雲に月が隠れては浮かぶ朧月の中。
周りも静になる丑三つ時。月明かりに照らされる野ざらしの切り株に腰掛け、ある妖怪はキセルを片手に物思いにふける。
口元にそれを運び、一服した後、深く白い煙を吐き出す。
「うまくいったかのう…。」
妖怪の脳裏には幻想郷へ先ほど旅立った妖怪の、出会った時の出来事が浮かんでいた。
妖怪が住まう隠れ区域、結界を隔たて外の世界の人の住む裏側の世界にそれは位置する。まるで表と裏、光と影のように。
人間は文明を発達させ、機械を作り、そして夜であっても人工的な明かりを作ることにより、昼夜問わず賑わいを見せていた。
だが、それは自分たち妖怪にって喜ばしいことではない。人工的な明かりは妖怪たちの目をくらませ、そしてその住処は人間の住処へと侵食されていた。昔は怖れを感じ畏怖の対象となっていた自分たちが、文明を発達させ怖れに対抗するように兵器を確立させた人間に怖れを抱くようになるとはまさしく滑稽だろう。対抗したものもいたが、その文明の前に無力であった。
妖怪はその裏側の、人目につかない区域で住まうしかなかった…。
ある日のこと、儂は買い出しに出ていた。「区域」の市の買い出しの途中、そこである光景を目にした。
桃色髪の少女と緑色髪の少女がある妖怪に罵声を浴びされている。そしてそれを避けるような目で通行人は素通りしていた。
儂はふと気になりその少女の風貌に目をやる。桃色の少女、緑色の少女のどちらにも自前の目の他に「目」が存在していた。
さとり妖怪は元来、「人の心」を読んでしまう性質から、人々にもそして同族の妖怪からも嫌われている種族である。
先代から少しばかりの知識は得ていたが、実際に目にしたのは初めてであった。と、思った最中罵声を浴びていた妖怪が興奮したのか緑色髪の少女の胸ぐらを掴み殴り掛かるようとする。必死にそれをさせまいと桃色髪の少女は緑色髪の少女の掴んでいる手に掴みかかる。
だが、妖怪の反対の腕に掴まれ、地面に叩きつけられた。「かはっ」と少女のか弱い声が漏れる中、儂の中で何かがきれた。
そして、儂は再び殴ろうとするその振り上げた拳を掴む。
「あ!?、てめえなんだ?!」
「…事情は知らぬが、年端のいかぬ少女相手に手を上げるのはいかがなものかと思うぞ」
「てめえに何がわかるんだってんだ!?こいつらは生きる価値もないってのによ!!」
「…」
緑色の髪の少女は目の前の暴力を振られる光景が目に見えていないのか、虚ろな目をしていた。そこには、恐怖という感情が浮かんでないように見えた。
そして、「目」は閉じていた。
「…こ奴らが何をしたかは問うまい。だが、そちらも一人前の妖怪であるならば弱きものに手を挙げても仕方なかろう」
「うるせぇ!」
興奮した妖怪は儂の手を振りほどこうと腕に力を籠める。
「言葉で言っても通じぬか、ならば、致し方ない」
儂は懐より葉っぱを一枚取り出し、妖怪の腕に置く。そして、「能力」を使う。「ぽんっ」という音が鳴り、妖怪の姿が可愛い子犬に姿を変える。
子犬は突如小さくなった自分の姿に驚き、自分の姿を変えた妖怪が遥か格上のものであったと知る。そして、きゃんきゃんと吠えた後、逃げるように雑踏の中に姿を消した。
今起こったことに対し、当事者の二人の少女はぽかんと口を開けていた。儂は、その少女たちに「大丈夫かの?」と声をかける。
ハッと気づき、桃色髪の少女は開口一番「ありがとうございました!」と頭を下げてきた。緑髪の少女はまだ状況を飲み込めないのか虚ろな瞳のままであった。
その光景を見て、桃色髪の少女は弁明するように「すみません…」とまた頭を下げる。
「礼や弁明はよい。それよりも何があったか話してくれるとありがたいのじゃがの」
「はい…」桃色髪の少女は俯き顔のまま力なく答える。そして一連の事情を見ていたやじ馬がヒソヒソと話声を始めた。
「ほら、あれってさとり妖怪の…」
「え、あのさとり妖怪なの…?」
「…少し場所を変えるかの。」
「え…?」
桃色髪の少女が疑問の言葉を言うのと同時に、儂は先ほどと同様に懐からはっぱを取り出し、桃色髪の少女と緑色髪の少女にそれぞれの身体に置く。
そして「能力」を使い、少女たちの姿を二匹の猫に変える。二匹の猫が驚き、逃げる前に拾い上げ、その場から脱兎のごとく逃げ去る。
はじめまして!甕と申します。
ここまで読んでいただきありがとうございます!
今回は番外編ということで古明地姉妹の幻想お入りのお話となりました。そしてもうちょい続きます。白目
今考えている本編はこれの後に始まるのですが…(笑)
更新ペースは不定期です…。
とりま年内中に本編まで進めれば…。
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