初夢は青王を引いた後家がカメムシと蠅だらけになる夢でした。なんでさ。
今回はモブが一杯出ます。
インタビュアー(〇〇さん)も九番隊のモブ。性別すら決めてない。
五席(●●さん)も捏造。こっちはお好きなおっさんキャラを当てはめて下され。
男女比7:3位だと思ってるんですが、実際どうなんですかね?
追記:誤字修正しました
「え?瀞霊廷通信の取材?」
「本人じゃなくて良いんですか?……ああ、インタビューの前に他の隊員からも話を聞きに来たと」
「へぇ、色んな話が聞きたいから私達の雑談を書き留める形式で取材、ですか」
「あ、隊長から許可出てるんです?やったぁ、おおっぴらにサボれるぞー!」
「あ、じゃあ私お茶入れてきますねー」
「よろしくー」
「四席についてですよね?今外廻り行ってる五席とかなら昔の事とかも聞けると思いますし、戻ってきたら混ざって貰いましょうよ!」
「あ、外廻りってのは各隊への備品補充の事です。トイレットペーパーとか石鹸、救急箱の中身とかですね」
「にしても四席特集ってなんか珍しいなー」
「大体隊長格か、あって三席位だもんなぁ…」
「空式四席っつったらこれでしょ、『四番隊の兄』」
「それアレだろ?他に母ちゃんと長女と末っ子と叔父貴と先公がいるんだろ?」
「おいやめろ、他は兎も角母ちゃん呼びだけはやめろ、死ぬぞ」
「あの、今のオフレコでお願いします。命掛かってるんで」
「面倒見良いし性格男前だしで兄認定されたんだよなー」
「東に隊に馴染めてない新入りあれば行って構ってやり、西に仕事が上手く出来ない奴があれば行って教えてやり」
「身内が危篤だったり産気づいてたりしたら、『よし、今日から三日分のお前の仕事はこの俺が引き受けた!とっとと帰って顔見せてやれ』、だろ?」
「その間にそのあとの休みの手続き迄してくれてますね」
「でも兄貴とか姐さんとか呼ばれるのは嫌がるんだよな」
「『極道者じゃねーんだぞ』っつってたな」
「実際兄なの?姉なの?」
「あの人の性別は四番隊七不思議の一つだよ」
「俺達四番隊隊員の健康診断担当してるのは卯ノ花隊長なんですけどね?その隊長がだんまりなんで……」
「風呂とかトイレはアレだな、人に会わない時間見計らってるっぽい」
「縛道使ってるって話もあるぞ」
「書類仕事の途中でトイレに立たれたとき、こっそりついていったらいつの間にか後ろに回られてて『わっ』ってやられたわ。『先戻ってろー』って言われて、結局どっちに入ったかは見れてないのよね」
「喉仏はないよな?」
「無いけどそれは末っ子もだろ、判断材料としちゃ薄い」
「喋らなければぱっと見未亡人みたいな雰囲気あるけど、口悪いし背はあるしでなぁ」
「おい背丈の話はやめて差し上げろ、副隊長はそれで大分悩んでるだろ」
「男だと確定してる末っ子より格好良さあるのがまた…」
「でもゴ〇ブリは駄目なんだよな、誰かが潰す迄別の部屋に逃げてる」
「ギャップ萌かー…」
「お茶入りましたよー」
「お、サンキュー」
「調査員さんもどうぞ」
「…そういや俺外廻り一緒になったとき本人に『性別どっちなんですか』って聞いたことあるけど、『見りゃわかんだろ?』って言われた」
「わかんねーよ、眼鏡と前髪でほぼ顔見えねーもん…」
「髪の下がどうなってるかも七不思議に数えるんだっけ?」
「あの赤い太縁のクソダサ眼鏡を何故愛用してるのか……わからん…」
「俺も聞いたわ、同じ返答されて食い下がろうとしたんだけど……あ…ありのままその時起こった事を話すぜ!『俺は奴に質問していたと思ったらいつのまにかラーメンを奢られていた』な…何を言っているのかわからねーと思うが俺も何をされたのかわからなかった…」
「結構ご飯奢ってくれますよね、大体麺類、たまに焼肉って感じで。あ、でも飲みに誘われたことはまだ無いなぁ」
「多分今後もないぞ、あの人酒飲めないみたいだし。すぐ寝るか吐くかだっつってた」
「あの人ほんっと会話の持って行き方上手いよな、気付いたら向こうのペースに乗せられてる」
「だからお悩み相談室なんて開いてるんだろ?」
「上司の愚痴や恋愛相談、自殺を止めたって話も聞きますね」
「恋愛相談はなぁ、『四番隊の四席に相談して背中を押されたら告白は成功する』、なんて噂まである」
「可愛いコやイケメンに告られても、バッサリ切った上で其奴を好きって奴とさり気なく引き合わせたりしてキューピッドまでしてるよな」
「それキューピッドというか黒幕なのでは」
「相談室の面目躍如ですねぇ…」
「それで片思いの相手から恩人にジョブチェンジした結果コネが広がる、と」
「んでそれは仕事の為に使うんだろ?」
「書類仕事も外廻りも開発局との提携もやってるからな、人脈半端じゃない」
「外面完璧よね、後でほくそ笑んでたりするけど」
「皮肉も言うよなぁ、しかも結構キツい」
「でもキレたとこは見たことないですね」
「確かに。マジギレは見たことないね」
「…あの人仕事めっちゃしてるけど倒れたこととか無いよな?書類やってて寝落ちするのも全然見ないんだけど」
「仕事をするという鉄の意志と鋼の強さを感じる」
「休みも流魂街行ってる時以外は自室で医学書やら論文やらと睨めっこしてるからな、休みの数が俺達の半分くらいだと思った方が良い」
「ワーカホリックかな?」
「休日そんなことしてたのか」
「体調管理完璧すぎかよ」
「部屋殺風景だよな、本しかない」
「流魂街行ってんの?見かけたことないけど」
「タッパのあるイケメンと一緒に私服で居るのは見たわよ」
「え、誰だそれ」
「恋人?」
「いや、兄弟だって言ってたぞ。似てないけど双子なんだってさ」
「へー。……ん?何でお前が答えんの?」
「「あっ」」
「あって……ま、まさかお前等リア充か…!?デートなのか…!?」
「末永く爆発して、どうぞ」
「いっ、今は私達よりも空式四席の事でしょ!」
「二人して墓穴掘っちまった……」
「後で馴れ初めとか聞かせろよ?で、その兄弟と四席は何してたんだ?」
「ラーメン食ってた」
「…何?そんなに麺類好きなの?」
「別に他のモン食べるのは嫌ってない筈だけど……」
「美味しい物食べた時レシピ貰おうとかやってますもんね」
「夜食にもカップ麺系食ってるね、飽きないのかな」
「アレじゃね?選ぶ手間を減らしたいとかそんな」
「んで浮いた時間で仕事するんだろ?あり得る…」
「あーなるほど」
「お前等、何してるんだ?」
「あ、お帰りなさい●●五席」
「〇〇さん、あの人が五席の方で、空式四席よりも前から四番隊で働いてらっしゃるんですよ」
「空式四席についての取材らしいです」
「ほぉ、珍しいな」
「今は休日の様子について話してるんですけど、何かネタ持ってません?」
「あ、隊長から許可は貰ってますよ」
「そうか、それなら俺も混ざるかな。…しかし、休日ねぇ……ああ、あいつ午後と次の日の午前連続で非番にしてる日あるだろ?」
「ありますね、週に一回あるかないかのペースですけど」
「そういう日は兄弟の所に泊まりに行ってるか、徹夜で薬草の生えてるとこ探してるんだよ」
「ええ…後半俺の知ってる休みじゃない」
「それ隊長がやってるヤツ…しかも徹夜か…」
「働く事を強いられているのか…?」
「……泊まり……本当に兄弟なんですかねぇ……」
「おっと、恋人説浮上か」
「兄弟兼恋人とかもあるか?」
「禁断の恋なんです?というか異性?同性?」
「異性だろ、多分……異性であってくれ……」
「お前『女性でストレート』派か……俺もだ」
「告られても『仕事に集中したいしあまり興味ない』っつって全部断ってるからな、あの人。隠れて付き合ってるなら納得だわ」
「付き合ってなかったとしても、泊まりって時点で四席に片想い続けてる奴とか拗らせて『罵って下さい』『同性でも良い、寧ろ有り』って言ってる奴らとかの嫉妬の炎が燃え上がりそうだけども」
「兄弟ならセーフじゃね?」
「んー…でも既にお付き合いしているなら納得だけど、それならそれで『お付き合いしてる人が』ってちゃんと言いそうよね」
「あぁ確かに」
「…恋人では無いと思うぞ、多分」
「え、なんか根拠あったりします?」
「昔好きだった奴のこと今でも好きなんじゃないかと」
「う………うおおおぉぉぉ!?此処に来て色恋沙汰の確定情報発覚!?」
「『睡眠欲、食欲、労働欲』やら『似非朴念仁』やら言われてるあの四席に!?」
「あ、相手の性別どっちですか!?後年上?年下?場合によっちゃあ戦争になりますよ!」
「はぁ?んな大げさなことなのかこれ?」
「相手×四席か四席×相手かで揉めます、盛大に」
「おいやめろ巣に帰れ、というか四席の性別確定してない以上それ無駄だろ」
「妄想は全てを凌駕する」
「アッハイ」
「でも実際相手気になる…どうなんです●●五席?」
「其処まで気にされてるような情報勝手にバラさねぇよ…」
「そんなぁ、殺生な!」
「騒ぎすぎたか…藪蛇だったかな」
「くっ……本人に聞くわけにもいかないし…」
「おう、聞くな聞くな。…えっと…」
「〇〇さんですよ」
「お、ありがとな。……〇〇さん、すまんが口を滑らせちまったみたいでな。好きだった奴云々は書かないで貰えるか?…………ありがとう」
「……あとなんか話題あるっけ?」
「ストーカー野郎をぶん投げた話した?」
「あ、してない」
「それ結構前だよな?」
「はい。もう何十年も前ですし、最近入った奴等は知らないですよ多分」
「イエス、知りません!」
「そんな事あったんですねー…」
「……え、そろそろ本人のインタビューに行かなければ、ですか?じゃあこの話迄ですかね」
「あ、じゃあ俺話したい。さっきから相槌打ってるだけだったし」
「どーぞー」
「よっ、真打ち!」
「ヒューヒュー」
「うるっせぇ!●●五席もからかわんでください!……今もだが、あの人の恋人にって奴は昔から結構居る。それこそ他の隊にもだ。あれはそんな奴の一人で、無理にでも四席をモノにしようとしてつきまとったり手紙を送ってきたりしてたみたいだな。発覚したのは事が全部終わってからだったが」
「ホントにストーカーだな………」
「そこそこイケメンだったけど、だからこそすげなく断られたのが堪えたのかしらねー…」
「手紙って?」
「あぁ!観察記録みたいな物だったわよ。自分の職務そっちのけで四席を見に来てたみたい。四席も出来るだけ見られないように立ち回ってたみたいだけど」
「仕事の鬼の恋人には相応しくない所業ですね……」
「そうだな。当時はまだ六席だったけど、既に今と同じようなペースで仕事してたぞ、彼奴。まだ正式ではなかったが、もう他隊からの相談も受けてたよ。よく体壊さねぇな、とずっと思って…」
「話し続けていいですか、●●五席」
「おっとすまん!頼む」
「いえ。………其奴は無視され続けてとうとうキレたらしくて、ある日『一寸伺いたいことがありまして。空式六席はいらっしゃいますか?』と正面突破を仕掛けてきた。ストーカーだとは知らない俺は素直に応接間に案内して、あの人を呼んで来ちまった訳だ。」
「よくストーカーと知ってて会う気になりましたね、空式四席……」
「そいつの名前聞いて『ああ、確かに其奴は俺の客だな。対応するわ』って言ってたから、元々けりをつけるつもりではあったのかもな。……部屋に入ると其奴速攻で斬りかかって来てさ。俺は四席の後ろに居たからなんも出来なかったんだが、あの人は其奴の横をすり抜けて『いい加減迷惑なんだ。こっちはアンタに興味なんて一切無いし、とっとと自分の隊に帰ってくれないか?』って笑って煽りながら庭に降りてったんだ」
「笑ってってあれか、皮肉言ったり後輩からかってる時の凄い腹立つ笑い方か」
「ああ、あれは確かに煽りですねー」
「お前は無事だったの?」
「ストーカーはあっさり挑発に乗って庭に出てったからな」
「うっわ単純」
「…人を呼ぼうか迷ったが、好奇心が勝ったから庭側の廊下までそのまま追い掛けた。どうせ庭なら色んなとこから見えるし、と思ったのもある」
「いーけないんだいけないんだ、たーいちょうに言っちゃーおー」
「そっかそっか、続きは要らないか」
「すいません要ります続けて下さい」
「うん、くるしゅうない。…庭では四席が只管相手の攻撃避けてたんだけど、一寸距離取って相手が突進してきたら、それを避けた上で引っ掴んで上に投げたんだよ」
「全部避けてたの?凄いな」
「斬魄刀滅茶苦茶に振り回してたし、一寸距離を取って横にずれるのを繰り返してただけっぽいけどな」
「そのシーンなら見たわ、塀の外からギリ見える位だったか?」
「結構な高さじゃないですかそれ……」
「そのまま落下したらヤバいのでは?」
「いや、地面までは落ちなかった。空中に浮いてる間に、四席が縛道の……えっと…なんだっけあのやたら鎖って漢字使う奴…」
「六十三番の鎖条鎖縛か?」
「それです。…それで拘束したあと瞬歩で上に回り込んで引っ掴んで、自然落下じゃなく持って降りたんだ。だから怪我はなかった」
「よく持てたな、鎖の分重くなってただろうに」
「いや、『おっも!』っつってたし半分引き摺ってた」
「あ、やっぱり?」
「…あれ、何で投げたんだ?意味なくないですか?」
「『下でやると地面とか抉れそうだったし、あわよくば気絶してくれるかなって。というか此奴のせいで庭が壊れたとしても、予算出すのも直すのもどうせ
「腹いせ豪快だなぁ」
「あー、修繕作業とか面倒いもんねー」
「流石四席、隊への気遣いがありがたい」
「後半はガッツリ私情入ってたけどな。……しっかしお前さっきから四席の口調真似してるけど全然似てねーな!」
「うっせ、ほっとけ!……その後其奴は四席が保管してた手紙とかの証拠やサボりの記録のせいで何らかの罰は受けたらしいが、詳しいことは知らん」
「今は居ないって事は諦めたんですかね?」
「どうだろ、まあストーカーがシメられたって話が広まってからは表だってどうこうする奴は居なくなったよ。……話終わり」
「お疲れー。…あ、調査員さん、四席の所に行かれます?案内しますよ。……一寸行ってくる」
「おう、湯呑み片しとくぞ」
「サンキュ」
「ただいまー」
「おかえり、境。服出しといたよ」
「ありがと」
つっかれたぁ、ここ最近忙しかったから、青乃の家に泊まるのは三週間ぶりか。
結構前だが私服で隊舎から歩いて行くなって怒られたことがあるので、今は瀞霊廷を出たら偽装鏡面で移動して、この家で私服に着替えるようにしている。
「彼奴の家に死神が出入りしてる」、なんて青乃を悪目立ちさせたくないしな。
「境、昼ご飯何が良い?」
「あー……特に希望なし。強いて言うなら今一寸油モンは避けたい」
「了解。素麺まだ余ってるし、それでいい?」
「おー」
そうだ、食後にあれ読もう。
今日隊を出る前に渡された、俺含む四席の特集が載ってる瀞霊廷通信。
隊の奴等から見た俺ってどんな印象なのか、一寸気になるな……
「「ご馳走様でした」」
お粗末様でした、とは青乃は言わない。客じゃなくて家族として扱われてるって感じがして、少し嬉しい。
「青乃、瀞霊廷通信一緒に読まねぇ?」
「うん、ボクも気になってたし、付き合うよ」
気分はホラー映画の鑑賞会だ。
どんな事が書かれているかびびってるって意味では同じようなもんだと思う。
「じゃあ、行くぞ……」
~~~~~
瀞霊廷通信
各隊の四席特集
四番隊 空式 境
キャッチコピー:四番隊の兄
好きな物:ラーメン、焼肉
苦手な物:酒、G
紹介:面倒見の良さで他の隊の隊員にまで慕われており、『お悩み相談室』なるものも開いている。その一方で新薬の開発や医療関連の論文の発表もこなす才人。しかしそのプライベートには謎が多く、髪で隠された左眼は四番隊でも議論を呼んでいるらしい。
他の隊員からの印象:四番隊の兄、面倒見が良い、よく奢ってくれる、睡眠欲・食欲・労働欲、似非朴念仁、キューピッド、黒幕、性別不明、クソダサ眼鏡
インタビュー・Q&A(一部抜粋):
───「お悩み相談室」を開いた切欠は?
空式四席(以下空)「現世にはカウンセラーなんてものがあるのに、こっちにはありませんでしたからね。死神は命張ることも多い職ですし、少しでもストレスを減らそうと思いまして。恋愛相談とかも受け付けてますよ」
───カウンセラー、ですか。では何故「お悩み相談室」という名前に?
空「カウンセリング室よりは取っつきやすいかと思ったんです。心の病を持った人が行く、みたいにイメージされる方もいるでしょうし。それに精神的な物だけじゃなく、四番隊の活動に関わることも相談して貰えるので、色々改善できて良いですよ」
───「似非朴念仁」という呼び名については、どうお考えですか?
空「え、裏でそんな風に呼ばれてるんですか?ううん、上手いこと言うなぁ……一寸言い返せませんね。自分は仕事が第一ですし、気付かない振りをすることも多いですから」
───休日に男性と出掛けている、という話もありますが。
空「ああ、それは多分兄弟ですよ。全然似てないけど双子なんです。いい年してべったりし過ぎかな、と思わないでもないんですけど……大事な兄弟なので」
───なぜそんなにも仕事を?
空「今一番やりがいがあることなんです。まだまだ努力が足りないなぁって思ったりもしますけどね(笑)」
~~~~~
性別不明とクソダサ眼鏡はわかる。
昔から性別は誤魔化してたから、今更バラすのもなんかなって思って曖昧なままにしてるし、眼鏡は赤くなった左眼と近い色合いで縁の太い物を選んで、視力補助兼前髪の抑え兼目が見えちまったときに眼鏡の色を見間違えたと思って貰う用として付けてるからな。
格好良さは二の次だ。
……けどさぁ……
「……他は兎も角黒幕ってなんだ黒幕って。今度何話してたか聞かねーと……ん?青乃?なんで顔真っ赤にしてんだ?」
「いや、大事な兄弟とか公言されるの結構恥ずかしいなって……うん、ボクにとっても君は大事な兄弟だよ…」
「えっ……あーうん、確かにコレは、恥ずかしいな………」
くっそ、俺の兄弟可愛いかよ……今やブルーノ同様身長二メートルのデカブツだが相変わらず可愛い。
真っ赤になって目を逸らしながらとか、あざとい。あざとすぎる。
……眼や性別については聞かれなかったが、デリケートな話題だって事で避けられたんだろうな。
「…青乃、俺この後『昼寝』してて良い?」
「…うん、どーぞ」
「ありがと」
…他の隊の分はあとで読もう。
「う……うぅ……」
夕食のあと、風呂を出てすぐに境は寝てしまった。
『昼寝』と称した精神世界での鍛錬───どんな武器・体術でも使えるようにと記録を元に武器と仮想敵を再現する───は偽装鏡面内での組み手よりマシとは言え、現実の体にも疲労を溜めてしまうから仕方ないと言えば仕方ないのだけど。
……破門された日以来、結局彼女が泣くことは無かった。
三十分にも満たなかったけれど、あれが境が境らしくいられた最後だったようにも思う。
隊長さんに呼ばれて、「実は数日前に破門されていた」「何も知らなかった」と述べて、暫く監視が付くものの、無罪と判断された。
「知っていたら止めるなりついて行くなりした」という、計算ずくで漏らした本心もそれを後押ししたのだろう。
その後の彼女は、自覚はないんだろうけど百年前を再現し続けるように過ごしている。
お菓子の差し入れは阿近君に、ご飯に行くのは同僚と。
元々ボクと秘密でやっていた鍛錬だけは、少し回数が増えたけれども。
死にたくないという想いから生まれたが故に自殺は出来ず。
巻き込みたくないと願われた故に真実を探ることも出来ず。
百年前は倒れた事なんて無かったからと、体を壊すほど仕事にのめり込むことも出来ず。
そうして雁字搦めになって追い込まれて「境」では耐えられないと思ったのか、彼女は人格のオリジナルにもう一度近づいた。
……さっきの雑誌に書かれていた、他の隊員から見た彼女というのは、大分その影響が出ていたと思う。
最たるものはその笑顔だ。
あの人と居るときの、少しだけ微笑んだ、とても幸せそうな顔は長らく見ていない。
今の彼女が浮かべるのは営業スマイルか、皮肉気な笑みか、自嘲と諦念をうっすらと乗せた人形のような微笑みだけだ。
…悪夢を見る頻度も上がったが、もう以前のように吐くことも、夢の中で落とされた手足に走る幻肢痛擬きを気取らせる事も無い。
ボクですらわからないほどに、完璧に隠しきってしまっている。
今日の昼ご飯のように「油物は嫌」、と気持ち悪いのを匂わせたりして頼ってくれるのは嬉しいが、それでも明確な言葉にした事は無い。
悪夢を見ないように出来ないか、とボクも手を繋いで添い寝したりしてみたけど、そもそも自分で自分の手を握るような物だ。効果は薄かった。
……今日も彼女は魘されているが、起こす気は無い。
何故なら極稀にではあるが、彼女は譫言であの人を呼ぶからだ。しかも、もう呼ばないと決めて現実では一切使わなくなった、「師匠」という呼び方で。
制止しているのか、それとも助けを求めているのかは判らないが、皮肉なことに彼女があの人に縋れるのはもう悪夢の中だけなのだ。
それを取り上げるような真似はしたくない。
……目覚めたときに、「俺なんか言ってた?」と焦るような表情で尋ねてきて、「魘されてただけだったけど」と聞くと安堵したような表情を浮かべる事がある。
縋ってはいけないのだと思っているんだろう。
本当のことを教えてしまえば、きっと夢の中でさえ「境」を押し殺そうとしてしまうだろうから、ボクはこれについては嘘を吐き続けるつもりだ。
……そろそろボクも寝よう。
『青乃』を動かし続けるのは、少しとは言え彼女の霊力を消費するし負担が掛かる。
破晶としても、起動し続けているよりは思考を止めて休眠状態になっていた方が境に負担を掛けずにすむだろう。
布団を被り直して彼女と向き合ったまま目を閉じ、『青乃』の呼吸保持と境の体のスキャニング以外の機能を終了する。
──おやすみ、境。
長過ぎィ!上手く区切れなかった結果がこれだよ……
主人公がどれ位精神削れてるかは周りから見た方が判りやすいのでモブに出張って貰ったが、多分今後の出番はない。あってチョイ役。
普通の物語なら、依存対象が居なくなった奴に対して「もうその人はいないんだよ!」とか説得する展開になると思うが、この主人公の場合それやられると精神崩壊まっしぐら(依存どころではない)なので、破晶は絶対それは言わない。
主人公がどれだけ楽で居られるかの方に重点おいてる。
破晶は青乃として動いているときは、斬魄刀であることがわかるような言動をしない様にしている。
移動中に昼飯を聞いておくとか、インタビューを受けたときも観測してたから内容を既に知っていてて、それを匂わせる発言をする、とか。
あの人(師匠のこと。境に合わせてお師匠さん呼びをやめた)が陥れられる位だから、警戒し過ぎるくらいで良いと考えた模様。