高度20000フィートの大空で   作:イーグルアイ提督

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個人的な仕事

「ひーまー・・・」

 

「わたしも・・・」

 

「ハルがこういうのに同意なの珍しいんだけど・・・」

 

「仕方ないでしょ。実際暇なんだから」

 

ある日の朝。

今日はトムキャットが定期整備に入り、明日までは飛ばす事が出来ない。

そのため今日と明日は完全にお休みだ。

 

「なんにもしないのも腐りそう・・・」

 

「ヘリでも乗ってどこかいく?」

 

「んー・・・」

 

マヤの提案もいいなと思っていた時、エルが私たちのいるリビングに来た。

・・・明らかに今から戦闘に行くような装備で。

 

「・・・どしたの?」

 

「仕事。個人的な」

 

「手伝うよ?」

 

「大丈夫。私がやりたいから」

 

そういうエルの目は何かに怒っているような目だった。

 

「仕事内容聞いてもいい?」

 

「・・・ある人物の排除」

 

「!?」

 

「大丈夫。相手はあのカルト教団だから・・・私の父さんと母さんを殺した奴・・・」

 

「エル・・・」

 

「ハル達に迷惑はかけれない。けど、トマホークを借りていっていい?」

 

「いいけど・・・」

 

私はエルを本当に1人で行かせていいのか不安になった。

まるで復讐さえ出来れば自分はどうなってもいいような目をしていたから。

 

「あ、それと迎えはお願いしたいかな。マヤのアパッチで」

 

「あれは2人乗りだよ?」

 

「乗ろうと思ったらスタブウイングにも乗れるでしょ。それよりも近接支援が必要になったら助けて欲しいし」

 

「まぁそうだけど・・・あ、そうだ!おじさんに言って乗れるようにしてもらうよ!」

 

「ありがと。とりあえず行ってくるね」

 

「行ってらっしゃい・・・気をつけて」

 

「うん。行ってきます」

 

そう言ってエルは家を出ていった。

その後をトマホークが走って追いかけていった。

 

 

 

〜エル〜

 

無理言って乗せてもらった輸送ヘリに揺られること1時間。

目的の山の前に到着した。

ここは私の村からほんの10kmほどの所だった。

パイロットにお礼のお金を握らせてヘリから降りた。

 

「ふう・・・」

 

私は地図を開く。

私の家族を殺したやつのいる場所はここから5kmだ。

 

「楽しい登山だよ。トマホーク」

 

『ワイにとっちゃ楽しくないんだがな・・・』

 

「いいでしょ。アンタを頼りにしてるんだから」

 

『報酬はきっちり用意しとけよ』

 

「ハルとお風呂に入らせてあげる」

 

『っしゃあ!!ご主人とお風呂入れるならなんだってするぜ!!』

 

「エロ犬め・・・」

 

私は山に向かって歩き始めた。

装備は動きやすさを重視してタンカラーのTV-110プレートキャリアに黒色のコンバットシャツ、OD色のニーパッド入りのコンバットパンツ。

銃は愛銃のKar98kに自衛用のMP7A2、SIG P226だ。

Karはカスタムを施し、サプレッサーとボルトに干渉しないようにレールマウントを装備して7倍から20倍まで切り替えれるスコープ、オフセットマウントにRMRを装備、MP7にはEXPS-3ホロサイト、サプレッサー、ライト、RVGフォアグリップを装備してきた。

KarとMP7には徹甲弾、226にはホローポイント弾を装填してきた。

 

『ところでお嬢、ワイが着いてきたのはいいが何すればいいんだ?』

 

「あんたはスポッター。前に教えたでしょ」

 

『犬の仕事じゃないんだがな・・・』

 

「異世界では犬がスポッターやってるところだってあるんだよ」

 

『ワイの生まれが異世界じゃなくて良かったよ・・・』

 

「あんたの祖先は異世界産だけどね」

 

『それ言い出したらお嬢だってその異世界産の犬が獣人化したやつだろ』

 

「言えてる。じゃあ異世界コンビってことで」

 

なんて話しながら山を登った。

事前に偵察を依頼し得た情報によると目標は集落になっている。

ただしそこにいる全員が人間至上主義の連中だ。

中には子供もいるが・・・。

 

「・・・邪魔をするなら容赦しない」

 

『お嬢、気持ちは分かるがターゲット以外を撃つのはただの殺戮だぞ』

 

「分かってる。さすがに無抵抗の女子供を撃つほど悪魔じゃないよ」

 

『それならいいんだがな・・・』

 

「まぁ、司祭みたいな教えを説こうとする奴は容赦しないけど」

 

私はそう言いながらKarのチャンバーをチェックした。

いつでも撃てる。

狙撃に適した位置はここからもうすぐだ。

トラップがないか慎重に探さなければ・・・。

 

「トマホーク、しっかり鼻を効かせてね」

 

『分かってる。お嬢だって鼻効くだろ』

 

「まぁね。1人より2人だよ」

 

山を登り始めて既に3時間。

トラップを警戒しながら進む前に休憩をすることにした。

 

「ふう・・・トマホーク、お水」

 

『いやっほー!!新鮮な水だー!』

 

「わたしも水分補給・・・」

 

靴紐を解き、プレートキャリアを脱いだ。

装備を外すのはあまり良くないが、蒸れて仕方ない。

 

「結構汗かいちゃったな・・・」

 

『いい匂いだぜ』

 

「嗅ぐな」

 

『なんだよ、匂いを嗅ぐのは犬の本能だぜ?お嬢は汗の香りもするがやっぱり普段使ってる石鹸の甘い香りだな』

 

「分析しないで・・・恥ずかしいから・・・」

 

『それにしてもご主人の所はいいよな』

 

「なんで?」

 

『あそこにいるのは揃いも揃ってみんな美人』

 

「はぁ・・・」

 

『それにマヤお嬢は一緒に風呂に入ってくれるんだぜ?最高だ!』

 

「あんたが好みなのはハルでしょ」

 

『それはそうなんだが・・・なんか最近ガードが固くてな』

 

「当たり前でしょ・・・」

 

『うぉぉぉ!!ワイはご主人と風呂に入ってイチャイチャしたいんじゃぁぁ!!』

 

「欲望が出てるよ欲望が」

 

『だってよお嬢!あんな可愛い娘にシャンプーされる気持ちが分かるか!?この世にそんないい事があるのかってレベルだぜ?!』

 

「あんたは何を熱弁してるの・・・」

 

『なぁ・・・だからよぉ・・・帰ったらご主人と風呂に入れるように頼むよぉ・・・』

 

「それはあんたの働き次第。そろそろ行くよ」

 

『あいよ。喉も潤ったしな』

 

私たちは再び歩き出す。

警戒しながら進むこと30分。

目的の集落が確認できる岩場に来た。

ここまで何もトラップが無かったのが拍子抜けだった。

 

「ここからは姿勢を低く・・・」

 

岩場の近くの茂みに隠れる。

そこからスポッター用の望遠鏡を覗かせてトマホークを配置に付かせる。

私もライフルを構えた。

 

「・・・何かいる?」

 

『お嬢から見て左、人の集団が見えるか?』

 

「確認」

 

『そこの近くの壇上に司祭っぽいのがいる。見た感じお説法中だな』

 

「だね。撃つ前にカウンタースナイパーが居ないか探すよ」

 

『了解』

 

私はゆっくりと辺りを探す。

すると集落の中にある教会のような建物の1番高いところ・・・鐘のある場所に何かが居た。

 

「おっと・・・そこに居た」

 

『確認、教会に1人。武器は・・・』

 

「恐らくM700。教団も銃を使うようになったか・・・」

 

『教会前にはAKS74Uを持った人員』

 

「確認、警備員だね」

 

『他には・・・居ないな』

 

「恐らく最低限の警備なんでしょ。もしくは家に武器が置いてあって何かあると全員戦闘員になるとか」

 

『ありえるな。んで、どうするお嬢』

 

「先にカウンタースナイパーを片付ける」

 

『了解』

 

「徹甲弾だと貫通して音が出ちゃうから・・・」

 

私は念の為に持ってきておいたソフトターゲット用の弾を取り出し、薬室に入っていた徹甲弾と入れ替える。

この弾は弾頭の先端にプラスチックのカバーをつけて普通の弾丸のように尖らせてはいるが人体に命中するとカバーが外れその下にあるホローポイント弾のような弾が変形しながら筋組織や内蔵を破壊する。

貫通はほぼしないだろう。

 

「ヘッドで行くよ」

 

『任せる』

 

「すぅー・・・」

 

私は呼吸を整える。

そして静かに引き金に指を添えた。

 

「・・・・おやすみ」

 

引き金を引く。

サプレッサーで減音されたとは言え音が山に響いた。

だがここからターゲットまでの距離は約500m。

聞こえてはいないだろう。

 

『GoodHit。ターゲットダウン』

 

「次、目標は説法してる司祭」

 

『どこ狙う?』

 

「次の弾は徹甲弾、心臓ぶち抜いて頭抜いてやる」

 

『いいねぇ、スナイパーっぽいぞ』

 

「スポッターよろしく」

 

『まかせな』

 

私はゆっくりと照準を合わせる。

司祭は手を大きく広げて喋っていた。

 

「ずいぶんと気持ちよさそうに話してる」

 

『自分の考え広めるのが好きなんだろうな』

 

「だろうね。でも、私がもっと気持ちよくしてあげる」

 

私はそう言って引き金を引いた。

 

『ハートショット、Hit。ターゲットは崩れ落ちた』

 

「次、ヘッドショット」

 

『狙え』

 

「・・・」

 

司祭は弾丸が入っていった右の肺の当たりを抑えて不思議そうな顔をしていた。

まだ何が起きたのか頭が追いついていないようだ。

 

『撃て』

 

私は再び引き金を引く。

 

『ヘッドショット、Hit。標的ダウン』

 

司祭は崩れ落ちた。

それをみた信者たちは悲鳴をあげて走り出す。

 

『新たなターゲット、そこから右に20』

 

「確認。警備兵?」

 

『そいつだ』

 

「了解」

 

小さな銃声が山に響く。

弾丸は恐らく雇われ山賊の警備兵が着ていたボディーアーマーを貫く。

心臓を撃たれた山賊はそのまま倒れた。

 

「片付いた」

 

『確認。Good Kill』

 

新しい標的を探そうと照準を左にずらして行った時だった。

 

『RPG!2時方向、450m!』

 

トマホークが吠えた。

私は言われた通りの方向を見るとこちらにRPG-7を向けている教団信者が居た。

恐らく盲撃ちだろうが・・・。

 

「警告ありがと」

 

私はそうトマホークに言うと引き金を引いた。

弾丸は同時に発射されたRPG7の弾体を撃ち抜いた。

 

『わーお・・・ナイスショット』

 

発射され安全装置の外れた弾頭に弾丸が直撃したせいで弾体は爆発を起こし射手に破片の1部が襲いかかった。

死にはしなかったものの顔に破片をくらい顔を抑えてしゃがみ込んだ。

私はそこを逃さない・・・が弾切れなので素早くクリップで弾丸を弾倉に押し込んだ。

そして再び照準を合わせる。

 

「・・・死にたくないなら逃げるべきだったのにね」

 

私は引き金を引く。

弾丸は射手の頭を撃ち抜いた。

 

『クリア』

 

「他は?」

 

『今のところ無し』

 

「さて・・・ちょっと移動して様子見ようかな」

 

『着いてくぜ、お嬢』

 

ほふく移動でゆっくりと茂みの後ろに移動し、山を下る。

集落からは人の怒鳴り声や悲鳴が続いていた。

 

『お嬢、ここからなら見えるぜ』

 

「いいね。1度監視しようか」

 

私は再びライフルを構えた。

スコープの先には建物の影から様子を探るおとこの姿があった。

それにしてもこの教団の信者達はなんて皆揃いも揃って赤黒いローブを着ているのか・・・。

まぁでも、そんなことはどうでもいい。

スコープの先にいるターゲットはマスケット銃のような物を持っていた。

絶対にこっちに届きはしないが・・・。

 

「武器を持ってると・・・脅威って見なされても文句言えないよ」

 

私は頭に照準を合わせて引き金を引いた。

弾丸は男の頭を撃ち抜き男は崩れ落ちた。

 

『GoodKill』

 

「・・・・・」

 

私はスコープの先を見て少し固まる。

さっき射殺した男に1人の女性信者が駆け寄っていた。

男の服を掴み泣いていた。

 

『・・・武器を取ったら撃て』

 

「分かってる」

 

私は恋人か友人・・・もしくは夫の死に悲しむ女性の頭に照準を合わせていた。

 

「・・・お願いだから銃に触れないで」

 

私は祈るように呟く。

だが祈りも虚しく、女性は銃を拾った。

そして恐ろしい形相で山の方を見ていた。

私はスコープ越しに目が合うのと同時に引き金を引く。

 

『・・・ターゲットダウン』

 

「・・・」

 

胸糞悪い。

自分のした事は自分の身を守るための行為・・・と思いたい。

だが、私があの女性の家族を目の前で奪ったのも事実だ。

特にスコープ越しにそれを全て確認出来てしまうのは精神的にも来るものがある。

 

「はぁ・・・」

 

私はため息をついて新しい目標を探した。

教団信者は私が恐らく山にいてそこから撃って来てるというのは分かっているっぽいが、何処から狙っているのかまでは分かっていないようだ。

肝心のカウンタースナイパーも倒され、信者達は家などに閉じこもり始めた。

 

『お嬢、奴ら家に隠れ始めた。どうする』

 

「想定内。降りて戦うまでだよ」

 

『それじゃ、ひと狩り行くとするか』

 

「弾には当たらないでよ。さすがにハルが悲しむ」

 

『それはお嬢もな』

 

私はライフルに弾を込め直し、山を下る。

 

「ここまで順調に進みすぎてる気もする・・・」

 

『何か悪い予感でも?』

 

「なんとなく」

 

そう言った次の瞬間、弾丸が耳元を掠めた。

 

「っ!!」

 

『マジかよ!!』

 

私たちは急いで伏せた。

 

『どこだ!?』

 

「集落なのは間違いない・・・」

 

弾丸が掠めた約2秒後に銃声が聞こえた。

恐らく距離は700m程度なはず・・・。

 

「ここを狙えるような場所ってなると・・・」

 

私はゆっくり伏せて草の隙間から銃を覗かせた。

私は教会のカウンタースナイパーがいた場所を見る。

すると突っ立ったままライフルを構えているやつが居た。

・・・予想だが、ライフルを拾ってスコープを覗いたらそれっぽいのが居たから撃ったって感じみたいだ。

それが偶然私の耳元に飛んできた。

 

「・・・偶然で死にかけたけど・・・」

 

『死ぬのはお前だってな』

 

「そこまで言ってない」

 

私は引き金を引く。

弾丸は信者の眉間を撃ち抜いた。

崩れ落ちた信者はライフルを握ったまま塀から垂れたような格好になっていた。

 

「もう一度使われると困る」

 

私はM700の機関部を狙い狙撃した。

弾丸は機関部を撃ち抜き破損した弾倉部からキラキラ光る弾薬がこぼれ落ちた。

 

「全く……いい加減こんな事やめればいいのに」

 

『こんなことって?』

 

「人以外を敵とか言うの。こういう目に会うって分かってるはずなのに」

 

『まぁな。でも世界中にこいつらの支部があって国によったら国ぐるみで獣人やエルフを迫害してる国だってあるんだぜ』

 

「……人ってほんと……」

 

ため息をつきながら集落に到着した。

ここからはMP7を使っていく。

私はライフルを背負った。

 

「さて・・・」

 

『どうするんだ?』

 

「一軒一軒全部見てやる」

 

『マジかよ……』

 

私はまず手始めに目の前の家のドアを蹴破った。

 

「う、撃たないで・・・」

 

「死にたくなかったらあんたらの長の居場所を吐け」

 

「……」

 

「……そう、死にたいんだね」

 

私は震える中年の女性に銃を向けた。

その時家の奥から夫らしき人物が包丁を持って歩いてくる。

私はそっちに銃を向けた瞬間だった。

 

「今だよやっちまいな!!」

 

女は私の足を掴んだ。

私はバランスを崩す。

 

「うおぉぉぉ!!!」

 

そこに男は包丁を構えて突進してくる。

私は素早く男に照準を合わせて引き金を引く。

徹甲弾が心臓を撃ち抜いた。

 

「邪魔」

 

私はそのまま足を掴む女の頭を撃つ。

 

『素直に言えばいいものを……』

 

「考えを改めるべきかな。命乞いをしても容赦しないって」

 

『そりゃ危ない冒険者の思考だからやめとけ』

 

1部の冒険者はこういった国として敵と認めている組織に対しては何やってもいいと勘違いし負傷させて命乞いをする姿をひとしきり楽しんだあと殺すという行為が横行していた。

国王様もさすがに頭を悩ませているらしい。

 

「次の家」

 

そこからはもう作業だった。

3軒ほど見たがドアを破れば必ず中で待ち伏せをしていた。

こっちとしても撃たない訳にはいかないので撃つ……。

 

「はぁ……やってらんない……」

 

『そのでっかい家でラストだな』

 

「いかにもなんだけど……」

 

『見つけたらどうするんだ』

 

「殺す。なんと言おうとね。父さんと母さんを殺したやつを生かしてはおけない」

 

私は大きな家のドアを蹴破った。

中は綺麗な内装だった。

そして私が来ると分かっていたのか忘れもしない、私の村を襲撃に来た奴が出迎えるかのように待っていた。

 

「よく来たな。殺戮は楽しかったか?」

 

「楽しかったよ、クソどもを掃除できてスッキリ」

 

私は銃を向けたままそう言った。

 

「それにしても、やはり人外は人の敵だな。無抵抗な人間を何人殺した?」

 

「そのままそっくりそのセリフを返すよ。無抵抗なエルフや獣人を殺すクソ野郎が」

 

「まぁ……無抵抗な獣人やエルフ達を殺したのは認めるよ。だが、教祖様からの教えでな」

 

「死に損ないのクソ教祖の教えなんて聞きたくもない」

 

「なんだ、つまらんな。それにしても、貴様らは何故そんなに偉そうな態度が取れる?」

 

「?」

 

「お前たちの文化はすべて人が作ったものを真似、取り入れて今に至っている。もっと人に感謝すべきではないか?」

 

「それが私たちを奴隷にしてもいいって考え方なのね。ほんとクソ野郎ども」

 

「だがそうだろう。貴様らは何も作り出せないし作り出す力もない。現にお前が持っているその銃、誰が作った?お前たちか?……違うよな、人だ。異世界からの文化とはいえ人が作ったものだ」

 

「だったら?私はこれが便利だから使う。作った人にも勿論感謝してる……あんたみたいなのを簡単に撃ち殺せるからね」

 

私は引き金に力を込める。

それをみた男はニヤッと笑った。

 

「撃つのか。まぁいい。だが聞かせろ、なぜ私を狙う?」

 

「……覚えてないよね。私の事なんて。私の父さんと母さんを殺したことを」

 

「……覚えてないな。色々とありすぎた」

 

「そう。ならいい。気兼ねなく撃てるよ。罪悪感でも感じてたら少しだけ撃ち辛かった」

 

「そして、私と同じことをするわけだ」

 

「同じこと?何が言いたいの?」

 

「私にだって家族はいる。この家にな。隠れてろと伝えては……」

 

その時だった。

 

「パパから離れろ!!」

 

階段を登った2階部分から声がした。

 

『お嬢!』

 

トマホークに思い切り突き飛ばされ転ぶ。

そこに弾丸が撃ち込まれた。

私は反射的に撃ってきた方向に撃ち返した。

……そして撃ち返した後に気づく。

私は……今、子供を撃った。

 

「……」

 

「……やってくれたな」

 

男の声は震えていた。

悲しみなのか怒りなのかは分からないが。

 

「お前も私と同じだ!命を奪うことしかでき……」

 

私は無言で男の眉間を撃ち抜く。

これ以上話なんてしたくもない。

崩れ落ちた男に数発さらに撃ち込んでトマホークの元に向かう。

 

「トマホーク!無事!?」

 

『危うくワイの息子が死ぬところだったぜ・・・』

 

弾丸の着弾位置はトマホークの股間付近。

ギリギリで外れてはいるが……。

 

『……子供はどうなった、お嬢』

 

「分からない。見たくもない」

 

『……そうか』

 

反撃も無ければ声もない。

弾痕が残る2階部分のバルコニーからは血のようなものが垂れていた。

 

「……帰ろ」

 

私は家を出た。

その時だった。

また弾丸が掠める。

 

「また!?」

 

『時間がかかりすぎたんだ!増援だ!』

 

「クソっ!長話し過ぎたよ!!」

 

外には銃を持った信者が集まっていた。

こうなったらこの家に立てこもってマヤ達を呼ぶしかない。

私は祈る気持ちでケータイで電話をかける。

 

「お願い……!」

 

《もしもし、エル?》

 

「ハル!マヤと迎えに来て!カルトに囲まれ始めてる!」

 

『お嬢!扉の前!!』

 

私はそう言われてドアに向けて何発か射撃した。

 

《今どこなの》

 

「テキサスから南東300km!私の故郷の近くの山の中にある集落!!」

 

《分かった、アパッチとブラックホークで向かう。それまで耐えて》

 

「了解!頼んだから!」

 

テキサスからここまでは約2時間。

耐えきれるか……。

 

「トマホーク、家の中から銃と弾薬をあるだけ探してきて」

 

『分かった』

 

トマホークが離れていく。

私は階段を登ってバルコニーに向かった。

……そこには私が撃った子供が倒れていた。

まだ10歳くらいだろう。

 

「……ごめんね」

 

撃ってきたから撃ち返した。

言い訳なんていくらでも出来た。

自分自身に対しても。

 

「はぁ……元からだけど、これで天国で父さんと母さんには会えないかな」

 

私はため息をついて子供が握っていた銃を取った。

持っていたはグロック19。

弾薬は通常の9mm。

あとはポケットに予備の弾倉が2つあった。

それを取った時扉が開けられた。

信者たち数人が中に入ってくる。

 

「……来た」

 

信者たちは倒れている男に近寄ると小さな声で何かを呟いていた。

恐らく祈りでも捧げているのだろう。

 

「神父様に手をかけた異教徒はこの中だ!捕まえろ!」

 

1人がそういうと信者たちは家の中に散らばった。

そして1人が階段を登ってくる。

私はさっき子供から取ったグロックを構えた。

 

「……」

 

階段の軋む音が近づく。

そして……

 

「うっ!?」

 

階段を登りきり私を見た信者が驚き声をあげた。

私はそいつの胸と頭を撃つ。

信者は崩れ落ち階段から転げ落ちた。

 

「上だ!上にいるぞ!!」

 

束になって登ってくる信者たち。

私は何発か射撃して足止めする。

 

「足、足がぁぁぁぁ!!」

 

転げ落ち、叫ぶ信者。

それに信者たちは怯んでいた。

私はMP7を構えてフルオートで射撃した。

 

「ぎゃあっ!!」

 

「ぐあっ!!」

 

5人いた信者全てに弾丸が当たる。

即死した者も居ればまだ生きてる奴もいた。

私は家から脱出するために階段を降りる。

 

「うぁ……助けて……」

 

弱々しく助けを求める信者。

私はそいつの頭を撃つ。

 

「たす、助け……」

 

「……」

 

私は無言で生きてる信者、死んでる信者に射殺確認のために弾丸を撃ち込んだ。

そこMP7がちょうど弾切れになる。

弾倉を投げ捨て新しい弾倉を挿入した。

 

『……こりゃひでぇ』

 

「おかえり。いいのはあった?」

 

『お嬢が気に入るか分からんがな』

 

トマホークは袋を引っ張ってきて私の前に置いた。

中に入っていたのはM45。

M1911の近代化モデルだ。

その弾倉が1つと予備の弾薬が30発。

銃と予備弾倉に弾は込められていなかった。

 

「少ない……」

 

『どうする?』

 

「今なら信者達が離れてる、教会内を捜索して捕まってる仲間が居ないか確認する」

 

『そりゃいい、報酬もしっかり出そうだ』

 

「お金なんてどうでもいい」

 

『ま、お嬢はそうだろうな』

 

私はトマホークが持ってきたM45をズボンに挟み、家を出た。

そして弾薬の残りに余裕があるKarに持ち変える。

 

「敵が来る前にやるよ」

 

『了解』

 

私は協会まで走り、ドアを開けた。

中はもぬけの殻だったが……

 

『お嬢、臭いを感じる』

 

「……いる」

 

確実に誰かがこの中に隠れている。

私はゆっくりと歩き出した時だった。

 

「この!!」

 

「ッ!!」

 

斧を振りかざした信者が襲いかかってくる。

それを何とか銃で防ぐ。

 

「ッ……!!トマホーク!!」

 

『任せろ!!』

 

トマホークは思い切り信者の足に噛み付いた。

 

「ぎゃぁぁぁぁ!!!!」

 

痛みで斧を落とす。

私はそこに銃床打撃を加えた。

衝撃で気絶する信者。

 

「ふぅ……」

 

『うぇ……まっず……』

 

「意外だね、血の味でも覚えるのかと思った」

 

『ワイをなんだと思ってんだ』

 

「人が犬と話せないのをいい事にハルたちにセクハラしまくる変態犬」

 

『長いしひどい』

 

「事実でしょ」

 

私はそう言いながら気絶した信者を蹴って起こす。

見た目は20歳後半の女性だった。

どことなくハルに似た顔立ちだ。

 

「うぅ……」

 

「おはよ」

 

「!」

 

「足の具合はどう?」

 

「ケダモノが……!!」

 

信者は落とした斧を探そうとした。

私は先に斧を見つけて撃って破壊する。

 

「頭ぶち抜かれたくなかったら答えて。この教会に獣人たちはいるの?」

 

「……」

 

「……もう一度聞くよ。獣人たちはいる?いない?」

 

私は引き金に力を込める。

 

「誰が……」

 

「ん?」

 

「誰が人外なんかに答えるか!!くたばれ!!」

 

信者は足を押さえながら叫ぶ。

 

「そう……じゃあいい」

 

『お嬢、やめろ』

 

私は引き金を引こうとする。

信者はぎゅっと目を瞑った。

 

『やめろお嬢!!』

 

トマホークが吠える。

 

「なんで」

 

『抵抗する気の無いやつを撃つのは違うだろ!!』

 

「じゃあコイツが抵抗しないって確証は?」

 

トマホークが吠え、私がそれに答えるところを不思議そうに信者は見ていた。

だが銃口だけは逸らさない。

 

「なんで……話して……」

 

「獣人は動物の声が聞こえるんだよ」

 

「…………」

 

信者は何かを悩むような顔をして下を向いた。

そして決意したように私を見る。

 

「この教会に捕らえられてる獣人たちの場所を教える。だから……助けて」

 

「なに?取引したいの?」

 

「……」

 

「はぁ……いいよ、分かった。何をして欲しいの」

 

「私の友達と話して欲しい……」

 

「友達?」

 

「犬なの……でも昨日から様子が……」

 

「病気かな……分かった、約束は絶対に守る。でも先に獣人たちのところに案内して」

 

私は信者の足を消毒し包帯を巻いて応急処置した。

痛み止めも渡し、歩けるようになった信者の後ろについて歩く。

 

「ねぇ、ひとつ聞きたいんだけどなんでこんな事してるの?」

 

「え?」

 

「あなたは他の信者みたいな感じがしないから」

 

「あ……私……その、お父さんとお母さんが教団幹部で……」

 

「そういうことね……」

 

「ずっとエルフや獣人は敵だって……でもここで捕まった人達の世話係をやった時に間違ってるのは私たちだって……」

 

「それが聞けたらいいよ。あなたは絶対に守ってあげる」

 

私は信者に向けていた銃口を下げた。

嘘を言ってるようにも感じなかった。

 

「この先……」

 

そう言って彼女は鍵のかかったドアを指さした。

 

「鍵は?」

 

「えと……ない……」

 

「わかった」

 

『こりゃワイルドなやり方だな』

 

私はトマホークが持ってきたM45を取り出してスライドを引く。

45なら鍵くらい簡単に壊せるだろう。

 

「ちょっと離れてて」

 

2人が離れたのを確認して引き金を引く。

鍵が壊れるのと同時に中から悲鳴が聞こえた。

私はドアを蹴破る。

 

「大丈夫だから落ち着いて!」

 

「こ、この人誰……!」

 

近くにいた獣人は私を指さして信者にそう聞いた。

 

「この人は大丈夫……!酷いことしないから!」

 

「ほ、ほんと……?」

 

「ほんとだよ、大丈夫」

 

「アメリアがそういうなら……」

 

私はそこで初めて信者の名前を知った。

 

「アメリアっていうの?」

 

「そういえば名前言ってなかった、あなたは?」

 

「エル。こっちのエロ犬がトマホーク」

 

『おい!!』

 

「とにかくここから皆を連れ出すよ」

 

「わ、わかった!」

 

中にいたのはエルフ1人と猫の獣人2人。

比較的健康そうだった。

 

「アメリア、もしかしてきちんと身の回りの世話してたの?」

 

「え?」

 

「みんな健康そうだから」

 

「だ、だって私は他の信者達みたいなことできない……」

 

「アメリアはケーキとかくれるからいい人」

 

「優しいじゃん。ところで、アメリアのお友達は?」

 

「私の家に……」

 

そこでアメリアは少し渋い顔をした。

 

「あの家……入った?」

 

アメリアが指さすのは2軒目に突入した家だった。

 

「入ったよ。待ち伏せが1人居ただけ」

 

「それって……白髪の男の人?」

 

「ううん、40代くらいのおじさん」

 

「……まだ中にいる……」

 

「え?」

 

「お父さんとお母さんがまだ中にいる……きっとこっちを……」

 

そうアメリアが言った瞬間だった。

銃声が響く。

隣にいたエルフが胸を撃たれた。

 

「物陰に隠れて!!」

 

「そんな……!!サナ!!」

 

「ダメ!!もう死んでる!!」

 

倒れたエルフはピクリとも動かない。

 

「クソ……!!アメリア達はここに居て。トマホーク、行くよ!」

 

『あいよ!』

 

私は隠れた家の近くにスモークを投げる。

目標はロッジのような二階建ての家。

銃弾は屋根裏部屋のような小窓から飛んできた。

 

「グレネードはない……突入して排除するよ」

 

『アメリアの家族をいいのか?』

 

「アイツらは同胞を殺した。容赦しない」

 

『おー怖……』

 

私はスモークで辺りが白くなり始めると家に素早く近づいた。

恐らく相手はこっちにくると分かっているだろう。

 

「トマホーク、私が先に行く」

 

『了解』

 

私は深呼吸をするとドアを蹴り開けた。

入口とその入口と繋がっている部屋はクリアだ。

 

「クリア……」

 

MP7を構えてゆっくりと銃を撃ったと思われる場所に向かう。

 

『お嬢、近いぞ。火薬の匂いだ』

 

「分かってる」

 

2階に登る階段を登りきった時だった。

廊下の奥からこちらに銃口が見えた。

とっさに身をかがめると同時に銃声が響く。

その後ボルトを引く音がしたので私は飛び出した。

 

『お嬢待て!!』

 

トマホークは後ろから待てと吠える。

私は次弾を撃たれる寸前で相手の銃を蹴り飛ばした。

 

「クソっ!!」

 

「はぁ……はぁ……終わりだよ、諦めて」

 

私は銃を白髪の男性に向ける。

アメリアが言っていた彼女の父親だろう。

 

「あんただよね。エルフの子を撃ったのは」

 

「脱走した人外を撃って何が悪い!!私のバカ娘のせいで商品が1つ台無しになったんだぞ!!」

 

「商品……今商品って言った?!」

 

私は胸ぐらを掴む。

そして思い切り顔面を殴った。

 

「もう一度言ってみろこのクソ野郎!!」

 

私は男に怒鳴る。

 

「何が商品だよ!!あの子が何をしたって言うの?!エルフや獣人ってだけで迫害して!!」

 

「教祖様の教えだ!守って何が悪い!!」

 

「殺してやる……!!殺してやるこの野郎!!」

 

私が拳銃を抜こうとした時だった。

トマホークが吠えて走る。

 

『危ないお嬢!!』

 

「あぁぁぁぁぁ!!!」

 

「ダリア!?」

 

男の奥でトマホークに噛みつかれて叫ぶ中年の女性がいた。

手には刃物を持っていた。

 

「……」

 

私は男を突き飛ばすように離し女の元に向かう。

 

「ま、待て!妻には手を出すな!!」

 

「……なに?よく聞こえない」

 

私は女の頭に照準を合わせて引き金を引いた。

薬莢が床に落ちると同時に男が発狂したように叫ぶ。

 

「や、やりやがった……やりやがったな貴様!!」

 

「だから?あんたはあの子の命を奪ったのに」

 

「殺してやる!!絶対に殺して・・・」

 

私は叫ぶ男の胸に2発発射した。

男は崩れ落ちた。

 

「……トマホーク、行くよ」

 

『あいよ』

 

「アメリアには悪いことしたな……」

 

『攻撃してきたのは向こうだ。それに……あの子だって殺された』

 

「まぁね……」

 

誰かの家族を殺した……。

いくら相手がド外道のカルト教団とはいえ、知り合いの家族に手をかけてしまったことに罪悪感を感じていた。

 

「みんなの待ってるところに行こ、あと1時間くらいで着くはずだから」

 

『了解。アメリアにはなんて言うんだ?』

 

「……考えてる」

 

私は深いため息をついた。

 

「トマホーク、アメリアの友達を探してきて」

 

『了解。お嬢は?』

 

「……アメリアの所に行ってくる」

 

私は重い足取りでアメリア達の所に向かった。

 

「あの……エルさん……」

 

心配そうな顔をしてアメリアは私に話しかけてきた。

……こんな時どんな顔をしていいか……。

 

「……ごめんなさい……」

 

「……いいんです。お父さんもお母さんも悪いことをしてたので……」

 

私は謝ることしか出来なかった。

……容赦しないと思っていたがやはり誰かの家族と分かるときついものだった。

 

「あの……私の友達は……」

 

「今トマホークが探してる。安全なところに隠れてて、トマホークと合流して連れていくから」

 

「わ、分かりました」

 

「・・・あと1時間・・・」

 

私は時計を見て呟く。

恐らくコイツらは増援を呼んでいるはずだ。

カルトの増援でなくても山賊たちが呼んでいる可能性がある。

残弾はあと僅か・・・。

 

『お嬢!』

 

「ん?」

 

『アメリアの言ってた犬を見つけた!来てくれ!』

 

「はいはい」

 

私は急ぐトマホークについて行く。

トマホークが入った部屋に行くと1匹のゴールデンレトリバーが居た。

ただ少し具合が悪そうだ。

 

「大丈夫?」

 

『一昨日からお腹の調子が・・・』

 

「お腹・・・何か変なもの食べた?」

 

『あの・・・ご主人のケーキをちょっと・・・』

 

絶対それだ。

人間の食べる高カロリーな物を犬が食べたらそりゃお腹の調子も悪くなる。

でも念の為病院に運んだ方がいいだろう。

マヤのヘリに乗せてもらおう。

 

「アメリア」

 

「わ、私の友達は・・・」

 

「大丈夫。それより、ケーキなんてあけだらダメだよ」

 

「ケーキ?」

 

「あの子が食べたって」

 

「あぁー!!食べちゃダメだって言ったのに!?」

 

アメリアは大声を出した。

そして犬の方へ向かう。

 

「もう!人のもの食べちゃダメだって言ってたでしょ!」

 

『だ、だって美味しそうだもの!』

 

「そんなガウガウ言ったってダメなものはダメなの!めっ!!」

 

・・・まぁ大事にはならなさそうだ。

 

『お嬢』

 

「ん?」

 

『足音、複数だ』

 

「増援か・・・アメリア、他の子達をこの家に」

 

「わ、分かった・・・!みんなこっちに来て!」

 

そう呼んだ時だった。

銃声が響く。

 

「クソっ!!」

 

私は急いで応戦した。

だが・・・。

 

「うあぁぁぁぁぁ!!!」

 

「!!」

 

外で猫の獣人が足を抑えて倒れた。

 

「待ってて!!」

 

駆け出そうとするアメリア。

私はそれを急いで止めた。

 

「何してんの!!今はダメ!!」

 

「でもあそこで助けを求めてます!!」

 

「そんなの分かってる!!でも今行ったら負傷者が増えるだけだよ!!」

 

私は応戦しながらアメリアに怒鳴った。

・・・こんなの戦闘の基本だ・・・といいたいが彼女は一般人。

今出来ることは急いで奴らを排除する事だ。

 

「クソっ!!30人以上居る・・・!!」

 

私は無線でハル達に連絡した。

 

「ハル!今どこなの!?」

 

《到着まであと10分。リリアのフランカーがあと2分もあれば着く》

 

「了解!みんな、2分耐えて!そうしたらあの野郎共を月まで吹っ飛ばせるから!!」

 

私はそう叫ぶ。

その時だった。

 

「痛い・・・!痛いよぉぉ!誰かぁぁ!!」

 

「っ・・・!!」

 

アメリアが走り出した。

丸腰の状態で。

 

「馬鹿!!」

 

「ルナ、もう大丈夫だからね!」

 

ルナと呼ばれた獣人の元にたどり着いたその瞬間だった。

 

「あぐっ!!」

 

短い悲鳴と共に倒れるアメリア。

やはり撃たれた・・・。

 

「クソっ!!だから言ったのに!!トマホーク!!」

 

『はいよ!!』

 

「今からスモークを投げて2人をこっちに引きずる!そしたら重傷の方に治癒魔法をかけて!!」

 

『了解!!ワイの出番だな!!』

 

「ぼ、僕も治癒魔法掛けれるよ!」

 

そう言って獣人のの少女が申し出てくれた。

 

「分かった!治療は任せるよ!」

 

私はスモークグレネードを取り出す。

 

「アメリア!ルナ!すぐ行くから!!」

 

私はスモークを投げて敵のいる方にMP7をフルオート射撃する。

スモークが十分に展開されたのを確認して走り出した。

距離は約10m。

 

「引っ張るからね!!」

 

2人の服の襟元を掴んで引きずる。

 

「げほっ!」

 

「苦しいのは分かるけど我慢して!!」

 

そして何とか家の中に引きずり込んだ時だった。

 

《こちらエンジェル0-2!》

 

「リリア!いいところに来てくれたよ!」

 

《エル、攻撃目標を教えて!》

 

「スモークの炊かれてる近くの家以外なら何でも攻撃してよし!」

 

《了解!目標確認!!》

 

数秒後大きな爆発音が響く。

私は2人の状態を確認する。

 

「アメリア、アメリア!」

 

「うぅぅ・・・・」

 

小さく呻くがヒューヒューという音が聞こえる。

 

「まさか・・・」

 

私はアメリアの胸を見ると赤黒い服が1部濃くなっていた。

 

「胸ってことは・・・開放性気胸か・・・!」

 

他の出血は・・・

 

「足に1つ・・・」

 

『お嬢、どっちに治癒魔法をかける!』

 

「待って」

 

ルナは腹部に貫通銃創。

出血自体は大した事ない。

重傷は胸を撃たれ足から大量出血を起こしているアメリアだ。

 

「アメリア、痛いけど我慢してよ!」

 

私は止血帯をアメリアの足に撒いて締め上げる。

 

「うぁぁぁっ!!」

 

「治癒魔法使えるって言ったの誰!」

 

「ぼ、僕!鎮痛と体力回復なら・・・」

 

「分かった!アメリアには鎮痛をお願い!」

 

『ワイはどうする』

 

「アメリアがこの怪我だと治癒魔法を使っても効果ないかも。今は出来ることをする」

 

『・・・分かった』

 

トマホークの治癒魔法を使ってもさすがに肺の怪我までは直せない。

まずは止血して胸の穴を塞がないと・・・。

 

《こちら0-2!敵が逃げてくわ!》

 

「了解!」

 

《念の為、上空で待機する。ハル達はブラックホークでこっちに向かってるわ》

 

「了解、その方が助かるよ」

 

「けほっ・・・けほっ・・・」

 

「アメリア、頑張って」

 

足の出血が止まらない・・・。

私はもう一本の止血帯を取り出した。

 

「アメリア、また痛いかもだけどごめんね」

 

弱々しくこくりと頷く。

その時、一緒に助けたルナがアメリアの手を握っていた。

 

「止血帯を締めるよ」

 

「ぐ、うぅぅぅぅ・・・!!」

 

2本の止血帯を使ったおかげで出血は減ってきた。

次は胸だ。

 

「アメリア、悪いけど服を脱がせるからね」

 

アメリアには申し訳ないが、下着も剥ぎ取って上半身を露出させた。

胸の傷口からは泡のようになった血が出ていた。

 

「チェストシール・・・あった」

 

胸の傷口を塞ぐためのチェストシールを取り出す。

救急品を大量に持ってきていて良かった。

 

「アメリア、息を吐ききって」

 

「は、はい・・・ふー・・・」

 

素早く傷口の血をふき取ってチェストシールを貼った。

これで呼吸をしても傷口から空気が入って胸内が圧迫されることはないだろう。

 

「次、ルナ」

 

ルナは比較的傷口が綺麗な上、銃創も左の端の方だったため内蔵へのダメージは少ないだろう。

清潔な包帯で何とかなるかもしれない。

 

「そこのボクっ娘猫」

 

「ぼ、ぼく!?」

 

「名前しらないの。アメリアには鎮痛と適時体力回復をかけて」

 

「僕はマーナっていうの!」

 

「了解マーナ」

 

2人の治療を続けていると遠くからヘリの音が聞こえてきた。

私は外に出る。

 

「はぁ・・・ようやく来た。」

 

私は目印のスモークを投げた。

その時だった。

バチンッ!!っという音と共に腹部に強い衝撃、その後遠くから銃声が聞こえた。

 

「けふっ・・・」

 

口の中に鉄の味が広がり血を吐いた。

その後胸に強い衝撃。

また遠くから銃声が聞こえた。

私の意識はそのまま途切れた。

 

 

〜ハル〜

 

「見つけた!スモーク!」

 

「ふぅ・・・無事で良かった」

 

そう言った瞬間だった。

エルが突然崩れ落ちる。

 

「エル・・・?」

 

そして明らかに撃たれたような動きで倒れた。

 

「エル!!」

 

「な、なに!?」

 

「エルが撃たれた!!」

 

私は叫んだ。

 

「エル!!エル!!」

 

《どうしたの!?》

 

「エルが撃たれた!!弾は3時方向から!!」

 

《3時方向・・・見つけた!!スコープの反射光を確認!!》

 

フランカーがスナイパーの排除に向かった。

私は銃を持って降りる準備をした。

 

「エル・・・待ってて・・・!!」

 

着陸すると同時に副操縦士席から飛び出す。

 

「エル!!」

 

エルは腹部から出血し血を吐いていた。

でも呼びかけても返事がない。

 

「エル・・・!!お願い・・・死なないで・・・!!」

 

私は祈るようにエルの来ていたプレートキャリアを剥ぎ取る。

プレートキャリアに弾痕があったが幸い貫通はしていなかった。

ただ腹部の出血が多い。

 

「急いで病院に運ばないと・・・」

 

「わんっ!!」

 

「トマホーク!良かった、無事だったんだね・・・」

 

「わんっ!わんっ!!」

 

「ごめん、今は構えない」

 

トマホークは必死に何かを訴えていたが・・・。

 

「マヤ!!そっちでエルが助けた人たちを乗せて!」

 

「了解!!」

 

「エル、必ず助けるから」

 

するとトマホークはエルに両足を乗せた。

大きな魔法陣が広がる。

・・・忘れていた、トマホークは1回だけ強力な治癒魔法を使える事を。

 

「げほっ!げほっ!!」

 

「エル!」

 

「うぅ・・・ハル・・・?」

 

「そうだよ!もう大丈夫だから!」

 

「私より・・・アメリアを・・・」

 

エルは苦しそうな声で家の方を指さす。

だが今はエルを安全な場所に運ばないと・・・。

 

「今はエル。ヘリに乗せるから」

 

私はエルの装備を脱がせてかつぎ上げる。

急いでヘリに戻ってキャビンの床に寝かせた。

息を整えたトマホークも横に乗る。

 

「トマホーク・・・なんて私なんかに・・・」

 

「わん!!ぐるる・・・」

 

「怒らないでよ・・・」

 

苦しそうだが腹部からの出血は止まった。

意識もある。

今のうちに家の方に向かう。

 

「リリア、他に敵はいない?」

 

《捜索中。でも早く逃げた方がいいわよ》

 

「了解」

 

私は急いで家に入る。

そこには重傷の獣人の女の子が1人とカルトの服を着た女が1人。

そしてそのカルト信者に治癒魔法をかける猫の獣人が1人。

・・・それと胸から血を流したエルフの遺体も。

 

「・・・こんな奴に治癒魔法なんて必要ない・・・!!」

 

私が銃を向けると猫の獣人が怒鳴る。

 

「やめて!!アメリアは悪くない!!」

 

「ふざけないで!!こいつらのせいでエルが死にかけた!!」

 

するとマヤに銃を抑えられる。

 

「ハル、やめようよ。ホントに悪いやつならこうやってこの子は助けようなんてしない」

 

「・・・っ!」

 

仲間を撃たれたやり場のない怒りをどうしていいか分からず近くにあった木片を壁に向かって投げつけた。

 

「・・・ヘリに運んで。私はエルの様子とヘリを見てくる」

 

「ハル・・・この子だけ運んで」

 

「・・・」

 

マヤはそう言ってエルフの遺体を触った。

 

「・・・分かった」

 

お姫様抱っこの容量で持ち上げてヘリまで急ぐ。

この子が撃たれたと思われる場所に大きな血溜まりが出来ていた。

 

「エル、大丈夫?」

 

「けほっ・・・なんとか・・・」

 

「エルはすごいよ。1人で戦って皆を助けた」

 

「助けてない・・・けほっ・・・この子・・・サナは殺されたし私は子供を殺した・・・」

 

「子供・・・?」

 

「あそこの家・・・」

 

エルが指さすのは二階建ての大きな木造の家。

 

「ねぇ・・・父さんと母さん・・・村のみんなの敵討ちでこんな事正しかったのかな・・・」

 

「・・・」

 

エルは涙を流しながらそう言った。

私はどう答えようか悩む。

 

「・・・それはエルの決めることじゃないよ。それに、撃ちたくて撃ったんじゃないんでしょ?」

 

「・・・うん」

 

「じゃあ大丈夫。ほら、よく言うじゃない。銃を撃つなら撃たれる覚悟を持てって」

 

「・・・」

 

「だから、大丈夫」

 

そう話しているうちにマヤがみんなを連れてきた。

その時犬も1匹連れてきていた。

 

「この子は?」

 

「アメリアって子の友達らしいよ。猫の子に乗せてあげてって言われたから・・・」

 

「了解、これで積み残しはないよね?」

 

「たぶん大丈夫!」

 

何とか全員を乗せてドアを閉める。

 

「帰ろう」

 

「急がないと・・・!」

 

「安全運転でね」

 

「分かってる!」

 

マヤはヘリを離陸させて低空で飛行を始めた。

燃料は十分。

 

「・・・エルはすごいよね」

 

「え?」

 

「1人でこんなに戦えるんだもん」

 

「まぁね・・・マヤも1人で戦う練習してみたら?」

 

「私は可愛い乙女なので無理です!」

 

「ちょっと、それじゃエルが可愛くないみたい」

 

「いや、エルは可愛いよ!」

 

「・・・聞こえてるよ・・・まったく・・・」

 

トマホークの治癒魔法のおかげである程度回復したエルはそう答えた。

その後は空賊に絡まれることも無くテキサスまで帰りつき病院に全員を下ろした。

 

「はぁ・・・大変だったね」

 

「まったくだよ・・・」

 

空港まで帰ってコックピットで2人ともため息を着いた。

格納庫にヘリを仕舞い、2人で病院まで歩く。

 

「ねぇハル。あれはダメだよ」

 

「え?」

 

「アメリアって子を撃とうとしたの」

 

「あ・・・」

 

「理由がどうであれ、無抵抗の人を攻撃するな、法律であるでしょ?」

 

「・・・うん」

 

私は思い出して手が震えた。

私は怒りに任せてなんてことを・・・。

 

「まぁ、私もハルの立場だったら同じことしてたかもだけど」

 

「・・・」

 

「わぁ!ちょっと!泣きそうにならないでよ!責めてるわけじゃないから!!」

 

「・・・」

 

「えーっと・・・えと・・・ほら、よしよし!」

 

「私は犬か・・・」

 

マヤに撫でくり回されながら病院に到着した。

1時間ほど待った時に医者に呼ばれた。

その時エルは重傷だがトマホークの治癒魔法のおかげで何とかなったということだった。

それでも絶対安静で1週間は入院だそうだが。

それと・・・アメリアが死んだ。

アメリアは足と腰、胸を撃たれていた。

足と胸には適切な処置が施されていたが腰の銃創を見落とされていた。

骨盤を損傷し、そこから大量出血を起こしていたそうだ。

ただ治癒魔法のおかげで何とか持っていたが時間がかかりすぎたようだった。

 

「・・・」

 

「間に合わなかったんだね・・・」

 

「マヤのせいじゃないよ」

 

「うん・・・」

 

「悪いのはカルト。エルも、マヤも悪くない」

 

後味の悪い仕事になってしまった。

後から病院に駆けつけたリリアもその話を聞き暗い顔をしていた。

 

「・・・こんな日だからこそ、お酒飲まない?」

 

「賛成、くたくただし飲みたいわ」

 

「私も飲む!」

 

「じゃあいい感じのお店探そ」

 

時刻は午後6時。

飲むには早いが今日くらい良いだろう。

私たちはテキサスの中でもかなりオシャレな店に入り久々に夜遅くまで飲んだ。

明日はゆっくり休もう。

3人とも同じ意見だった。

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