獣憑きの少年も異世界にくるそうですよ? restart 作:モグモグラ
……まあ、自分の覚えている人はいないでしょうし、ここはこう言っておきます。
みなさんはじめまして、モグモグラと名乗っている者(あるいは物)です。
拙い作品ですが、楽しんでいただけたなら幸いです。
第1話:少年の元へ届いた手紙
「眠いなっと」
町を見下ろせる小高い丘の上、ブレザーに身を包んだ黒髪に青い目という珍しい組み合わせの少年が寝っ転がってあくびをしていた。
彼の名は、風魔空。丘の下にある町にある高校に通う生徒だ。もっとも、既に時刻は9時を過ぎており、彼がサボりをしているのは明確だ。空という少年は残念ながらあまり真面目な性格では無いため、仕方が無いといえばそれまでの話だが。
「今日も世界は平和で……つまらない」
ポツリと呟き、空はため息をつく。
「何か、面白いことでもーーんっ?」
流れる雲を眺めていた空は、耳に入ってきた音に眉を上げて、身体を起こした。
彼の視線の先には、黒い毛並みの子犬ほどの生き物ーー否、子狼が空の方へ駆けてきていた。
「あぁ、ルゥか。どうしたんだ?」
空は子狼を見ると、笑みを浮かべながら声を掛けた。ついで、ルゥが口に何かを咥えていると気づくと、首を傾げた。
子狼ーールゥは、真っ直ぐに空の元に来ると口に加えていたもの……白い封筒を空の前に置いた。
『そら! 部屋にこれが落ちてたよ』
「ん、ああ。助かった」
……これは彼、空の脳内友達との会話では無いとあらかじめ言っておこう。目の前にいる狼のルゥと会話をしている。驚くべきことだが、空は生まれつき動物との対話が可能なのだ。
「で、えぇと……これは手紙か?」
ひとしきりルゥのアタマを撫でた空は、地面に置かれた封筒を手に取る。
封筒をひっくり返し、そこに《風魔空殿へ》という、自身の名前が書かれているのを見る。
「差出人は無しと。なぁルゥ。本当に俺の部屋に落ちてたのか?」
『うん。そらがいつも使ってる座布団の上に置かれてたよ』
空の頭の上に乗ったルゥの答えを聞くと、空は小さく頷いてから封を切った。
「えぇと、何なに……【悩み多し異才を持つ少年少女に告げる。
その才能(ギフト)を試すことを望むのならば、
己の家族を、友人を、財産を、世界の全てを捨て、
我等の”箱庭”に来られたし】
? 何のことかさっぱり……」
手紙の内容に首を傾げた空は、イタズラだろうかと手紙から視線を外しーーその視界が一変した。
*
「ーーッ!?」
視界いっぱいに広がる青空。フワフワとした足元。間を置かずにそれは落下感に変わる。
空とルゥは上空4000mに投げ出されていた。
『わっ!?』
「掴まっとけ!」
空は自分から離れかけたルゥをブレザーの懐に抱えるように放り込むと周囲に目を巡らせた。
(俺の他に、3人放りだされた奴がいるな。あと猫)
空は自分と同年代に思われる2人の少女と少年。それと三毛猫に視線を向ける。
「とりあえずっと」
空は手を伸ばし、近くを落下する三毛猫の身体を掴んだ。
『な、なんや!?』
「何だよ、その口調は」
三毛猫の驚く言葉に苦笑いした空はルゥと同様に三毛猫を懐に抱え込む。
真下ーー落下先を見る。
下には湖が広がっている。この程度で落下の衝撃が防げるのか、という疑問が空の脳裏に走るが、それ以外の手段は無い。空は決意を固めた。
「ああ、ったく。退屈させてくれなさそうだな」
ウンザリとした、しかし表情は嬉しそうに空は呟いた。