元始の怪異の残る世界幻想郷
その幻想郷に迷い混んだ二人の男女のお話

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たまにはすごい暗いストーリーを書きたくて書きました
分けるところが見つからずこんなに長い小説になってしまいましたが下はすごく短くなると思います(´・ω・`)
バランス取れてない




夜…人間が原始より恐怖を覚えた存在

無限に続く暗闇…明かりは手元にわずかしかなく眼前に広がるは空虚な闇

そんな夜を人間は恐れ離れようともがいた

そして人間は電気を手に入れた

その確定的な明かりは人間に安心を生み出し人間はその安心に依存した

結果、夜は事実上無くなった

町…特に都市部は夜でも昼のように明るく賑わった

それどころか夜の方がにぎわう町まで生まれた

ただその確定的かつ普遍的な明かりは人間からとある感情を消し去った…

純粋な恐怖だ

「殺人犯が怖い」だの「ストーカーが怖い」ではなく

魑魅魍魎の類いである、幽霊、妖怪…その他、神仏と言った純粋な恐怖の対象は科学、文明力の前に消えていった

人間は恐怖を忘れたのだ

その忘れ去られた恐怖の対象が最後に行き着く最終駅、幻想郷

これは純粋な恐怖を残した幻想郷の夜の話である

 

PM6:00 @都内の学校

空は夕焼け色になろうとしていた

季節は初夏、暑くもなく寒くもない

何とも言えない気温が周囲を包んでいた

学生は長期休暇の少し前、であり

中学生以上は期末テストという一学期における少し大きな壁に直面しようとしていた

そしてこの少女もその少し大きな壁に困惑し焦っていた

「…かさえる…くらうでぃうす…かりぐら…」

栗色の長髪の少女が首をかしげて唱えるように古代ローマ皇帝の名を覚えている、それを保護者のように見つめる少年が一人

どうやら、恋人同士のようだ

「ユリ…カエサルな、あとカエサルの次はオクタヴィアヌスだ…」

「オクタヴァヌス?…誰?それ」

ユリという少女が少年に勉強を教わっていた

「授業、ちゃんと受けてたか?」

「うーん…寝てたかも」

「…世界史、次赤点だとヤバイんだろ?…てか授業中寝るとか何やってたんだよ?昨晩」

「そりゃ…Yo○tube見てーニコ○コ見てーF○Oで種火集めでしょーあと…」

少年があきれたように会話を切った

「解った解った、解らんが…ともかく忙しいってことが伝わった」

「もー、ユーくんは人の話を聞かないなぁ…」

ユリは頬を膨らませ言った

「お前にだけは言われたくない」

ユーくんこと、ユウキは苦笑いを浮かべ言った

「OK…とにかくだ、今日は付き合うからローマ皇帝、五賢帝までは言えるようにしような」

「ゴケンテー?なにそれ?難しそう…」

「今から教えてやるから大丈夫だ」

 

PM7:00 ユウキとユリの勉強会は一時間にも及んだ

それでどれだけ覚えてたかというと

ネロとカエサルとトラヤヌスだけだったという

ここまで来るとユリが勉強しないのは勿論だがユウキの教えの下手さも滲み出ているのかもしれない

だが二人の通う高校には原則PM7:00には下校するという校則があった

もしこの校則がなければどれだけの時間、勉強会で潰れていたかは計り知れない

「優里じゃないか、どうだ?調子は」

ユリは借りていた教室の鍵を職員室に返しに行く途中で件の世界史の先生と出会った

「笹本先生!はい!ユーくんが教えてくれたので!」

「それは良かったな、あいつは成績優秀だからな…しっかり教えてもらえ」

「はい!」

「もう暗いから気を付けろよー」

笹本という教師はユリの所属する演劇部の顧問でもある

そのためか先生の中でも特別、仲がいい、また、お互い秘密にはしているが笹本は響軌という名でユリは音符という名で腐向けの漫画…所謂、同人誌を描いているが…そこには深くは詮索しないでおこう

笹本とすぐに別れ鍵を職員室に返し

ユウキの待つ校門へ急いだ

 

PM7:15@路地

二人とも、比較的、学校から自宅が近く

ユウキは自転車、ユリは徒歩で普段は登下校している

しかし、この季節とはいえ薄暗い

自転車のライトが怪しく点滅しながら薄暗くなった路面を映す

「夏…だな」

「だねぇ…ユーくんは絵どう?」

ユウキは美術部に所属している

腕前はというと中の上くらい

賞という賞も取ったことはないが

本人は比較的楽しく部活をしている

「あと、もう少しで次のコンクリールの作品は完成するよ…今はテスト期間に入ったから出来てないんだけどね」

「…そっか…いいなぁ…楽しそうで」

「ユリは…先輩のことまだ…」

対してユリはと言うと先輩の一人からの理不尽な指示に悩まされていた

遅刻するとグラウンド30周だの

一分以内に30周出来なかったら10周ずつ追加されるというめちゃくちゃな指示を出してくる

それだけではないが…演劇とは関係ない運動をさせられる

特にユリの扱いはひどい

例えば、同級生が遅刻すれば連帯責任という大義名分で40周を1分という無茶苦茶な指示を下す

それもそんな、先輩が部長になってしまっていて、尚且つ、彼の横暴に疲れた彼の同級生達は退部していった

しかし彼が下級生の退部を許してくれるほど甘くはなく、下級生の殆どが退部届けを没収され、ひどい場合には目の前で退部届けをビリビリに破って見せた

今は下級生と笹本が協力してそんな先輩から距離を置く作戦の最中だ

「ユリにあんな口言いをされると腹が立つな…やっぱ」

「大丈夫だよ、ユーくんまで巻き込めないよ…私がなんとかする」

ユリは少し影を含めた表情になった

「…そうか?…ユリがそういうなら」

「うん…だからさ…ユーくんは暗い顔しないで…私さ、もう部活辞めようと思ってるんだ…辞めたらさ、美術部に入る…そしたらさ、ユーくんと毎日帰れるしさ」

そういいながらユリは微笑んだ

ユウキはそんなユリを見るのが嫌だった

(また…無理をして笑ってる…)

ユウキにはユリが無理して笑ってるいる事が一番苦しく悔しかった

「ユリ…なぁ…」

その時、ガァー!ガァー!と烏が鳴いた

近くにゴミ捨て場がありそこに烏が鷹っているのだ

「びっくりしたねーこの辺りは多いのかな?烏」

「…そうだな…ん?あの烏…」

ユウキの耳には一匹の烏の足音が下駄のような乾いた音をたてたように聞こえた

その音に気を取られた一瞬

ユウキの視野は捉えていた

- ユリが消えた-

「ユリ?」

呼び掛けに応じる少女の姿はない

「なっ…ウソだろ…ユリ!ユリ!」

その混乱の開始と同時にユウキの携帯に着信があった

ユリからだ

<ユーくん、どこ?>

余程、焦っているのだろう普段ならくどいほど顔文字を使う彼女だが

今のメールには必要最低限の文字しかない

「ユリ!」

<烏の場所だ、ユリこそ今どこだ?>

<わからない、森にいるの>

「森…?」

その時、ユウキは身に恐怖を覚え姿勢を咄嗟に低くした

赤い紐がユウキ目掛けて飛んできた

「!?」

その赤い紐はユウキの自転車に巻き付き自転車を消して見せた

「…もしかして…お前がユリを?」

「おいで、オイデ、尾異出、OIDE」

かろうじて意味が聞き取れるほど掠れた声がユウキの耳の鼓膜を不快に振動させた

「チッ…」

ユウキはまたも咄嗟的に飛んできた赤い紐を避ける

それは今度は路面にぶつかり烏を二匹を消してしまう

「あぶねっ!」

「逃がさない、にがさない、ニガサナイ、NIGASANAI…可哀想、かわいそう、カワイソウ、KAWAISOU」

ユウキが着地して憎悪の目を声の主に向けた

声の主は闇に紛れ姿こそ見えないが

周囲には壊れた弦楽器のような不気味な音が響く

「その可哀想は誰に向けてだ!」

ユウキは手に取ったゴミ袋を声の主に投げつけた

ハエが集っている不潔な袋だがユウキは気にせずに袋を鷲掴んだ

それは激昂から来た行動だろう

「ユリにいってんなら俺はお前を許さねぇ!」

「許して、ゆるして、ユルシテ、YURUSITE」

壊れた弦楽器のような音が少し弱くなる

「謝罪してんのか…なんだよ…こいつ…」

ユウキは自分でも驚くほど冷静だった

目の前でユリが居なくなり

明らかに人間ではない何かと攻防を繰り広げいるにも関わらず

ユウキの目は冷静に広く物を見れていた

「どうなってんだ…俺は…」

その冷静さに対する疑問に気を取られユウキの腕に赤い紐が絡み付いた

「なっ…しまっ…」

ユウキの視界が歪み景色がすり変わっていく

 

PM 7:40@森?

「-くん…ユーくん!!」

ユウキが目を覚ますと声の主、ユリは涙を流して喜んだ

「ユリ…ここは…」

「わかんない…メールで送った森」

ユウキは回りを見回す

確かに"森"としか表現できない空間であった

「…参ったな…ここはどこだ…あの声は何なんだ…」

ユウキの頭はやっと混乱を覚えた

思考を巡らせ解決法を探った

「カーカー」

一羽の烏の鳴き声が響き渡った

それはこちらにくる前に赤い紐に絡まれてユウキより一足早くこちらにきた烏だった

「お前らもこっちに来たんだな…」

「飛ばないね、人間が怖くないのかな」

「都心に住む人の中には野鳥に餌をあげてる人間もいるんだ、そうやって餌を得て育った野鳥は人間を怖がらないそうだ…でも烏に餌をやる物好きがいたのは驚きだがな」

「そうだよね…烏は普通忌み嫌われる存在なんだよね…ちょっとシンパシー感じちゃうな」

それは部活で生意気言うがばかりに先輩に嫌われひどく扱われたユリの悲痛な悲鳴が込められていたのかもしれない

「ユリ…ユリは…」

嫌われものなんかじゃない

俺が付いてる

-様々な言葉が頭に浮かんだが

ユウキには全て無意味に思えた

彼女の心の傷…それは彼が思っていた以上に深く、思っていた以上に大きいのかもしれない

「…ユーくん?」

「…自虐はしないでくれ…折角、可愛い顔してんだからさ」

こうやって茶化すのが最善の決断だったのかもしれない

「うん、ありがと…」

やっと二人に安堵の時が訪れたが

それもつかの間、すぐに近くの木が倒れた

「!?」

「オイテケェ~オイテケェ~」

ハサミのようなチョキチョキと不気味か音が響く

烏二匹が危険を知らせるように大声をあげた

「おいてけ堀かな…」

「なにそれ…てか、まてよ…この声は…」

オイテケェ~と掠れた声は以前、聞いたことがある

そう、ユウキとユリをこの森に飛ばした張本人と同じ声だ

「あいつか…?それにしても」

「どこから…するの…?」

声は様々な所で残響しどこから響いてくるのかも分からない

「オイテケェ~オイテケェ~」

「何を置いていけばいい?」

ユウキは呟くように聞いた

すると間髪入れずにその回答が来ることになった

「イラナイエンヲオイテケェェェェェェェェ!!」

巨大なハサミがユリを捉えた

「ユリ!!」

「いや…いやぁぁぁぁぁ!!」

ハサミがユリを真っ二つにしようとした瞬間

 

カキン-

 

不思議な音が響いた

それはユリの首を切った音にしてはあまりに大きく…あまりに無機質だ

ユウキは勿論、切られんとしていたユリでさえも口を開けて驚いた

ユリの前に紅白の衣を身に纏った少女が立っていたのだ

年はパッと見、17~18歳、ユリと同じくらいだ

「何突っ立ってんのよ、見て分からない?危ないわよ」

「え?…あぁ…」

少女は巨大なハサミを大麻(おおぬさ)のような物で止めていた

その大麻からは火花も散っていた

とても木製とは思えない

「…また、荒神か…」

少女は呟くと札を出した

「悪しき意志を持つ怪異よ、博麗の名の下に見えざる壁にて汝、隔離すべし…退散しなさい、二重結界!」

光の壁がハサミと三人を隔離する

「…オイテケェ~オイテケェ~」

そう言いながらハサミはどこかへ消えていった

「…ふぅ…神様を手にかけるのはごめん被るわ」

少女はユリとユウキの方を見た

ユウキは思わず身構える

「そんなに警戒しなくても大丈夫よ、何も取って喰おうだなんて想ってないわ」

「あなたは…?」

「私?私は博麗霊夢…博麗の巫女よ、よろしく」

「ハクレーノミコ?」

口を開いたのはユリの方だった

霊夢は落胆したように肩を下げる

「また…か…貴方達も外からきたのね」

「外?」

「あー心配ないわ、あんたたちラッキーよ、とりあえず、神社に…」

霊夢はふと、あの烏二匹を鋭い瞳で睨み付けた

なにかを知っているのかまたは否か

まるで烏を初めて知ったかのような視線だ

「…ったく…邪魔とか悪さはしないでよ?」

霊夢は脱力してため息まじりに呟いてきすびを返した

「着いてきて、お二人さん、安全な場所へいきましょ」

 

PM 8:00@神社

神社内はとても質素で畳を敷いた部屋にタンス、食器棚、ちゃぶ台、そして畳まれた布団に本棚…

ちゃぶ台の上には湯飲みと急須があり

湯飲みから微妙に茶の香りと湯気がたっている、おそらく、茶を飲んでいたのだろう

霊夢は食器棚から客人用の湯飲みを取ろうとしている、高いところにあるためか台の上に乗り背伸びして手を伸ばしている

「あの…霊夢さん…」

ユリが先に口を開くユウキと比べユリはコミュニケーション能力が長けているのだ

「何?」

「いろいろとお聞きしたいことが…」

「…分かってる、お茶を淹れるから少しお待ちなさいな、長い話になりそうだからね」

なんとか取りだし霊夢はため息を着いた

「はぁ…いつもなら背の高い友人に取って貰うからさ…背が低いと何気に不便ね…やっぱ」

霊夢は慣れた手つきでお茶を淹れる

そして残っていたお茶を手に取る

「冷えてる…はぁ…」

「あの…」

霊夢が気を取り直すように咳き込みをする

「それじゃ改めて自己紹介から…私は博麗霊夢、博麗の巫女って呼ばれてるわ、よろしく」

「…えっとユリです、こっちはユーく…じゃなくて!ユウキって言います、よろしくです…所で博麗の巫女って…」

「あー警察みたいなもんよ」

「警察…?」

「そう…まぁその前に幻想郷について…幻想郷は…忘れ去られた夜をまだ残す世界よ」

「忘れ去られた…夜…」

霊夢がお茶を啜りため息をついて語る

「外の世界…貴方達が居た世界は外灯…だっけ?…ともかく電気というものが発明されて…世界は夜を失って久しい聞くわ…その間、魑魅魍魎の類いと呼ばれる、妖怪、幽霊、怪異なんてものは消えて無くなった…そんなものがいずれ行き着く最終駅…そこがここ、幻想郷…だからここには夜になると妖怪は出るし、幽霊も出るわ、そいつらが起こす、怪異が人間…もしくは人間が怪異に起こした行動…ここではそんなののことを異変というんだけどね…異変が人間または怪異の両者のバランスを崩さないように見張るのが私の仕事」

「へぇ…じゃ、俺たちが遭ったあいつらも…」

ユウキの言葉に霊夢は遠くを見つめふぅとため息をついた

「あれは…神様よ」

「え?あれが神様…?」

姿が見えなかった紐はまだしも

ハサミは神様というより悪魔や妖怪とかそう言う呼び方があってる

「えぇ…二柱ともオキリサマとオムスビサマ…原典はハサミと紐の付喪神よ」

「…神様なのに…なんで俺たちを…」

霊夢の表情に少し影が宿る

「信仰を無くし人から忘れられ、社を失った神様は…憎悪と自らが持つ尋常ならざる力に潰されてしまい、怪異になってしまわれるわ…そういった神様の事を荒神様と呼ぶのよ…荒神様になってしまうと…社を建ててちゃんと供養しない限り、元には戻らないのよ」

しばらくの沈黙が彼女達を包んだ

「…可哀想…」

ユリはボソッと呟いた

「は?」

霊夢から困惑したような声が漏れた

「だって!…今まで必死に人間に尽くして…お願い事だって沢山聞いたのに忘れられて…家まで取られて…可哀想だよ、怒るのも当然だよ」

「…そうかも…しれないな…霊夢さんの言うとおり、これが異変なら…一番の被害者はその二柱の神様だ…」

「ちょっと!ちょっと!あんたらはその荒神に殺されかけたのよ?お人好しか!」

霊夢が何かに気づいたように外を見る

「貴方達、走れる?」

「え?」

霊夢の鋭い眼光が闇に向けたられた

それを知ってか知らずか声が聞こえた

「オイテケ~オイテケ~」

「オキリサマ?」

「みたいね…縁側の反対側から外に出れるわ、ここの下に人里が広がってる、そこを走り抜けて、森の前で待ってて、私もすぐに追い付く…あ、そうだ、ユウキくん…だっけ」

霊夢はお札を丸めた物をユウキに投げ渡した

「これは?」

「博麗の巫女特性、魔を退ける霊験あらたかなお札よ、幻想郷には原始の怪異が存在するわ、困ったことがあれば夜空に翳しなさい、貴方の力になってくれるはずよ」

霊夢はまた、大麻を握り構えた

「お願いね…じゃ急いで!」

ユウキはユリの手を握り走り出す

二人の姿が見えなくなった所で霊夢は不敵に笑った

「置いてけ置いてけ、って何を置いてけばいいのでしょうか?」

「イラナイエンヲオイテケェェェェェェェェェ!!」

巨大な鋏は霊夢を捉えたがまた、大麻が鋏を止める

「あんたらも早く追いなさい、烏が二匹も神社にいたら縁起が悪いわ」

烏達は頷きはしなかったが飛びさって行った

「さて…と、オキリサマ、貴方、要らない縁を置いていけと仰いましたね…良いことを教えて差し上げます、要らない縁なんてないんですよ」

 

PM9:30 @魔法の森入り口

村のような所を二人は一心不乱に走り続けた

そして、ついに森が見えてきた

「森…ここが霊夢さんが言ってた」

「やっと…人里広いよ…」

二人は地べたに座り込んだ

「ここ、どこなんだろ」

「さぁ…でもさ…なんか落ち着くんだよな、ここ」

「…そうだね…一度も来たことが無いのになんか懐かしい気がするの…何でだろ」

二人は夜空を眺め物思いにふけた

しかし答えが出るはずもなく

ユウキのため息で二人の視界に世界が戻ってきた

その時、僅かな視界が真っ暗に染まった

「なっ!」

ユリは小さく悲鳴をあげユウキにベッタリとくっつき顔を埋めた

「何…これ…いや…いや!!」

アレルギーの拒絶反応のように激しくユリは暗闇を嫌がりユウキにくっつく

「霊夢さんが言ってた…原始の怪異…ユリ!俺のそばを離れるなよ」

ユリがゆっくりと頷いた

「夜ってロマンチックだよね」

幼い女の子の声が響いた

「幽霊は出るしさ」

「そうだな…確かにロマンチックかもな…」

視界は無いに等しいが少女が首を傾げた様子が目に浮かんだ

「…貴方、私と会ったことある?」

「さぁな…こうも真っ暗じゃ顔なんて見れねぇよ」

「あら…そうなの?人間って不便ね」

原始の怪異…妖怪や幽霊の魑魅魍魎の類い

またはそれが起こす異変…

これもその一種か…とユウキは冷静に分析をしてジョーク混じりに喋りかけた

「そうだな…それを承知で尚、好き好んで夜の町を歩くような奴は取って食ってもいいと思うぜ」

「じゃ目の前は取って食べれる人類?」

ユウキは霊験あらたかな札を取り出した

「…良薬は口に苦しって知ってるか?」

刹那、視界が回復した

それと共に少女の短い悲鳴が聞こえた

「その例え…どこかで聞きましたね…どこでしょうか」

下駄の乾いた音が空虚に響いた

「君は人食いお化けだね?…霊夢のお客さんを食べるなって何回注意されたら気が済むのかな?…あたし、あんま気が長い方じゃないんだけど」

少々大人びた声で幼い少女のような口調の矛盾した音が二人の鼓膜を振動させる

復活した視界で両者を見ると

 

二人とも背に黒い翼が生えていた

 

「か、烏…?」

「おや?愚問ですね、黒く大きな翼と言えば烏しかありませんよね?…もしかして外の世界では烏以外のの黒い翼の生き物でもいらっしゃるのですか?それはそれで興味深い…」

ユウキとユリは腰を抜かしてしまった

「文もあまりこの二人を困らせないで…同類でも霊夢を困らせるなら殺すからね」

「おー、怖いですねぇ…それはごめん被りますね」

少女が起き上がる音がした

「烏共が…夜はあんたらのステージでは無いでしょ…困るな…台本は守ってくれなくちゃ」

「ステージも糞も、私達は役者ではありませんからね、例えるなら…そう、ただのエクストラ、通行人だ…まぁ少し目立っちゃおうとカメラの前に立っちゃうような、そんなお茶目なエクストラです」

「誰の駒にも成り下がる気はないな、あたしを動かせるのはさとり様か霊夢だけだ」

少女はニヤリと不敵に笑った

「お茶目…?狂ったの間違えでしょう…そいつらは外の世界の住人だよ?別に良いじゃん、殺しても、私お腹すいてるんだ」

「うむ…普段であれば我関せずですし、貴方が誰を食らおうといいんですが…彼らは我々の同志を救ってくれましてね…天狗の結束力の高さはご存知でしょう、貴方はお腹がすいてるという理由だけで妖怪の山の天狗と貴方一人で喧嘩しよう…なんて野蛮な人ではございますまい…これは忠告だ、その人から手を引きなさい」

少女の少し籠った舌打ちが聞こえた

「まぁいいわ…天狗と霊夢の顔に免じてその人から手を退きましょう、お腹を満たそうとして殺されたとあれば笑い話にもならない」

「それはいい考えですね、Leading part≪主役気取りさん≫今宵はいい夜だ…良いご飯にありつける事を祈ってますよ」

「ふん。思ってもないことをいけしゃあしゃあと…」

少女は腰を抜かしてしまった二人を見て微笑んだ

「私の名前はルーミアだよ、また、会えるといいね、外界人さん」

ルーミアはそうとだけ言うと闇夜に消えていった

「早くも怪異に出会うとは…不幸体質とでも言いましょうか…よくも無事に人里を抜けれましたね、お二人とも」

二人はきょとんと地べたに座り込んだままだ

「あぁ…申し遅れました、私、射命丸文と申します、こんななりでも誇り高き烏天狗です、以後お見知りおきを、ユリさん、ユウキさん」

文が微笑んで手を差し出した

「文…さん…そちらは…?」

ユリがもう一人の方に視線を向けながら聞いた

「私は霊烏路空…霊夢の友人だよ、長い名前は嫌いだからお空って呼んで」

あまり表情を変えずお空は淡々と答えた

「ごめんなさいね、お二人とも、この人は人見知りなんですよ、別に嫌ってるわけではありませんのでお気を悪くしないでください」

「別に…」

ユリが文の手を握り立ち上がった

その様子をみたあとユウキが立ち上がった

「文さん、お空さん、助けてくれてありがとうございます」

「あーいえいえ、私は先程も申し上げたように同志を救って戴きましたし…天狗は仲間を助けてくれた恩だけは忘れませんよ…まぁ少なくとも私はね」

「私は…霊夢にお願いされたの…霊夢のお願いは…何よりも優先事項だから」

ユリは首を傾げた

「同志…?」

「あや?もしかして分かりませんでした?貴殿方が連れていた二匹の烏ですよ…彼らは何らかの原因で妖力を無くし烏の姿で外の世界に飛ばされていたようなんです…そんな芸当、できるやつだなんて限られては来ますが…ともかく、貴殿方がここまで彼らを連れてきた経緯はどうであれ貴殿方が二匹の小さな烏を見捨てず、保護してくれたのは事実です…改めてお礼を言わせてください…ありがとうございます」

文が深く頭を下げた

「…そんな事が…俺達もその人たちのお陰で心細くありませんでした、こちらこそ。ありがとうございました」

ユウキも頭を下げる

そのあと、ユリの方をみた

「大丈夫か?ユリ」

「うん…大分、落ち着いてきた…ありがとユーくん」

ユウキがほっとしたようにため息をついた

「どうしたの?」

「ユリは暗闇恐怖症なんです」

「え?」

お空がすっとんきょうな声をだした

「夜とか…少しでも明るさがあればいけるんだけど…お化け屋敷とか…あー…深夜とか…目の前が見えないほどの暗闇に包まれると動悸が激しくなるんだ…なんでかは分からないけど…」

「ふーん…あんたらも大変なんだ…」

お空が夜空を見上げた

「…私も"夜"とか"暗い"は嫌いだな…満月が出る頃にはまた…別れなくちゃならかった…」

「昔の話よ」

霊夢が夜空からふわりと降りてきた

「霊夢…」

「今は…いつでも一緒よ」

「…うん」

お空が少し嬉しそうに頷いた

それをみて霊夢は少し微笑むとユリとユウキの方をみた

「ユウキくん、ユリちゃん大丈夫?」

「あ、はい…」

「良かった…ルーミアの事を忘れててね…今度、何か奢ろうかな…とにかく、この先に信頼できる人間がいるのよ…そこで情報を共有しましょう」

霊夢が文とお空の方をみた

「お空と文もついてきてくれるかしら」

「あや?珍しいですね、群れるのは嫌いなのでしょ?」

「今は荒神になられたオキリサマとオムスビサマが徘徊してるのよ…流石の私もこの暗い中、二人を守りながら森を進むのは厳しいわ」

「霊夢さんも人間ってことですね」

「そうよ?私は人間よ…」

痛い沈黙が五人を包んだ

ユリは挙動不審でユウキは固唾を飲んで様子を伺った

「霊夢!」

お空は霊夢の手を握った

「霊夢…私は気にしないから…霊夢が何でも私は霊夢が好きだから!」

(ウワーオ、カミングアウト…)

ユウキが苦笑いしながら口笛を小さく鳴らした

(百合!?これリアル百合!?ヤバイ!興奮してきたー!)

ユリは興奮気味に前のめりになった

そんな様子を知ってか知らずか霊夢とお空の会話は続く

「ありがと、お空…私もお空が何でもお空が好きだよ」

「霊夢…」

お空が涙目になりながら喜んだ

「あーあーごほん!そろそろ出発しましょう…いつ、荒神二柱が襲ってくるか分からない状況で同じ場所にとどまってては危険だ」

文の言葉に一気にお空と霊夢が赤面して何度も頷いた

「よし…じゃ行きましょうかユリさん、ユウキさん」

 

PM9:15 @魔法の森内

暗い森の中で聞いたことも無いような鳥の鳴き声が響く

「キャ!」

「ユリ!」

ユリが巨大な、木の根っこに躓いた

倒れそうになったユリの手をユウキが握りる

それによって大きく転倒し頭を打つという最悪の事態は回避できた

しかし足場が悪く、見張らしも悪い夜の森をローファーで歩くのは厳しい事は目に見えていた

「いたた…」

ユリは自力では立ち上がれそうもない

霊夢が目を凝らしてユリの足首をみる

「こりゃ…挫いちゃったね…足首…」

「背負おうか?」

「ユーくん、そんな腕力ないじゃん」

冷静に考えればそうだ、とユウキが納得した

「私が背負おうよ…腕力には自信があるんだ」

お空がユリを背負い上げた

「…軽いね…ちゃんと食べてる?」

「た、食べてます!」

ユリが少し過剰にツッコミを入れる

まぁいつものことだ

「霊夢より軽いよ…ちゃんといるか不安になるくらい」

「…」

ついにはユリも黙ってしまった

おそらく、お空の真面目な口調に調子が狂ったのだろう

「ごめん、詮索しすぎたね…霊夢、魔理沙の家までどれくらい?」

「うーん…正確には分からないけど恐らく、もう少ししたら着くよ」

「…なら急ごう、この子の手当てもできるし」

「そうだね…急ごうか」

全員のペースが少しだけ上がった

 

PM9:45 @魔法の森の中の一軒家

「ここよ、私の幼なじみの魔理沙の家」

「随分、遠いですね」

ユウキが息を切らしながら言った

三十分程ではあったが暗い森の中

足場も悪く、見張らしも悪い

これほどの疲労も頷ける

「貴方達が空を飛べたら万事解決だったのよ…ただ面倒な能力は持ってそうだけどね」

「どういう…」

「霊夢」

ユリを背負ったお空が霊夢を呼ぶ声で話は遮られた

「ユリ…寝ちゃった」

ユリはお空の背中で寝息を立てている

「…中に魔理沙が居ると思うからとりあえず、入ってみて、寝てたらたたき起こしてもいいからとりあえず、ユリちゃんの手当てを…文もお空の方へ回ってくれるかしら?挫いただけだけと思うけど…酷ければ貴方も応急処置の手伝いを」

「分かりました」

文達は魔理沙の家の中へ入っていった

「霊夢さんは…?」

「言ったでしょ、幼なじみだ、って」

霊夢が空を見上げる

それに釣られるようにユウキも夜空を見上げた

遠くに飛ぶ物体が見えた

その物体が急降下してくるのも見えた

「…あのばか!…伏せて!」

ユウキが頭を伏せる

「我が障害になりしものよ、博麗の名の下に…止まれやゴラァ!」

「口調が怖い!」

「博麗小結界!」

薄い透明な壁が二人の前に生成され

急降下してきたなにかがそれにぶつかり倒れた

その衝撃で帽子が飛ぶ

飛んできたのは魔女の帽子と金髪の少女だった

手入れが行き届いてない髪は癖毛のように波打っている

「ってーーな!何すんだよ!霊夢!」

「こっちには非能力者もいるのよ!何、いつもみたいに急降下して突進してきてんのよ!私がいつもみたいに足で受け止めると思ったの!?ユウキが怪我したらどうする!?ちょっと考えれば分かるでしょうがこのすかぽんたん!」

「そ、そこまで酷く言わなくても良いじゃねぇか!魔理沙さんの心はガラスなんだぞ!」

「胸はって言うな!」

魔理沙が気を取り直して立ち上がった

「やぁユウキ…いや、切野夕輝…初めまして霧雨魔理沙だ」

「え?なんで名字を…」

ユウキの反応は早かった

理由があるのだが今は言及はしない

「ちょちょいと調べたのさ、どうやらあんたら、完全に"あっち側"の人間ではなかった…やっぱな…切野と結世…しかも当事者同士だったとはな」

ユウキは首を傾げた

「順を追って説明するぜ、とりあえず入ろうぜ適当にくつろげよ」

魔理沙が家のドアを開ける

「あ…アリスが中に居るわ、応急処置を頼んでるから出来ればここで情報を交換しましょ」

「は?」

ユウキが混乱したように霊夢を見る

混乱するのもわかる、訳の分からない新規の名前が次から次へと出てくるためだ

普通の人間であれば混乱する

「あ、あの…霊夢さん、アリスさんとは?」

「あぁ…幼なじみの一人よ、でこいつのガールフレンドよ」

にししと笑いながら魔理沙がピースをする

「本当に美人なんだぜ、今度紹介してやるよ」

「あ、はい…」

少し困惑したようにユウキが返事をした

「じゃ落ち着かんが、ここで…なぁ夕輝、お前、親から名字を名乗るなって言われなかったか?」

図星だったからかユウキは咄嗟の返事が出来なかった

「図星だな…切野家を少し調べたんだ…こいつに言われてよ」

 

PM8:00 @博麗神社

「要らない縁なんてないんですよ!」

霊夢の周りを札と陰陽玉が浮く

「…最悪、殺さなきゃ…憂鬱だな…」

「オイテケェェェェェェェェ!!!」

錆びた鋏が霊夢に向かい刃を向ける

「二重結界!」

透明な壁が鋏を止める

火花を散らして激しい音が響く

「…!?ヤバ…」

霊夢がバックステップで距離を取る

「マスターーーースパーーーーク!!」

太い光線が石畳を壊しながら錆びた鋏を焼かんと追いかける

「オオオオオオオオオオオオ!!」

不気味な声と弦が切れるような音がする

「あのばか!威力考えなさい!」

光線が止まり土煙が止むとそこに錆びた鋏はなかった

すると空から魔理沙がヘラヘラとした様子で降りてきた

「よっ霊夢、元気か?」

「あんたのせいで肝は冷えたけど…案外元気よ」

「わりぃ、最近、魔力の不安定期にはいってよ、上手く扱えねぇんだわ」

「あっそ…石畳の代金は後で請求するわ、色をつけて返しなさい」

「へーい」

魔理沙は錆びた鋏がいたほうをみる

「…遂にここまで来たか…」

「えぇ…どうやら、ユウキくんとユリちゃんを狙ってるみたいね」

「ん?誰だ?そりゃ」

霊夢が肩を竦めた

「外来人よ…ただ故ありげね、私の勘がそう言ってる」

「そりゃ故ありだな…どうする?調べようか?」

「頼んでいいかしら?」

「わかったぜ、その代わり色はチャラな」

「はぁ!?」

魔理沙が箒に股がり宙に浮く

「等価交換だぜ」

「全然、等価じゃないじゃない!なら!色はつけなくていいから慰謝料を請求してやる!」

「へいへい…ったく、お前は冗談が通じねぇ…ま、昔っからそうか…情報収集は任せときな、この魔理沙さんによ…にしし」

魔理沙はそうとだけ言うと人里の方へ箒を飛ばした

 

PM 8:20 @鈴奈庵

「よっ小鈴」

閉店時間が過ぎていた為店内は真っ暗だ

「うー…魔理沙さん…どうしたんですか?こんな時間に」

店守をしている少女、本居小鈴が眠そうに出てきた

「すまね、営業時間外ってのは知ってんだが…ちと、調べものをな」

「営業時間を守ってくれた事の方が少ないと思いますが…良いですよ、思う存分、お調べください」

「なら遠慮なく、人里の歴史が詳しく載ってる本が欲しいんだが」

小鈴が首を傾げた

「人里の歴史…ですか?無いことはありませんが…また、どうして」

そんな事を言いながら小鈴は本棚を漁り出した

小さな貸本屋とはいえかなりの数の本がある、1冊の本を探すのは大変だ

「うーん…なんつーかな…ちと面倒な事になりそうなんだわ」

「…良く解りませんが…そうですか…しかしそう言うのは私より阿求の方がいいんじゃないですか?」

「あ、阿求な…行ったぜ?人里の歴史とか云々を聞くにはあいつ程、適任は居ねぇからな…ところがぎっちょん、あいつ寝てやんの」

小鈴が一瞬、手を止め何かに気付きクスクスと笑った

「ん?なんか心当たりでもあんのか?」

「いえ、…いや、はいだから面白くて…その話はまたしますね、じゃ、この本なんてどうでしょう」

小鈴は分厚い本を持ってきた

「幻想郷大全…こんなん書くヤツ居るんだな…紫に消されても知らんぞ?まぁ、今はありがたい」

「そうですね…どんな事象をお探しで?」

「オキリサマとオムスビサマ…あとそれらに関わる人間かな」

「オキリサマ…あれ?そんな事をお探しですか…結構有名ですよ」

「そうなのか?…よし聞かせてくれ」

 

PM9:56 @魔理沙の家

「小鈴の話で解ったこと…これが結構、面倒な事に行き着いてな…まず、オキリサマとオムスビサマを熱心に信仰していた一家の話だ、切山と結城ってでけぇ家がそれぞれオキリサマとオムスビサマを信仰していたんだ…まぁこれだけならお前と…中の女の子は関係ないな」

魔理沙は息継ぎをするように会話を切った

霊夢は頷いた

「でもよ、やっぱ、お前の勘はあたるわ、霊夢…実は長い年月を経て、切山と結城はたくさんの分家を持つようになるんだ、まぁ当時、オムスビサマとオキリサマは影響力のあった神様だ、それに両家が力をつけていた当時の両家の旦那は女好きで有名だったらしい…まぁそういう、"あまりよろしくない"関係の子供もいたらしい」

といいながら魔理沙は霊夢を見た

「と、まぁここまで来たら察してくれるかな?分家…悪い言い方をすると愛人の一家のひとつに切野と結世がいたんだ…つまり、かなり薄くはなっているだろうがお前と中の女の子にも結城と切山の血が流れてるって訳だ」

ユウキがショックを受けた様子だった

心ここに有らずのようだ

無理もない、高校生には重すぎる現実だ

「わり…気持ちは解る…私も望まれぬ子だったからよ…でもお前は違うぜ、詳しくは解らんから断言はできんがちゃんと祝福されて産まれてきたんだ、自分の血を恨むなんて事は止めてくれよ」

「…はい」

「その後、分家が一気に行方不明になる事件が発生したんだ…当時は騒がれたらしいんだが…残念ながら私らの代の何代も前の話だ、お前らに至っては曾が何個付くかわかんねぇような時代だから、私らやお前らの記憶にはねぇが、記録にはちゃんと残ってた、幻想郷一の神隠し事件…"切結分家神隠ノ怪異"…これが幻想郷初未解決の異変なんだ、行方不明になったのは切山と結城に関係をもった女だけではなく、その家族全員なんだ…つまりは何軒ものの家が幻想郷から消えた…具体的にいうと8家、まぁ一家、最低4人と記録にあったから最低、32人もの人が一夜に消えたんだ、それもどこを探しても一人もでてこない、流石の博麗の巫女も匙を投げた大異変な、それで消えた分家は外の世界へ飛んだ…」

「それが俺とユリ…」

「そう言うことだ、お前らが名字を自分から進んで名乗るなと言われたのもこの事件にある、当時、幻想郷の人間は当時、幻人として酷く差別されてたのさ…だから名字を捨てるという伝統が産まれた…差別が無くなった後も…その伝統だけが残り、今に至るって訳だ、ついでにオキリサマとオムスビサマがお前らをしつこく追い回すのもお前らの血によるものだろうな…本能的に追いかけるのかもな…ちなみに切山と結城は異変の責任を一気に背負い死刑…いや、あれはもうほぼ私刑かもな、当時力を持っていた、両家が鬱陶しかったのか当時存在していた裁判組織は一審で死刑。それが覆る事もなく死刑は執行…幻想郷の両家の血は完全に途絶えたんだ…両家の滅亡により幻想郷においてもオムスビサマとオキリサマの信仰は消えてしまった…とここまでが小鈴の話だ」

霊夢が話を聞き終えるとため息をついた

「こりゃ…結構ごちゃごちゃしてきたわね…」

ユウキが頷いた

「霊夢さ…」

「許可できない」

会話をする前に断った霊夢にユウキが空気を欲しがる金魚のように口をパクパクさせる

「どうして…」

「大体、予想は付くわ、その目は”貴方達を巻き込みたくない、だから俺らを放っておいてくれ”か”霊夢さんちょー可愛い結婚してくれ”かどっちかを訴える目よ、あんたの場合、前者でしょ」

図星だったらしくユウキが後退りする

ため息をついて霊夢が続ける

「私は博麗の巫女よ?巻き込む、巻き込まない以前に巻き込まれないといけないのよ…あんたらも帰りたいでしょ…家族の待つ。あっちがわに」

「これ以上、未解決の異変が増えるのも不味いよな…でも逆にこれは霊夢にとってのチャンスでもあるのさ、未曾有の未解決の大異変を解決した博麗の巫女として名を残す為のな」

霊夢が魔理沙の頭を叩いた

「アイテッ」

「バカ言わないで私はそんな立場なんて要らないわ…私はただ私の前で困って泣いてほしくないだけ…目障りだからね」

霊夢が魔理沙の家に入る

「素直じゃねぇんでやんの…ただユウキに昔の自分を重ねていただけの癖に」

「それって…」

魔理沙はユウキの方をみた

驚いた様子で見詰めていたがすぐにヘラヘラとした笑顔になった

「そういや、わかんねぇことってあるか?」

魔理沙が懐かしむように夜空を見上げ聞いた

「気になった事なら…」

「ん?なんだ?」

ユウキが周りを見回した

「幻想郷って少し時代が遅れてる感じがします…これは…時間軸が違うのでしょうか…だったら俺達…元の時代に帰れるんでしょうか」

「あぁ…少し違うな、こっちとあっちでは大体140年位、"年"のズレがあるんだ、実際の時間はあっちと完全にリンクしてるのに年だけずれてる…そんな奇々怪々な時の流れをしている要因が博麗大結界…時間さえも区切る巨大な結界であっち側とは違う世界としてこっち側を成り立たせている…まぁ一種の平行世界ってやつだ、だから年だけズレるなんて事が起こるんだ、現代に生きる、妖怪を受け入れ、保護するにはベストなシステムって訳だ」

「へぇ…」

理解できていない様子でユウキが頷いた

「わかんねェよな…私も良くは分からん…がとにかく戻る時は平成だ、安心しな」

「なら…いいんですけどね…」

「んじゃ一息付こうぜ…おめぇも私もいろいろありすぎた」

魔理沙に手を引かれユウキも魔理沙の家に入る




一ヶ月くらいかかりました…最近、いろいろと忙しかったのもありなかなか更新できませんでした
この場を借りてお詫び申し上げます
申し訳ございませんでした

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