頼光の死神   作:きんかん22

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出会い

 あの子を見つけたのは、死臭漂う村だった。

 

 

 

 

 

 

 ある日、いつものように人に危害を加える鬼の討伐を済ませたあとのことだった。京の都へと帰還している途中で一人の血に濡れた少年が横手にあった森から走ってくるのを見つけた。その少年は必死の形相で‘村が鬼に襲われているので助けてほしい’と我々に言った。

 

 供をしていた貞光は少年を警戒していたけれど、私は少年の訴えが本当であると目を見て理解し、更に右腕を骨折しているということに気がつき、貞光に応急手当てをさせて少年にどこに村があるのかを聞いた。村の場所を聞いた後場所が結構離れていることを知り、貞光にその場を任せて直ぐにその村を助けるために馬を駆けた。二刻半程かけて少年に教えられたら村にたどり着く。

 

 

 

 

 そこに原形を留めている物は何もなかった。

 

 

 

 

 家屋は倒壊し、火事が起きていたのであろう小さな黒煙がそこら中から天へと登っていた。また、田畑はぐちゃぐちゃに荒らされ村のあちこちに体の一部がない死体が散乱し血の海を形成していた。

 

 勇敢にも立ち向かっていったであろう男性の物と思わしき物体は潰れ、元が人であったことなど近くに落ちていた鍬と服がなければ判別する事はできなかったであろう物までいくつか見て取れる。

 

 

(これではもうこの村の復興は無理ですね……。)

 

 

 少年には残念なことだが、村の人は全員死んでしまっているように見えるし、鬼に襲われてしまった場所に好き好んで住むような人は居ないだろう。また此処に人が住み着くようになるのは次々世代ぐらいにならないと難しいだろう……と、思案しながら歩いていると、少し違和感を覚えた。

 

 

(人の潰されたような跡や殴り殺されたような死体は有れど、鬼に喰われたような死体がない?)

 

 

 無いわけではないがそれでも他の死体と較べると極端に少ない。鬼が人を襲うのは色々理由があるとしても大部分はお腹が空いた事による捕食の為の行動だろう。今回の鬼は遊んだ形跡が余りなく食糧確保のために潰していたのではないかと考えられる。

 

 では、何故鬼は人を潰しただけでこの場から去っていったのか?

 

 その答えは村の中心部であろう場所に着いたときに明らかになった。

 

 

(……生きている、子ども?)

 

 

 血の海の中、手に何かを持ちながら佇む少年がいた。

 

 しかし、その少年に近付くにつれて、更に異様な光景が目に飛び込んできた。

 

 

(鬼の死体?!)

 

 

 少年が佇んでいる場所の近くに五体の鬼の死体が転がっていた。近くに落ちている鬼の目は潰され、その奥の脳にまで何か鋭利なものを突き刺し乱暴に中身を掻き出されたようで、脳の一部が眼のあった場所から飛び出ていた。

 

 驚きながら少年の方を見ると、手に血塗られた農作業用の鎌を持っていた。

 

 

(……この鬼達をこんな少年が?)

 

 

 まさに異常。戦闘訓練もしてないような農家の子どもが鬼を討伐。それも特殊な材料(・・・・・)を使うことで造られた、妖怪を討伐し易くされている武器ではなく何の変哲もない農具で殺すとは。

 

 驚愕し少し固まっていると、少年がこちらに振り向いた…。

 

 

 

 

 

 少年は美しかった。少し装いを替えれば美少女と言っても過言ではないほどに………。

 

 

 

 

 

「おねぇさん、誰です?」

 

 

 少年の鈴のような声がこちらの耳朶を叩く。

 

 

「わ、私は源頼光。ここへは鬼に襲われていると言われたのでその討伐に来たのですが……。鬼を倒したのはあなたでいいのですか?」

 

 

「はい、そうです。ただ、倒すのが遅れて少しの人しか逃がすことができなかったです。」

 

 

 

 少し動揺したが直ぐに持ち直し少年に言葉を返す。しかし、私は少年に危うい雰囲気を感じた。

 

 

(もしかしたら村の人が死んでしまったのを自分の所為にしているのかもしれない。)

 

 

「おかあさん……」

 

 

「ッ!」

 

 

 思考の渦に意識が向いていたけれど少年の声を聞き急速に意識を少年に向けた。少年の視線の先に眼を向けると、そこには女性用の服を着た肉塊が転がっていた。

 

 直前の言葉からも、その物体が少年の母親だった人であると察せられ、また先程自分が感じた少年の雰囲気についても理由が分かった。

 

 

(この子はまだ幼い。鬼を殺せる程の身体能力があれど、その心は未だに熟しきっていない。今回で無償の愛を捧げてくれていた母親がいなくなってしまいこのままでは真っ当に育ってくれないかもしれない。)

 

 

 心の奥底から熱い(・・)何かが訴えかけて来た。この子を独りにしてはいけない。誰かが………私が(・・)愛してあげないと……………。

 

 

 私は少年に近寄り優しく抱きしめた。

 

 

「?」

 

 

「もう大丈夫ですよ。ここにあなたを害そうとする者は居ませんし、あなたの助けた人はこちらで保護しました。もう無理に我慢する必要はないでのですよ。今はこの母の腕の中でゆっくりしなさい。」

 

 

「おかあさん?」

 

 

「ええ、代わりになれるとは思っていませんが、私があなたのお母様の分まであなたを愛しましょう。」

 

 

 

「…………どうしてそこまでしてくれるんですか?」

 

 

「私がそうしたいと思ったから……ではダメですか?」

 

「……じゃあ、しばらくこのままでもいいです?」

 

「ええ。気が済むまでいくらでも。」

 

 

 

 そこからのことは語らないけれど、しばしの間子どものすすり泣く声が辺りには聞こえていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そういえば、自己紹介がまだでしたね。私は源頼光といいます。」

 

 

 

「僕は、鈴屋什造っていうです。これからよろしくです。お母さん。」

 

 

「はい、これからよろしくおねがいしますね。」

 

 

 

 

 

 これか、後に頼光の死神と呼ばれるようになる少年との出会いだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そう言えば什造ちゃんには兄弟ができますよ。」

 

 

「兄弟ですか?」

 

「ええ。やんちゃですけどいい子なので仲良くしてあげてくださいね?」

 

「分かりました~。」

 

 




5話ぐらいで完結できたらいいな。
什造に新擬き着せて戦わせるのが最終的な目標です。




什造君主人公が流行りますように……。
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