天空の乙女達 ―La Sylphide― 作:土居内司令官(陸自ヲタ)
AGL.11
青衝学園の滑走路が見えてきた。遼子のF-15MJ イーグルのランディングギアが下り、フラップが下がる。
〔アルテミス5、こちらフジタワー、ランウェイ00Rへの着陸を許可する〕
「アルテミス5、コピー」
遼子はスロットルレバーのスピードブレーキスイッチを押し、エアロブレーキを開く。しかし、通常のランディングアプローチの倍のスピードが出ていた。なので、アレスターを下ろした。
着陸指標を捉え、慎重にスロットルレバーを引く。エルロンを上げ、降下。滑走路の中ほどで後輪が接地し、アレスターがアレスティングワイヤーを捕らえる。前輪が地面に叩き付けられ、機体が止まった。
遼子はキャノピーを開き、被弾の具合を見ようと左主翼を振り返る。そして、気付いた。
「嘘……」
F-15MJ イーグルの左主翼は、根元から無くなっていた。
翌朝、遼子のF-15MJ イーグルは恋香によって引き取られた。
「片翼を失ったイーグルなんて、誰が買うの?」
「そりゃ、史上2番目の『片翼の鷲』だからね。オークションに出せば、博物館とかが高値で買い取ってくれるよ」
予備機用大型ハンガーの中の、片羽のF-15MJ イーグルを見ながら恋香が言った。するとそこへ、辰美、美香、尚紀、犀羅の4人がやってきた。
「松平はん、うちらに売りたいものがあるって――」
「そうそう、新しいファントムⅡが手に入ったから、エリートさん達に売ろうとね」
辰美の言葉を遮り、恋香は片羽のF-15MJ イーグルの隣に置かれた2機を指差した。
片方は、エアインテーク側面に全遊動式カナード翼を装備し、もう片方は低翼から高翼可変後退翼になっていた。
「三菱重工 F-4EJ改二 モダナイズドファントムⅡと、マクドネルダグラス F-4VG ファントムⅡ……まぁ、VGの方は日本企業の改造を加えた『F-4VG改』だけど。両方共、スーパーホーネットのF414を移植し、グラスコクピットと、VG改はAN/APG-79(V)X AESAを、EJ改二はAN/APG-83 セイバーAESAを積んでいるわ」
両方共、F-4E ファントムⅡを母体とし、出力向上、そして排気煙減少のためにGE F414ターボファンエンジンを装備、そしてグラスコクピットを導入していた。
エアインテーク側面の全遊動式カナード翼を除けば、外見上の違いが無いF-4EJ改二 モダナイズドファントムⅡは、レーダーをAN/APG-83 セイバーAESAレーダーに換装し、AIM-120 アムラーム中距離空対空ミサイル運用能力を獲得している。また、フライバイワイヤを導入しているが、あくまでもカナード翼の制御のため、CCV機動は出来ない。
一方のF-4VG改 ファントムは、低翼から高翼可変後退翼に設計を変えているため、ぱっと見Su-24 フェンサーに見える。主翼は自動制御で後退角を決められ、トーネードのように可動式ハードポイントを備える。その他にも主翼付け根にもう1つ固定パイロンを備え、F-14 トムキャットより多く装備出来る。レーダーはAN/APG-79(V)X AESAレーダーを持ち、AIM-120 アムラーム中距離空対空ミサイル運用能力を手にしている。
「F-4の面影、機首にしか残ってへんわ」
「元々F-14の開発研究のために試作されたのを、機首をとっかえて改修したからね。でも、運動性能は向上しているはずよ」
辰美のぼやきに、恋香が返した。
4人は2機のファントムⅡを眺めたり触ったりしている中、遼子が恋香に問う。
「私の代替機は?」
「ご心配なく。ちゃんとボーイングから届いているって」
「ボーイング? 三菱じゃなくて?」
すると、恋香は予備機用ハンガーの奥へと歩き出した。遼子もそれに続く。
「元々雷酉(らいゆう)高等学院向けに提案されてたんだけど、その雷酉が蹴ってね。それでここに流れ着いたのよ」
そして、恋香が立ち止まった。そこにあるのは、真っ黒なF-15 イーグルだった。
機首下にはF-35 ライトニングⅡのIRSTを装備、エアインテーク側面にはコンフォーマル型燃料タンクが付いている。が、一番目を引くのは、主翼についている、AH-64 アパッチのAGM-114 ヘルファイア対戦車ミサイル用四連装ランチャーのような四連装ランチャーである。
「F-15C 2040エンハンスドイーグル、空中SAMサイト(地対空ミサイル陣地)を目指した機体よ。エンジンは出力向上のためにGE F110を、レーダーはF-22のものを転用し、同時多目標攻撃能力を向上。武装は、胴体下面と主翼付け根に計16発のアムラームと、主翼端に計4発のサイドワインダー、20mm M61バルカン砲も残ってる。機体重量が増えているから、いくら推力偏向ノズルが付いてるからって旋回戦は無理よ。主翼に8発のアムラーム付けたままじゃ、8G制限を掛けられるからね」
「分かった。で、いくら?」
「あのF-15MJを買い取って、まだ代金支払ってないからねぇ……F-15MJの半額、でいいかしら?」
すると、遼子は頷いた。
「交渉成立ね。じゃ、機体はあなたのシェルターに送っとくわ」
[どーでもいいこと]
架空機元ネタ
・F-15C 2040エンハンスドイーグル···現在、ボーイング社がアメリカ空軍に提案中の「ミサイルキャリアー」、F-15 2040C イーグル。F-22A ラプターが捉えた敵機に、AIM-120 アムラーム中距離空対空ミサイルの弾幕を浴びせる。本来は、コンフォーマル型燃料タンク装備と機体寿命延長だけだが、独自に推力偏向ノズルとIRSTを装備させてみた。
・F-4VG改 ファントム···F-4の後継として、マクドネルダグラスが提案した可変翼型ファントム。
・F-4EJ改二 モダナイズドファントム···モデルはイスラエル・IAI社が開発したトルコ空軍のF-4E ファントム ターミネーター2020と、F-4C ファントムを母体としたフライバイワイヤ技術研究機・62-12200号機。
両方共グラスコクピットにしているのは、作者の趣味。エンジンは、スーパーファントム計画で予定されていたP&W PW1120ターボファンエンジンに問題が発覚したため、GE J79ターボジェットエンジンより小さく、かつハイパワーな、GE F414ターボファンエンジンを選択した。
次回登場機
F-15C 2040エンハンスドイーグル
F-4VG改 ファントム
F-4EJ改二 モダナイズドファントム
F-4EJ改 ファントム
F-1
ラファールC
ラファールB
ミラージュF1E
E-2C ホークアイ