ある日の深夜。
みんな寝静まっている中私は何故か寝つけれずに起きていた。
「ん・・・」
何だかすごく嫌な感じがしたからかもしれない。
「なんでだろ・・・」
とりあえず水でも飲もう。
そう思ってベッドから起き上がったその時だった。
街中にけたたましい警報が鳴り響く。
「な、なに!?」
隣で寝ていたマヤが飛び起きた。
そして大音量でアナウンスが流れる。
《く、空襲警報!空襲警報!!所属不明の大型機数機が南西から接近中!!距離60km、速度50!》
「60km!?なんでそんな近くに・・・」
「それより速度50ノット・・・?」
「と、とにかく空港に急ごうよ!」
「な、なにごとなの!?」
「聞いた通りだよ、急ごう」
急いで身支度を始めた。
そして続々とみんな起きてくる。
「ご、ご主人様!」
「ハル、少し家を空けるかも」
「家ならお任せ下さい!」
「あと、誰か今日この前の怪我の検査で入院してるエルを迎えに行ってあげて」
「それなら私が行くよ!」
「分かった、アヤは一応銃を持っていってね」
「了解!」
まったく検査入院が終わったエルの快復祝いをしてやろうと思ったのに……
まぁいい、とにかく早くその所属不明機を確認して仕事を終わらせよう。
《敵襲!敵襲!!壁の外に多数の戦闘員!》
「なんだってこんな街を・・・!」
「ハル!壁の外なら私のアパッチを使えば・・・」
「そっか、アパッチならこの家に置いてあるし・・・じゃあ街の防衛のお手伝いに行こうか」
「了解!」
「リリア、ミオは迎撃任せたよ。私達も外が終わったら行くから」
「分かったわ!」
「了解です!」
私とマヤは家の格納庫に急ぐ。
こんなこともあろうかとアパッチにはフル武装を施してあった。
初動で戦闘ヘリが使えれば敵を追い返しやすいだろう。
「マヤ、操縦よろしく」
「了解!」
エンジンのスタートアップを始めている間に無線を街の緊急周波数に合わせる。
《壁の砲台が1つ破壊された!》
《アイツら中に入るつもりだぞ!!》
《押し返せ!!》
《撃ちまくれ!!》
私は壁の防衛隊に今から行く事を伝える。
「こちらエンジェル0-1。AH-64が一機、武装はヘルファイアミサイル8、70mmロケット38、機関砲1200。これから壁に向かって移動する。支援可能時間は1時間」
《助かった!敵が多すぎるんだ!》
すぐに離陸して壁に向かう。
テキサスは直径50km程度の円形の街で、西側が海に面している。
敵は東側から地上部隊、南西から低速の飛行部隊が迫ってきていた。
「まったく何処のバカなんだか・・・」
「早く片付けてエルの退院祝いしないとね!」
「そうだね」
ヘリは10分程で目的の場所に着く。
目的地はいろいろな場所から炎が上がっていた。
その時、私は壁の外を見て異変に気づく。
恐らくマヤも気づいたかも知れない。
敵側から銃火器を使った時に見えるマズルフラッシュが見えない。
全員がサプレッサーを付けているなら分かるが。
代わりに見えるのは緑や赤の線が壁に向かって一瞬見えたりしていた。
「魔法・・・」
「相手はなんなの・・・!?」
「サーマルで確認する」
ガンカメラで目標を確認するとそこに見えたのは人の形はしているものの、明らかに人やエルフとは違う骨格、鎧の様な装備が見えた。
これは・・・。
「嘘でしょ・・・昔本で見た魔王軍とそっくりなんだけど・・・」
「と、とにかく助けなきゃ!」
「そうだね、マスターアームON!」
私はまずヘルファイアを選択した。
壁の防衛隊に警告する。
「こちらエンジェル0-1、レーザー誘導ミサイルで攻撃する」
《了解!全て任せる!なんでもいいから1番強い武器で適当に攻撃してくれ!!》
「了解、レーザー照射」
壁に向かって攻撃魔法を放っている魔法使いの集団にレーザー照射した。
「3…2…1…ライフル!」
「防衛隊へ!ミサイル発射!」
《了解!》
ミサイルはトップアタックモードで魔法使いの頭上に命中する……そう思った時、ミサイルは何かに弾かれるように明後日の方向に飛んで行った。
「外れた!?」
《エンジェル0-1!こちらガーディアン2-5!ミサイルは命中せず!繰り返すミサイルは命中せず!!》
「ガーディアン2-5!魔法か何かでミサイルが弾かれた!確認できる?!」
《確認できない!》
《エンジェル0-1!デカい化け物がこっちに迫っている!支援求む!!》
「クソっ……!ほかの人は何してるの!?」
「まだ離陸できてないんだよ!機関砲ならいけるんじゃない?!」
「分かった!機関砲で攻撃するよ!」
壁に向かって大きな斧を振り回しながら接近するオークに対して急降下で接近する。
「30mmを喰らえ!!」
オークに向かって30mm機関砲弾を叩き込む。
さすがに機関砲までは防御が間に合わなかったのか30mm砲弾を浴びた10mはあるオークの体は所々がちぎれ飛び絶命した。
「ターゲット排除!」
《了解!確認した!》
《こちら2-4!戦車が到着した!》
《こちらガーディアン6-4!騎兵隊の到着だぜ!!》
《頼んだぜ戦車野郎!》
《任せな!おらどいたどいた!!》
壁から10台ほどのT-90が現れた。
一斉に砲撃を開始し突撃部隊だったオークの群れは一掃された。
さすがに分が悪いと思ったのか魔法使いは防御魔法を展開して撤退を始めた。
「こちらエンジェル0-1。敵が撤退を開始」
《了解!助かった!》
「ハル、私たちはどうする?」
「ほかのヘリも上がり始めた、私たちは空港に行こう」
「了解!」
空港に進路を向けて急ぐ。
無線を聞く限りやはり襲撃に来たのは魔王軍のようだ。
ただし100年前の魔王軍とは違う。
昔は剣やちょっとした攻撃魔法をメインに戦っていたが、今回は遠距離攻撃魔法と防御魔法をメインに攻撃してきた。
防御魔法は物によったら戦車の砲弾すら弾く。
おまけに古い銃がメインとはいえ、銃火器も使いだした。
「魔王軍……」
「100年前に負けたんじゃなかったの!?」
「魔王は生きてたみたいだからね……」
でも今回の攻撃は前のような大規模な世界同時攻撃かどうかは分からない。
実際、前から小さな攻撃自体は何回もあった。
恐らく今回も戦術研究だとは思うが……。
「とにかく魔王軍がどうのこうの言う前に撃退するよ。私たちの家を守るためにも」
「そうだね!」
時刻は朝の4時。
もうすぐ明るくなってくる。
もしかすると今回は深夜を狙った夜襲で夜明けと同時に撤退するつもりかもしれない。
敵の通信装備がどうかは分からないが逃がせばデータを持ち帰られる。
それは阻止したい。
「ハル!おじさんがトムキャットのエンジンをかけてくれたって!」
「ほんと?それはありがたい」
それなら降りてすぐ乗り込んで飛べる。
管制塔からは格納庫前に着陸していいと許可を受けたのでそのまま降りて機体に走った。
「ありがとうおじさん!」
「お易い御用じゃ!嬢ちゃんには悪いが今回は敵襲だから勝手にアムラームを積ませてもらったからの!」
「大丈夫。むしろ有難いよ」
「リリア嬢ちゃんとエルフの嬢ちゃんはもう上がってるぞぃ!」
「了解、あとは敵を追い返してくるから」
「おう!気をつけてな!」
私たちはタキシングを始める。
誘導路は急いで飛び立つ航空機で溢れていた。
《管制塔より待機中の全機!滑走路が空き次第進入して離陸してください!離陸間隔は無視して構いません!》
《こちらガーゴイル、離陸するぞ!》
《バケモンどもを追い返すぞ!》
次々と離陸し私たちの順番は10分ほどで来た。
「離陸するよ」
「了解!」
「レーダーはもう起動してて」
「もうしてるよ!」
「おっけー」
私たちはすぐに離陸してリリア達を探す。
「リリア、ミオ。こちらエンジェル0-1。いまどこ?」
《ハル!こちら0-2、今街に近づいてる飛行物体に向かってるところ!》
「了解、私達も向かうよ」
空には多種多様な航空機が並んで飛んでいた。
恐らく魔王軍はどのくらいの時間でどのくらいの航空機が飛んでくるのかも測っているかもしれない。
《こちら王国軍AWACSキングアイ。テキサスからスクランブル発進した飛行隊へ、先行していた騎士団航空隊より連絡あり。敵は帆船のような船型の物体、周囲に防御魔法を展開している模様》
《防御魔法!?そんなのどうやってぶち抜けばいいんだよ!》
《誰かー、こん中に貫通魔法使えるやついるかー?》
《おいおい、天下の騎士団様だろ。そいつらが相手に出来ないんじゃ無理だぜ》
確かに、王国軍の中でも精鋭部隊が先に突っ込んで倒せないのにどうしろと言うのか……。
そう思っているとAWACSからある命令をされた。
《防御魔法でぶち抜けないから数で押す。いくら鉄壁の防御魔法とはいえ、今ここにいる全機から攻撃されれば持たないはずだ》
《なるほど、飽和攻撃か》
《面白いじゃねーか、やったろうぜ!》
《はっはー!見てろよクソッタレのバケモンどもめ!》
確かにこの量の航空機から同時にミサイルを撃ち込まれれば御魔法も臨界状態になり崩壊するかもしれない。
やってみる価値はある。
《全機、同時攻撃に備えろ》
「同時攻撃か、面白くなってきた」
「魔王軍に人間様の方が強いって教えてやろうよ!」
「そうだね」
同時攻撃は5分後。
目標がレンジに入ったら攻撃開始だ。
レーダーに目を落としたあとふと前を見るとリリアとミオのフランカーがいつの間にか隣に並んでいた。
《探したわよ》
《見つけたのは私です!》
《……ミオは見つからないって騒いでただけ》
《ちょっと!それ言わないでくださいよルイ!》
「あはは……」
いつもの賑やかなメンツが揃う。
やっぱりこのメンツで飛ぶのが1番安心するし楽しい。
《そうだ、ハル。今回の報酬聞いた?》
「ううん、すぐにヘリに乗ったから。いくらなの?」
《参加者全員に1000万ドルで1番貢献した冒険者には豪邸とオリジナルのステルス戦闘機らしいわよ》
「豪邸はいらないけど、ステルス機は欲しいね」
目立たずに飛べるし……。
「じゃあちゃちゃっと片付けて報酬貰って美味しいもの食べに行こうよ!」
「そうだね」
なんて色々と話してる間に敵は射程に入った。
それにしても帆船型とは聞いていたが、普通の帆船なんかじゃない。
全長1kmはあるんじゃないかと言うくらいに巨大だ。
「バカでかいのが……」
《デカけりゃいいってもんじゃないってこと教えてやるわ!》
「その通りだね……ロックオン」
《0-3、ターゲットロック!》
《キングアイより全機、射程に捉えたものから順次攻撃開始!》
《待ってました!FOX1!》
《FOX3!!》
「私達も遅れないようにっと……FOX3!」
《FOX3!FOX3!!》
何十発ものミサイルは魔王軍の船に向かって突っ込んでいく。
そして数十秒後……。
「3…2…1…命ちゅ……嘘……!?」
《キングアイ!ダメだ!ミサイルは目標に到達せず!》
《攻撃効果なし!誰だよ飽和攻撃ならできるって言ったやつ!!》
「魔王軍も昔のままじゃないってことか……」
「ど、どうするの!?」
「どうするっていったって……」
相手は強力な防御魔法を展開している。
100発近いミサイルを同時に被弾して無傷なんてどうしていいか……。
そう思っていた瞬間、船からレーザーのような物が発射された。
近くにいた戦闘機がその攻撃を受けて爆散した。
《グリフィンロスト!ちくしょう!!》
《なんだよ今の!!》
《強力な攻撃魔法だ!弾速が恐ろしく速い!!》
「狙われないように逃げないと……!」
船からはそれを皮切りに攻撃魔法が何発も発射され、まるで蚊でも落とすかのように味方機が落ちていく。
《クソっ!!全機一時退避……ちょっと待て、IFFに応答のない機体が……ふざけやがって空賊か!!》
《速いぞあの空賊機!!》
《全機!邪魔者を撃ち落とせ!!》
AWACSからそう指示が出たと思った時、その空賊機から無線が入る。
《おい撃つな!別にあんたらを攻撃したいわけじゃねえ!》
《空賊だって住む場所くらい守りたいんだ。今はあんたらの味方だよ》
《機体が古いからって舐めるなよ、こっちはベテランばかりだからな》
《……了解、ただし妙な真似したらまとめて叩き落としてやるからな》
レーダーを見ると20機ちかい空賊機が接近していた。
この数ならもしかすると……。
《よし、全機もう一度飽和攻撃をしかける》
《了解!》
1度離れた機体が旋回して横一線に並び始める。
「これで……終わるといいけど」
《何言ってるの、終わらせるのよ》
「そうだね」
もう一度敵をロックオンしてAWACSの合図を待つ。
そして……
《全機もう一度だ!やれ!》
「FOX3!」
《FOX1!》
《ガーゴイル、FOX3!》
《よっしゃやったれー!!FOX3!》
再び100発近いミサイルが帆船に向かった。
「よし……いけ!」
「命中まで3…2…1…」
今度こそ……そう思ったが再び船の周りに魔法壁が展開された。
1発も船に届かなかった。
「クソっ……!」
《ダメか……》
《ダメならダメでさっさと街から貫通魔法使える魔法使い連れてこいよ!!》
《誰かこん中に貫通魔法使えるやついねぇのか!!》
無線は怒号で溢れていた。
それもそうだろう。
今度こそやれる、そう思った矢先だった。
《今、街に貫通魔法を使える魔法使いを探してもらっている。少し待て!》
《んな事してたら全滅……おいちょっと待て……アイツ動いてないか……?》
「え!?」
《こちらエンジェル0-3!敵船が移動開始!速力は……150ノット!》
《進路をテキサスに向けてるぞ!》
《クソ……全機!なんでもいいから攻撃しろ!》
「なんでもいいからって……」
「効果がないのにどうしろっての!!」
マヤが後ろでそう怒鳴る。
何とかしてでもヤツを落とさないと……。
街の民間人も心配だが、何よりもまだエル達が街にいる。
彼女らに何かあったら……。
でもどうやってアイツを攻撃する……。
そう悩んでいた時だった。
《こちらテキサス管制塔!魔王軍が壁を爆破して街に進入しています!近接航空支援を要請!!》
「そんな……!!」
《おい俺たちの出番だ!行くぜ野郎ども!》
《了解!》
5機のホーネットが旋回して街に向かった。
5機で足りるか……。
そう思っていた時だった。
《クソっ!また新しいレーダー反応が……なんだよコイツ……Mig-31が単機!高速接近!》
「MIG-31!?」
《テキサス近辺でそんなのに乗ってるのって……》
《リリアさん、知ってるんですか?》
《知ってるも何も賞金首よ!マッハ3で迫ってきて輸送機なんかを落としていくやつだわ!》
そいつの事は私も知っている。
スピード狂の山賊がMig-31を徹底的に改造してマッハ3まで出せる。
おまけに本来は5Gまでしか負荷をかけれず、格闘戦が苦手なこの機体だが改造と強化を施し9Gまで耐えれるようになっているらしい。
賞金首の名称もスピードスターとそのまんまな名前だ。
《こちら王国軍AWACSキングアイ!接近中の航空機!それ以上近づければ敵と判断し撃墜する!》
魔王軍で手一杯の私たちに賞金首まで突っ込んでこられたら溜まったもんじゃない。
そう思った時だった。
その賞金首から無線がはいる。
《いや、遅れてすまねぇな!オイラもほかの空賊と同じで住む場所を守りたいだけだ!それに無線聞いてたぜ!貫通魔法使えるやつ探してんだってな!》
《探してはいるが、お前になんの関係がある》
《そう邪険にすんなって。オイラはその貫通魔法使えるぜ。1発ぶちかましてやる!》
思いもよらない事態だった。
今ここで頼れるのはこの賞金首という事になる。
だが、このまま彼が嘘をついていると決めつけて放置すれば街が危ない。
ここは賭けるべきだろう。
《賞金首が何様だよ!どうせ撹乱するための嘘だろうが!》
《俺の仲間は昔お前に落とされた、あの時のお前の笑い声がまだ耳に残ってるぞクソッタレ!》
ほかの冒険者達は無線に向かって怒鳴る。
それもそうだろう。
彼に仲間を落とされ、そして自身も撃墜された経験のある者だっている。
でも今は彼しかいなかった。
「……私は信じるよ、貫通魔法使えるって」
「ハル!?」
「これが嘘なら取り囲んで落とせばいい。そうなるって分かってるのに自分から言ってきたんだよ」
《……》
《私も信じるわ》
《私もです!》
《……嘘だったら叩き落としてやるからな》
私たちの声を皮切りに皆が彼の話を信じると言った。
そしてAWACSから指示が出る。
《よし、非常に不本意だが賞金首を援護して船に接近させろ!ほかの機体は攻撃を引きつけるんだ!》
《了解!》
Migはアフターバーナーを全開にして突っ込んでいく。
《っしゃあ!オイラに任せとけ!》
船からは防空攻撃のように攻撃魔法が放たれていた。
その攻撃で何機も落ちていく。
《照準よし!》
その直後、彼の機体から魔法陣が広がった。
そして……
《FOX1!》
ミサイルが放たれた。
ミサイルは吸い込まれるように船に直撃する。
しかし……
《嘘だろ!?》
「どんだけ硬いのあの魔法壁……!!」
ミサイルは魔法壁を貫通出来ず、船の目の前で爆発した。
《クソ……!!》
《硬すぎるだろ!!》
この場にいる全員が絶望し始めた。
《こうなったら俺は帰らせてもらうぜ。家族連れて逃げないとな》
《あぁ、俺もそうさせてもらう》
何機か反転し始めたと思うとそれにほかの機体が続いて戦闘から離脱しようとしていた。
「ハル……私達も……」
「ダメ……そんなことしたらエル達が……」
「帰ってみんなを連れて逃げようよ!ヘリだってあるし!」
「そんなこと言ったってもう街に入られてるんだよ!?それにこの数の戦闘機が降りるの待ってたらあの船が到達するくらい分かるでしょ!?」
「じゃあどうやってあんなの落とすの!?あれだけやって無理なんだよ!!」
「そんなこと分かってる!」
私は感情的になってマヤと言い合う。
その時、賞金首から無線が入った。
《……なぁ、テキサスにオイラの家族がいるんだ。調べたら分かるだろう。娘がそこにいるんだが、愛してるって伝えてやってくれ》
《待て、何を考えてるんだ》
《それと、オイラの家族を守ってやってくれ。父親が賞金首だって虐められてるかもしれない》
《何をする気だ!》
《……あのデカブツの魔法壁を抜くには質量が足りないんだ。でもこの機体なら確実に貫ける》
「待って!そんなことしたらアンタは!」
《へへ、女の子もいるのか?いい声してるねぇ》
「冗談言ってないで他の方法を考えようよ!!」
マヤが無線に向かって叫ぶ。
この賞金首は自身の機体に貫通魔法をかけ、突入するつもりだろう。
《ふ、ははは!最高じゃねえか、賞金首が街を救う!いいシナリオだ!》
Migはアフターバーナーに点火して加速する。
《よぉし待ってろクソッタレの魔王軍共!!テメェらのケツに大穴開けてやらぁ!!》
Migの周りには魔法壁が広がり機体が黄色の光に包まれた。
《行くぜ!とっつげきぃぃぃぃぃ!!!!》
「……頼んだよ」
私はそう呟くしか出来なかった。
機体はどんどん船に近づく。
《ふははははっ!!よう、バケモンども!!人間舐めんなよぉ!!》
その声が聞こえた直後、機体が爆発する。
そして、魔法壁が砕け散り崩壊した。
《あのバカ本当にやりやがった……!》
《全機今だ!!攻撃開始!!》
「これで終わりだね!FOX3!」
《FOX3!》
数は少なくなったがそれでも50発以上のミサイルが突っ込んでいく。
数十秒後、ミサイルは魔法壁に阻まれることなく船に到達した。
鉄製ではなく木製の船は50発近いミサイルの直撃を食らい巨大な船体が崩壊を始めた。
《やったぞ!撃墜だ!》
《賞金首に助けられるなんてな……》
《お尋ね者が英雄か……クソ》
お尋ね者に街を救われた。
そう思うとあまりいい気分ではないのだろう。
彼に仲間を落とされた冒険者だって少なくない。
でも私は何よりも仲間を守れた事で安心していた。
「はぁ……終わった終わった」
《こちらキングアイ、街に侵入した魔王軍は母船が墜落したことで撤退を始めた》
《よっしゃあ!おとといきやがれってんだ!!》
《可能な機は残敵を掃討せよ。相手は魔王軍だ、捕虜にしたって1ドルにもならんぞ》
《それならストレス解消させてもらうとするか。賭けに負けて不機嫌なんでな》
《俺も参加させてもらうぜ。弱いものイジメなら得意だ》
何機かの戦闘機は街に向かって旋回していった。
街に侵入した魔王軍部隊の掃討だろう。
私たちはそこまでして攻撃する気が起きずに帰ることにした。
「はぁ、終わり終わり」
《終わったわね……まったくいい気分で寝てたのに……》
《皆さん皆さん!帰ったら温泉行きましょうよ!》
「いいね、私はミオに賛成」
「私も!」
《決まりですね!》
《じゃあ帰ったらエルも迎えに行かないといけないわね!》
「うん。今日は温泉でゆっくりしよう。1000万ドルも出たことだし」
《いえーい!》
予定も決まり私たちは街に向かって旋回する。
その時に私はあの賞金首が墜落した場所に敬礼した。
「ハル?」
「……街を守ってくれたからね」
「……そうだね!」
マヤもそう言って賞金首が墜落した場所に敬礼した。