ほのぼのとしたお話   作:人形愛好家

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第一話

目が覚めると、そこは森の中だった。別にピクニックや森林浴をしに来たのではない。本当に、目が覚めたと思ったら森の中だったのである。

 

 

まずは安全確認だ、と私は思った。周囲を見回すと、そこはやはり、木があるだけである。だかしかし、ただの木といえど侮れない。回避行動に支障が出るし、攻めに転じても己の得物が木に当たってしまい思うように動けない。

 

 

ここまで来てふと思った。そもそも己は何者か、と。木を見て回避や攻めることを真っ先に考える人間など、そうそういないだろう。

 

 

最初に服装を確認した。顔を隠すような帽子。少し暗めの色のコート。硬くも動きやすいブーツ。

そして1番の問題が、コートの背中部分にくくりつけてある銀色の大きな剣である。並の人間では扱うどころか持つことすらできないだろう。

 

次に腰をみると、そこには銃があった。恐らくは単発式だろうが、大剣に銃とはどういうことだろうか。少し時代錯誤な気がするが、考える時間もないかもしれないため、考えるのは一旦後回しにした。

 

 

何か情報を得られるものはないかと探していると、手に使い込まれて古びた様子のメモ帳らしきものが握られていた。

 

 

そこには、驚くべき内容が記されていた。簡潔に要約すると、自分は人であったこと、今は人では無いこと、武器の使い方、敵と思われるものの弱点などが事細かに書かれていた。

 

それがきっかけとなったのかは分からないが、恐らく自分の全ての記憶を鮮明に思い出した。自らを人ならざるものに昇華させようとしたこと、しかしまだ足りないものがあったこと、世界が繰り返されていること、記憶を残すために自分の墓にメッセージを書いたこと、そして一番最後の記憶は、己が人ならざるものを倒したところで終わっていた。

 

メモを読み終わり冷静に考えたら、一つの推測が生まれた。あくまで推測だが、己が人より昇華したことによって、世界の繰り返しを抜け出せたのではないか。そうするとここは未知の地。己が不死でなくなった可能性もあるので、警戒をしなければならない。

 

 

警戒を怠りなく周囲の探索を始めると、ここは山の麓だということが分かった。それほど高くないようであるし、この山の山頂に登れば、大まかな地形の把握ができる。そう考えて山を登ることにした。

 

 

大剣を背負い通気性が悪いあまり良くない服装を身に着けているのだが、不思議なことに、汗をかくことは全くなかった。

 

 

山を登り三分の一ほど登った頃、空から何者かが近づいてきた。

 

 

隠れてやり過ごそうとも考えたが、あれは恐らく己の方向に向かっているし、戦闘態勢をとるまでに時間がかかると考えたため、隠れるのはやめて、堂々たる姿勢で何者かを待つことにした。

 

 

少しすると、己の少し前に何者かが着陸した。距離が少し近かったので、じりじりと後退しながら相手を伺った。

 

 

相手が起き上がると、己の方へ近づいてきた。相手の姿を見ると、頭に獣の耳がついており、尻尾もあった。明らかに人のものではないそれを視認すると同時に、手を銃の上にかざした。

 

 

もしかしたらある程度の意思疎通ができる可能性があるため、相手の行動を伺いつつ攻撃されても対処できるように銃を左手で握りしめた。

 

 

すると相手が止まった。飛びかかって距離を詰められても対応できるように、警戒を怠らずに自分も止まった。すると、相手が喋りかけてきた。不意打ちに気をつけながら、話を聞く。

 

 

「……お前は何者だ?妖怪の山へ何をしに来た?」

 

 

声の高さから女性と判断。さらにこの山の名前が妖怪の山と推測。言語を理解できたため、意思疎通を試みる。

 

 

「先に言わせてもらおう。()()()()()()()。それと名前はない。呼ばれることがなく、忘れてしまった。ここへは山頂に向かい地形を把握するために来た」

 

 

包み隠さず話すことにした。もしすぐに仲間の元へ帰ったら十中八九敵だろう。大人数と戦うのは不味いので、早めな対応をしなければならない。

 

 

「…分かった。一先ずは嘘をついていないと信じよう。だかしかし、ここより先は天狗の領域だ。それでも進むなら、容赦はしない」

 

 

意思疎通に成功した。恐らくは大規模な組織があると考えられるため、無理をして山頂に行くよりかは素直に他の方法を考えた方が楽だろう。

 

 

「ご忠告感謝しよう。それでもここら一帯の情報が欲しいのだが、教えてくれないだろうか」

 

 

「まあ、簡単なことなら教えよう。私の名前は犬走椛。椛、と呼べ。犬走はいらない」

 

 

「ああ、感謝する、椛」

 

 

どうにか情報を得られそうだ。ここまできたら警戒を少し緩めても大丈夫だろう。恐らくここらの人型の生物はいきなり襲いかかってきたりはしないだろう。

 

 

かなり有益な情報を得ることができた。まずここは幻想郷ということ、人の住む場所があるということ、危険な妖怪が徘徊していることなど、色々な情報が手に入った。

 

 

「これぐらいか?まあ細かいルールなどはまだたくさんあるんだが、とりあえず最低限の事は教えた」

 

 

「ああ、感謝する。まさかここまでよくしてもらうとは思わなかった」

 

 

「なに、気にするな。丁度手が空いていただけだ」

 

 

「それじゃあ、名残惜しいがさようならだな」

 

 

「ああ、精々生き延びろ」

 

 

そこまで言われた所で銃の銃口を椛の首に当てた。少し可哀想だが、眠ってもらうとしよう。

 

 

「――なッ!?」

 

 

「…さようなら。そして、良い夢を」

 

 

瞬間、大きな音を立てて銃弾が発射されていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーー()()()()()()()()

 

 

もとより椛は狙っていない。流石に情報を得て用済みとするほど良心が欠けてはいない。

 

 

狙ったのは、()()()()()()()。恐らく本人はバレていないと思ったのだろうが、生憎こちらには多くの知識がある。さらに人影の上を狙う事で、お前を殺すことが出来た、という意思を示した。

 

 

「…あなたは一体、何者なのかしら?私のいる場所が見えていたなんて」

 

すると女が降りてきた。扇子で口元を隠してはいるが、目は警戒している。まあ、いきなり仕掛けられるよりはマシだが。

 

 

 

「何者かと問われると、少し困る。少し前まで狩人をしていたのだが、生憎今は休業中だ」

 

 

「貴方はこの幻想郷で何をするつもり?」

 

恐らく返答によっては敵となるだろう。しかし今はこちらも戦う理由はないので、敵対しないようにする。

 

 

「仕事を探して、穏やかに過ごす。いつまでかは分からない。勿論邪魔だというのなら、即刻立ち去ろう」

 

 

「いえ、貴方を信用しましょう」

 

 

こうもすんなりと受け入れられるとは思わなかったので、少し意外に思う。

 

 

「その代わり、貴方の顔を見せて。そこまでまして隠すのだから、何かあるのでしょう?嫌だというのなら、強要はしないけれど」

 

 

顔、か。あまり見ても面白いものではないと思うが。別段断る意味もないので、見せることにする。

 

 

「…!?」

 

 

「何か?」

 

 

そんなに醜かったのだろうか?これからも驚かせないためフードを被るようにしよう。

 

 

「あ、ああ。もう大丈夫よ。それにしても、狩人はそんな格好をするものだったかしら?」

 

 

確かに、普通の狩人はこんな服装をしないか。人里に入ってすぐに服を買うとしよう。

 

 

「私のいう狩人は少し変わっていてね。恐らく、普通の狩人とはあまり似ていないのだろう。」

 

 

「そう…では、覗き見のお詫びに、私が人里まで送ってあげましょう」

 

 

それは願ってもないことだ。人里まで早く着き、さらに安全も保証される。お言葉に甘えさせてもらおう。

 

 

「ああ、すまないがお願いできるか?」

 

 

「ええ、勿論。そういえば、まだ名前を名乗っていなかったわね。私の名前は八雲紫。紫でいいわ。あなたのことはなんて呼べば?」

 

 

「名前はない。好きに呼ぶといい。お前だろうが、貴方だろうが気にしない」

 

 

「それでは、貴方にしましょう。では、早く行きましょう。もう少しで夕暮れだわ」

 

 

紫に案内されているときに、ふと椛のことを思い出した。まだ眠っているらしいが、今度合うときには何か謝罪の品を持っていこう。

 

 

 

 

 

 

そして少し立つと、その場には誰も居なくなった。否、一人の天狗がいた。確実に上司に怒られるだろうが、まだ今は眠っている。

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