高度20000フィートの大空で   作:イーグルアイ提督

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この世界の通貨単位をどうしようか本気で悩んでいる作者です(


Uボートハント

「・・・この機体である必要あったのかな・・・」

 

「ないよねこれ」

 

コックピットの計器を弄りながら話す。

多機能表示ディスプレイにFLIRと呼ばれる赤外線探査装置のディスプレイまである。

マヤに頼んで下を見てもらったらコックピットの真下から小さな扉が開きそこからFLIRボールが出てきていた。

 

「中身が最近っていうかなんて言うか・・・」

 

もしこの機体の開発者が見たら泣いてたかも知れない・・・が・・・まぁ中身は完全に最新式なのでむしろ泣いて喜ぶかも知れない。

 

「あ、ハル。あれ魔法使いじゃない?」

 

「ん?」

 

この機体に近づくローブを着たいかにもな人がいた。

 

「おーい!魔法使いさんでしょー!こっちだよー!」

 

マヤは大声でこっちへ呼んだ。

すると魔法使いは顔を上げた。

 

「え・・・魔法使い・・・?」

 

「・・・魔法使いのイメージが私の中で間違ってたのかも知れない」

 

魔法使いという人をここ最近滅多に見ることが無かったが昔見た魔法使いは何というか、黒っぽいスーツを着て杖をついたおじいさんだったり、いかにもな服を着た少年だったりだった。

だが私達の目の前に来たのはお前今からどっかの汚染された戦場にでも行くのかと言いたくなるような見た目だった。

それは目ガラスがサングラスのように真っ黒なガスマスクにボディアーマーを着込んでいた。

しかも背中に酸素ボンベのようなものを背負っていた。

あとなんかシュコーシュコー言っていた。

 

「おー!来たな!」

 

おじさんは陽気に話しかける。

正直、私は怖くて話しかけたくない。

 

「怖がらんでもいいぞぃ、コイツは見た目は怖いが中身はイイ奴じゃからな!」

 

ガスマスクの魔法使いはグッと親指を立ててきた。

たぶん笑顔なのだろうが表情が何も見えないため怖い。

 

「あー。でもコイツな、何故か一言も喋らんから意思の疎通は難しいかもしれんの・・・」

 

何なんだこの謎の人物は。

いや、でも魔法使いという人は謎めいた人が多いからこれは普通なのかも知れない・・・

 

「とりあえずえっと・・・どうぞお乗りください・・・」

 

「ハ、ハルが珍しく敬語使ってる・・・」

 

「だってマヤだって怖いでしょこの人・・・」

 

「いやまぁ・・・怖い人なら過去に色々見てきたけどこれはまた別のベクトルで怖いね・・・」

 

なんて話してる間に魔法使いは乗り込んできた。

整備員のおじさんもコックピットの計器チェックのため乗り込んできた。

 

「ねぇおじさん・・・あの人なんて名前なの?」

 

マヤは小声でそう聞くと・・・

 

「ん?アイツか?ガスマスクじゃ」

 

「えっ・・・それ名前?」

 

「まあ本人が喋らんから勝手に名前つけられただけじゃがの!」

 

なんじゃそりゃ。

謎が多すぎて本当に何なんだこの人は。

 

「時間だね・・・行こっか」

 

なんてしてる間に出発の時間になった。

コックピットに座ってるとこの機体が昔に作られた機体なんて忘れてしまう・・・

何せ目の前にはMFDが沢山並んでいるし甲高いターボプロップエンジンの音はするし・・・

 

「マヤ、対潜爆弾の投下はなるべく機体が安定してからでお願い」

 

「GPS誘導っていっても完璧じゃないもんね・・・了解だよ!」

 

「じゃ・・・行こっか」

 

東海は夕暮れの空に飛び立っていった。

このまま海に向かう。

 

「Uボートってさ、どうやって見つけるの?」

 

「後ろにソノブイがあるでしょ?それを投下して後は音で探すんだよ」

 

「なるほどねぇ・・・あ、でも私Uボートの鳴き声知らないよ」

 

「私も・・・でも聞いた話だと異世界の言語でドイツ語って言うのがあるんだけどそれに近いんだって」

 

「ドイツ語なんて聞いたことないけど・・・まぁ分かるか!」

 

そう話しながらどこにUボートが居るかも分からない広大な海を飛ぶ。

クエスト成功条件はUボート5匹の討伐。

5匹だけなら楽に思えるが奴らは異世界の潜水艦という船を模して生まれた魔獣で生態も潜水艦とほとんど同じだ。

唯一違うのは魚雷や機関砲弾などの武器は体内で生成出来て撃沈した船を食べるという事、また哺乳類らしく呼吸するらしいが潜航中は浮上中に太陽光で発電し、その発電して電力を体内の器官に溜め込み、水を分解して酸素を作り呼吸しているらしい。

そのため、Uボートの表皮は太陽光発電パネルの代わりとしてかなりの高額で取引されるが何しろ航空攻撃で討伐することが多く、艦船で旅をする冒険者が少ないためUボートの太陽光パネルは1枚が数千万という値段で取り引きされる。

 

「出来ることならUボートの表皮欲しいよね」

 

「本当だよねー・・・あれがあれば当分生活には困らないのに・・・」

 

海を見ながらそう呟く。

その時、遅れて離陸してきた騎士団の哨戒機から無線が入る。

 

《エンジェル0-1、こちら王国軍騎士団派遣隊所属の対潜哨戒機ブルーハウンド》

 

「ブルーハウンド、こちらエンジェル0-1」

 

《これよりソノブイを投下、音紋分析を開始する。そちらもソノブイを投下、Uボートを探してくれ》

 

「了解」

 

私はスイッチを弄り、ソノブイの投下を準備する。

 

「マヤ、ソノブイ用意」

 

「了解!」

 

もう少し行ったところでUボートの目撃例がある場所だ。

一つ目はここにしよう。

 

「投下用意」

 

「用意!」

 

「投下」

 

「了解、ソノブイ投下!」

 

「あとはUボートがいてくれる事を願うばかりだね」

 

「そうだね、アイツら妙にすばしっこいらしいし」

 

旋回しながら暗くなってきた海を眺めた。

その時、ブルーハウンドから無線が来た。

 

《こちらブルーハウンド!Uボート発見!》

 

「了解、どこ?」

 

《そちらからは遠い、こちらで対処する》

 

「了解、お願い」

 

さすが訓練を受けているだけ違う。

仕事が早い。

 

「ハル・・・この音かな」

 

ヘッドホンを付けたマヤは目をつぶって音に集中していた。

 

「どんな音?」

 

「分からない・・・聞いたことのない言葉・・・」

 

「それたぶんUボート」

 

「じゃあそれだ!」

 

「了解、目標は?」

 

「ソノブイから東200m!深度・・・50!」

 

「分かった、対潜爆弾用意」

 

旋回して機首をUボートの方向に向ける。

 

「ガスマスクさん、2発投下した後再装填お願いします」

 

「シュコー」

 

ビシッと親指を立ててくる。

その際チラッと見えたのだか彼はコートを羽織っていてその下にボディアーマーを着込んでいるがよく見たらボディアーマーの左右にデザートイーグルが2つホルスターに入っていた。

・・・うん、なんか魔法使いながら50口径拳銃撃ちまくってる姿が容易に想像出来た。

 

「コースよし・・・」

 

「投下用意!」

 

下にチラッとUボートの体が光ったのが見えた。

間違いない、この下だ。

 

「投下!」

 

「Bomb's away!」

 

ガコンという音のあと機体が若干左に旋回した。

爆弾を1つ投下したためバランスが崩れたのだ。

幸い、コンピュータ制御のおかけでバランスが崩れた事をほとんど意識しなくていい。

 

「命中まであと2秒・・・」

 

「当たって・・・」

 

そう呟いた時大きな水柱が上がる。

同時にUボートのものと思われる浮遊物も上がってきた。

 

「やった!命中命中!!」

 

また命中したとき胴体の真ん中に当たったのか真っ二つになったUボートの頭の部分が上がってきた。

まだ生きてるのか叫び声をあげている。

 

『グァアアアア!!!』

 

水面をのたうち回るように動き絶命した。

そのまま沈んでいく。

 

「割とエグい・・・」

 

体長50m以上ある巨大な海洋生物が胴体を寸断されれば体の内容物やら体液やらが洋上にぶちまけられる。

海面は真っ赤になっていた。

 

「残り4匹」

 

「ハルは割と平気そうだね・・・」

 

「今夜、大きい赤身の魚を食べようなんて言い出したらブチ切れるレベルでは大丈夫だよ」

 

「割と大丈夫じゃなかった・・・」

 

新たにソノブイを投下しながら話す。

あんなエグいもの見せられたらちょっと当分、大きい魚は食べにくい。

特に赤身の魚は・・・。

 

《魚雷投下》

 

私達が必死にUボートを探していたら騎士団のP-3Cは練度が違うのかさっさとUボートを見つけて攻撃していた。

彼らの武装は対潜用の短魚雷である程度大まかな位置で攻撃しても誘導魚雷なため自動的に目標を攻撃してくれる。

比べてウチの爆弾は相手の位置さえ分かればこちらから誘導して正確な攻撃が出来るが、相手の位置を完全に確認しないと正確な攻撃は無理だ。

 

「せめて短魚雷欲しかったよねぇ・・・」

 

「同感」

 

そんな話をしつつ捜索をつづけているとブルーハウンドから無線が入った。

 

《こちらブルーハウンド、方位270に不明船・・・駆逐艦のようだ。エンジェル0-1、君たちのお仲間か?》

 

「こちらエンジェル0-1、MIG-29乗りなら私達の仲間だけど駆逐艦は分からない」

 

《了解。テキサスタワー、駆逐艦が方位270から接近中。間もなく街の管制圏に入るものと思われる。》

 

《ブルーハウンド、こちらテキサスタワー。駆逐艦の入港予定は確認されていません。進路は街に向かっていますか?》

 

《時速28ノットで街に向かって航行中》

 

何やら嫌な予感がしてきた。

まず、凶暴な海洋生物が多い海に出る冒険者は少ない。

たとえ乗っている船が巨大な艦砲を備えた戦艦であってもだ。

Uボートのように海に潜み駆逐艦程度なら一撃で葬り去る魚雷を放ってくる魔獣もいれば体は小さくても船の素材が好物な魔獣もいる。

空は人類が確保出来ているが陸と海はまだまだ魔獣のものだった。

石油類の輸送には仕方なく駆逐艦が護衛に着くことがあったが単艦で居ることは滅多にない。

 

《こちら王国軍騎士団、方位270を28ノットで航行中の船舶に告ぐ。貴船の船名、目的を知りたい。そのまま進むとテキサスの領海内に進入する。貴船の進入許可は下りていない。早急にテキサスタワーにコンタクトするか通信機器の損傷であれば当機に発光信号を送れ。》

 

「ねえハル、なんか嫌な予感がする・・・」

 

「私も・・・」

 

《繰り返す、こちら王国軍騎士団・・・》

 

私は双眼鏡で相手の船を探す。

だが暗くてよく見えない。

 

「シュコー」

 

「うひゃぁっ!?な、なになに!?」

 

マヤが大声を上げた。

ガスマスクはマヤに何かを差し出している。

 

「な、何これ・・・ナイトビジョン?」

 

ガスマスクはビシッと親指を立てた。

というかこの人の感情表現これしかないのか。

 

「あ、でも良く見えるこれ・・・あ!見つけた!」

 

マヤはナイトビジョンを双眼鏡の前に持ってきて無理やり見えるようにしていた。

だが何かを見つけたようだ。

 

「あの船・・・えっと・・・なんだっけな・・・前にハルが持ってた異世界の船が書いた本を見たんだけど・・・」

 

「見せて」

 

私もマヤと同じようにナイトビジョンを双眼鏡の前に持ってくる。

すこし持ちにくいが何とか見える。

 

「ん・・・え、あれってもしかして・・・」

 

「分かったの?」

 

「アーレイ・バーク級ミサイル駆逐艦・・・!?」

 

異世界ではよくイージス艦と呼ばれていた船だ。

イージスというのがどういう意味なのか私にはよく分からなかったが対空と対潜能力がかなり高い船だ。

凶暴な海洋生物だらけの海でも単艦で生き残れるほどに。

そしてその船のマストに高々と掲げられているのはドクロマークの旗・・・

つまりあれは・・・

 

「ブルーハウンド!それは海賊船だよ!!」

 

《何・・・?》

 

次の瞬間、船の先端で何かが光る。

そしてすぐに空中で爆発が起きた。

 

《メーデー!メーデー!!第4エンジンに被弾!第4エンジンに被弾!!火災発生!!》

 

「ブルーハウンド!逃げて!!」

 

《当機はこれより帰投する!!》

 

赤い炎を上げながらP-3Cが私達と反対方向に逃げていく。

 

「ハ、ハル・・・どうしよう」

 

「どうしようって言っても・・・」

 

この暗闇の中、高速で飛行している航空機に正確に攻撃できる船をどうしろと言うんだ。

こっちは対潜爆弾、向こうは主砲にミサイル、バルカン砲・・・勝てっこない。

だがこっちは完全に射程内。

その時無線が入る。

 

《そこを飛行中の航空機に告ぐ。本艦は貴機に危害を加えるつもりはない。こちらはUボートの素材を回収しているだけだ。街にも危害を加えるつもりはない。Uボートはこちらで片付ける。そちらは直ちに転進し当艦から離れよ》

 

警告だった。

つまりは、Uボートの素材貰っていくからとっととどっか行けバカ野郎という事だ。

だが攻撃してこないなら都合がいい。

帰らせてもらおう。

 

「ハル!?帰るの!?」

 

「あんなのとやり合って勝てるわけ無いでしょ」

 

「そうだけど・・・」

 

「まだ死にたくないなら帰るよ」

 

ミサイル駆逐艦を背に私達は街へと急いだ。

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