番外編 幻想入りのお話   作:月陰 甕

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番外編 幻想入りのお話1 第1話からの続きです。



第2話

二人の少女(猫)を連れ自分の住処に戻ったのち、追手が来ていないのを窓越しに確認する。自分ながら面倒なことに首を突っ込んでしまったものだと半ば自嘲気味に思ってため息をつくと、足元に不安な声で猫がすり寄ってくる。

「おお、すまんの、ほれ!」猫の顔を優しくなでるように「能力」を解除する。その瞬間、桃色髪の少女と緑色髪の少女が姿を現す。

二人は自分の姿が戻っていることに再び驚くと儂に対して改めて頭を下げる。緑色の少女は少しだが先ほどよりは表情に感情が戻ったように見えた。

儂は二人分の茶を用意し、二人を居間に通す。相変わらずの緑色髪の少女の表情を心配しながら、桃色髪の少女は重い口を開いた。

「私たちは…、さとり妖怪です。ご存知の通り昔から、私たちの種族はこの「さとり」の能力から人々から妖怪から嫌悪されてきました。しかし、最近その畏れられた能力を利用し外の人間に対抗しようと考える妖怪が現れたのです。「さとり」の能力を使い、人間の考えを読みその裏をかいて人間に復讐を企てるものたちです」

「なるほどのう、それがさっきの輩という訳か…。大方、その組織とやらから逃げてきたといったところじゃな?」

「はい…、私たちはその組織のことはまったく知らされていませんでした。私に「人間の思考を読む仕事」があると言ってきた妖怪も詳しくは知らされていなかったようで、私の能力でも組織の画策であるということは後から知ったことなのですが…。人間への恨みがないといえば嘘になります…、でも私は人の悲しむ姿やその心が理解できる。そういう感情は人間も妖怪も変わらないのです。私は復讐に身を投じようとする妖怪に訴えてきましたが、裏切り者呼ばわりされ、組織から追われる身となりました…。」

「…幼い外見ながら、随分な人生を送ってきたのじゃな。…してこの子はなぜ「目」をとじている?」

「この子は…私の妹は…、私たちがまだ幼い時、まだ人間と妖怪の隔たりがなかった頃に人間の子とよく遊んでいたんです。

その時はまだ「目」が見えていたのですが、妖怪と人間の隔たりが大きくなるにつれ、その人間の子にも妖怪に対する「敵対心」が芽生え始め、ある時それが言葉や態度になって一気にあふれ出しました。私は、その場にちょうど居合わせれなかったのですが、この子は心に深い傷を負ったようで…それ以降「目」は閉じたままなのです。」

「「目」をとじたさとり妖怪…。人の心を読むさとり妖怪からだからこそ、心への言葉の鋭利さがじかに伝わったのかもしれぬな」

「それにあの人間は信頼していましたから…、この子の心の傷は私の能力でも見ることはできないくらい深くどうしようも…」

「…」

桃色髪の少女の言葉に儂は言葉を失い、しばらく考える。事情は相分かった。見たところ、組織からの追われ者ということじゃから長居はできん。

この住処を連中に突き止められるのも時間の問題じゃろう。その間、この子たちをここで匿うのにはこちらも限界がある…。それに緑色の髪の子のことも

何とかしてやりたいがの…、うむ、どうしたものか…。

「あの…」

桃色髪の少女はおずおずと喋りだす。

「私たちがここにいて迷惑なのは重々承知しています。今回助けていただいたのは本当に感謝しています。ですが、貴方にまで迷惑はかけられない…。」

「して…いくアテもなかろう、儂のことは気にするな。この住処は特殊な結界が施してあるから、そう簡単には見つからんはずじゃ。」

「でも…」

「それならば…儂がいない間ここで留守番をしていてはくれんか?ちょいとばかし用事があったのを思い出しての。なに、3日ほどすれば戻ってくるから案ずるな、その間、ここの部屋の寝食は好きにするがよい」

唐突な提案に桃色髪の少女は一瞬言葉を失う。その隙をついて儂は半ば強引に居候を押し付け、部屋の出口へと向かう。

「あ、あの!」

桃色髪の少女は呼び止める。その声に振り替えると「本当に…ありがとうございます…!」

儂の真意を読んでいるからかそうでないのか少女の目には涙が浮かんでいた。そして深々と頭を下げる。それを見届け、儂も照れ臭くなり、足早に玄関へと向かう。

今回の頼まれごとは少々骨が折れそうだ。そう思いながら決意を新たに、一匹の妖怪狸は住処をあとにする。

 

 

人間の住む街と妖怪の住む隠れ区域、その境目に佇んでいる閑散とした建物。昔は人間の建物であったのだろうその建物は現在は塗装がはがれ、窓もところどころ割れている。あからさまに人間が住んでいないこの場所は、外の人間からは「幽霊スポット」として知られているらしい。そしてここでの行方不明者も多数出ているとの報告も耳にしたことはある。だが、もしそこに妖怪が住んでいるとなればどうだろうか。興味本位で自らの住処に飛び込んできた生きのいいエサは彼らにとってごちそうに他ならない。また、人間の情報を集めるうえでも人間の街に近いこの場所ならばうってつけという訳だ。つまり、ここに「組織」があるということになる。

そして、どうやらその勘は正しかったらしい。「ウゲッ」という下品な声と共に最後の一人が壁に叩きつけられる。

壁に叩きつけられ、かろうじて意識が残っている妖怪は、助けを呼ぼうと合図を送る用意をする。だが、手にしたそれは蹴りによってはじき返されそして顔面に追い打ちの蹴りが放たれる。

「グハッ」という言葉と共に意識を失いそうになる妖怪を掴み、妖怪狸は尋ねる。

「一応、確認するがここが「人間に復讐するための妖怪組織」というので正しいかの?そしてそちがその親玉ということで。」

「てめえ、こんだけの人数をたった一人で…何者だ…?」

「なに、今となっては忘れられた妖怪の一人じゃ。名乗るものでもない。して、質問には答えてもらおうかの」

追撃の拳を目の前に突きつける。その仕草に親玉と思われる妖怪は息をのみ慌てたように、そして吐き捨てるように言葉をつぐむ。

「ああ、わかったよ。あんたの言うとおりだ。で、俺の組織をぶっ潰して何の用だ?あんたも妖怪なら人間に恨みつらみがあるんじゃねえのかよ。」

「…恨みがないとは言わん。儂の先祖もその抗争で命を落としておるからな。だが、儂は先代から一言も人間を恨み、復讐しろとは言われておらん。それだけの話じゃよ。」

「…それじゃ、人間に復讐心もねえあんたがなぜ俺の組織に歯向かう?」

「さとり妖怪」その言葉に親玉はビクッと震える。「あの二人に何をさせていたかは儂は知らん。だが、二人のさとり妖怪についての追跡及び捕縛を辞めてもらいたのじゃが?」

「な…、何を言ってやがる。居場所のなかったあいつらに居場所をくれてやったのは俺らだ。その恩に報いるのが組織ってもんだろうが」

「組織に歯向かうとわかったら、殺すのが組織なのかの?」

「…」

妖怪狸の言葉に親玉は黙り込む。そして諦めがついたように深くため息をつく。

「わかった、あいつらからは身を引いてやるよ。あんたみたいな用心棒がいたんじゃこっちとしても割に合わねえしな。だが、どっちみちあいつらさとり妖怪には

居場所なんてないんだ。それぐらい、あんただってわかっているだろう?」

「…わかっておるさ、そのための策も用意してある」

それを聞き、驚いたように親玉は目を見張る。それに応えるように妖怪狸は笑って見せた。と同時にその手を緩める。

そのまま立ち去ろうとする妖怪狸に戦意を喪失した親玉は声をかける。

「なあ、あんたの名前教えてくれねえか」

「二ツ岩、佐渡の二ツ岩じゃよ」

その言葉を聞いて親玉はハッと息をのむ。かつて同じ通り名で妖怪の百鬼夜行の頂点いたもののことを。ただ静かで聡明であり、そして自然と慕われ続けていた妖怪狸のことを。あの妖怪の…なるほど、それじゃ初めから敵わなかったてことか。

「なあ」親玉は再び妖怪狸に声をかける。

「なんじゃ?」

「…組織は解散する。あんたみたいなのに目をつけられてたんじゃ話になんねえからな。もう一度俺らにできることを探してみるよ、復讐とかじゃない別な方法で。それから…、もう一度会ったら俺と手合わせしてくれ。やられっぱなしは性に合わなえからな。」

妖怪狸は親玉の言葉に一瞬キョトンとした顔を作ると、ふっと優しい表情に戻る。

「…望むところじゃ、いつでも相手になるぞ」

言葉を交わし終えた後、妖怪狸は出口へと向かう。かつての「二ツ岩」に図らずとも似てきていることに彼女は知らない。

 

 

妖怪狸は森に来ていた。この森は人間側の領地にある特殊な森だ。その昔、神様という存在がいた時代に信奉されていたという神聖な場所でもあるが、人間が妖怪を含めた

オカルトを否定し始めた現在においては、あまり人が立ち入らない場所とされていた。人間側の領地ということで妖怪狸も能力で「人間」に化けているわけだが…、ここにも

似たような妖怪がいる。最も彼女は「人間」には化けないのだが…。

「…いるかの!!」

森の奥深く、身の丈の倍以上もあるご神木を前にありったけの声で呼びかける。しかし、その返事はなかった。

やれやれ、出直すか…。と踵を返すと同時に「何か用かい?」と返事が返ってきた。

ふと背後に振り替える。が、そこに目的の者はいなかった。と同時に森全体が震えるようなざわめきを見せる。まるで森全体が鼓動すように

森が話をするかのようにその声は妖怪狸にささやく。

「見つけごらんよ、そしたら用事を聞いてあげる」

「相変わらずのかくれんぼといったところかの…。望むところじゃ…!」

妖怪狸はやれやれといった仕草で、隠れた相手を探る。さて、今回はどこに隠れたものか…、いや化けたものか…。森は緑一色に染まっておりその中から保護色で隠れている「あやつ」を見つけ出すのは難しい。じゃからと言って手持ちの道具ではおびき出すこともできぬ…。ふむ、どうしたものか…、と頭を悩ませていると。

「あ、黙ってても面白くないから制限時間つけるね。あと1分~」

その言葉に妖怪狸の思考が怒りでプッツンと切れると同時に、簡易的な探索方法を思いつく。懐から一枚の葉っぱを取り出すと、それを手のひらにのせ「能力」を使う。と同時に、その手のひらに青色の炎が出現した。妖怪狸は熱がりもせず、その炎の塊を目の前のご神木に投げつける。と同時にご神木が青色の炎に包まれた。

「ちょっ、ちょっ、ちょっと、何してんの!?」

声の主は慌てた様子で取り乱したように声を発する。と同時にご神木周りの視界に一瞬の揺らぎができる。妖怪狸はそれを見逃さず、その空間に向けて目の前に落ちていた手のひら大の石を投げる。ガツンという鈍い音がして、何者かに命中した石は重力に従って落ちてくる。と同時に隠れていたものものが落ちてきた。ギャフンと落ちてきたそれは背中に三本の青い矢印の羽と赤い鎌のような羽を生やしていた黒髪の少女であった。

「いたたた、ちょっとは手加減してよ~」

「すまんの」

簡素なやりとりに昔ながらの旧友はふくれっ面をする。そして慌てたように、ご神木へ振り替える。

「ちょっとやりすぎだってば、燃えてるじゃん!!」

「安心せい。ただの偽火じゃて。」

そう言うと、ご神木にまとわりついていた炎は徐々に鎮火し始め、ものの数秒後にはもとの静けさを取り戻していた。

「ふいー。というか、いつもなら優しくかくれんぼしてくれるじゃん。今日に限ってどうしてこんな慌ててるの?」

「ちょいとばかし、急ぎの用事での。それにぬしにしか頼めない用事であったからの。」

「へえ~、あたしにしか頼めない用事って、珍しいね。マミゾウだったら全部ひとりで片付いちゃいそうな気もするけど」

「…」

旧友のその言葉に少し妖怪狸は押し黙る。機嫌を損ねたと感じた少女は慌てて弁明の言葉を言う。

「冗談だって~!そんな怒んないでよ。マミゾウだって1人じゃできないことだってあるよね。」

明るく返すその言葉に妖怪狸は半ばため息をつきながら、一枚の写真を取り出す。

「これ何?」

「今回の頼み事じゃ、ちょいとその人間に化けて欲しいのじゃよ」

「ねえ、それって私の能力じゃ無理そうじゃない?どっちかといえばマミゾウの方が適任なんじゃ…。」

「儂じゃ無理なのじゃよ。姿形は真似ることはできてもその性格や人物像までは真似ることはできん」

「性格や人物像…なるほど、あたしの正体不明の能力を使ってその相手の記憶からそれらをカバーできればばれないで済むってことね」

「そういうことじゃ」

「オッケー、で化かす相手は誰なの??」

「さとり妖怪じゃ」

「オッケーオッケー、さとり妖怪ね。……さとり妖怪!?そんなんすぐばれるに決まってんじゃん!!」

「そこのところをうまく化かすのが本職の見せ所じゃろう。」

「いや、無理だから!!絶対化けの皮はがれるって!」

かつてないほどの難題を突き付けられ、パニックを起こす少女に妖怪狸はその肩を掴み、向き直る。

「ぬえ、これは主にしか頼めんことなのじゃ。頼む」

いきなりの真剣な雰囲気での頼みごとに少女は妖怪狸から目を逸らす。

「いや、嫌じゃないのよ。マミゾウの頼みなら仕方ないしね。でも、こんなのいきなりすぎるっていうか心の準備ができてないっていうか」

少女のぎこちない答えにいまいちの反応とみた妖怪狸は最後の賭けだと思い、こう告げる。

「そうか…、無理やりですまんかった。でも儂にはおぬしが必要なのじゃ…頼む」

少女の顔を真正面に向き直し、頬に手を当てるその仕草は端から見ればメロドラマのワンシーンであろう。

案の定、少女のメモリ許容値は上限を超えてしまい顔面は沸騰直前であった。

「わ、わかった!!やる!やるからあんましこっち見ないで。」

「ありがとう、ぬえ」

少女の快諾に笑顔で応じる妖怪狸。その天然さが恨めしいと思いながら、少女は落ち着きを取り戻す。

「で、具体的に何をすればいいわけ?」

「ああ、それはじゃな…」

 




こんばんは、第二投稿目です。

今回は色々とメンバーも出てきて活発になってきているのでは??
そしてマミゾウ三角形!(笑)

地霊本の本編に行く前のお話にしようかと思ったのですが、完ぺきにこれマミゾウさん本じゃん。。

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