高度20000フィートの大空で   作:イーグルアイ提督

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王都

「さて、報酬も入った事だし観光でもしてく?」

 

「大賛成!!」

 

旅客機護衛の仕事を終え王都の空港で完全にフリーになった。

とは言ってももう夜だが。

それでもせっかくの王都だし観光していこう。

前回来た時は仕事のついでだったしあまり色々見て回る時間も無かった。

 

「それでどこいく?」

 

「せっかくだし王都にしかない美味しいもの!」

 

「言うと思った・・・まぁいいけど」

 

マヤは早速ケータイで情報を探す。

そして早速見つけたようだ。

 

「ここ行こ!」

 

「どこ?」

 

「ピザ!」

 

「いいね、美味しそう」

 

釜焼きの本格的なピザを出すカフェのようだ。

コーヒーも美味しそうだし楽しみだ。

 

「そういえば前に王都に来た時は大変だったよね・・・」

 

「あー・・・そういえばね・・・」

 

飛ばしてきた旅客機は落ちるしせっかく買った銃は山賊のせいで燃えてなくなった。

 

「ねぇ、あの時買った鉄砲って買い直す?」

 

「え?」

 

「ほら、たまにガンナーの仕事もあるし」

 

「んー・・・」

 

私は悩む。

やりたくないが実際たまにガンナーの仕事が回ってくる。

さすがに自宅にあるAK-74NとカスタムしてあるとはいえM4の2つだと厳しいところがある。

拳銃もP226しかない。

 

「ついでに新しいの新調しようかな。新型もありそうだし」

 

「そうだね!」

 

そう話しながらカフェに入る。

私はスタンダードなマルゲリータ。

マヤは生ハムがたっぷり乗ったピザを注文した。

 

「楽しみ!」

 

「うん。写真もすごく美味しそう」

 

「ここね、さっき調べたらレビューが☆5だったの!」

 

「へぇ。それっていいの?」

 

「ちょっと、ハルって戦闘機のこと以外疎くない?」

 

「それはちょっと最近気にしてる」

 

「ほら、もういい年なんだから」

 

「ちょっと。まだ20代前半」

 

「だからだよ!」

 

マヤに色々と流行りやなんやをレクチャーされているとピザが運ばれてきた。

 

「いただきまーす!」

 

「美味しそう」

 

早速食べると酸味の効いたトマトソースとチーズがよく合う。

ピザ生地も香ばしくて美味しい。

マヤも幸せそうな顔をして食べていた。

 

「ん〜っ!」

 

「幸せそうだね」

 

「幸せ〜・・・」

 

作った人もこの顔を見れば・・・と思ったら厨房からチラチラこちらを見ているおじさんが居た。

たまたま厨房から見える席に座ってピザを食べて幸せそうな顔をしているマヤが気になったのだろう。

 

「ほんと、美味しい・・・」

 

美味しいものはすぐ無くなり、あっという間に食べ終えてしまった。

 

「ふぅ、美味しかった」

 

「あと3枚は食べれそうだよ!」

 

「食いしん坊だね・・・帰りに機内で食べればいいんじゃない?」

 

「え、いいの?」

 

「汚さなければ。どうせ帰るの明日だし」

 

「そうする!ていうか明日帰るなら宿で食べようよ!」

 

「私はそんなに食べれないよ」

 

「大丈夫!私が食べる!」

 

「はいはい・・・んで、次は銃?」

 

「うん!ハルが行きたいんでしょ?」

 

「まぁ・・・うん」

 

そういうことで近くの銃砲店に入る。

さすがは王都。

いろいろな銃があった。

私は店員にオススメを聞く。

 

「なにかいい銃はある?その・・・例えばゴツくて正確なのとか」

 

「ゴツくて・・・正確・・・ふむ・・・」

 

初老の店員は顔を少ししかめた後に壁から1つ銃を取る。

 

「んじゃコイツなんかどうだ?SIG MCXだ。」

 

「MCX?」

 

「最近異世界から.300ブラックアウトって弾が伝わってきたの知ってるか?」

 

「ううん。普段は戦闘機乗りだから」

 

「なんだ、戦闘機乗りなのか。まぁいいか。それでこの弾は7.62x39に近い威力を持っててな、しかもサプレッサーとの相性がすごくいいんだ。マガジンもM4に使えるタイプならそれが使える」

 

「へぇ、5.56mmでそんな威力が・・・」

 

「んや、お嬢ちゃん。これは7.62x35mm。5.56mmのバレルで撃とう物ならその綺麗な顔が吹っ飛ぶぞ」

 

「7.62なの?」

 

「口径はな。でもM4タイプのマガジンに30発装填できる。どうだい、威力はAK、消音効果も高い。精度はどうか知らんが、ゴツイし仕事を静かに終わらせれるぞ」

 

「・・・」

 

「今ならサプレッサーとKey-modレールつけて30万ドルでどうだ」

 

「うーん・・・」

 

私はどうしようとマヤを探すと他の店員に捕まっていろいろと話していた。

 

「じゃあ・・・購入で」

 

「お!いい買い物したぞお嬢ちゃん!AP弾150発と300BLKって記入したP-MAG2つ付けてやるよ!」

 

「ありがと」

 

ガンケースに詰めてもらいマヤのところに行く。

 

「あ、ハル!買ったの?」

 

「うん。SIG MCXって銃」

 

「あれ、SIGって事はハルのよく使ってる226と同じ異世界メーカーじゃない?」

 

「あ、確かに」

 

これも何かの縁だ、ハンドガンは変えずに使おう。

 

「マヤは?」

 

「んー・・・私は・・・あ、そうだ!ハルにプレゼント上げるよ!」

 

「え?い、いいよ」

 

「いいのいいの!まだスコープとか買ってないよね?」

 

「うん。まだ」

 

「じゃあ似合うの買ってあげる!店員さーん!」

 

「・・・ありがと」

 

店員を呼びに走るマヤに向かって呟いた。

そして10分ほどで戻ってくる。

 

「これ!」

 

「いいの・・・?」

 

マヤはせっかくだからとSIG製ドットサイトROMEO4HとマグニファイアJULIET4を買ってきてくれた。

サイトもSIG製とはオシャレなものだ。

 

「ありがとう・・・!」

 

「えへへ、ハルが嬉しそうな顔してくれるからそれで満足!」

 

さっそくつけてみたい欲に駆られるがさすがに今日は休もう。

そう思った時だった。

 

「あ!ねぇねぇ!ここだけ行ってから宿に行かない?」

 

「え?」

 

マヤが指さすのはお化け屋敷の広告。

内容はお化け屋敷というが出てくるのは幽霊やアンデッドではなく屋敷内に立てこもった殺人鬼のようだ。

そして、銃火器の使用が出来る。

この殺人鬼は魔法使いが作った泥人形なので何処に弾をぶち込んでも大丈夫なようだ。

さすがに実弾は使えないが、訓練用プラスチック弾が使用出来る。

ちょっと楽しそうだった。

 

「ねぇ!行かない?」

 

「じゃあ、宿に行く前に1回だけ」

 

「やった!」

 

歩くこと20分。

目的の施設につく。

そこは本物の廃墟を使用した施設で私たち以外にも3チームが同時に遊べる。

クリア条件は殺人鬼を排除し持っている鍵を使って脱出する。

失敗条件は殺人鬼にHPをゼロにされたらこちらの負けだ。

HPは腕時計型の端末に表示される。

ただ同時に別のチームも入るので誤射がありえるがそこは自己責任らしい。

誤射自体ではHPは減らない仕様だそうだが・・・。

とにかく誤射で怪我しても施設としては責任をおわないという誓約書を書かされた。

 

「誓約書なんてすごいね・・・」

 

「ここまですると逆に楽しみになってくる」

 

「そだね!」

 

このお化け屋敷、設定はプレーヤーは賞金首の殺人鬼の調査をしていた冒険者でこの屋敷にいるのを突き止めたはいいがトラップにより閉じ込められ、殺人鬼を排除して脱出するしか無くなったということらしい。

 

「マヤ、銃は?」

 

「私はハンドガン!でもほら!ハルとお揃いのメーカーだよ!」

 

「知ってる。ずっとそればっかりだもんね」

 

「だって初めてハルと組んだ時から使ってる銃だもん!」

 

「思い入れのあるってことね」

 

「そういうハルもでしょ!」

 

「まぁね・・・」

 

私もマヤと初めて組んだ時からずっとSIG P226を使っている。

稀に別の銃を使うが結局気づけばこの銃を握っていた。

使いやすいのも理由だが、やはり思い入れがあるのは間違いない。

 

「ハル、これ終わったら帰りにお酒買って帰らない?」

 

「いいね、ちょうど飲みたかった」

 

「じゃあ帰りに買って帰ろ!」

 

なんて話していると私たちの順番になる。

受付で注意事項を聞き弾薬を受け取る。

弾薬は1人120発。

威力は人に当たるとアザと内出血、運が悪いと出血するが貫通するほどの威力はないようだ。

弾は先端が丸いゴムになっていて訓練用のプラスチック弾と聞いていたがプラスチック弾というよりはゴム弾のようなイメージだ。

 

「では、お楽しみください」

 

係にそう言われてドアが開けられる。

中は薄暗く、若干埃っぽい。

雰囲気抜群だ。

 

「マヤ、ライトを任せる」

 

「了解!」

 

ライトを付けようとした時だった。

廊下の奥からガリガリという音が聞こえた。

 

「なに・・・?」

 

「て、照らすよ?」

 

「うん」

 

ライトで前を照らすとそこには溶接用のお面を被り、胸にはプレートキャリアを装着して大きなハンマーを引きずりながら近づく大男がいた。

 

「自分から出てくるなんてね」

 

私はセミオートで顔を狙って撃った。

すると弾は顔面のお面で弾かれる。

 

「うそっ!?」

 

「ご、ゴム弾だから!?」

 

「普通に防御力高いんだと思う!!」

 

プレートキャリアで守られてない腹部を撃つがあまり効果が無さそうだ。

うめき声のような声をあげたあと走り出した。

 

「うわぁぁぁ!?!?」

「ぎゃぁぁぁぁ!!!」

 

私とマヤは叫んで逃げる。

左にあった階段を駆け上がった。

 

「な、なにあれ!?」

 

「やばいでかいこわいぃぃぃ!!」

 

ハンマーを振り回しながら追いかけてくる。

私はワンチャンを狙って足を狙って撃ってみた。

するとさすがに足には効いたのか動きがトロくなる。

 

「逃げるよ!」

 

「あの状況でよく当てれるね!?」

 

「なんか当たった!!」

 

私たちは近くの部屋に逃げ込んで鍵をかけた。

 

「はぁ・・・はぁ・・・」

 

「ぜぇ・・・はぁ・・・やべぇあれ・・・」

 

「作戦を考えないと・・・」

 

恐らく顔面と胸部は弾丸を通さない。

狙えるのは腹部と脚部、腕だ。

さすがに何発も喰らえば倒れるはず・・・。

そう考えていると・・・。

 

『ひぎゃぁぁぁ!?』

 

『うおぉぉぉぉ!?!?』

 

他のプレーヤーの悲鳴と銃声が聞こえてきた。

そしてアナウンスが流れる。

 

《第2チームの方々、HPがゼロになりました。お近くのドアから退出してください》

 

「はや・・・」

 

「て、ていうか相手強くない!?」

 

「そりゃあんなハンマーでぶん殴られたらね・・・」

 

「どうする・・・?」

 

そこで私は1つ思いつく。

階段なら・・・。

 

「階段なら動きが遅くなるし避け辛いはず・・・」

「う、上手くいく?」

 

「やってみないと」

 

「そ、そうだね!」

 

そしてドアを開けて出た時だった。

 

「・・・わお・・・こんちわ」

 

「・・・はろー」

 

目の前に殺人鬼が立っていた。

ハンマーを振りかざしている。

 

「ほわぁぁぁぁぁ!?」

 

「ひやぁぁぁぁぁ!!!!」

 

私は自分でもこんな悲鳴を上げれるのかとびっくりするくらいアホみたいな悲鳴をあげ、マヤは逆に女の子らしい悲鳴を上げていた。

もちろんというか・・・2人とも思い切りハンマーでぶん殴られ死亡判定だ。

ハンマーは柔らかいスポンジでまったく痛くは無かったが死ぬほど怖かった。

 

「ひぐっ・・・ごわがっだよぉぉ・・・」

 

「ゆ、夢にでそう・・・」

 

出口から出て受付で弾薬を返納しながらそう嘆いた。

入って10分でやられるとは・・・。

というかどうやらこの施設、生存率1桁らしい。

オープンしたのは半年前だが脱出できたのは片手で数えれるほどのようだ。

 

「まぁ、楽しかったね」

 

「うぅ〜・・・」

 

「はいはい、泣かないの」

 

マヤの頭を撫でながら帰り支度をする。

あとはお酒を買って帰ろう。

 

「宿の近くの商店でいい?」

 

「どこでもいいよー!」

 

ここから宿までは片道10分。

のんびり歩きながらいろいろと話す。

 

「ねぇハル」

 

「んー?」

 

「ハルってさ、初恋は?」

 

「なに、いきなり」

 

「なんとなく」

 

「そういうのはお酒を飲みながら」

 

「おぉ・・・乗ってくれるなんて珍しい」

 

「今日はマヤが良いものプレゼントしてくれたから。こんな安っぽいお礼で申し訳ないけど」

 

「ううん!こうやって話せるだけでいいよ!」

 

「そっか」

 

そう話しながら歩くこと数分、目的の商店に到着し中に入る。

今回はせっかくなのでワインを買ってみた。

甘めの赤ワインのようだ。

 

「おつまみは?」

 

「チーズとローストビーフとか」

 

「じゃあ私はスナック買うね!」

 

「了解」

 

ワインのボトル1つと好きなおつまみ何個か買って店を出た。

宿は目の前だ。

 

「ふぁ・・・」

 

「眠そうだね、ハル」

 

「そりゃオートパイロット入れてたとはいえ結構な時間飛んでたから・・・ふぁぁ・・・」

 

「・・・お酒をやめて寝る?」

 

「ううん。飲む。それより先にお風呂入ろ」

 

「そうだね!ここのお風呂、各部屋に小さい温泉みたいなの着いてるみたいだし!」

 

「いい宿だね」

 

この宿は依頼を受ける時に航空会社が取ってくれた宿だ。

報酬にこの宿に宿泊できる権利が含まれているので遠慮なく泊まらせてもらおう。

宿に入りチェックインを済ませると部屋に入る。

荷物を置いてさっそくお風呂だ。

 

「わー!温泉だー!」

 

「ほんと、小さいけどしっかり温泉だね」

 

「おっさきー!」

 

マヤは勢いよく湯船に飛び込んだ。

湯船はヒノキで作られていて浴室には木のいい香りが漂っていた。

窓からは空港がよく見える。

飛び立っていく戦闘機や旅客機の灯りが見えた。

 

「マヤ、先に体を洗う」

 

「じゃあ洗いっこしよ!」

 

「いいよ」

 

「じゃあ先に私がハルを洗う!」

 

「変なことしないでよ」

 

「ぬふふ、どうかな?」

 

「やめてよホントに・・・」

 

とりあえずシャワーの前に座る。

マヤは背中から優しく洗ってくれていたが何故かやたらと脇腹をくすぐりたがる。

 

「んっ・・・ちょっと・・・」

 

「んふふ、ここがええんかー?」

 

・・・あとで覚えてろ

 

「んぁっ・・・」

 

「あ!今の声色っぽい!」

 

「やめてって・・・」

 

「いいじゃん女同士なんだし!ほら、前!」

 

「前!?」

 

そう言って前に回り込んできた。

そのまま押し倒された。

 

「ちょっと、危ないよ・・・!」

 

「だってこうでもしないと暴れるじゃん」

 

「そりゃ暴れるよ・・・」

 

「じゃあ洗っちゃうよ!」

 

「や、やめ・・・」

 

その後10分近く洗ってんのか洗ってないのかとりあえず触られたり揉まれたり・・・

 

「はぁ・・・はぁ・・・ゆ、許さない・・・」

 

「んふふ、ごちそうさま」

 

「こ、今度はこっちの番だから!!」

 

「うひゃあっ!?」

 

「はぁ・・・はぁ・・・覚悟しなさい・・・」

 

「ハ、ハル?い、いきなり前から洗うタイプ?」

 

「さぁ?どこからでしょう」

 

私は思い切り脇から洗ってやる。

 

「あ、あははは!!や、やめ!そこ弱いからぁ!!」

 

「ふーん、弱いんだ」

 

「ひぃぃぃぃ!!!」

 

そのまま20分近くやられた事をほぼ倍にして返してやった。

 

「はぁ・・・はぁ・・・うぁ・・・」

 

「これでおあいこ」

 

「うぅー・・・大事なものを失ったよ・・・」

 

「それはこっちもだよ・・・」

 

2人して遊んでたせいで体が冷えてしまった。

私たちは湯船に入る。

 

「あったかー・・・」

 

「きもちいい・・・」

 

「明日は何時に帰るの?」

 

「お昼すぎ。じゃないと疲れも取れないしお酒も抜けないでしょ」

 

「そうだね!」

 

そのまま10分くらいゆっくりと温まりお風呂から出る。

ここからは楽しいお酒タイムだ。

 

「じゃ、かんぱーい!」

 

「かんぱい」

 

ワインを1口飲む。

 

「んー!おいしー!」

 

「うん、飲みやすい」

 

「だね!」

 

思い出話や面白かった話で盛り上がっているとマヤが思い出したように私の初恋の話をしてきた。

 

「そうだ、ハルの初恋の話聞いてなかった」

 

「・・・忘れてて欲しかった」

 

「でもほら!飲んでる時に話してあげるって言ってたじゃん!」

 

「はぁ・・・あんまりいい話じゃないよ?」

 

「いいの!ハルのそういう話聞いてみたい!縁がなさそうだし!」

 

「一言余計だよ・・・」

 

とはいっても・・・初恋どころか恋らしい経験がない・・・。

 

「んー・・・あ、そうだ」

 

「お!思い出した?」

 

「うん、アレは私がたぶん12歳くらいの時だと思うんだけど・・・」

 

それは私がやる事も無く、暇だったので拳銃片手に行くなと言われていた森の中に探検に行った時の話だ。

私は案の定森の中で迷い、帰り道を探していた時に狼と遭遇、銃で追い返そうにも怖くなり撃てなかった。

その時偶然近くを通りかかったガンナーが助けてくれた。

純粋な私はその時助けてくれた人を見てちょっとキュンとした・・・というくらいだ。

 

「・・・それだけ?」

 

「それだけ」

 

「も、もっとこう何か幼なじみがーとか無いの!?」

 

「ない。ていうか私の生まれた村に同い年の男の子居なかった」

 

「ほんと・・・村生まれってそういうの無いからつまんないよねー・・・」

 

「都会生まれだってきっとそんなに変わんないよ。ところでマヤは?」

 

「え?」

 

「初恋の話。ていうか前に何かいい人居るって言ってたじゃん」

 

「う・・・覚えてた・・・?」

 

「まぁね」

 

いつだったかに同じ村出身の戦車乗りの男の人に気があるとか言っていたのを思い出す。

 

「・・・振られた」

 

「え!?」

 

「なんか・・・パーティの通信士の子といい関係みたい」

 

マヤはちょっと悲しそうな顔だった。

私は気まずい気持ちになる。

 

「ごめん・・・知らなくて」

 

「ううん!いいのいいの!はー・・・まったく私の魅力に気づかずにほかの女に行くなんてね!」

 

明るく言うがどこか悲しそうだった。

 

「マヤ」

 

「ん?・・・んーっ!?」

 

私はマヤを抱きしめた。

 

「ど、どうしたの!?」

 

「なんとなく。でも辛かったよね」

 

「・・・うん」

 

「じゃあほら、こういう時は泣いたっていいんだよ」

 

「うぅ・・・ハルの優しさが身に染みるよぉ・・・」

 

「今日は好きなだけこうしてあげる」

 

「じゃあ・・・寝る時にしてほしい・・・」

 

「わかった、これだけ飲んだら片付けて寝よ」

 

「うん!」

 

ワインを飲み干し、食べかけのおつまみを食べきって片付けた。

歯を磨いたらそのままベッドに入る。

 

「ほら、こっちおいで」

 

「うぅー・・・ママー・・・」

 

マヤは私にガッシリと抱きつき少し震えていた。

初恋で今までずっと思い続けて振られたんだ。

そのショックはきっと大きかっただろう。

私もマヤのことをしっかりと抱きしめているとお互いの体温で暖かくなったのもあり寝てしまった。

 

「ん・・・」

 

差し込む朝日で目が覚める。

 

「くぁ・・・」

 

マヤはいつの間にか離れて寝ていた。

 

「ふふ・・・気持ちよさそうな顔してる」

 

抱きついていて落ち着いたのか気持ちよさそうな顔で寝ているマヤのほっぺたをつついてみた。

 

「うにゅ・・・」

 

「ふふっ」

 

しっかり寝れて疲れも消えてお酒も抜けた。

あとは安全に帰れるように気をつけよう。

私はベッドから起き上がって洗面所に向かった。

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