SAO:Alternative GGO 黒影の銃撃主 作:SCAR And Vector
SBCグロッケンで最も賑わう商店街の一画。街で1番大きいショッピングモールの店内を歩く2人の男女がいた。
背の高い男の方は長めの深く赤みがかった黒髪を適当に縛り付け、UCPと呼ばれる万能型デジタルパターンの迷彩服を着た青年プレイヤー。パーツの整った端整な顔の面積を半分程長い前髪で隠した男だ。見た目ヒョロヒョロした優男だが、戦闘服を捲って見える両腕が案外筋肉質で、着痩せするタイプらしい。あくまでもCGが織り成すアバターだが、恐らく脱いだら凄い部類なのだろう。
もう1人は150センチにも満たない、GGOでも希少な背の低いアバターのピンクのチビ。砂漠フィールドで待ち伏せPKを行なっていた殺戮ウサギだ。男の助言でフード付きの麻製ローブを被っており、平坦な身体つきをしているため初見では男か女か見分けるのは難しい。
並んで歩く2人の内、男の名は『コウ』といい、ピンクのチビは『レン』という。
「ねぇねぇコウちゃん」
レンは横に並んで歩くコウを呼んだ。身長差が30センチ近くもあるので、実家のルールである「他人と話すときは目を見て話す」に従っていると必然的に見上げなければならない。レンは現実世界の自分では見れない光景に幾ばくかの嬉しさを感じていた。
「なに?レンちゃん」
先程までは呼び捨てにしていたコウだったが、本人からしたら思う所があるようでちゃん付けに呼び方を変えていた。
コウはレンに呼び止められ左の小さい女の子に視線を向ける。
「あのね、私今まであそこでPKする時絶対に負けなかったの。でも、コウちゃんは私を完膚無きまでに叩きのめした。なんでコウちゃんはそんなに強いの?」
レンの純粋な疑問にコウは頭をひねった。
「俺の師匠的な人が居てね。その人に影響もあるのかも知れないけど、やっぱり俺も待ち伏せPKはよくやってたし、経験の差、かな?」
「へぇー」
「でも、何で急にそんな事?」
「んー?ただ気になっただけ!」
そう天真爛漫な笑顔で返されては余計な質問は蛇足というものだろう。コウはそれ以上は何も訊かず、歩を進めた。談笑しながらもモール内を色々と見て回り、レンの希望でファストフードを提供してくれる店に入った。
「ほら、好きなの頼んでいいよ。お近づきの印」
コウに注文を促され、レンは目を輝かせてメニューを眺めた。ただ、145センチの低身長ではカウンターに届かずメニューが見れないので、気を利かせてくれたコウに台座を持ってきて貰ったのは少々恥ずかしかったが。
GGOのファストフード店は現実世界のそれと変わらない。ハンバーガーにポテトやシェイクをセットで付ける事も出来るし、テイクアウトも可能である。アイテムとしても多少の体力回復程度には使えるし、仮想世界なので現実の身体が太る事もない。
とどのつまり仮想世界万歳という訳だ。
レンは仮想世界の恩恵をフルに活用しチーズバーガーにポテトのLサイズとアイスティを嬉々として注文した。コウもレンが悩んでいる間にさっさと決めた様で、ビッグベーコンバーガーにLサイズのコーラを頼んだ。
2人は商品をトレーに受け取ると、奥の方のテーブルに着いた。互いの事について色々訊き合いながらハンバーガーを食べていく。
「ん〜美味し〜!」
レンが小ちゃな口を目一杯広げてチーズバーガーに齧り付いているのを見て、コウは彼女を愛らしく思った。小動物みたいな可愛さで癒され、思わず頰が緩んでしまう。
「ほら、此処ついてる」
微笑みながら、コウはレンの頬っぺたについたお肉のカケラをナプキンで拭き取った。その光景はまさしく兄妹の様で周りの目も微笑ましい暖かいものだった。
まぁそんな兄妹の本性は最恐の殺戮プレイヤーな訳なのだが。
「ぷはー!お腹いっぱいー」
ストローでアイスティを飲み干し、レンは椅子の背もたれにだらっと寄りかかった。自分の物を食べ終えたコウもソファーにもたれ掛かっている。
「これからどうするの?」
「んー、特に予定はないけど。もう8時になるし落ちるかなー」
「そうだねーご飯も食べなきゃだもんねー。でも食べたばっかで入るかなぁ」
レンがお腹をさすりながらそうぼやく。
「俺はGGOで食べるとお腹空くタイプだから・・・」
「食いしん坊さんなんだね」
コウはメニュー画面を開き、時間と残りクレジットを確認した。残りのクレジットはまだ少々残ってはいるが、心許ない。いずれ稼ぎに行かなければならないだろう。
「んじゃぁ、俺はもう落ちるよ。基本毎日インしてるから、メッセ飛ばしてくれたら会いに行くよ」
「あ、うん!じゃあ私ももう落ちるね!今日はありがとう、コウちゃん」
2人は互いに挨拶を交わしGGOから姿を消した。
今回短いですが許して下さい