SAO:Alternative GGO 黒影の銃撃主 作:SCAR And Vector
コウたちはグロッケンに戻ると、真っ先に買い取り専門ショップに足を運んだ。グロッケンの裏路地にランダムな場所に出現する神出鬼没の商人NPCを手分けして見つけるや否や戦利品をすべて売りつける。コウを始めとする中堅プレイヤーにとっては不必要なものばかりだったので、躊躇なくそれらを売り払い駄賃にする。
多少はビギナー援助としてナガンに分け、10キロクレジットを手取りとして自身の収入にした。コウはそれらを弾薬代に回そうとしていた。
「うーん、10時前かぁ。落ちようかな」
仲間たちと別れ、1人酒場に残ったコウは左手首に巻いたデジタル腕時計の時刻表示を見て眉を顰めた。これから1人狩場に籠るにも、ダンジョンに赴くにも微妙な時間帯だ。明日も大学の講義が入っているので12時には就寝していたいコウには苦渋の決断が迫られていた。射撃場に行くにも弾代はできるだけ節約したいし、買い物するにしてもこれと言って必要なものはない。仮想世界なので酔わないカクテルをチビチビ飲みながら、コウは酒場のカウンターテーブルに寝そべった。
だが周囲からの視線を背中で感じてすぐに背筋を伸ばす。
「ウィンドウショッピングでもするか」
コウは暇つぶしの計画を練って、去り際に酒場の外に設置された自販機からサイダーを買って歩道を歩き始めた。
車道を走る四輪自動車の群れに追い抜かされるまま歩き続けて10分弱。先刻ナガンの装備品選びに訪れたモールとは別のモールに辿り着いた。
自動ドアのエントランスから中に入り、エレベーターに乗って三階の銃器販売フロアに向かう。自分の今のパラメータと各々の銃が要求するパラメータを見比べながら、銃器をダラダラ見て回り、現状の装備の上位互換になりうるものがあればメニューのウィッシュリストに記載していく。
現在コウが所持するメインアームは《FN SCAR-H》一丁のみである。サイドアームは先の戦闘で使用した《CZ75》のデュアル仕様とGGOをプレイし始めた
一つの銃を使い続けるのも立派なプレイスタイルなのだが、いかんせん多種多様な戦闘が突発的に引きおこるGGOでは急な対応ができないのが難点だ。今は仲間のスコードロンメンバーと分隊を組んでいるため対処の仕様があるが、ソロだとそれは難しい。
コウが自分の力を存分に発揮できる交戦距離は中距離以内なのが現状の限界だ。近距離戦はハンドガンで対処できたとしても、ARで遠距離戦となれば打つ手がなくなる。いっそのこと近距離特化でショットガンかサブマシンガンを新たに購入するか、遠距離に対応できる射程の長い狙撃銃を買うべきか。コウは少し悩んだ。
今はクレジットに余裕があまりないので購入は見送りになるが、万が一メインアームのSCAR-Hを死亡時のランダムドロップで紛失でもすれば、コウの戦力は大幅に低下するだろう。それを見越しても、新たな銃を購入するのは急を要する。
現在のコウの所持クレジットは10万クレジット手前。銃を新調すれば七割方吹っ飛んでいく為、もう少し貯金するべきであろう。レアアイテム目当てにダンジョンに潜るのもいいが、すこし頑張って荒野でプレイヤー狩りを行うか。コウはひとまず50万クレジットを目標に立てると、展望台からグロッケンの夜景を一目見てこの日はGGOからログアウトした。
現実に戻り、寝室の壁に掛けられた薄型デジタル時計をみると、時刻は11時を回ろうとしていた。昂雅は急ぎ明日の講義の準備を整え、シャワーを浴びて就寝の準備をして床に就く。夕飯も摂らずに遊んでいたが、そんなことは気にも留めず眠りについた。
翌朝、起床アラームで目が覚めると昂雅はリビングに行きニュースを尻目に朝食のベーコントーストを頬張った。どうやら今日から一層寒さが厳しくなるらしい。お天気キャスターの美人女子アナがそう言っているのだから間違いないだろう。
昂雅は朝食を食べ終えると、さっそく大学に行く支度を始める。寒さにそなえて厚めのジャケットを羽織り、教科書の詰まったカバンを背中にからう。黒のネックウォーマー、手袋、黒のリングピアスを点け、バイクのキーと部屋鍵、財布携帯をもって足早に自宅を出る。階段を降りてマンションの住人供用の地下駐車場に泊めてある愛車《MT-25》に跨りバイザーの上がったヘルメットを被る。徐行運転で地下駐車場をでると、今日も居合わせた黒髪長身の美人女子大生に軽く挨拶を交わす。
「おはようございます。今日は随分と冷えますね」
「あ、おはようございます。そうですね、風邪ひかないように気を付けて下さいね」
会話はこれだけ。昂雅は颯爽とバイクで公道に出て大学に向かう。いつもと変わらぬ日常だ。
大学につくと、駐輪場で待ち構えている多嶋に絡まれ、ほとんど日課となった喧嘩が始まる。昂雅自身、何度も突っかかってくる多嶋を諦めさせることは諦め、健康運動として割り切っていた。今日も今日とて多嶋を一撃で沈ませ、巻き上がる歓声をBGMに構内に入っていく。
1限が終わって休み時間、昂雅はふと声をかけられた。振り向くと、そこには黒縁の眼鏡をかけ左目尻の下に泣きぼくろのある青年がいた。
「よぉ、昂雅」
「おはよう、真一」
真一、本名『
「今日も凄かったな」
今朝の多嶋との喧嘩の一部始終をみていたらしい真一が、勝負を決めた昂雅のフィニッシュブローを真似た右ストレートを放ちながらそう言った。
昂雅は少し怪訝そうな表情を浮かべたが、まぁなとそれを一蹴し、次の講義が行われる教室に移動する。
2限目の講義が終わると、多嶋を倒してから昼食を摂る為に学食に向かう。居合わせた友人集団と共に学食を食べ、午後の講義に備える。
午後の講義も終えると、再三挑んできた多嶋を沈めて、昂雅は自販機で缶コーヒーを購入してバイクに跨った。これから帰宅である。
我ながら詰まらない日常だなと感じ、昂雅はアクセルを捻った。