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なんやかんやわいわいやってるセレナ達だけど、大人は優秀なんだぞ、でも肝心なところがハイトのせいで勘違い系になる始末。
いや、方向性が間違ってないからそこまではいかないのかな? という話
特異災害対策起動部二課。
ノイズから人々を守るため、一般からは秘匿された様々な活動を行う組織、と言えば分かりやすい。
それは、ノイズを撃退するための出撃だけにとどまらず、シンフォギアシステムを初めとした対ノイズ技術の開発までこの一部署で行われている。
だが、人々の安全を守るのならば、決して疎かにしてはならないセクションがある。
各地に設置されたセンサーやモニターを介し、聖遺物やノイズの兆候をいち早く察知せしめるオペレーター達だ。
交代で24時間、常にデータと睨み合い、いざシンフォギア装者が戦うときは情報の収集・分析・処理を即座にこなし、その裏方として支えるのも勿論ではあるが、彼らの本来の戦場は平時こそにある。
「う〜ん〜なんだかな〜」
そう言って天井を仰ぎ見るのは藤尭朔也。常識離れした人材が満ち溢れる特異災害対策起動部二課、略して『とっきぶつ』において、情報処理能力が優れているところを抜かせば比較的常識人の一人である。
どうも、関係なしとは思えないデータの類似があるのだ。
しかし、断定できるほどの証拠でもなし。
そのため唸っていたわけだが、そんな彼の首元に、紙コップが押し当てられた。
「うわっ! なに、なにさこれ!」
中身がかからなければ、火傷する程ではないがびっくりするほどには熱い。
「いや、そんなに慌てるほどの事でもないでしょ。どうしたの? 藤尭ったら唸っちゃって。はい、あったかいのどうぞ」
「あぁ、友里さん。あったかいのどうも。いやね、前々からノイズ出現のパターンに似た反応がよく出てたでしょ」
「あぁ。ごく普通の住宅街の真ん中ってのであわや、ってなったけど、実際ノイズは一切出なかったアレでしょ?」
「そう。それ関連で類似なのが幾つか見つかってね、でもどうだろうって」
「どれどれ〜?」
ホットコーヒーの差し入れを出したのは同じくオペレーターポジションの友里あおいがモニターの数値を覗き込んで……。
「よく気付いたわね藤尭。確かに、似てるわね」
そう、全く違う地で感知された反応、それが類似したパターンを示していたのである。
一つは先程話題に出た市街地に出たノイズ反応。
もう一つは。
「この間ラッキースターが翼ちゃんと二ケツした時の反応」
「……あれは危うく私も笑いかけたわ」
神妙に友里も頷いた。
ノイズ出現にいつもの如く出撃した翼が駆るバイクの後ろにまるでいきなり降ってきたかのように出現したラッキースターがちょこん、と後ろ向きに座ったのだ。
そのまましばらく二人(二人? 二体?)でドライブしていたため、本来即座に報告するオペレーターすら固まったのである。
まぁ、直後、気付いたお互いがワタワタしている間に巨大ノイズに接近。
司令による『翼ァ! 後ろ、後ろォ!』が始まったときは、すわ『8時だよ、笑ってはいけないとっきぶつ大集合』が始まったのか、と必死にこらえる司令室があったという。
「通常のノイズ出現反応に重なってるから一見気付きにくかったのね」
「まあ、もうノイズが出てるってのにノイズ反応が出ても今更ってのがあるしね。強弱が変わって増援がくるか、ってなら兎も角さ」
「……って事はこの反応はラッキースター固有の反応って事?」
「そうなんだよ。ツヴァイウィングの事故以来、ラッキースターの出現タイミングが変化したでしょ。その時からこの反応が出るようになったんだ」
それは、ハイトが他のノイズとともに同時出撃しなくなったためである。
未来に依頼し、遠隔で開門してもらって現地に送ってもらうため、少しのズレが生じているのだ。
まぁ、そんな事情は二人には分からないが。
「と言うことは、ラッキースターは住宅地に潜伏してるって事……!?」
その事実は恐ろしい想像を抱かせる。
ノイズが、常に一般市民と隣同士に存在しているということなのだ。
「奏ちゃんのガングニールが刺さったことで、活動パターンに明らかに変化が出てるって事もある。実際僕らは、あれ以来、ラッキースターが炭化した姿を見たことがないからね」
確かに、ハイトは、ボッシュート的に帰還している。
それに、明らかにハイトの見た目が変わっている。
矢ガモどころか槍ノイズだ。
それ以来行動が変化していれば、ガングニールが影響を及ぼしていると考察されるのは当然であろう。
「でも、これなら、ラッキースターの追跡は大分進むんじゃないかしら」
絞っていけば、確実に正確な出現を割り出せる。
彼らは選び抜かれた優秀な情報解析のプロでもある。
実際、彼らの手は未来のすぐ側まで迫って来ていると言っていい。
まぁ、引き出しの中だけとは言え、常時ノイズプラントと門が繋がっているのだ。
少なからず反応が出るのは当然であり、ハイトを含めた少女達が政府の技術力を知らないためでもある。
「だけどね、なぜかこっちもあるんだよ」
と言って表示されたのは東京スカイタワーの常時モニター。
そのすぐそばを発生源とする、微弱な……しかし、同型の波形。
その真実に彼らが気付けるだろうか。
その反応が、セレナがテレビを見たいとせがんだ為に過ぎないと言う事を。
未来がなんとなく、スカイタワーの近くなら感度最高じゃない? ということですぐ傍に門を開けただけであるという事を。
そして、何より重要なのだが、彼らが関知している反応がハイトの反応だけではなく、未来が開いているコアモジュール回収用の門、ならびにその奥にあるノイズプラントの複合したものであるという事を。
「ちょっとまって、友里さん、この反応!」
「噂をすれば何とやらね、皆を呼ぶわ、今度こそ尻尾を掴んであげる!」
「何処が尻尾か分かんないけどね……ん、ここは初めてだな……通常のノイズ反応も無いし、ってなんだこれ、今までとは比べものにならないぞ!!」
そして──住宅街の一点。
すなわち、ほぼ未来の自宅まで絞り掛けていた彼らに捜査の方針を曲げざるを得ない事件が起きたのがこの日であったのだ。
住宅街ではあるが、今までの候補地とは全く違う地点に最大の反応でハイトの反応が発生したのである。
そして、特機部二は
今まで、ハイトは従来のノイズのみに攻撃を絞り、人間には一切危害を加えない。
奏がヘッドバッドを受けて未だ昏睡状態だが、それすらも彼女を助けるためだと推測された。いや、ただやりすぎたのだあの海星。
今までの活動により、お人好しが多いとは言うものの、一応国家的責務を有する特異部二にさえ、そう信用されていたのだ。
それが覆されることになったのだ。
後に、星形ノイズの軍勢による人的被害として最大のものであったと記される事件。
ただし、死傷者が一人としていなかったため、取り沙汰される事がほぼ無い事件。
文面だけ見るとついに特機部二狂ったかと言われる三代事件の一角。
『
そして、あまり知られていないことではあるが。
この騒動は一人のメンバーが加わる原因となった事件でもあったりする。
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民度。人間力。色々な言い方もあるだろう。
ミクの母国。この日本、という国は大変治安が良い。
我が故郷、ウルクでさえ、各種魔獣による被害、エビフ山を根城としたオオエヤマ盗賊団残党に対する迎撃など、大規模な戦闘はままあったのだ。
日本とて、民草を食い物とするマフィアの類は存在する。
だが、かつての武道派はなりを潜め、借財と盾としたインテリヤクザというものが蔓延っているらしい。
が、時々現れる通り魔などを除いて、暴力的な命の危機が大規模で襲いかかることなどほぼ無いだろう。
おっと、昨今やたら沸くノイズは別なんだが。
それはきっと、この国の民草の気質の極端さだ。
それは許容性。
この国の人々は寛容だ。
ミクの御母堂などはそれが顕著だ。
ノイズである俺に全く臆することなく、家事の手伝い等を申しつけてくれる。
危険かもしれない、と排斥しない。
俺を内に引き入れた
実家が花屋であった俺にはまさに水を得た海星が如く、バリバリ育成しているのだが──あぁ、脱線した話を戻そう。
ミクの家の庭は、道路からも容易に伺うことのできるオープンな構造だ。当然、近所の人間にも、何度も目撃されている。
俺は言語化出来ない発声のために会釈だけしかできないのだが、皆普通に挨拶を返してくれるのだ。
俺の今までの危惧は何だったのだ、という受け入れられっぷりである。
なんか、着ぐるみを着ている人だと思われているようだ。
それはそれでおかしい人間に対する寛容が過ぎると思うのだが。
何故か。
この気質が、一つ前提を変えるだけで容易く反転するのだ。
それが、群衆となったときである。
この時ばかりは、俺はこの国民を養護することができない。
出来るものか。
愚かすぎるのも度が越えすぎている。
冷静に一人で考えればわかるだろうに。
この国は教育も進んでいるのだから、当然教養もあるだろうに。
普通分かるだろうに。
そして、その大多数の意見に
この国の人々は寛容的だ。
だが、この国の群衆は排他的なのだ。
何故こうも極端から極端に走るのか。
今回は、政府にも責任がある。
ツヴァイウィングによる儀式中に起きた
だが、それは衆愚であろうとも、いや、衆愚であるからこそ、劇的な反応を示した。
一万三千人近い死傷者をだしたあの災害だが、ノイズによるもののはその三分の一程度で……まぁ、それでも四千人を越えるものであったのだが、逆に言えばその倍以上が逃げる人間同士での転倒などによる圧死、避難路を巡る暴行による致傷であった。
報道機関は取材で得たその情報を、より購買意欲を誘うべく、感情を煽り、人々の正義感を刺激したのだ。
そして、その動向を政府は制限をしなかったのだ。
ノイズに対処する、奏でや翼のこと、それらの対策、なによりあの対ノイズ装甲は、秘匿されてしかるべき代物であるが故に、情報そのものを殆ど覆い隠したのだという事は容易に想像が付くと言うものだ。
被害者達への──ああ、居るだろう。我が身可愛さに人を押し退け生き残った者が……だが、そんな者は一部に過ぎないにも関わらず。
生き残りが全てそのような人と成りだと、誇張した表現へ勧告し、窘める事すらしなかったのだ。
繰り返そう。
この国の個人は、異質なものに対しても驚くほど寛容だ。
それは、異なる人のことを思いやり、人の輪に誘う正しき心から来る。
だが、この国の衆愚は極めて排他的だ。
それは、集団に属さぬ、
どちらも、正しい心から生まれる情動だ。
だが、異物からのリスクが自分にある場合は許容値が大きいにも関わらず、そのリスクが僅かであろうと、集団へ向かうと、それを廃するためには。
どんな残虐なことも。
どんな卑劣なことも。
どんな悪辣なことも。
正しいと信じて、行うのだ。
この国の民は、人に迷惑を掛けてはいけない、と言うことを病的にまで躾される。
自分では我慢できることが、皆に向けられると一切耐えられないのだ。
そして、
そして人は、
快楽は常習性があり、さらに繰り返すと馴れ、同じ刺激では満足できずより強く求める点など特に麻薬と同じものだ。
つまり、
そして加えよう。
残念ながら、この国の民も正しい者ばかりではない。
ばかりか、この構造を理解し、大きな声で弱者をいたぶり、自分は安全なところからそれを見て悦に入る度し難き者もいる。
自然と発生するそれら
そう、この国は、治安が良いが歪なのだ。
民主主義国家でありながら、相互監視社会で維持された独裁政治と同じ民衆の思考構造と、憂さ晴らしの形が成り立っているのである。
そこを鑑みれば……やはり、我等が故郷こそ至高の国であることは明確であろう。
恐るべき事に、この国の構造は、コミュニティを守護し、維持することに非常に長けているのだ。
そして数は力だ。
弾圧される側は、堪え忍ぶしかないのである。
それは、腐っているが、覆せぬ合理的な構造だった。
──そう、虐げられる側が、数を覆すほどの圧倒的な力──暴力──を保有しているという予期せぬ不条理が無い限り
覆されぬ筈のものだったのだ。
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現場に到着した時には、全てが終わっていた。
既にノイズ反応が消失したが万が一、という事でシンフォギアを纏った翼を同伴した黒服達が現場に到着した時には、大量の煤が舞っている。
ノイズによる殺戮が起こった時に起こる人間とノイズの対炭化現象で発生するものであるため、翼達には見慣れたものだったが……今回はそうではない。
後に分かるのだが、この煤は全て星形ノイズが活動限界に達して炭化したものであり、炭化させられた被害者は一人としていなかったのだ。
だが、それが後に分かることだとしても、異様な光景が広がっていることに代わりはなかったのだが……。
なんだこれは。
一同は一律にそれを見て思ってしまった。
しくしくしくしくと。
風が金属を擦るような音が聞こえてくる。
しかも、一般的な住宅街、その道路の各所からである。
そこには、日常にはそぐわない物が至る所に犇めいていた。
「鉄の……棺?」
翼が思わず呻くのも致し方がない。
気をつけをして横になった人のような形をした物である。
近づけば、しくしくという声は泣き声であることが分かるのだが。
「人が……入っているッ!?」
もしかしたら、という嫌な予感が的中した事に背筋に悪寒が走った翼は安否を確かめるべくその固まりに手を置いた。
置いて、しまった。
途端に、人を収めた鉄の棺がガタガタと暴れだし、叫び始めた。
今までの泣き声とは比べるべくもない号泣である。
しかも、翼の触れた一人から迸った号泣が同じ境遇の者達を一斉に泣きわめかせた。
魂を絞り出したかのような泣き声の合唱に、流石に彼らもたじろぐしかなかった。
いつもの生命の危機と言う形の驚異ではない恐ろしさがそこを満たしていたのだ。
そこにオペレーター、藤堯からの通信が届いた。
『近くのコンビニの監視カメラの映像を見てみたんだけどね』
だが、その内容は、耳を疑うような物だった。
その、人を閉じこめてるのは、清掃用具用のロッカーだよ、と。
「え……?」
『周囲の学校やオフィスといった、あらゆるところからかき集められてる見たいね。しかも一斉にその傍に出現したみたいで、一課の通信回線がパンクし掛けてたわ』
続いて友里の報告である。あちこちで一斉に星形ノイズが発生したため、緊急連絡が殺到したのである。
「なんで?」
『しかもちゃんと代金払ってるね。貴金属で』
「律儀!?」
『でも──こりゃあ、泣くわ。人をロッカーに押し込めて人の形になるまで物凄い殴ってる。しかも、中の人が傷つかない絶妙な威力で』
「まさかの匠の技ッ!」
『しかも、綺麗に人の形になった後、持ち上げて泣くまで振ってる』
一切の容赦がなかった。
『でも、これで、星形に変質した個体も炭化してなお再出現することが証明されたわね……凄い数よ、これ……と、解析が終わったわ、星形が最初に出現したのは……普通の一般家屋ね。その先よ』
その先にあったのはごく普通の民家であり。
ただ一体。
レモンイエローの星形のノイズが、ブロック塀にモップを擦り付けていた。
そのノイズは、槍の刃部分がその身を貫いていた。
最初の個体。
『ラッキースター』と、特異災害対策機動部でよく誇称されるノイズだった。
最近、本当に公式呼称になるのが有力になってる事に割と戦慄を覚えていたりする。
「……なにを、している……」
翼は、身を震わせていた。
「……なにをして、いる……」
翼は、このノイズが気に入らなかった。
いや、明確に隔意を抱いたのは、奏が昏睡状態に陥ってからである。
それまで突っかかっていたのは奏であり、翼は特に気にもとめていない方であった。
むしろ、奏とのやりとりを見て楽しんでいる節さえあったのだ。
そして、死んでいたかもしれない奏を、死ぬよりはマシにしてくれたとは言え、頭突きかました事に対して、突っかかるようになった。
ある意味それが八つ当たりに近いものだと分かっていても。
奏がやらなくなったのだから、代わりに自分がやらねばならないと、自覚がなくても強迫観念を抱いていたのだとしても。
だが、それでも。
ノイズを打ち倒し、人々をその脅威から守護する。
防人として共感のような物は抱いていたし、度々かいまみえる戦士としての実力に一種の尊敬のようなものさえ感じていたかもしれないのだ。
結局。
このノイズは、人間の敵なのか。
それとも、私たちと同様、防人なのか。
いったい、どっちなのかと。
揺らいでいたものが。
「……なにを! しているんだお前は……!!」
今回、ノイズは出現していない。
この星形を含めた、星形の集団しか目撃されていない。
では。
この人々の有様は何なのか、と。
お前は人々を守るのでは無かったか、と……!
星形ノイズは、応えない。
心なしか、消沈している様に見えるハイトは、バケツにモップを放り込み、濯ぐと、手で絞り、水気を切って再びゴシゴシと擦っている。
「応えろ星形! 一体ここでお前は何を……え?」
ハイトの肩部分を掴んでこちらを向かせようとした翼はそれを見てしまった。
ハイトがブロック塀に書き殴られている……消そうとしている文字列に。
スプレーで「死ね」「この死に損ないが」「税金泥棒」「人殺し」等々、壁や玄関を夥しく埋め尽くしている、口にするのもはばかれる誹謗中傷に。
その家屋は、廃屋かと見間違えかねないほどに酷い有様だった。
窓ガラスは無事なものは一つもなく尽く割られ、放火未遂の跡させ見えた。
ハイトは、責めるように翼を凝視し、バケツの水を側溝に廃棄し、モップを玄関に立てかけると足下からエメラルドの輝きを発する。
「おい……なんだこれは、星形、ま、待て……!」
翼の制止を聞くことなく、ハイトは足下に沈んで消えていく。
腑に落ちない気持ちの悪さを抱えながらも、オペレーターから改めて、最初の星形——ハイトはその家から出現したという情報を得て。
翼は黒服を伴い、その家に入っていく。
表札には。
立花家、と書かれていた。
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とても、仲の良い親子がいた。
娘にとって、その父は誇らしく、大好きであった。
こんな人になりたい。
常にポジティブで、ポジティブ過ぎて空気を読めないときもあったけれど、他人の痛みを許容せず、自分が引き受けることに躊躇わない人だった。
だけど、その気質が尽く裏目にでてしまった。
彼は、娘が九死に一生を得た事を天の祝福とばかりに感激した。
緊急手術を余儀なくされる重傷を負ったところから後遺症もなく、驚くべき速度で復帰した奇跡を心から喜んだのだ。
その喜びを皆にも分かって欲しくて、喧伝して回るのは当然の流れであったのだ。
だが、九死に一生を得たという事は。
十のうち、九は、死んだのだと言うことだ。
人は、自分が得られなかった幸福を得た人を妬むものだ。
それは当然の情動であるし、特にこの国の民の快感原則は──
──事なのだ。
そのために、大きな企画から外されることとなる。
取引先の社長の娘は、
そしてそれ以来、社内でも持て余され、距離を置かれ。
彼の持ち前のポジティブさは、全てが裏目にでてしまう。
当然、彼は荒れた。
娘が憧れた姿はすっかりなりを潜め、酒量が増え、言動が荒々しいものとなっていく。
そして、父がそうなのだ。
当人である娘が受けるのはどれだけのものであろう。
死者の身内から、理不尽にも生き残ったことを詰られる。
風聞から、責めることは正しいのだと言う空気が作られる。
恐ろしい非日常から、必死で頑張り、復帰すれば。
生きていたことが悪だと詰られる日々。
もし側に未来が居なかったら家から飛び出して、目覚めた力でノイズをシバき倒して居たかもしれない。
家に帰れば、憧れていた、強かった、守ってくれる筈の父は力なく。
その目が……守ってくれるはずの父ですら。
自分が生きているせいだと、無言であっても語っている。
そしてこの日、ついに均衡が崩れたのだろう。
ついに。
父は娘、響に対し、手を挙げた。
それが、切っ掛けだったのだ。
娘——響の退院前から、特異災害で生き残ったものへの風当たりが酷いことを不安に感じていた、一人のマスターが、その心配から常に見守っていた事など、誰も知る由がない。
時々どころかこの一件が始まるまで乙女にあり得ざる表情でウェヘヘ響ー、響可愛いーと言ってる姿など見ていない。
いや、本当常に見てないかい?
むしろいつ見ていないんだ?
と言うぐらいいつも海星どもが響完全包囲網を敷いて矯めつ眇めつしているのである。そう、一緒にいる時でも。
ハイトは言及するつもりはない。ただ、遠くを見ていた。ヨヒメン一族に近いなーとは言っていたがその詳細は彼以外知る由も無い。セレナはネタ一つ、と述べてサイレント撮影していたが。待て、スマホいつ手に入れた。しまった、ついインスタ映えすると思って。公開する気なのか!? 怒らないからどうやって手に入れたか話しなさい、と詰め寄るハイトの方が親っぽかった。
響が、どれだけ父親の事を心から憧れ、信頼しているのか知っていた彼女は。
それを裏切った響の父親に対して、殺意にも等しい憎悪を内腑で渦巻かせてしまったのだ。
脳裏に火花が走るほど激高した彼女は、忠実なる無数の従者の中で、最も信用できる彼をセレナの説教中だったが問答無用で瞬時に派遣した。
具体的に言うならば。
そこは本来ならば家族の団欒。
「ジェアアアアアアッッ!!」
夕食の並ぶちゃぶ台の前で行われた暴挙を前にして。
ちゃぶ台の真下から普段の数倍に及ぶ速度で開門したエメラルドの輝きから飛び出した海星は、ちゃぶ台ごと夕餉をぶっ飛ばして出現したのだった。
なお、出現の際、彼が発した叫びの内容が。
『セレナ!! そのスマホの入手経緯を正直に述べるんだ!!』
と言う締まらない台詞だった事は、未来にしか分からなかったりするのでシリアスな雰囲気は崩される事がなかったという。
今回は機部二サイド
時系列としては、前半が全て終わった後、後半が経緯、その前半だったりする。
特機部二、ドリフ劇場になりかける。
当作品、翼と二ケツしたのは背中合わせでハイトだった。見た目がシュールである。
オオエヤマ盗賊団残党。
一応、人間しかいない。ただし、なんか妙に生き汚い。仕切り直しの上手さで、討伐は困難を極めた。きっと、盗賊団を立ち上げた初代指導者の性質が、それであったのだろう。
シンフォギア世界、モブに厳しいせいか、モブの気質が世紀末な気がする。
そうでなければ生き残れない……切ないぞこれ。
ヨヒメン一族
ウルクの地下に生息する半人半蛇の亜人種。
極めて愛が重いことが特徴。相思相愛なら誠幸せになれるが、そうでなくば、寺の鐘まで追って来て丸焼けにされる程の情熱を秘めている。多分、未来とは一線で分かり合えず殺しあうタイプ。
ハイトちゃぶ台の下から飛び出てくる。
当然、頭部を強打して様にはならないが、それは言ってはいけない。