お前はとっとと無に帰れ   作:燈祁

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同人力高めてたと思ったら「公式が同人」みたいなイベントが復刻していた。やったぜ。

お久しぶりです。バイトバイトでくたばってましたが大体一ヶ月で帰ってこれました。じわじわ増えるお気に入り数に元気をもらっております。ありがとうございます。
各話の一寸した手直し(シナリオ変更なし。単語レベルの変更・改修)とかもしましたので、気にしていただける方は改訂日時が変わってる話の前書きをお読み下さい。

訂正:舞踊→不要
訂正2:脱字(最も)・誤挿入(、)を訂正



不思議ちゃんと思われがちな奴ほど本質を理解していたりする

「トイペと包帯は持ったか?」

「えっと……大丈夫です。トイレットペーパーは背負い籠、包帯は手提げ籠に、それぞれ満杯です。……十一番隊も回る時は手当て道具多目、でいいんですよね」

「おう。薬品関連は俺が背負ってるから、包帯半分頼むな」

「はい」

 

現在時刻は07:35。

今日は先輩の△△さんと二人で外回りに行く予定だったのだが、急遽変更が入り空式四席と組むことになった。

なんでも相談室の用だとかで行かなければいけない場所が今日の僕達の回るルートと被っているらしく、先に出勤していた△△さんと交渉していたらしい。

 

 

相談室内での会話は、担当した隊員一人の判断に基づきその内容の殆どを秘匿されている。

犯罪や病などで他部署や他隊に協力を求める際も、相談者に辿り着かせない事を重視し、全ての情報を開示することは稀だ。

その為、少なくとも隊内では「相談室関連」とされた事柄については、例え他の相談室職員であっても問い質さないのが暗黙のルールになっている。

最初は反発もあったが、うっかり職員同士の会話の一部を聞いた隊員が、相談室案件とは知らずに話を広めてしまった事例───幸いな事に隊外に話が広まる前に終息したらしい───が出てからはルールが徹底されている。

 

以上の理由から、今日も四席に詳細は尋ねない。

仕事の合間に案件を片付けようとシフトを変える職員は珍しくないしね。

 

「じゃ、行こうか。十一番隊から回って、とっとと荷物減らしちまおう」

「わかりました」

 

四番隊と十一番隊の隊舎は、お互いが最短距離に建造されている隊舎となっており、倉庫や消火用の水路・水槽を挟んではいるものの入り口から入り口まで500メートルも無い。

建造当時から負傷者が多い隊だったから隣にされたのだろうか。

 

「あ、二番隊も回るんだよな?」

「はい。十一番隊の次にいこうかと」

「わかった。俺二番隊内だと一寸自由に動けないから、向こうから出してもらう代わりの人と作業してくれ」

「あ、噂は本当だったんですね」

「噂?」

「空式四席と二番隊の砕蜂隊長は仲が悪いって聞いてます」

「あー……違う違う。多分それは「あ~っ!かららんだぁっ!何しに来たの?」っ……おはようございます、草鹿副隊長」

「お、おはようございます」

「おはよーかららんと……知らない人!」

「部下ですよ、俺の」

 

突然横道から飛び出してタックルを決めてきた十一番隊の副隊長に動揺することなく────少しふらつきはした────空式四席はしゃがみこんで彼女に右腕を掴ませた。

良くあることなのか、四席は難なくバランスを保ち、よじ登って来る副隊長と会話を続けながら立ち上がっている。

 

「何しに、は仕事しに、ですよ。だからこんな大荷物なんです」

「ふーん、つるりんとか良く怪我するもんね」

「加害者は更木隊長でしょう、手当て道具も無限じゃないんで程々にして欲しいんですけどね。………おい、立ち止まるなー、行くぞー」

「あ、はい」

 

慌てて二人に駆け寄る。

草鹿副隊長は僕に興味が無いのか、一瞥しただけですぐ視線を四席の方に戻してしまった。

 

階級通りの実力はあるのだろうが、どうあがいても子供にしか見えない。同じく子供に見える十番隊の隊長の方は話せばそこらの大人よりもしっかりしているとわかるが、此方は中身も外見相応のような気がする。

今だって、四席が持ち歩いている菓子を目敏く見付けたようだし。

 

「かららん、今日は沢山持ってるんだねぇ」

「はぁ…ガッツリ触られたら流石にバレますか。今腕動かせませんし、懐でも袖でも好きに漁ってお菓子取って下さい。他の物は弄らないで下さいよ」

「ありがとー!」

 

よいしょ、と四席の首に回されていた手が外され、肩を回り込むようにして四席の抱える箱にぽすりと座り直す。器用だなぁ。

すぐに()()の袖口に副隊長の手が差し入れられ、引き出されたときには個包装の煎餅が一つとチョコが三つ、飴が二つ握られていた。

煎餅がぬれせんべいなのは割れにくいよう配慮した結果のラインナップなのだろうか。

 

「チョコ美味しいけど溶けちゃってるね。全部あおあおに持って貰えばいいのに~」

 

包みの一つが開かれ、口に放り込まれたチョコの感想が述べられる。

あおあおとはもしや僕の事だったりするのだろうか。青二才が由来かな?草鹿副隊長と空式四席に比べればまだまだ若手と言える方だし、席官でもないからそうっちゃそうなんだけどさ……

 

「彼奴には持たせられないですよ。駄目にしちゃいますから」

「ふーん」

 

お菓子の運搬位出来ると思うんだけど……というか溶かしてるのは駄目ではないのか。

何か一言言ってやろうか、と一矢報いる為の言葉を探しつつ二人に目をやると、今度は懐を捜索している所だった。いやちょっと待って下さいよ。

特段お互いが恥じてないので変な雰囲気になったりはしていないけれど、その、良いのか?

事案、若しくは僕が見てはいけないモノなのではコレ?幼女が……えぇ?

 

 

 

新たな収穫物なのか、クッキーの齧られるサクリという音が聞こえ、ハッと前を見る。

既に合わせから腕は抜かれ、会話内容も変わってしまっていた。混乱で完全に気をやってしまっていたみたいだ。これだから青二才は。ちくしょう。

少し遅れていた歩みを早め、もう一度四席の隣に陣取る。

 

「で、何か知りません?」

「あの辺は剣ちゃん行かないし知らなーい」

 

モグモグ、サクサクとクッキーが消費されていく。

水を飲まなくて大丈夫だろうか。噎せてしまわないと良いんだけど。

 

「あー、なるほど。でも気を付けて下さいね、全体的にキナ臭い感じになってきちゃってるみたいなので」

「あおあおはいいの?」

「……協議の結果、最低限の安全は確保してるんで」

「そっか」

 

女児とは言えずっと荷物を抱えたままその体重を支えるのは苦ではないのか、と思い交替を提案しようとするが、二人が余りにも仲良さげに話しているものだから(四席の敬語が隊外で珍しく崩れている)口を挟むことが出来ない。後なんか内容が怖い。

あおあお僕じゃないね?安全確保の為の協議なんてしてないですよね?

 

その後は近況報告に変化していった会話を聴きながら道なりに進んでいくと、程無くして十一番隊の隊舎の門が見える。

突然、とん、と軽い音がしたが、草鹿副隊長が地面に飛び降りた音だったようだ。

 

「お帰りですか」

「うん!そろそろ剣ちゃんのとこに帰らなきゃ」

 

お菓子ありがとかららん!とだけ言い残してパタパタとかけていってしまう少女を二人で見送り、門までの残り少ない道程を進む。

 

「ご友人なんですか?」

「まぁな。……そうだ、お前此処初めてだよな?」

「……はい」

 

死神になって数年が経っているが、十一番隊を訪れるのは初めてだったりする。

何故なら「最も難易度が高い」とされ、ある程度経験を積むまで此処への外回りは割り当てられないからだ。

十一番隊の外回りをこなして初めて、一人前の四番隊隊員として認められる。そんな風潮がある。

因みに難易度が二番目に高いとされる十二番隊には先々月から外回りに行っている。兎に角隊長に見付からないのが肝だと教え込まれたので、それを出来るだけ心掛けて動くのだ。

目を付けられたら多分実験動物(モルモット)まっしぐらだから、とは今隣を歩く四席の言である。何があったのだろうか。

 

「嘗められたら終いだからしゃんとしてろよ。手を出したらヤバイのは向こうもわかって……少しは理解してるだろうし、堂々と仕事こなしてけ。なんか言われたら『糞を隊服で拭く羽目になっても良いならもう少し聴きますけど』ってトイペの重要性アピールしてみろ。それなりに効く」

 

ああ、だから僕がペーパー係なのか。

薬だと根性論で不要と断じるかもだけど、紙は替えが無いもんね。生理現象を引き合いに出すの強いなぁ。

 

頑張ろう、と気を引き締めて門の前に立つ。

一旦籠を置いて出入り用の戸を開くと、目の前に木刀の切っ先が迫っていた。

やっぱり僕、ダメかも……




今回の作業用BGM:「廃/墟/の/国/の/ア/リ/ス」
某マッシュ/アップ/歌って/みたのラスサビ入りがインストを引き立てていてとても楽しくなる。

今回の主役には名前も外見設定もまだ特にありません。描写迄にはイメージを固めねば………。
周りからは本意がわからないシーンを書きたくて出てもらっています。ヒントは置いてるので本当の意味を是非探してみてください。その内本編で明言します。

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