天空の乙女達 ―La Sylphide― 作:土居内司令官(陸自ヲタ)
夜空に、大量の戦闘機の編隊が飛んでいる。その後方には、青衝学園 管制航空科所属の空中警戒管制機・ボーイング E-767改が飛んでいた。主翼下にECCM(対電磁妨害)能力向上のための電子戦ポッド、胴体下面にチャフ・フレアディスペンサーを装備する改造が施されている。
その機内には、生徒会 邀撃管制官の女子生徒――橋立 沙紀(はしだて さき)――がいた。
じっとレーダー観測員の後ろからレーダースコープを見つめ、敵機が来ないか見張っていた。
「あの、橋立先輩」
レーダー観測員の女子生徒が口を動かした。
「反応があれば伝えますから、ちょっと離れててくれませんか?」
「……私、臭う?」
「いえ、そうでは……(だってこんな綺麗な人に近寄られると、食べられそう……)」
総勢50機にも及ぶ編隊は、全てレーダーを切り、密集して飛んでいた。月明かりが機体を照らす。
やがて、F-3A 心神飛龍の機首下IRSTに敵機が映った。同時に、F-14D スーパートムキャットの受動警戒装置が反応を捉える。
〔バッカス4よりオウル01、ヴィジュアルインサイト(目標視認)。1機だ〕
〔アルテミス2、パッシブコンタクト。F-14系が1機〕
E-767改の作戦管制ディスプレイに、その情報が反映された。
「F-14、という事は空賊のFAC(戦線空中管制機)だ。オウル01からオールピース、ストライクエンゲージ発令、オールウェポン・フリー!」
沙紀からの指示で、F-3A 心神飛龍のウェポンベイ(兵器倉)が開き、AIM-120 アムラーム中距離空対空ミサイルが発射された。敵機も、AIM-23 セジル中距離空対空ミサイルで撃ち返す。
一斉に50機が増槽を投下(第5世代機は、学校間協定でステルス性能に制限が課せられている)、チャフを撒きながら散開する。
空賊のFACであるF-14A トムキャットにAIM-120 アムラーム中距離空対空ミサイルが直撃した事で、セミアクティブレーダーホーミングのAIM-23 セジル中距離空対空ミサイルは誘導されなくなり、ただの無誘導ロケット弾と化す。
その時、E-767改の巨大ロートドームに収められたAN/APY-2 パルスドップラーレーダーが、地面からのクラッター(ノイズ)に紛れて高速で移動する物体を見つけた。
「オウル01からオールピース、下方に敵機、数は30。方位310、相対高度8000!」
一気に26機のF-3A 心神飛龍とF-35AJ ライトニングⅡが急降下する。
〔バッカス1、コピー! アルテミス隊は降りてくる必要は無いわ! 我々で全機落とす!〕
そう言われ、アルテミス隊は動けなかった。
〔あーあ、結局3年がおいしい所を持っていく〕
美紀が文句を言う。続くように、ソフィーも言った。
〔全くだ。せっかく第4世代最強の格闘戦闘機の実力を見せてやろうと思ったのに〕
〔はぁ? 第4世代最強はこのファルコンに決まってるでしょう?〕
ソフィーの言葉に反論するラマール。
〔あんたのF-16はUAE向け近代化改修機のE型、第4.5世代機だろうが〕
〔母体は第4世代よ! 無尾翼デルタなんて時代錯誤もいい所よ!〕
〔フライバイワイヤだから、無尾翼デルタでも強いに決まっているだろうが!〕
〔ちょっとちょっと! 第4世代といったら、このイーグルを忘れてない!?〕
たまらず乱入する美紀。
〔〔イーグルは格闘戦向けじゃないだでろしょうが!〕〕
〔イーグルだって格闘戦は出来るんだって! ねぇ、遼子!?〕
「何で私に飛び火するの」
〔はっ、ワシなんてネコに食われる運命なんだから、格闘戦なんて無茶をするな〕by リン。
〔そんなアメリカがやったDACTの結果なんて信じないし! トムキャットなんて私だけでも充分よ!〕
思いっきり喧嘩中。
降下するF-3A 心神飛龍とF-35AJ ライトニングⅡの編隊が、空賊の編隊とすれ違う。
直ちに機首上げ、空賊のF-4F ファントムⅡとF/A-18C レガシーホーネットを捉えた。が、F-35AJ ライトニングⅡの全周囲ミサイル警戒装置が迫り来るAIM-9 サイドワインダー短距離空対空ミサイルを捉えた。
〔何処から!?〕
〔フレアだ! 5時方向から接近!〕
〔駄目だ、脱出する!〕
数機が被弾し、パラシュートが空に浮かぶ。見れば、眼下の森から戦闘機が浮き上がってきていた。
〔――だいたい、可変翼とはいえ重量でプラマイ0――〕
〔バッカス2からアルテミス隊! 敵に囲まれた! 応援を――〕
直後、無線が途切れる。アルテミス隊リーダーの辰美が口を開く。
〔ほら、喧嘩は止めたらええのに。元気がええのんはええ事どすが、今は敵機やで〕
すぐに24機は急降下、バッカス隊の支援に向かう。
が、アルテミス隊も敵機に囲まれた。
〔道理でお尻が痒かった訳か。疲れたわ。あれはAV-8 ハリアーよ〕
ダリアが、森の中から出てきた戦闘機を見ながら言う。
〔それに、Yak-38とYak-141、F-35Bもいる〕
〔古今東西のVTOL(垂直離着陸)機大集合ね〕
美香がそう言った。辰美は部隊に指示を出す。
〔今はバッカス隊の援護先やで! 吹っ切れ!〕
F-3A 心神飛龍がAV-8B+ ハリアーⅡの後ろについた。レーダートラックモードでAIM-9 サイドワインダー短距離空対空ミサイルをロックオン、ヘッドアップディスプレイのシーカーマークとターゲットボックスが重なる。
〔バッカス15、FOX2!〕
開いていたサイドウェポンベイから、AIM-9 サイドワインダー短距離空対空ミサイルが発射される。が、AV-8B+ ハリアーⅡはフレアを撒きながら、ベクタードスラスト機動をしてミサイルをかわした。
〔ちっ!〕
F-3A 心神飛龍がAV-8B+ ハリアーⅡを追いかけ左急旋回。3枚パドル式推力偏向ノズルで急激な旋回を行う。が、そのF-3A 心神飛龍の正面からYak-141M フリースタイルが回り込み、すれ違い様に30mm GSh-30-1機関砲を叩き込む。
〔バッカス15、ベイルアウト!〕
男子生徒が股の間の黄色い脱出ハンドルを引き、緊急脱出した。
遼子がAV-8B+ ハリアーⅡを捉え、ボアサイトモードでAIM-9 サイドワインダー短距離空対空ミサイルを使いロックオン、直ちにミサイルレリーズを押した。しかし、AV-8B+ ハリアーⅡはフレアを撒き、ベクタードノズルでジャンプ機動をしてかわす。
「……!?」
遼子は驚きながらも、兵装選択レバーを「GUN」に切り替え、レーダートラックモードで照準、トリガーを引いた。見事、AV-8B+ ハリアーⅡは20mm M61バルカン砲の弾幕を喰らって裁断される。
〔ハリアーやフリースタイル相手では、セオリーは通用しいひんわ。アルテミス隊に選ばれた、鍛え上げた勘だけが頼りやで!〕
辰美がそう言いながら、AIM-7 スパロー中距離空対空ミサイルをYak-141M フリースタイル目掛けて発射した。
〔ほうら、上へ跳ねるか……〕
急旋回を行うYak-141M フリースタイルを見ながら、辰美は兵装選択レバーに指を掛ける。そして、Yak-141M フリースタイルの右主翼のエルロンが上がった。
〔右や!〕
F-4EJ改 ファントムⅡ機首下の20mm M61バルカン砲が唸り、Yak-141M フリースタイルが粉砕された。
ほぼ同時に、F-14D スーパートムキャットが発射したAIM-9 サイドワインダー短距離空対空ミサイルをかわしたAV-8B+ ハリアーⅡを、MiG-31BM フォックスハウンドがAIM-120 アムラーム中距離空対空ミサイルで仕留める。
〔つまりビデオゲームみたいなもんね〕
ダリアがそう言いながら、スロットルレバーを握る。そして、操縦桿を引きながらスロットルレバーを押した。
〔見てなさいよ……ハリアーやフォージャーほど小回りが効かなくても、スピードが遥かに違うって事を教えてやる!〕
MiG-31BM フォックスハウンドがアフターバーナーを曳き、ほぼ垂直に上昇する。あまりの加速度に、RIO(レーダー邀撃士官)のイアンナは息が出来ない。
ダリアは操縦桿を引き、機体をハイループ旋回させて急降下する。
「イアンナ、ターゲットをアムラームでロック!」
「да、毎度無茶してくれるわ」
乱れた息を整えながら、イアンナはレーダースコープを弄る。3機のF-35B ライトニングⅡとYak-38M フォージャーをロックオンした。
そして、ダリアはミサイルレリーズを押した。胴体下面に4箇所あるR-33 エイモス長距離空対空ミサイル用ハードポイントを改造した、4基のAIM-120 アムラーム中距離空対空ミサイル用二連装ランチャーから3発のAIM-120 アムラーム中距離空対空ミサイルが発射される。
ロックオンされた機は、チャフを撒いて回避機動に移る。Yak-38M フォージャーが回避のためにバレルロールを打って急降下、ミラージュ2000-5 Mk.2とJAS-39C グリペン、殲-10A ファイアーバードがそれに続く。
森を掠めるような低空飛行で、Yak-38M フォージャーが飛ぶ。AIM-120 アムラーム中距離空対空ミサイルのアクティブレーダーは生い茂った大木に対して近接信管を作動させた。
しかし、ミラージュ2000-5 Mk.2がしつこく追い掛ける。
「逃がすかよ!」
兵装選択を「GUN」にし、トリガーを引く。機首下の連装30mm DEFA554リボルバーカノン砲が弾丸をばらまき、Yak-38M フォージャーの左主翼が千切れた。
F-15K スラムイーグルが、F/A-18C レガシーホーネットをロックオンした。
〔アルテミス6、FOX2!〕
左主翼からAIM-9 サイドワインダー短距離空対空ミサイルが発射される。が、F/A-18C レガシーホーネットはここぞとばかりにフレアを撒きまくって急旋回、AIM-9 サイドワインダー短距離空対空ミサイルをかわす。
〔サイドワインダーが1発いくらすると思ってんだ! 素直に当たれよ!〕
〔そんな無茶な要求、通る訳無いでしょう〕
怒るスヨンを、チェファがなだめる。そこへ、警告が飛び込んできた。
〔テミス6、ブレイク、ブレイク!〕
即座にスヨンは操縦桿を左へ倒し、チェファは首を回して後ろを見る。
〔シックスオクロックに35! フレア!〕
〔ガッテム!〕
F-15K スラムイーグルの胴体下面からフレアが撒かれ、機体は左急旋回。
〔アルテミス4、FOX3!〕
F-35B ライトニングⅡの後ろにSu-35S フランカーEが回り込み、30mm GSh-30-1機関砲を発射した。
遼子のF-15MJ イーグルが、アフターバーナー全開で上昇する。振り返れば、2機のYak-141M フリースタイルとF-4F ファントムⅡが追い掛けてきている。フレア発射、バレルロールをして急降下する。
「こちらテミス5、敵2機に追い掛けられている!」
〔テミス7、バックアップに回るわ! レイラ、ファイナ、ついてきて!〕
〔8、コピー!〕
〔9、コピー!〕
美紀のF-15MJ イーグル、レイラのF-22A ラプター、ファイナのMiG-29SMT ファルクラムEが駆けつける。その時には、遼子はさらに4機のF/A-18C レガシーホーネットに追い掛けられていた。
計6機に追い掛けられ、受動警戒装置と後方警戒レーダーが鳴り止まない。
「……くっ!」
一気に操縦桿を引き、同時にスロットルレバーをアイドルまで引く。半径の小さいハイループを行い、F-4F ファントムⅡの後ろを取った。
「FOX3!」
トリガーを引き、20mm M61バルカン砲を発射、F-4F ファントムⅡを撃墜する。しかし、まだ後ろに5機もいる。そして、フレアが遂に弾切れになった。
「しまっ……!」
直後、機体が衝撃で震えた。F-15MJ イーグルは錐揉みに陥り、意図せず急降下する。高度計の針が、反時計回りにぐるぐる回る。
〔ミサイルの豪雨を喰らいな!〕
F-22A ラプターが、一斉に残っていた2発のAIM-9 サイドワインダー短距離空対空ミサイルと3発のAIM-120 アムラーム中距離空対空ミサイルを発射する。そして、遼子を追い回していた5機に直撃する。
見れば、遼子のF-15MJ イーグルは錐揉みで不規則にぐるぐる回りながら落ちていた。美紀は目を見開き、遼子のF-15MJ イーグルを見る。
(左主翼が……!?)
遼子のF-15MJ イーグルの、左主翼が存在すべき所からは、燃料の霧が吹き出ていた。
「テミス5、ベイルアウト、ベイルアウト! 遼子、今すぐ脱出して!」
しかし、その声は遼子の頭に届いていなかった。錐揉みに陥り、両方のエンジンが緊急停止、さらに燃料残量が勢いよく減っている。
遼子は左ラダーペダルを踏みつけ、同時に操縦桿を押す。機体の回転運動が止まり、機首が素直に地面の方を向いた。しかし、コクピットに衝突回避警報が鳴り響く。そのため、遼子は操縦桿を思いっきり引いた。
何とか、F-15MJ イーグルは高度1200mで水平飛行に移行した。APU始動、左エンジンの回復を試みながら、燃料漏れの酷い箇所への給油をストップする。兵装管理ディスプレイを見ると、左主翼に1発残っていたはずのAIM-9 サイドワインダー短距離空対空ミサイルが無くなっていた。
(50ポイント無駄にした……!)
左エンジンが回復し、ターボファンの鼓動が吹き返す。燃料残量が心許ないので、右エンジンの回復は諦めた。
〔最後の1機!〕
F-35A ライトニングⅡとテジャス MK2がF-35B ライトニングⅡをロックオンした。そして、2機は1発ずつAIM-9 サイドワインダー短距離空対空ミサイルを発射する。
F-35B ライトニングⅡはフレアを撒くも、その隙にF-16E デザートファルコンが近付き、20mm M61バルカン砲で撃墜した。
【どーでもいいこと】
・橋立 沙紀…「エリア88」の基地司令。
辰美のセリフは、ネット上のサイトを使っているため、もしかしたら間違っているかも。
次回登場機
F-15MJ イーグル
????????????????????
F-4VG改 ファントムⅡ
F-4EJ改二 モダナイズドファントムⅡ