よく晴れた日の下、比較的穏やかな海の上を、響を先頭に神通、漣と続いた一隊が、波に乗って駆けていた。
彼女らのいる海域は鎮守府正面からまた大きく離れた鎮守府近海沖だった。敵偵察部隊の撃破が目的となっている。
「最初から羅針盤を使うことになりましたが、どうやら敵本隊にぶつかるルートのようです」
「バッチコイ!」
「うん。やってやろうか」
駆逐艦娘二人の元気良さに少々驚きながらも、神通も呼応するように頷いた。
「……初陣、頑張ります……!」
索敵を行いながら進行していくと、間もなく響が声を上げた。
「敵発見。前方、駆逐級……三体」
「このまま追い上げて、同航戦に持ち込みましょう」
「「了解っ」」
三人は戦速を上げ、急速に敵艦隊に接近する。当然、相手側も気付くわけだが、
「当たってください!」
先行して神通が、腕部に装着した十数門の14cm単装砲を、腕を組むようにして狙いをつけ、発射する。
もちろん耐えられる筈もなく、ロ級は恨みがましい呻きを上げて沈んでいく。
「とりゃっ」
「やろうか」
流れに乗じて、漣と響も砲を構える。その隙にイ級が砲弾を吐いたが、碌に狙いもつけておらぬようで、見当違いな方向に水飛沫が上がる。
「そこっ!」
漣の掛け声で、二人は発砲した。
轟音を立てて山なりに飛んでいくそれは、イ級の付近に弾着し、続く第二撃で直撃した。
「魚雷、発射用意」
残る一体に、響の号令でそれぞれが魚雷のロックを外す。
「発射っ」
各々二発ずつを、海上に落とし込んだ。
脅威は白いあぶくを立てて忍び寄り、生き残りを沈めた。
「……戦闘終了」
「良かった……勝てました」
初戦闘の上々な成果に、神通はちょっと安堵の息をつく。そして、ピシャと自分の頬をはたいた。
「でも、次が本番ですね」
「うん。おそらく、本隊が潜んでいる」
「力を合わせて、ちゃちゃっとやっちゃいましょう」
おー、と二人が腕を上げ、ちょっぴり恥ずかしそうに、神通も続いた。
○
さて進んで、後ろを振り向けども一面に青が広がるばかり。
「遠くまで来ましたなぁ」
感慨深げに漣が呟くと、響も肯定する。
「海は広いね」
のんびりした気分になった直後、神通がある一点に目を凝らす。
「……敵です!」
二人は気を取り直して、神通の視線の先を確かめる。
果たしてその姿は徐々に近付き、敵艦隊であると知れた。
「軽巡級が二、駆逐級が三」
「多っ」
漣がげんなりするが、神通が励ます。
「皆で力を合わせれば、ね?」
「そうですともっ」
一隊は左舷に反れて、反航戦を仕掛けることにする。
ぐんぐんと距離を縮めて、お互いの姿がはっきりと見える位置をとった。
「主砲、用意」
先手必勝とばかりに、両者が砲弾を打ち込む。次々と降りかかるそれは、駆逐級二体を中破に追い込み、残る一体も大破にまで叩きのめす。
対する味方の損害はというと、巧みな回避運動によって、全員かすった程度の傷で済んだ。
「___!」
軽巡級が唸る。響がこれに反応し、
「魚雷、撃つよ」
合図を送った。二人は目で頷いて、残る手持ちの魚雷を全て放り込んだ。軽巡級も同様のタイミングで、身体に備えた魚雷を飛ばす。
「おおう、アブねっ」
軽巡級の放った魚雷は幸運にも誰に当たることなかった。
敵側が中大破を続出させていたため、砲撃される危険がなかったのも幸いした。
魚雷がすり抜けたのを見送った直後、今度はどかんどかんと大きな水柱が立て続けに沸き起こった。
見れば、総十二発の魚雷が総じて一体ずつに命中し、尽く撃沈せしめたのだった。
戦闘が終わると、海は一気に静寂を取り戻した。
穏やかな風が身体を撫ぜていく。
「勝ったー!」
「勝利か。悪くない響きだ」
「……なんとかお役に立てて、良かったです」
皆思い思いに感情を吐露する。気がつけば、空はもう夕暮れに染まっていた。
「さっ、帰って伊良湖さんのご飯を食べましょ」
「そうですね、帰投しましょうか」
一仕事を終えたという満ち足りた気分に浸りながら、彼女らは帰路につくのだった。