これは僕が大学一回生秋の事だ。先輩とシトギさんのせいで確実に交友関係が歪んだ頃、先輩に「割のいいバイトの話がある」と言われた。
いい加減この人がニヤニヤしたりシトギさんが男口調になるといい事がないと学習し始めたので断ろうと思ったのだが、「日給二万!」と言う言葉に惑わされOKを出してしまった。
しかし話を聞くに不動産系で、住宅の住心地の調査に一日泊まるでけらしく「新築住宅に一日泊まるだけで二万かぁ。おいしいな」と楽観視していた。
土日で行うらしく、最近は休日に毎日連れ出されていたシトギさんに許可を貰いに学内のカフェ行った。最近はここがお気に入りらしく、よく自殺したここの学生が出るらしい。
「場所はどこなの?」
と、珍しく僕のやることに興味を示し、雑誌から目を離す。週刊釣り師って
「高速道路の降りて行った所ですね。あの大橋のある」
「あー、そこね。良く行くわねぇあんな所」
「え?何かあるんですか?」
「え?知らないの?珍しいわね。あなたがこの手の情報知らないなんて」
少し勝ち誇ったようにクスクス笑う彼女にイラッとする。
「最近、誰かさん達に毎日のように連れ回さてるので」
「先月3人目の入居者が死んだわ」
「は?」
「だからあの貸家でしょ?私は去年行ったからいいわ。あれは面倒」
理解した瞬間に自分の頭の中がやってしまったで埋め尽くされた。そうだった、何が新築だ、あの先輩はそんな事一言も言ってなかった。しかもあの先輩が普通のバイトを回して来るはずが無いってのを忘れていた。
「また、騙されたの?なんて言うか学習しないわね」
「……先輩でも無理なんですよね。もうダメじゃないですか」
僕がそう言うと「無理じゃねーよ。面倒なだけだ」と少しむっとした後、僕の少し後ろを指さす。
つられて振り向く。
その瞬間音が消えた。いつも静かな校内のカフェテラスだがおかしい。痛いほどの無音。風の音も、木の揺れる音も、さらには正面で座ってる先輩の息遣いすら感じなくなる。
何よりおかしいのが何もない空間と『目が合ってる』
確実に誰かに見られていて、見てる感覚があるのだ。無音なのにうるさく、頭痛がする。
シトギさんの話を思い出した。自殺者が出る。と
その瞬間体が動いた。立ち上がり頬を両手で引っ叩き、太ももを思いっ切り抓る。
「いってぇ……」
「ははははっ!!」
風の音が、何よりシトギさんの笑い声が何より自分を安心させた。それと同時に怒りもだ。
「……ふざけてなら悪質すぎますよ」
もう怒る気力もない。崩れるように椅子に座る。
彼女は心底おかしいと言うように笑い、男口調で僕を褒める
「完全に目が合ったのにすげーよお前。すぐ立ち直っちまう」
「ホント止めてくださいよぉぉぉぉ」
机にぐったりとする僕。心臓に悪すぎる
「それならあの貸家行っても大丈夫だ。お前に憑いてる奴の危機回避はマジで優秀だから」
「てか逃げましょう!?完全に目つけられましたよね今!」
「大丈夫だ。もう消えた。いや違うな、逃げた。」
その言葉に「よかったぁぁぁぁぁぁぁ」と伸びる僕。
「お詫びに奢るわ。何がいい?」
口調が戻ると言う事は本当にいなくなったのだろう。
「あ、じゃあカルボナーラをセットで」
「いきなり元気になるわねぇ」といいお金を渡してくる
「あれ?先輩の分はいいんですか?」
そう言うと彼女は苦笑しながら
「さすがに頭ぐしゃぐしゃ内臓ドロドロを見せつけられると食欲なくすわ」