小さいころから謎の少女に付き纏われているような感覚に襲われていた主人公。
 ある日家を追い出されてロンドンにある本家に向かう途中にいきなり水に投げ出されて…!?

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 思いついて前から書いてたやつですけど、Apocryphaに出てくるサーヴァントを知らないと主人公が一体何になったのかわからない可能性があります。


私たちの中の一人

 ……物心ついたころからずっと俺は幼女に憑きまとわれていた。

 

『ねぇ、君は一体誰なの?』

 

 小学校の頃、ぼろぼろのマントで身を隠し、自分のくすんだ銀色の髪と違ってきれいな銀色をした髪の幼女に尋ねたことがある。とはいっても返ってきた答えは聞こえなかったのだが。

 

 俺に何かがあるたびにその幼女は俺の前に現れた。入学式の時も遠足の時も林間学校の時も修学旅行の時も旅行の時も友達と祭りに行った時もそして、俺が車に撥ねられて生死の境目をさまよった時も。

 一度、親と相談すると「霊に憑かれてるのでは?」と言う話になって除霊してもらいに寺へと行ったことがある。

 しかし、俺は結局寺に入ることができなかった。

 何故か。それは寺の敷地へと入ろうとしたら顔を真っ青にした住職が飛んできて俺を追い出したからだ。

 住職曰く俺にはとんでもないものが憑いていて、それはどうしようもないらしい。

 

 と言うわけで、言外に「諦めろ」と言われたに等しい俺はそのまま諦めて日々を過ごしていた。

 何でそうしたのかと言うと、別に直接その幼女に害を与えられたわけではなく、ただ憑き纏われているだけだったのと、偶然目を合わした時に見た幼女のヒスイ色の目が寂しそうに見えたからだったからだ。

 

 そんなわけで、俺は結局幼女に憑き纏われてながら高校を卒業し、大学生になっていた。

 そして、俺が大学に入学した年のある日、俺の運命は捻じれ、激しく動き出した。

 

 きっかけは家に帰ったときに母親が俺に見せたとある資料。

 

『なにこれ?』

 

 家に帰るなりその古ぼけた資料を見せられて困惑した俺がそう母親に尋ねると母親は

 

『これ、うちの家系図。アンタ髪の色がくすんだ銀色の訳昔から知りたかったじゃろ?』

 

『あぁ。そうだけどなんでいきなり…』

 

『今日倉庫整理してたらたまたまこれ見つけたのよ。』

 

『へー……てなんか外人さんの名前が書いてあるんだけどどういう事?』

 

『そりゃだってあんたイギリスの血をかなり薄くなってるとは思うけど引いてるんだからそうなるのも当たり前じゃない?』

 

『当り前じゃねーよ!?今初めて聞いたぞそんなこと!!』

 

 そんな会話があり、それからすったもんだの末俺は何故かイギリスにあるとか言う本家に顔出して来いと言われて、旅行券を握らされ、俺が変えるまでに用意していたのかどうかは知らないが、どこかから引っ張り出してきていたスーツケースとともに家から追い出された。

 

『ったくなんだっつーんだよ一体………ん?』

 

 家から追い出される際に後ろから蹴り飛ばされるような形で追い出されたので顔から地面に落ちている。そのため顔を上げればすぐに地面なのだが、文句を言いながら顔を上げるとそこには変な形のブーツみたいな靴を履いた少女の足があった。

 

『……?』

 

 首をそのまま上へと持ち上げながら視線を上げる。

 しかし、そこには誰もいなかった。

 

「疲れてんのかな俺……」

 

 そう呟いて後ろに振り返り、玄関のカギ穴に鍵を通して回して扉を開けてみるも、ガンと言う音とともにチェーンロックが扉を開けるのを防ぐ。

 それは暗に行くまで絶対に帰らせないという意思表示の表れにも捉えられ、腹が立った俺は扉を蹴飛ばしてからスーツケースを引きずりながら空港行きのバスが出ているハブ駅の方へと歩き出した。

 

 空港までバスで移動し、それから飛行機のフライトの時間を待つ。そして俺は数時間後、空の人になった。

 その時はまだ思ってもいなかった。正直に言ってさっさと本家?とやらに行ってさっさと帰り、そのまま家のこたつで年を越そうと思っていた。

 それができなくなるとか思ってもいなかったんだ。

 

 機内で機内食をもらい、満腹感に満たされながら唐突な睡魔に襲われる。

 

(ま、日本初の機内だし大丈夫だろう……)

 

 そんなことを考えながら俺は眠りに落ち、しばしの時を超えると

 

『お兄さん燃え(きえ)ちゃだめだよ!!』

 

「っ!?」

 

 そんな声とともに意識が覚醒する。それと同時に俺はバシャンという大きな音を立てながら水に落下した。

 着ていた服が水を吸って身にまとわりつく。あとはもうパニックになった頭でひたすらもがいていた。

 

「———!!」

 

 おぼれないように必死に手足を動かす。体感する時間にして数分ほどだっただろうか、とはいえパニックになっていたせいで長い時間に感じられただけで本当は短いのかもしれない。とにかく、俺は何かにしがみつくことに成功した。

 

「はぁ!はぁ!!」

 

 ぽたぽたと前髪から水を垂らしながらしがみついた何かに身を寄せる。しがみついたそれはどうやら煉瓦ブロックで作った堤防のようなものらしく、俺は兎に角この何の水なのかわからないそれから一秒でも早く離れたくてその堤防のようなものへと昇った。

 

「ふわ……」

 

 そのまま身を地面に投げ出す。その時、視界の左隅に包帯の切れ端が見えた。

 

「包…帯……?」

 

 一体どこに続いているのだろうかと思いながら切れ端を辿るように見ていくと俺の左腕にいつの間にか巻き付いている。

 

「え?」

 

 人と言うのは物事に連鎖的に気づくものなのかもしれない。包帯に気付いて零した声がかわいらしい声だったことにその時になってやっと気づき、そのまま顔を上げるとすぐそばのガラス越しに見慣れた幼女のヒスイ色の瞳と目があった。

 

「……」

 

 そっと幼女の方へと右手を伸ばす。幼女も俺の方へと手を伸ばす。そしてコツンと言う音と、硬いガラスの感触とともに俺と幼女の手、否。俺の手はガラスにぶつかった。

 

「うそ…」

 

 幼女の鈴を転がしたような声がシンとしているどこかわからない異国の地に響いた。

 

『お兄さん変わって変わって~!!』

 

『ここはわたしたちが一番知ってる場所だよ~』

 

『はやくはやく~』

 

 呆然とした表情のままガラスに反射するある意味で見慣れていてある意味で見慣れていない自分の顔を見ていると唐突に頭の中に声が響いて体が勝手に動き出した。

 

『え?どういうこと!?』

 

 慌てて自分の体を動かすイメージをするが、勝手に体は動く。しばらく道を進むといきなり霧が辺り一面を覆った。

 霧に巻かれて自分がどこを進んでいるのかすらわからなくなる。ましてや今自分の身体を撃画化しているのは自分以外の誰かなのだからなおさらだ。

 

 煙を抜ける。するとそこにあったのは

 

『ビッグベン…!?』

 

 大きな時計が付いた棟。かつて処刑場として使われていたとも言われることがある大きな建造物が視界の中心に鎮座していた。

 

『ってことはここはロンドン!?』

 

 そう確信を持つとともに声が再び響き始め、再び体が勝手に動き出す。

 

『そうだよ~』

 

『わたしたちはここでうまれたの』

 

『そして望まれなかったせいで川に捨てられた。』

 

『だから私たちは集まってお母さんを探しているの』

 

『だけどなかなか見つからなくって結局お兄さんのひいひいおばあさんに宿ったんだ。』

 

『そうしたらわたしたちずっと一緒の状態で連れまわされちゃって』

 

『最終的におにいさんの中にずっといたの~』

 

『ちょっと待ってちょっと待て!理解が追いつかない!!』

 

 そう思ったその時だった。

 

「誰かくるよ。」

 

 頭の中に響いていた声の中の誰かが不意に口を使ってそうこぼした。体が勝手に動いてどこからか出したサバイバルナイフのようなものを両の手に持って構える。

 

『は?え?どうなってんだ一体!?』

 

 理解がまったくできないままで視界に入ってきたのはUMAとして良く知られているイエティのような白くて毛むくじゃらな何か。

 

「解体するよ?」

 

『いいよ~』

 

『やっちゃえ~』

 

『いぇ~い』

 

『え?え?』

 

「斬るね?」

 

 手に持ったナイフが空を走り、イエティが切り裂かれる。

 

 俺の困惑を置いてけぼりにしたまま、目の前でイエティは血を吹き出しながら倒れた。噴き出した血が顔にかかる。

 

「おいしくなーい。」

 

『魔術師さんの心臓はおいしかったって聞くけどね~』

 

『でも、それ食べたらお兄さんが怒るんじゃあ……』

 

 頭の中で声が響き、どこからかじーっとみられているような感覚に襲われる。

 

『………いや、普通に心臓を食べちゃダメだろ。』

 

 自身の常識が崩れそうになる感覚に襲われながらも俺はそうつぶやいた。

 

『ダメだって~』

 

『なら、どうにかして魔力を得ないとだめだね~』

 

『あれ?でも、今の私たち生身の身体みたいだよ?』

 

『確かめるね?ちょっとチクってするよ~』

 

 その言葉とともに俺の右腕にさっきからずっと持っている血の付いたナイフが軽くこする様に走る。ナイフが上を通るとすっと切れ筋がきれいな腕に走り、そのまま赤い血がつーっと走って地面に落ちた。

 

『あ~、やっぱりお兄さんの身体を私たちで再構成したみたいだ~』

 

『だから生身なんだ~』

 

『だからお兄さんが意識だけの存在になっるんだ~』

 

『誰でもいいから誰か説明して……助けて…』

 

 俺の嘆きはそれからしばらくして黒髪の青年が大きな盾をもったスミレみたいな色をした髪の少女と一緒に来るまで続いた。

 

 




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