短小の物語群   作:眼鏡花

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 今回のは前回のアクセル・ワールドの短編と違い、完全にA・W×煉獄弐オンリーです。
 ……戦闘描写は三人称の方が書きやすい気がしてきました。

 なお、読むに当たっての注意点として。
・作者のハッピーエンド主義が熱暴走しています。
・主人公は一応『GRAM』ですが作者の力量不足により彼の再現が出来ていない部分が多いです。
・時系列?的には塔は登り終えた後となります。
・武装の一部を変更しています。『左腕は盾だからこそ良いんだよ!』という方は申し訳ありませんがお戻りください。
・一部原作とたがえる部分が存在します。
・作者は、A・Wを現在弐巻までしか所有していないため、何らかの矛盾が生じる恐れがあります。
・ゲームではできなかった動作、表現を含んでおります。

 以上の点を踏まえ、お読みくださいませ。


アクセル・ワールド 煉獄弐 ①

『ア……隊長……ッスカ……? 自分ハ、調子ニ乗ッチマッテ……。シジ通リニ動イテリャ……俺ハ……、俺ハ……。ア…アァ……ヤット……ヤット寝ムレル……。

 ――………カアサン…』

 

『……俺ハアノ時、奴ト同ジ考エヲシテ……ソシテ敗レタ……セルヲ奪ワレタ。……ソシテ俺ハ知ッタ。俺ハ……アンタノ強サニ嫉妬シテイタンダ。アンタニドウシテモ、勝チタカッタンダ。

 ――初メテマトモニヤリアッテ、ワカッタヨ。アンタノ強サヲ…モノニ頼ラナイアンタト、頼ルオレ……納得シタヨ。

 ……サラバダ……』

 

『アノ時ノ俺ハ、野郎ニムカツキ過ギチマッテ……。感情デ戦ウナッテ、アンタガイツモ言ッテタヨナ。ブチノメサレテ、ヤットスッキリシタヨ。

 ――シバラク、コノママ、寝カセテクレ…。

 オネガイダ…』

 

『アア、アアアア、タタ、隊長……。オ、オレ、戦ワナイデ逃ゲヨウトシタラ……。後ロカラ撃タレテ、ソレデ……。オオオレ、悪イコトシテナイヨネ?

 デモ何モシナカッタカラ……。撃タレタ……何モシナイノモ、悪イコトナノカナ? ――自分ヲ守レッテ、隊長ハ言ッテタ。オレ、自分守レナカッタ。……ゴメンネ……GRAM。

 会エテ……ヨカッタ……』

 

『オオ……。GRAM隊長……トウトウ、来テクレタノデスナ? ヒドク……ノドガ渇イテオリマシタ……。イツ、私ヲ開放シニキテクレルカ。……ズット……待ッテイマシタヨ。

 ――ヤット……コレデヤット休メマス。……狂ッテオリマシタ……満タサレヌ欲望ヲ、永遠ニ抱エテオリマシタ……。アナタノ……、GRAMの開放ガ近イウチニアルコトヲ、祈ッテオリマス。

 …サラバデス!』

 

『オオ、アンタカ、懐カシイナァ……。今マデ何シテタンダ……。オレガ、判ラナイノカ? オレハ、アンタト戦場ヲ駆ケルノガ好キダッタ。アンタトイルト、強クナッタ気ガシタンダ……。トテモ楽シカッタンダ……。オレハ、アンタミタイニナリタクテ……何デモヤッテミタ、真似ヲシテミタリシタ。

 ――――デモ届カナカッタナ……。ヤッパリ……スベテ吸収シテ、強クナロウトシタガ何ヲヤッテモ勝テル気ガシナカッタヨ。予想ハ大当タリダ……。

 アンタニャ勝テネェ……』

 

『ヤァ……GRAM隊長……。今ノ一撃……最高デシタヨ……。アナタハ素晴ラシイ……マッタク……。敵ヲ倒スコトハアノ時ノ私ニトッテハ楽シイ遊ビダッタ。……ダガ、アナタニ撃タレタ時、初メテ恐怖ガ沸キ起コッタノデスヨ。死ニタク無イ、ト……。私ハ自分ガ死ヌコトナド、コレッポッチモ考エテイナカッタノデス……愚カニモ……ネ……。

 ソシテ今、再ビアナタニ倒サレ、永遠ノ戦イカラ解放サレテホットシテイマスヨ……。

 ――強イアナタハ、イツ開放サレルノデショウカネ。クククッ……ハハハッ……。

 ……サラバデス、GRAM』

 

『私はもう……疲れた。……ずっと……一人で……。これで……休める……。……ベアトリーチェ……終わったよ……これでいいんだろう……?

 ――もう…………眠らせてくれ……』

 

 

 

 いつまで、この地獄を味わうのだろう。

 既に人では無く、戦う為だけの兵器(バケモノ)。答えは、とっくの昔に出ているのに。

 そもそも昔と言うほど時が経ったかの是非を今の彼に確かめる手段は存在しえない。

 死ねない存在となった事に何度絶望したことか。死んでも記憶を失い、再び蘇らせられ、戦わされるだけ。あの時のグリュプスの言葉は、文字通り真実だった。

 

 自らの手による戦いに疲れ果てた人間達の代行者。

 鋼と硝煙の食物連鎖の頂点に立った、革命的な人造兵士。

 暴虐のエデンに生まれた、最強の自律型戦闘兵器体。

 破壊と殺戮の歴史が紡ぎ上げた最高の芸術品。

 時代を救った人造の救世主。

 

 自律型戦闘兵器体『ADAM』

 

 それが、彼であった(・・・)のだから―――

 

 

 ――彼の自我が『目覚めた』のはある一人の科学者が原因である。

 ――名を、ベアトリーチェ。ADAMに搭載されたAIを作り上げた、言うなればADAMの母とも呼べる者。

 ――そしてそのAIとは、彼女の亡くした思い人の――特に、戦闘に関する思考――でもあった。

 ――深く悲しんだ彼女は、AIから人格を復活させようという前代未聞の試みに出る。

 ――それが、彼を苦しめる結果になるとは知らずに。

 

 

 腰溜めに構え、体全体で衝撃を逃しながら頭から(・・・)放った(・・・)レールガン「神速」の弾丸が直撃したADAMの一体は上半身と下半身を泣き別れさせて機能を停止した。その隙をついて一本の長く肉厚な剣がギロチンのように迫るも、彼は宙返りしながら後方へ距離をとり、銃口が縦に二つ並んだ左腕を構えた。

 撃ち出されたのは、僅かな電気のコーティングに包まれた黒い砲弾。この世の物とは思えぬ雰囲気を醸し出すそれは、彼の首を刎ねようとしたADAMに接触――砲弾が爆発的に膨張、飲み込まれるように床の一部が抉れていた。周囲には過剰な熱が留まっている。

 アンチマテリアルD。反物質を砲弾として打ち出す、極めて危険な武装である。

 残り五体程度となったADAMの群れに臆する事無く突撃、プラズマによって形成された剣たる右腕「ダンテ」を突き出し、ADAMの額を穿つ。そのまま横に一閃。空中より斬りかかろうとしていたADAMの両腕と眉間を刎ね飛ばす。

 残りのADAMを胴体の武装たる誘導型電磁ボールを射出する「DPS-POLYTAN」を使い攪乱。ダンテで斬り払い、突き、一体一体を確実に仕留め、最後の一体が苦し紛れに放った居合に似た体勢で斬りかかって来るのを、彼はカウンター気味に蹴り飛ばし空中へ。

 その大きな隙を逃すことなく、神速による射撃によって上半身を吹き飛ばした。

 

 

 ――ある一体のADAMにノイズが走った。ある筈の無い記憶(・・)。既視感。きっかけだった。

 ――ADAMは塔――戦場という名の行き場を失ったADAMを見世物にする為の建造物の階層毎に待ち受ける者達を倒し、僅かずつ記憶を取り戻していった。

 ――そして、思い出したのだ。本来、自らは死んでいる、死んでいなければいけない人間(存在)であるという事に。

 

 

 最後のADAMを還元させたと同時に、フロアのロックが解除される。次のフロアへ進むと、渡り廊下のようなフロアに出た。ADAMの反応は無い。そのまま次のフロアへと向かう。

 次のフロアには、巨大な女性の顔を彷彿とさせる機械が鎮座していた。

 警戒しながら、その機械に近づいて行く。だが、ADAMが現れる事も、攻撃されることも無かった。

 

 

 ――彼の死の原因となった男――具体的にはその男の記憶、思考の一切を引き継いだADAM『グリュプス』との死闘を終えた彼は、最後にベアトリーチェと再会した。

 ――しかし、彼は覚えてなどいなかった。思い出したのは最期の戦場での記憶であり、彼女の事を思い出してはいなかった。

 

 

 機械の眼前まで歩み寄った所で。

 

「おかえりなさい、GRAM」

 

 名を呼ぶ、彼には聞き覚えのある女の声が聞こえてきた。

 女は、人間であった頃、彼と恋仲であった。仲間の裏切りによって俺が死んだ事を受け入れられず、仲間との死闘を再演させることによって、復元しようとした張本人―――ベアトリーチェ。

 

「また一段と強くなりましたね。鬼神のように戦うあなたは本当に楽しそう。

 ――あなたにとってはこのH.E.A.V.E.N.も子供の遊び場と同じなのかもしれませんね。あなたが飽くことの無いように、私もこのH.E.A.V.E.N.を強化していきましょう。

さあ、GRAM……。その転送装置で、再び戦いを楽しんでください。これからもあなたの勇姿をずっと見守っています……。ずっと一緒に……」

 

 一人何も知らない少女のように、嬉しそうに、何処か悲しげに、機械的に――一方的に語りかける機械(・・)――ベアトリーチェ。

 対して、彼は何の感慨も無く、今だけは、GARM()では無く、唯の戦闘兵器(ADAM)として―――目の前の機械に刃を振り下した。

 

 

「……夢、か」

 

 随分と懐かしく感じられるようになった、魂の末端まで刻まれた戦いの記録。その最期の記憶(・・)

 あれを壊した瞬間に意識が暗転。気が付いた時には何故か人間に生まれ変わっていた。俺だけでは無い。かつての部隊のメンバー全員が、だ。

 具体的には現実の姿ではなく、あの時の姿が……姿を見れば一発で分かってしまう程、あの時のままであったからこそ分かったのだが。

 それでも、再開できたのは、唯の偶然でしかなかった。あの時は何とも言えない感情が迸ったものだ。今ではとあるゲームのそれなりに名の売れているチームのリーダーとして、現実世界では十四の中学生として。

 最近は過去の経験により魘される事も減り――レギオンの何人かは未だ精神安定剤が必要な程魘される事もあるようだが、俺は概ね問題無いと言えた。

 今日は……日曜日か。宿題はとうに終わっている。入ってもいいが、きっとこんな朝早くから入ってくるのは……二人くらいか。

 

「……」

 

 ニューロリンカーを操作。ブレイン・バーストを起動。マッチングリストの中ある一人を選択。ポイントを消費し、違和感を拭えずにいる現実から、もう一つの現実世界へ。無情にも違和感を覚えない、あの頃の姿へ(・・・・・・)

 

「さて、行くか……バースト・リンク」

 

 

 

 周囲は黒く煤けた街並みに覆われ、建造物は骨組みを残すのみ。

 まるで超高温の炎にでも包まれた街の跡。焦土とでもいうべきその場所。戦争により焼かれた様な印象が、際立っていた。

 そんな世界の土を踏み締め、立つ影が二つ。

 

「……こんな朝早くから誰かと思えば……グラム、お前はもう少し私の扱いを省みてもいいんじゃないか? 折角二度寝に興じようとしたのが台無しだ」

 

 目に焼きつくような強烈な赤。クリムゾンの名を冠するに恥じない鮮烈な色。

 全身をその色で覆われた装甲。通常のデュエル・アバターらしからぬ――ある赤の王とはまた違う、体そのものが強化外装と一体化した凶悪なフォルム。彼の眼前の金色にも同じ事が言えるが、それでも違うが浮彫だ。

 赤の名を、クリムゾン・グリュプス。不機嫌そうな様子を隠そうともせず、愚痴った。

 金の名を、ゴールド。グラム。陥没した底知れぬ黒き顔で話す一句一句に、すまなそうな感情が言葉に乗っていた。

 

「すまない、グリュプス。でも、こういう風に戦える事が俺は嬉しいんだ。同じようで、違う。あの頃とは違う(・・・・・・・)。それを実感できる」

「まったく、お前も……いや。私も、か」

「まあ、語らいはこのぐらいにして、だ――」

 

 そこまで行ってグラムは爪のような三つ指を持つ細い右腕を構えた。三つ指から一瞬の間もなく、持ち主の身さえ焦がすような白き刃が形成される。

 それを見たグリュプスは右足に重心をずらし、何時でも動けるように構えた。

 ギャラリーがちらほらと姿を見せ、その内の一人の足音がカツンと響く。

 それが開戦の狼煙となった。動いたのはほぼ同時。グラムは胴体の強化外装から誘導性電磁ボールが複数射出され、三つ目の射出を終えたと同時に前へ駆ける。グリュプスはその特徴的な頭部の強化外装からレーザーを撃ち出し、直撃寸前であった電磁ボールをまるで道楽のように回避。

 その最中に、地に向けて左腕を叩き付ける。地を走るスタンフィールドが急速な勢いで展開された。

 グラムは体を横に向かって飛ばしフィールドを回避。上空から降り注ぐレーザーを剣で斬り払いながら、一瞬構え頭部からレールガンを射出。反射的にグリュプスも胴体の砲台から弾丸を発砲。

 腹を内側から揺らす衝突音。爆発。相殺され、視界が一時潰される。

 刹那の中で、グラムは背後へ振り向きながら右腕を振り下す。白刃が何かを焼き火花を散らす音が、周囲によく響く。

 晴れた視界には、右足の装甲を少しだけ欠けさせたグリュプスが右腕を構えていた。

 

「くそ、読まれたか」

「仮にも、部下に負ける訳にもいかないだろう」

「かつては負け続けた者(・・・・・・)が言えた台詞では無いな」

「今は俺の方が格上だけどな」

 

 軽口を叩きあいながら、グリュプスは右腕の砲口より誘導型レーザーを無数に射出。小魚の群れのように殺到するレーザー群に対し、グラムは砲門の二つ付いた左腕を向けた。

 

「<アンチマター・インパクト>」

 

 その言葉と共に、左腕に一瞬電流の流れるエフェクトが発生、直後に発射。反動で大きくグラムの体が後退するも、隙には為らなかった。

 発射された黒い砲弾はレーザーと接触すると膨張。黒い光を放ちながらレーザーどころか周囲の地形を、空間そのものを食い潰し、消える。

 そして、グラムは咄嗟に後ろへ跳んだ。頭上より迫って来ていたレーザーの一本が右肩の装甲の表面を舐めるように掠めて地に落ちる。

 

「これで相子だな」

「……上等だ」

 

 精密機械の如き正確さをもって繰り広げられる鮮烈を極める接戦。

 ナノ単位、コンマ単位で進行する戦闘風景。

 休日の朝早くから繰り広げられる激戦にギャラリーが息を飲んだ。そして、誰かが口にした。

 

「……すっげえ。流石『傭兵団(マーセナリーズ)』」

「『傭兵団』?」

「お、誰かと思えば有名人じゃないか。まあ、新参者だから知らないのも当然かもな。受け売りだけど、黎明期から名が知れている領地を持たない変わったレギオンで、基本的に報酬さえあれば戦いに関わる事であれば少数精鋭のレギオン。俺も割と初期の頃から居たけど、入った頃には既にレギオンとして出来ていたよ。

 金色がゴールド・グラム。レギオンマスターでメタルカラー初のレベル9」

「……あれが」

「そんで、あの真っ赤なのがクリムゾン・グリュプス。レベル8なのに実質レベル9と差が殆ど無い。あいつと互角となると……ファルコンくらいじゃないかと思う。

それにしても、無制限中立フィールド以外で活動しているなんて珍しいな……何時もならそれこそこっちで三日貫徹して籠ってエネミー狩りまくってるやつらなのになあ」

「……」

 

 何それ怖いと有名人――この加速世界唯一の<飛行>アビリティ保有者、シルバー・クロウは内心頬が引きつった。気まぐれで観戦した結果、偶然にもこの朝っぱらから繰り広げられる戦いの目撃者の一人となった訳だが、そこに居たのは自分と同じメタルカラーで初めてレベル9に到達した――所属するレギオンのレギオンマスターであり、自身の親と同格の怪物。

 そんな化け物共の高速戦闘は目まぐるしく移ろう。そして――

 

「今日は、俺の勝ち……か」

「く……」

 

 ほんの一瞬の隙をついて――刹那に左腕を切り落とされ、金の魔剣の白刃に首を貫かれた赤き鷲獅子がそこに居た。

 




 まだ完成していませんが、そのうち続きっぽいのも投稿予定です。
 ……さて、三巻買いに行くか
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