天空の乙女達 ―La Sylphide― 作:土居内司令官(陸自ヲタ)
AGL.01
太平洋に浮かぶ大陸、通称・幻夢大陸。余りにも他の島から離れ過ぎているため、第二次世界大戦まで、その存在は知られていなかった。そして、日本とアメリカはこの大陸を奪い合い、未知の生態系が築かれていたこの大陸を、焦土にしてしまった。
それから70年余り――
「こちら、アイオロス16。TACネーム・ランス、パーソナルネーム・イーグル503。オウル02、朱矢学院と思われる威力偵察機を発見した。増援の必要無し。これより攻撃する」
〔あっ! イーグル503! 位置と数を教えよ!〕
「どうせそのデカい円盤で位置は分かってるでしょう?」
右目にモノクル状の先進表示システムを着け、赤いブレザーを着た少女は、操縦桿を倒す。
編隊飛行する2機のトーネードEF.3の受動警戒装置に反応が出る。
〔CAP(戦闘空中哨戒)機かしら? ちょっと反応が早くない?〕
「さっきから嫌と言うほどAWACS(空中警戒管制機)のレーダーを探知している。来てもおかしくは無いだろう」
その時、コクピットに警報が鳴った。「レーダー波を受信」ではなく、「レーダー波が指向されている」という意味の、甲高い音。つまり、ロックオン警報だ。
「マジかよ、躊躇無くMRM(中距離ミサイル)を撃つ気だ!」
〔IFF(敵味方識別装置)に反応の無い機は遠慮無くミサイルをぶっ放すでしょう、普通?〕
「確かにな。ショーン、敵機は何処だ?」
「上だ。こっちのレーダーには映らない位置にいる。ケリー、機首を上げろ。アーロン、スクランブルエンゲージだ」
「分かった。ギルド14、マスターアーム・オン(交戦準備)! エンゲージ(戦闘開始)!」
2機のトーネードEF.3は機首を上げ、パルスドップラーレーダーで敵機を捉える。
「レーダーコンタクト! ギルド14、FOX3!」
〔ギルド23、FOX3!〕
2機の胴体下から、1発ずつAIM-120 アムラーム中距離空対空ミサイルが発射された。
トーネードEF.3目掛け、降下する双発・双垂直尾翼の単座戦闘機――F-15MJ イーグル――の受動警戒装置がロックオン警報を鳴らす。少女は素早く2発のAIM-120 アムラーム中距離空対空ミサイルをリリース、直後に増槽を切り捨て、チャフを撒きながら旋回する。
スロットルレバーを奥へ倒し、アフターバーナーを焚く。2基のP&W/IHI F100Jターボファンエンジンの可変ノズルが開き、アフターバーナーの炎が噴き出す。
ピィーッ!
トーネードEF.3の機内にミサイル接近警報が鳴った。2機は主翼下の2本の増槽を捨て、チャフを撒いて回避機動に移る。
お互いがミサイルをかわし、さらに近付く。
少女はスロットルレバーの兵装選択レバーを「MRM」から「SRM」へ動かす。ヘッドアップディスプレイにでかでかと出ていたロックオン可能範囲円がミサイルシーカーマークに変わる。
「ケリー、先に行け! 奴は俺が相手する! ショーン、ドッグファイト(格闘機動戦)だ!」
「OK、キルスコア(撃墜・撃破記録)は山分けといこう」
2機のトーネードEF.3は分かれ、主翼にティーカップを描いたトーネードEF.3は降下、一方の真っ黒なトーネードEF.3は上昇し、F-15MJ イーグルへ向かう。
やがて、視界にF-15MJ イーグルが見えた。素早くヘッドオンでAIM-9 サイドワインダー短距離空対空ミサイルを発射する。
再びF-15MJ イーグルのコクピットにミサイル接近警報が鳴る。AIM-9 サイドワインダー短距離空対空ミサイルで撃ち返し、フレアを撒いて回避する。
そして、すれ違った。
黒いトーネードEF.3はバレルロールし、背面降下。一方のF-15MJ イーグルは左旋回、黒いトーネードEF.3目掛け上昇する。
再びすれ違う。黒いトーネードEF.3の2人は首を回し、F-15MJ イーグルを探す
「消えたぞ!?」
「アーロン、左にはいない!」
アーロンと呼ばれた黒髪の男子高校生は操縦桿を倒し、再びバレルロールで背面を下へ。
すると、いた。こちらに機首を向けたF-15MJ イーグルが。
「――っ!?」
そのまま海目指して急降下。F-15MJ イーグルも続く。
海面が近付き「プルアップ(機首上げせよ)」という警告音声が、黒いトーネードEF.3のコクピットに響く。
2機は機首を上げ、海面を掠める。
F-15MJ イーグルのヘッドアップディスプレイに、黒いトーネードEF.3が大写しになった。兵装選択、ガン。ヘッドアップディスプレイのミサイルシーカーマークがガンレクティカルに切り替わり、黒いトーネードEF.3と重なる。ガンレクティカルの距離計は射程内を示す。
「アイオロス16、FOX3」
F-15MJ イーグルの20mm M61バルカン砲が唸った。黒いトーネードEF.3の右主翼と垂直尾翼が粉砕され、パイロットとWSO(兵器システム士官)が緊急脱出した。
緊急脱出した黒髪の男子高校生――アーロン=シンディ――は飛び去っていったF-15MJ イーグルを睨んだ。
左主翼にティーカップを描いたトーネードEF.3の受動警戒装置が、ロックオン警報を鳴らす。
「シックスオクロック! きっとさっきのイーグルよ!」
「じゃあアーロン達はやられたの!?」
ティーカップのトーネードEF.3はアフターバーナーを焚く。が、飛んできた2発のAIM-120 アムラーム中距離空対空ミサイルは近接信管を作動させ、撃墜した。
赤いブレザーの少女は、ふうっと息を抜き、こう宣言した。
「こちらアイオロス16。TACネーム・ランス、パーソナルネーム・イーグル503。朱矢学院の威力偵察機を全機撃墜。コール・RTB(帰投宣言)」
やがて、滑走路が見えてきた。着陸許可が下り、F-15MJ イーグルはフラップを下げる。機首を上げ、ランディングギアを下ろす。エアロブレーキ通常展開、タッチダウン。エアロブレーキ最大展開、トゥブレーキ作動。
機首側面に黒く「503」、左主翼上面に突撃槍、赤く塗られた右垂直尾翼に白百合の花が描かれた、IRST(赤外線追跡装置)を備えたF-15MJ イーグルがエプロンへやってくる。しばらくタキシーウェイを走り、大量に並んだ掩蔽壕の1つの前に止まる。すると、整備員達が駆け寄ってきた。
少女はキャノピーを開け、シートベルトを外す。そして背負っていたパラシュートを外し、それを手にF-15MJ イーグルから、掛けられた梯子で降りた。
整備員と一言二言交わし、用意されていた三菱 パジェロ――もとい、73式小型トラック(新)もしくは1/2tトラック――の運転席に座り、エンジンを掛けた。
アクセルを踏み、掩蔽壕や格納庫、そして93式近距離地対空誘導弾(近SAM)や11式短距離地対空誘導弾(短SAMⅡ)、L90 35mm対空機関砲、VADS 20mm対空バルカン砲を尻目に、巨大な建物目指して走る。そして、建物の正面に回り込んだ。広々とした駐車場に73式小型トラック(新)を止め、巨大な建物に入った。
廊下を進み、「補給処」と書かれた部屋――というより別棟――に入る。そして、「航空科」と示されたカウンターに向かった。
「おや、遼子ちゃん」
カウンターでスマホを弄り、首から「松平 恋香」と書かれたネームホルダーを提げた、クリーム色の髪の女子高生が顔を上げた。
長い茶髪の少女は、クリーム色に向かってこう言った。
「私のイーグル503に、アムラームを4発、サイドワインダーを1発、それから20mm弾を90発」
そう言われ、クリーム色は電卓を叩いた。
「540ポイント」
「待って、今日は2機しかキル(撃墜)してないの」
「でも、制度が制度だからね」
「500に値切って」
「補給科に友情割引制度は無いよ」
「ケチ」
「おぉう、二言目がそれかい……『お願いします、恋香様。あなたの従順なるメイドとなりますから値切ってくださ〜い』と、可愛い声で言ってくれたら300にしてあげる」
少女はクリーム色にチョップを繰り出し、汚物を見るような目で言った。
「もう540でいいわ」
次回登場機
F-15MJ イーグル