planetarian視聴推奨
どんなときも決して消えることのない、美しい無窮のきらめき
満天の星々が、みなさまをお待ちしています。
酷く酔う。雪に酔うという経験は初めてだった。
ああ…。あの時は、と感傷に浸るのも久しくない。彼らとの別れは必然であったのだ。
私はしがない旅人。齢にしてもう60になる。
世界から空が消えて、星が消えたらしい。らしい、というのは自分がまだ生まれていなかったから。そんな私は星というものを知らなかった。
あれは小さな、小さな子供のころ。私はとある老人に出会ったのだ。
彼は星屋、と言った。
私は…いや。3人組でいたので私たち、というべきか。私たちは彼の発言に興味を惹かれていった。彼に魅せてもらった星という存在に酷く執着していた。
彼はある時こういったのだ。星は決して人を放さない。人は星の煌きに吸い込まれる。それは運命であり、呪いでもあると。
そんな彼も星に呪われていた。だからこそ、世界にこの幸せな呪いを撒こうとしたのだろう。
彼にはあらゆる技術を教えてもらった。プラネタリウム、という星を投影する機械に関しては完全といってもいいほどに教えてもらった。
だからこそ、彼の意思を引き継ごう。世界に星を届けよう。と少年である自分は思ったのだ。それはどうしようもない情景だった。
今でもあの時の行動は後悔していない。同じ志を持った仲間にも恵まれた。もっとも、彼らはもう散っていったのだが。それでも彼らとの約束を忘れることはない。
そう。約束。
どんなことがあっても、人々に星を見せ続けるという約束。
首につけられたネックレス。あの時の星屋から貰ったメモリーチップを握り締め、改めて誓おう。
気づけば、とある建物の中に自分はいた。朦朧としていたのだろう。それともそれに惹かれたか。
そこには、とても大きなプラネタリウムがあった。自分が持つ持ち運び自由なものと違う。とても大きな。形こそ違うが一目でわかった。
これをあの二人に見せてやりたかった。恐らくここには電気はない。だから起動しないけれど、それでもこの夢の機械を、彼らに見せてやりたかった。
ただ、なんというか。私の心というものはこれを見て…満足したのだろう。もう自分も老い先長くない。この先集落を見つけるのもないだろう。なら、ここを自分の墓地にするというのはどうだろうか。ああ…それは自分にとって最高の終わりである。
そんな風に感傷に浸っていたら、何か…蒼いロボットの残骸を見つけた。
プラネタリウムの目の前にある椅子。そこに眠るように座る彼女。決して動かない過去の遺産。
何故だろうか。そんな彼女がどうも気になった。そして思ったのだ。どうせ自分はここで死ぬのだから彼女には話し相手になってもらおうと。自分が持つ電力を使えば、ここにある大きなプラネタリウムならともかく彼女程度なら動かすことは可能だと。それはただの気まぐれだった。
そこからは、寒さとの戦いだった。
5日間。彼女を治すために費やした時間。今までの人生で得た技術を全て使って修理した。もう食料も多くない。ここで朽ちるのは明白だ。後悔はない。彼らとの約束を破ってしまったが許してもらえるだろうか。許してくれないだろうな、と苦笑する。
さあ。起動させるか。
そのとき、ふと思ったのだ。あの時星屋に貰ったメモリーチップ。それを彼女に使ってみようと。幸い規格は同じである。もしこのメモリーチップの中身が分かったのなら、彼の真意も分かるかもしれない。
メモリーチップを彼女にとりつけて、起動させよう。
そうして、私は彼女を起動させた。
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