SAO:Alternative GGO 黒影の銃撃主   作:SCAR And Vector

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更新遅れてすみませんでした。


地下ダンジョン

 残党兵が潜んでいないか辺りに注意しつつ遺跡を抜けて、レンと再び合流するのに時間はかからなかった。先の戦闘で幾ばくかのクレジットも手に入ったし、無事に遺跡を抜けられ万々歳だ。

 

 合流してその後は徒歩でシロフォンまで向かった。街に入れば安全なので2人はずっと肩にのしかかっていた緊張を下ろす事ができた。

 

「んで?俺たちは何しに来たんだっけ」

 

「もー忘れないでよ!クエストだよクエスト!」

 

「ああ、クエストか。って何の?」

 

 軽く漫才を繰り広げながら、レンの引率でクエストの発生ポジションまで移動する。実際、遺跡の一件でシロフォンに来た目的を忘れていたのは否定できないが。

 

「ほら!『古代兵器の財』て言うクエスト。名前通り結構儲かるみたいだから、クリアしよう!」

 

 そう言って爛々と目を輝かせコウの戦闘服の裾を引っ張るレンは、まるで兄におもちゃをせがる妹そのものだ。コウは若干満更でもなさそうな腑抜けた表情でレンの希望を承諾した。

 

 その後はクエストNPCからクエストを受注し、コウとレンは終末戦争が起こった際に莫大な財宝が隠されたという地下ダンジョンに潜った。

 

 

 

 2人が向かったダンジョンは、クエストを受注する事で潜入できるインスタンスエリアだ。その目標の地下ダンジョンはシロフォンの真下に位置し、入り口のマンホールから侵入する事でのみ足を踏み入れる事が許される。

 

 2人はクエストNPCから受け取った専用のマンホールフックを使ってマンホールを開け、梯子を伝って地下へ降りた。

 

 地下空洞は縦が4メートル、横は10メートルと比較的空間に余裕がある造りになっている。恐らく、あまり狭いと銃撃戦が行いづらいという配慮から来た構造なのだろう。

 道中には終末戦争に備え備蓄されたのだろう、食料品の木箱や弾薬箱らしき障害物が置かれており中身が無いことから恐らくは誰かしら持っていったと予想できた。

 

「んー。レンちゃん、もしかしたらNPCと戦闘が起きるかも。注意しててね」

 

「わ、わかった!」

 

 コウが木箱の中身を確認するや否や警戒するように告げ、レンはスコーピオンの弾倉を確認しチャージングハンドルを引いて9ミリ弾を薬室へ送り込む。レンはスコーピオンを2挺持っているのでもう一挺のスコーピオンにも同じ事をして、臨戦態勢を整えた。

 

 コウもレンに倣ってSCAR−Hの残弾を目視確認して薬室に弾薬を送り、スリングで背後に回しストレージから武器をふたつ取り出した。仮想の鞄から取り出したのはサブマシンガンの《KRISS Vector》。交戦距離の短い地下や室内では全長の短いサブマシンガンの方がアサルトライフルよりも有利なので、コウは有利不利を考慮してVectorに持ち替えたのだ。だが地下ダンジョンにも直線路は存在し交戦距離が長くなってしまうので、中距離戦闘にも対応できるようにSCAR−Hをストレージにしまわず、スリングで背中に回している。

 

 そしてコウがもう一つ取り出したはプレイ開始初期に手に入れた《M1911A1》。「大口径主義のアメリカ」を象徴する.45ACP弾を使用するシングルアクション自動拳銃だ。装弾数7発と1発と少数だが威力と信頼性が高く、作りも頑丈で破損の可能性が低いのに加え誰にでも初期装備として安値で購入できる手軽さ故にGGOプレイヤーから人気の一挺である。

 

 カスタム項目も豊富で十人十色な改造が加えられ、改造の仕方でソイツの腕がわかるとまで言われている。

 

 コウも例に漏れず多種多様な改造を施しており、昔コウの父がプレイしていた据え置きゲームから影響を受けて『蛇』の刻印と、その主人公のM1911を真似た改造を施していた。

 

 コウは破損し使い物にならなくなったCZ75の代わりに蛇カスタムのM1911を右腿のホルスターに刺し、Vectorを構える。

 

「前進しよう」

 

 コウの先導で先を道なりに進んで行く。30メートル程進んだ時、コウの脳内敵探知レーダーに反応があった。

 

 コウは後ろに続くレンの移動を左手で制し腰の多目的ポーチからスコードロンの共有ストレージから拝借したソナーレーダーを作動させた。先程の遺跡での戦闘ではバッテリーの心許なさから使用しなかったが、ここは惜しみなく使って行く。

 

 コウがレーダーの起動スイッチを押すとレーダーから超音波が発せられ、反響した音波が動的物体の座標をレーダーに表示してくれる。正確にはそういう設定というだけで、実際は半径20メートルのNPCおよびmob、プレイヤーの座標を表示するだけだが。

 

 ともあれソナーレーダーを見て、コウは自分の探知能力を自画自賛した。前方に敵の座標を知らせる白点がはっきりと見える。コウは後ろで後方警戒に当たっていたレンを呼び作戦を伝えた。

 

「進路上に敵NPCが数人いる。多分見つからずに通り抜け出来る道は無いから倒していこう」

 

「りょーかい」

 

「恐らく暴徒連中だろうね。武器もハンドガン辺りしか持っていないだろうし、さっさと済ませて先に進もう」

 

 すっかり前衛と作戦立案が板に付いたこのコンビは、黙って顔を見合わせ頷くと前進を開始した。

 

「よし、遮蔽物に」

 

 冷静に全体を見渡せるコウが指示を出すと、レンはそれに素直に従い行動する。2人は運良く配置された中身が残っている木箱を遮蔽物に、奇襲の準備を整えた。

 

 事前の打ち合わせ通り、コウが閃光手榴弾を取り出しピンを抜き、レンは2挺のスコーピオンを構えいつでも発射出来る体勢をとる。

 

「敵は前から2-1-2。前方2人は俺たちで確実に処理する。あとは増援覚悟でじっくり仕留めよう」

 

 コウが手短に作戦を伝え、レンはそれに頷き肯定の意を表す。

 

 閃光手榴弾が握られたコウの右手の指3本が立てられ、突入のカウントダウンが開始される。

 

 薬指が折り畳まれ、レンが握る2挺のスコーピオンのグリップに力が入る。

 中指が折られ、コウの感覚が研ぎ澄まされる。

 人差し指が折られ、レンはトリガーに掛けた指に力を入れた。

 

 コウが前方、1番近くの暴徒2人の足元に閃光手榴弾を転がした。細い円筒は地下空洞をコロコロと転がって行き、暴徒の片割れのつま先まで行って停止する。

 

 何事かと暴徒2人が視線を下に向けた時、白色の閃光が迸った。

 

 100万カンデラ以上の光に目を焼かれ、暴徒達はなす術なく視覚を遮断された。

 

「いくよっ!」「あいさ!」

 

 事態に気付いた仲間の暴徒達が増援に駆けたその時、遮蔽物の木箱から2挺の短機関銃を構えたピンクのチビと、黒くて分厚い金属板の様な短機関銃を構えたデザート迷彩の長髪男が躍り出た。

 

「えっ?」「うわっ!」「敵かっ!」

 

 暴徒達のリアルなリアクションは、2人のアサシンが放つ銃弾によって掻き消された。

 

 パパパパパパパン!

 

 タタタタタタタタ!

 

 乾いた破裂音が空洞にこだまし、銃口から現れるマズルフラッシュで薄暗い地下空間を明るく照らす。

 

「ぎゃっ!」「うはっ!!」

 

 コウは低反動を誇るVectorの特性を活かし、マズルから飛び出すバレットラインを敵の胴体に当てて銃弾を命中させていく。リコイルコントロールがしやすく命中性が高いため、迫り来る増援も次々と順調に屠っていけた。

 

「リロード!レンちゃん援護!」

 

「ほいさっ!」

 

 コウは弾倉交換を叫び、遮蔽物に身を隠して弾倉の再装填を行う。残弾数はまだ10発近くあったが、惜しみなく前のマガジンを取り出し、新しいマガジンを挿入する。薬室には既に1発入っているのでチャージングボルトを操作する必要はなく、コウは再装填を終えると次はレンの援護に移った。

 

「サンキュー!」

 

「こっちもリロード!援護お願い!」

 

 次はレンがリロードに移る。レンもコウのように素早く再装填を終え、射撃に戻った。

 

「増援なし!あと3人!」

 

 ソナーレーダーを起動させて増援を確認していたコウが敵の状況を知らせる。レンはそれに結果で答え、スコーピオンによる射撃の手をさらに進めた。

 

 パパパパパパ!

 

 軽快な射撃音が響き渡り、レンが右手に持ったスコーピオンの小口径の銃口から9ミリ弾頭が躍り出ていく。

 

 まず放たれた5発の弾丸は、最初の犠牲になった暴徒の筋肉質で分厚い胸板に命中し、そこから赤いエフェクトを噴出させた。

 レンは続け様に左のスコーピオンで2人目の敵に狙いを定め引き金を絞る。

 飛来した弾丸は心臓の真上、左腕の付け根、顎、眉間に命中し、ほとんど即死で敵を屠った。

 

「ナイス!」

 

 コウが褒め称えるのですっかり気を良くしたレンは、遮蔽物として敵の弾丸から自分を守ってくれていた食料品の木箱から飛び出し、自分の敏捷値に物を言わせた特攻を鑑みた。

 ただでさえ150cmにも満たない小さい体躯で命中出来る表面積が少ないのに、それが自転車並みのスピードで動いていたら。銃弾を命中させダメージを与える、GGOでは当たり前の事が一瞬にして至難の技と化すだろう。最強ガンナーを決める大会、BoBに名を連ねる猛者や、洗練された射撃の腕を持つ熟練プレイヤー、標準とは異なる高性能なAIを積んだNPCじゃない限り、それは不可能に近いだろう。

 ましてやダンジョンの低レベルNPCが、迫り来るピンクのチビに痛手を被ってみせようとトリガーに指をかけることさえ無謀というものだ。

 

「くそっ!」

 

 暴徒は悪態をつきながらも引き金を引き続けたが、ただただ弾薬が消費されるだけでレンにそれらしい傷は追わせられなかった。

 

「とおっ!」

 

 弾倉内の弾薬が空になったのを見計らって、レンは敵の顔面目掛けて跳躍し、サイズの小さなブーツの底で顔面を踏んづけた。敵はスピードの乗ったドロップキックを喰らって堪らず尻餅をつき、レンはムーンサルトしながら百点満点の華麗な着地をして見せる。

 

 そして、両手の2挺の得物を前方に構え、発砲。

 

 ばら撒かれた弾丸は暴徒の脳天を貫いて行き、無数の風穴を開けていく。最後の犠牲はそこから血の様なエフェクトを吹き散らし、二度と動くことはなかった。

 

 

 

 

「ふぅ〜お疲れ〜」

 

 背後から労いの言葉をかけられ、レンは超えのした方に振り向いた。そこには特攻を遮蔽物の陰から傍観していたコウが、Vectorの30発マガジンに.45ACPを込めながら突っ立っていた。

 

「もう、女の子に人を殺させるなんて。それじゃあモテないよ?」

 

「もう戦闘狂と変人にモテてるから大丈夫だよ」

 

 飄々とした受け答えの中で、コウの頭の中にはピトフーイとインヴィジブルのメンバーの顔が浮かんでいた。

 

「さて、じゃあ最奥まで進んじゃおう」

 

 コウの言葉を皮切りに、2人は進軍を再開した。前方をコウが警戒し、レンが背後から近付く敵に警戒する。すっかり定着した陣形と、レーダーを見ながら進行ルートを検索するコウの先導で順調に進んでいった。

 

「もう敵さんいない?」

 

 レンが訊いて来るので、

 

「居ないよ。最後の奴を倒せば」

 

 コウは素直に応えた。

 

「ん?どーいう・・・!」

 

 問いに対する応えの真意が汲み取れず、レンが前方を向いた時。

 

 この地下ダンジョンの最後の敵が前方の暗闇から姿を現した。

 全身が錆び付いた歯車や金属板、古びた電子回路で形造られたクエストボス「アンティークギア・ウォッチドッグ」。直訳、古代歯車の番犬。

 

 番犬、という名の通り四足歩行で移動し、恐らく最大速度はレンのそれよりも上だろう。最大の特徴は背中の小型タレットであり、機関部の横から弾帯ベルトが繋がっているのが見えた。

 

「レンちゃん、散開して攻撃しよう。遠距離系の攻撃はタレットぐらいだと思うから、予備動作を見極めてすぐにカバーに入るんだ」

 

「わかった!」

 

「いくよ!散開!」

 

 コウの的確な指示の元、レンとコウは散り散りになり左右から番犬を取り囲んだ。

 

 番犬は何処から音を出しているのか、口部分を大きく開け、危害を加えようとしてくる侵入者に向け咆哮した。

 

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