだ。ミオなんだけど・・・》
リリアはミオの機体に起きた事を教えてくれた。
どうやら点検の結果、単にセンサーが誤作動して警告灯を点灯させたらしい。
念の為、油圧系統を今調べているので離陸まであと最低でも3時間は必要だそうだった。
「了解、2機でやるよ」
《遅れた分撃墜数稼がないとですね!リリアさん!》
《そうね、ハルに負けてられないわ》
「今日は勝負とか無しだよ。下の無線聞いてたでしょ」
《分かってる。もしするならこいつらの本拠地爆撃した時のスコアね》
「それ私が勝てない」
《いいじゃない、ハルだって苦手を克服するべきよ?》
「まぁそうだけど・・・」
2機で残りのV-1を次々と撃墜していく。
残りはもうあと数機だ。
コイツらを落としてしまえばとりあえず新しいミサイルは居なくなる。
・・・ここからが長い仕事だ。