さてどうしたものか。
私はベッドから起き上がり考える。
隣でマヤは爆睡している。
少なくともトムキャットは2週間は飛べない。
「・・・買い物・・・」
私は寝起きでボケーっとしながら呟く。
とりあえずボサボサの髪だけでも整えよう。
何を買おうか考えながら髪にブラシをかけ歯を磨いた。
今日から2週間はパイロットとしてではなくガンナーとしてクエストを受けないとならない。
私達は自衛用の拳銃程度しか持っていなかったので何か買わなければならない。
買い物が終わったらギルドにでも行って仕事を貰おう。
「んー・・・」
「マヤ、起きて」
時間は朝の10時。
店も開く時間だ。
「んー・・・?」
「おはよ。買い物行こう」
「んー・・・あと1年・・・」
「そう、永眠する?」
「ひどいなぁもう・・・ふぁぁぁ!・・・ん・・・」
ベッドからマヤは起き上がって背伸びをした。
「ちょっと顔洗ってくる〜・・・」
「ん」
私はその間に着替える。
・・・私は着替えようとして荷物を探して気づいた。
フライトスーツ以外持ってない。
「マヤ、マヤ」
「なーにー?」
「服貸して」
「え?持ってないの?」
「フライトスーツしかない」
「マジか・・・いいよ、私何着かあるし」
「マヤと体系そんなに変わらなくてよかった」
「おい今私のどこを見て言った貴様」
胸。
とか言いたいけどやめた。
「とりあえずちょっとまってー、歯磨いてない」
「分かった」
その間に私は買おうと思っている銃のカタログを開いた。
「何にしようかな・・・」
全て異世界製の銃火器だが複製魔法で大量に流通しているので航空機同様に安い。
1度翻訳された異世界の本を読んだがこの世界では異世界で車が買えるお金で戦闘機が買える。
ただ複製魔法は複製するものの構造を完璧に記憶しどういう動きをするかまで知っていないと使えないため工場では何100人という複製魔法を使える従業員が小さいパーツから大きなパーツまでバラバラに作り組み立てるという作業をしていた。
魔力さえあれば生産出来るためかなりコストを抑えられるそうだ。
「これでいいか」
目に止めたのはソ連という国が製造したAK-74という小銃だ。
カタログには耐久性が高く、威力も高いという事だ。
銃床やハンドガードに使われている木が私的には気に入ったポイントだ。
弾は5.45mm弾で命中すると対象の体内で横転し回転しながら進むため筋組織や内蔵に大きなダメージを与えるようだ。
魔獣相手にはちょうどいいだろう。
「ただま〜」
「おかえり」
なんてしてるウチにマヤが帰ってきた。
「マヤはどうする?」
「んー・・・ハルは?」
「これにする」
私はAK74を指さす。
「じゃあ私は・・・これ!」
マヤが指さしたのはAK-105、それのモダナイズカスタムモデルだった。
弾薬は私と同じ5.45mm弾。
「これなら弾の共有出来るよね!」
「そうだね」
「じゃ私着替えるから買い物行こ!」
「うん」
私は財布や鞄を用意してマヤを待つ。
「お待たせ!行こ!」
マヤに手を引かれて宿から出た。
「待って、先に格納庫行きたい」
「トムきゃんの様子見に?」
「うん、心配だから」
「ハルは本当にトムきゃん大好きだよね・・・」
「私の恋人」
「んな!?お父さん認めんぞ!」
「いつからお父さんになった」
「今!はっ、まてよ!今性転換してホントに男になればハルのお父さんに!」
「いや待って、意味がわからん」
「つまりは子供を作るという事ですよ先輩」
「いっぺん死んでみる?」
私はマヤの首を掴む。
「ご、ごめんなさい・・・」
「それでいい」
手を離し空港へ向かった。
そのまま私達はトムキャットが置いてある格納庫に向かった。
「・・・」
そこには第2エンジンを取り外され、機首のレドームも開けられレーダーも取り外されたF-14の姿があった。
その下には弾丸が直撃し大きく破損したバルカン砲もあった。
「おじさん」
「おぉ!嬢ちゃんか!」
整備の指揮をしていたドワーフに話しかけた。
機体の状況を聞くためだ。
「トムキャットは大丈夫?」
「何で墜落しなかったのか不思議な状態じゃよ。30mm弾を6発以上食らってるのにな」
「まだこの子は飛べる?」
「まぁ直せば飛べない事はないがな・・・というか機体より中身じゃな」
「中身?」
「油圧装置にレーダー、バルカン砲、燃料タンクに燃料パイプそれにエンジンに翼・・・」
「・・・」
思ったより内部の被害が大きいようだった。
「エンジンとレーダー、バルカン砲は交換しないと治らんな・・・エンジンの交換はタダでいいがレーダーとなると・・・」
「予算オーバー?」
「そうじゃな・・・この機体の最大の特徴がこのレーダーじゃろ?」
「うん」
破損したレーダーを眺めながら話す。
予算オーバーならクエストでもして稼ぐしかないか・・・
「分かった、仕事して稼いでくるよ」
「しっかりな。あ、そうじゃ嬢ちゃん」
「何?」
「これとかどうじゃ?」
おじさんが出してきた書類にはF-14Dのアムラーム発射能力を持たせる改修について書かれていた。
「今なら安くしとくぞ」
「・・・やめとく」
「いいのか?」
「セミアクティブで慣れちゃってるから」
「そうか・・・ま、気が変わったらいつでもウェルカムじゃ!」
そう言って整備に戻っていった。
私達も仕事をもらいに行こう。
「ごめん、お待たせ」
「ん?あー、いいよー」
マヤはのんびりとコーヒーを飲みながら音楽を聞いていた。
「さて、なんのクエストがあるかな」
「ガンナーやるの久々だからなるべく簡単なの」
「ガンナーなんて何年ぶりなんだろ・・・」
昔、まだF-14ではなくF-4ファントムにマヤと乗っていた時、今と同じようにファントムが長期の整備に入った事があった。
たしかあの時はエンジンを酷使しすぎてボロボロになったエンジンを交換するためだった。
それももう五年前だ。
「クエストボードは・・・あった!」
ボードの目の前まで行くと色々なクエストがあった。
私はいつもの癖でパイロット用のクエストを見てしまう。
マヤも同じだ。
「報酬良さそうなのは・・・あっ!これとかどう?」
「これ、パイロット用だよ」
「あれ?あ、ホントだ」
マヤが持ってきたのはUボートと呼ばれる魔獣の撃破だった。
異世界の船、Uボートに形がそっくりだからそう名付けられた魔獣だ。
攻撃方法も魚雷だ。
海には強力な魔獣が多く、船はほとんど居ない。
だが大量の石油などを輸送する時は船を使う事があった。
海には石油を主食にする魔獣もいればこのUボートのように船を沈めた後、海底でその船を捕食するような魔獣もいる。
「んー・・・じゃあこれとか」
「何これ・・・」
次に持ったきたのは自爆魔獣パンジャンドラムの討伐。
ミシンのボビンのような形をしたそれは車輪のような部分に体内で生成されたガスを高速で噴出する部位があり、そのガスを吹き出すことで転がる。
ちなみにこの魔獣はどこかのマッドサイエンティストな魔法使いが異世界の文書を入手した時にこのパンジャンドラムというものを見つけ魔法やら何やらよく分からない事をして作り出したそうだ。
その魔法使いは作ったのはいいがどんな魔獣になったか確認するため試しに転がしてみた所、まったく上手く走ってくれず、しかも逆に自分の方に転がってきてそのまま自爆、魔法使いは粉微塵になったらしい。
しかもそのテスト前にノリに乗った魔法使いが1万匹くらい作っていて魔法使いが死んだことで野生化して勝手に増えていってるらしい。
ちなみに繁殖方法とか時期とか全て不明だった。
何しろ何か動くものを見かけたら物凄い勢いで転がってきて自爆するため誰も近寄らない。
ただ物凄い勢いで転がってくるのはいいが大抵は真っ直ぐ転がらず、途中で倒れたり、突然自爆したり、仲間が自爆したショックで自爆したりと色々あるがとりあえず物凄い勢いで転がってきて自爆するインパクトは凄まじく、その体験をした者はPTSDに侵されたような状態になるとか。
おかげでこの世界共通の社会問題だ。
よく街の壁に転がってきて自爆する事もある。
「・・・これいくの?」
「だってほら!パンジャンドラムのお肉って高く売れるし美味しいって噂じゃん!」
「いやまぁ・・・そうだけど・・・」
パンジャンドラムは中に流れている血液と脂肪分が爆発性らしく、強い衝撃や自身が自爆しようと思ったりすると爆発するらしい。
ちなみに血液そのものは大した爆発力ではないが美味とされるパンジャンドラムの肉を守るように覆っている分厚い脂肪がTNT爆薬1t分くらいの爆発力になるらしい。
そんなパンジャンドラムだが回転する車輪のような部位を破壊されると爆発すること無く突然大人しくなり2分程度で勝手に絶命するそうだ。
学者曰く、走れなくなった事に対するショックで心臓が止まるらしい。
「これいくの?」
「報酬もいいよ!」
「まぁそうだけど・・・あ、そうだ」
「どしたの?」
「ちょっとね」
私はケータイでリリアに電話をかける。
「もしもし、リリア?」
『ハル?どしたの?』
「クエスト行こ」
『今から!?い、いいけど・・・』
「じゃあ待ってる」
そう言って電話を切る。
「リリア呼んだの?」
「うん、パンジャンドラムの大群相手なら上からクラスター爆弾で攻撃したほうが早いから」
「・・・地形変わりそう」
「石器時代まで戻すことくらい慣れたでしょ?」
「慣れてないよっ!!というかハルはこの前、盗賊の集落を攻撃するクエスト受けたのはいいけど詰めるだけクラスター爆弾積んでくっておかしくない!?」
「あそこを石器時代まで戻してやれーっ・・・ふふっ」
「怖いよ!笑い方怖いよ!」
私は敵の拠点をクラスター爆弾とかでボコボコにするのが大好きだ。
なんかこう、心が洗われる感じがする。
楽しい。
「とりあえず受付に行こうよ」
「そうだね・・・」
受付でクエスト開始を申請して私達は武器屋に向かった。
「らっしゃい!」
店主は屈強そうなオジサンだった。
ガトリングガンとか似合いそう。
「AK-74とAK-105のモダナイズカスタムモデルってある?」
「ちょうど二つともあるぜ!あー・・・でもAKはウッドモデルだけどいいか?」
「むしろそっちがいい」
「なら良かったぜ!弾はサービスしてやるよ!AK105は何かサイト付けるかい?」
「ELCANのスペクターDR欲しい!」
スペクターDRとはスコープの倍率を1倍と4倍に切り替えれるACOGスコープのようなものだ。
「スペクターDR・・・あー、何とか1個あるな。これでいいか?」
「うん」
「はいよ、全部で10万ってところだな。カードで行くかい?」
「ううん、現金」
「最近の若いのはリッチだねぇ・・・」
札束をポンと出し銃と弾を受け取った。
「じゃあな!頑張れよ!」
「ありがと」
店から出て街の門へ向かう。
ここから数百メートルくらいだ。
「さてさて、一稼ぎだね」
「そうだね」
その時、ケータイが鳴った。
「もしもし?」
『もしもしじゃないわよ!!あんた何誘っといて先行くのよ!!今どこ!?』
「街の門」
『はぁ・・・分かったわ・・・』
「じゃあね」
「・・・友達の扱い割とひどくない?」
「そう?」
昔からこんな感じだが。
まぁ世間一般から見れば酷い気はする。
「それでリリアは来てくれるの?」
「フルクラムのタービンが回る音がしてたからすぐに来ると思う」
「そか」
私達は門の近くにあるレンタカー屋で軽装甲車を借りた。
そして街の外にでる。
外は街の中とは一変して街に繋がる舗装もされてない道のような所と森林が広がっていた。
森林には魔獣が沢山いる。
「さてと、一稼ぎ行こうか」
「パンジャンのお肉でBBQ!!」
「しないから」
「なんで!」
「食べるより売る」
「せめて!せめて!一つだけでも!」
「マヤは一つだけとか言いながら全部食べるじゃん」
「うぐ・・・」
「食べる割には大きくならないけどね」
「・・・貴女それ私のどこを見て仰いやがりました?」
「胸」
「ぶっ殺すぞ小娘」
「きゃー、マヤに殺されるー、リリア構わないから私ごとー」
「何その棒読み!!」
《・・・付き合ってられないわよ・・・》
リリアの呆れた声とMig-29のエンジンの爆音が上空を通り過ぎて言った。