夢を見る不死   作:粗製の渡り鳥

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騒がしい主人公ですが、どうかご容赦を



根無し草
第1話:ベイグラント


 眼が覚めるとそこは草木が生い茂る林だった。

 

 木々は疎らであり、陽光が辺りに溢れ立ち眩む程に眩しい。

 

 空を見上げれば、燦々(さんさん)と輝く太陽とどこまでも広がる青空が広がっていた。

 

 

 

 正直に言って驚いた。

 

 今までの人生で───少なくとも記憶している範囲では、この様な雄大で清々しく晴れ渡る空など見た覚えが一度もなかったからだ。

 

 ここは、ロスリックの代で火継ぎが成され一時の安息を得た世界なのか、それとも火継ぎが終わり、小さな火たちに照らされている世界なのか。

 ただ、少なくとも最初の火が簒奪(さんだつ)された世界ではないだろう。確信はないがそう思う。

 

 こんなにも太陽は明るく、光り輝いているのだから。

 

 長い、長い旅路を経てようやく見つけた、最も望ましいと思えた火の時代の終わらせ方。それが成就したのか、もし成されたのならその上でどの様な世界へと変化を遂げたのか。

 少しばかり気になったが……きっと今気にするべきではない。

 

 いずれにせよ答えはすぐに得られるだろう。これまでのように。

 

 そう思い立ち、念のため保険(惜別の涙)をかけ()()を整える。

 そうして、周囲の警戒だけを意識しながら何も考えず始めの一歩を踏み出した。

 

 

 

 少し歩を進めた。

 

 林は虫の歌声や鳥のさえずり、風による草木のざわめきが響くばかりで至って静かであった。

 

 細心の注意を払ってはいるが時折小動物が此方を伺う様子が感じ取れるのみであり、敵と成り得るだろう亡者や獣の姿は見当たらない。

 少なくとも近辺では目視が可能な敵は発見できなかった。

 "メッセージ"や怪しげな壁すら見つからないため、両の手に携えた得物は未だ振るわれる事なく小綺麗なままだ。

 

 思えば、今まで散々廻ってきた3つの時代、それぞれの始まりの地には姿形は違えど必ず亡者がうろついていた。

 

 だがここにはそういった気配が微塵も感じられない。

 木の陰に伏兵が潜んでいる訳でもなく、盛り上がった茂みから化け物が出てくる訳でもない。

 ごく小さな虫は見られたものの特別な力を有していそうなモノは見当たらず、極めて平穏である新たな景観を味わう以外に刺激がない。

 警戒が全て無駄であるように感じられ、なかなかに辛い。

 不穏さや辛気臭さ、陰鬱さなどは一欠片もない、緩やかで穏やかな空気に呑まれ、どうしようもなく気が抜けそうになる。

 

 しかし、警戒を緩めてはいけない。

 始まりの地であっても、敵意を剥き出しにした怪物が待ち構えていたり降ってきたりするものだ。

 

 その上、現在生命力がかなり低下している。

 

 今回は少し気怠い程度であり、運が良いのか悪いのか……力の喪失は生命力だけで済んだようだ。

 しかし、装備の関係上、それだけでもだいぶ致命的だ。

 

 故に、初めて訪れる場所で慎重さを欠く事などあってはならない。

 そう自分を戒める傍ら、何処かソウルの内で、何故だか心が揺さ振られるような感触がした。

 

 

 そうして探索を続けていると、大きな木とそれにもたれかかるように座して動かない甲冑が目に入った。

 警戒しながらも近づき、様子を伺うが中身は無く空洞であり、至近距離に達しても動きだす事はなかった。……残念だ。

 

 気を取り直し、改めて甲冑を眺めてみる。

 大木に寄りかかる様は一見眠りに陥った、あるいは息絶えた騎士のそれにしか見えない。

 遠目からではとても空洞とは思えないその様子は、ロスリックの領地で見られた主を失った甲冑たちを思い起こさせる。

 だが、朽ちたあれらとはどうやら異なるようだ。

 

 無手だが、錆や傷一つなく中々に良質な中装程度の金属鎧。

 

 ロスリック騎士たちが残した抜け殻のような甲冑とは異なり、内に含まれるソウルが大地に溶けだすなどして、取得不可能な代物に変化している訳ではない。おそらく入手は可能だろう。

 布地部分など殆どない、無骨ながらも洗練されたデザインが目を引く。

 見た事のない珍しい装備でもあり、なかなか収集欲の刺激される一品であるように見受けられる。

 

 入手しよう。

 

 そう思った側から警戒を解き甲冑に手を伸ばす。

 兜、鎧、腕甲、足甲、それぞれを拾い上げ、まとめてソウルの内にしまい込む。

 

 はて、入手したはずだが、いつもと違い何故だがその物が持つ名称を認識できなかった。まあ、急いでいる時や他所ごとを考えている時にはよくあるものだ。気にしても仕方ない。

 

 早速着替えてみようか。いや、後からでも問題ないだろう。どういった武器が似合うだろうか?

 内心喜ばしく思いながらそんな考えを巡らせる中、どの様な代物か探るためソウルを通して少しばかり調()()()

 

 何気なくとった行動だった。

 数えきれぬ程繰り返してきた習慣であった。しかしだからこそ、その行動の結果に目を見開いた。

 

 それが何であるか、何もわからなかった。

 

 本来なら対象が持つ情報を把握できたはずだ。

 今までなら由来、付与されている効果、元の持ち主についての情報など、名称以外にも多かれ少なかれ何かしら引き出す事が出来るはずだった。ごく一部の情報しか読み取る事が出来ない場合もあったが、何もわからないなどという例外はこれまでになかったはずだ。

 

 だが、今し方手に入れた甲冑は何も読み取れなかった。ただの1つも。

 由来や特徴どころではない。名称も、性能も、鎧であるか、そもそも防具であるかすら把握出来なかった。

 目や手触りから得た情報から甲冑自体は認識できたが、ソウルによる解析ができないとは異常だ。

 

 あらゆる生命の源となるソウル。今までは、その微かな残り香から幾らかの情報を読み取る事を可能としていたのだが……再度調べようがどうにも読み取れない。

 元よりソウルの扱いに関しては特に秀でている訳ではなかったが、それでもこの様な経験は今までになかったものであり、少し……驚いた。

 

 まさか時代の移り変わりによりソウルを用いた力が変質したとでもいうのか?

 

 慌てて右手に握り締めている"盗賊の短刀"を見る。

 

 結果、何も問題なく読み取る事が出来た。

 間違いなく、この俺の、俺だけの短刀だ。

 

 少しばかり安堵する。

 だがこの甲冑、どうするべきか。

 次に装備するか誰かに渡すかしようと機会ができた時、おそらくだが、その都度手間取るだろう。これをそのままソウルの内で管理したくはない。これまでアイテムは名称から記憶し、認知してきたのだから呼び名程度は付けておきたい。

 ふと頭に、ある者たちの名が浮かび上がる。

 

 "喪失者"

 

 あれらとはまた異なるがこの甲冑にはその名が相応しいと、そう思えた。だが同じ名で認識してしまうと区別しづらいという問題が出る。

 ならばどうしようか?……いつか身に纏う防具だ。呼び名を心の内で考える程度なら許されるだろう。

 

 "失われた騎士"

 

 名すら無い甲冑一式を、その名で認識する事を決める。

 甲冑に名を与えてやる事などできないが、問題あるまい。勝手に呼ばせてもらうだけだ。

 同じ名を名称として持つアイテムが出ない限り、この名で認識するとしよう。

 

 

 そうやって1人、物を考えていると後方から草を踏む足音が聞こえてきた。

 足取りは此方に向かってきているが、緩やかに近寄ってくるそれに気配を殺そうとする雰囲気はない。

 徘徊する亡者か何かかと思い振り向くと、そこには1人の男がいた。

 

 

「……君は……人間かい?」

 

 

 目を向けた先にいたのは、眼鏡をかけ、青と黒を基調とした服装の白髪の男。

 襲い来る気配はなく、少なくともまともな思考の持ち主である事が察せられた。

 

 その男から発せられた、唐突な質問。

 独りごちたような、消え入ってしまいそうな、そんな声色での問いかけ。

 

 それは無意識の内、意図した発言ではなかったのだろうか。

 振り向いた不死を目に捉えた男の表情は何故か青ざめ、驚愕と困惑で彩られていた。

 

「……あぁ、そうだ」

 

 それに対し、嘘偽りを交える事なく返答する。最良の選択など、現時点で解るはずもないため肯定せざるを得ない。

 

 そもそも、"初対面の相手"に取り繕う必要もないだろう。

 

 どうでるか。

 

 どこぞのハゲ頭(パッチ)のように問答だけで敵対する、などという事態は勘弁してほしいのだが……

 そんな考えを浮かべながら───(ほの)かな懐かしさを噛み締めながら、今一度見据えてみる。

 男の表情は未だに強張り、動揺からか微かに瞳が揺れ動いていた。

 

「そうか……いや、失敬。初対面なのに悪いね……申し訳ない」

 

 人間であるとの答えに、男は一瞬の間を置き仕切り直すように謝罪の言葉を重ねてくる。その態度はどこかぎこちない。

 

 それにしても珍しい。

 いきなり質問した程度の事で態々(わざわざ)謝るとは……今までこの程度の事で詫びを入れる者などほんの一握りしかいなかったものだが、この男は大層な教養の持ち主なのだろう。

 

 それともこの地ではこれが普通なのだろうか。

 

 ルールやマナーの持つ力というのは非常に厄介な物で、時に命より重い。断りのない質問には気を付けた方が良いのかもしれない。

 予め注意を受けなければ知った事ではないが。

 

「言い遅れたがはじめまして、僕は森近 霖之助(もりちか りんのすけ)。近場で古道具屋を営んでいる者だ。……よければ君も、名前を……何者であるかを教えてほしい」

 

 森近霖之助(モリチカリンノスケ)……随分と長い名前だ。

 

 それにしても、何者であるかを問うか。

 ドラングレイグの地にて交わした老婆達との問答を思い出す。

 ただの人間ではない事は既に察していると伝えたいのだろうか?

 確証がある訳ではないようだが。

 

 どうすべきか。

 

 悩む程の事ではないが、言葉に困る。

 無難に適当な名を名乗り、当たり障りのない返答を選択するという手もある。

 だが誠実さに欠ける上、自身としても好ましいとは思わない。

 だとすれば、返す言葉はあの時と───あの老婆達へ向けたものと変わらない。

 

「……名前は覚えていない。とうの昔に忘れてしまった」

「すまないが答えられない」

 

 この時代における不死人への認識を把握しておきたいが為に、不死人である事に()()()拘りを持つが故に

 

「だから、適当に"不死(アンデッド)"とでも呼んでくれ」

 

 己は不死人であると、あからさまに伝えてみる。

 舌の根も乾かぬうちに慎重さをかなぐり捨てていく。

 

 無論悪手ではある……が、この時代に生きる者がどう反応するか、そして、最悪の場合出くわすであろう不死狩りの"ロイドの騎士"、あるいはその後継がどれ程のものか。

 未だ一度も(まみ)えたことのないそれらを知りたいという欲求、そして好奇の熱には逆らえなかった。

 

不死(ふし)……わかった。そう呼ばせてもらうとしよう」

 

 返答は実に当たり障りのない物だった。

 ただ何か思う所があったのか青衣の男(モリチカリンノスケ)はただ静かに目を細めたように見て取れた。

 

『魂喰らいの化物である』

 そう明かしたに等しいにも関わらず、男は一切の負の感情も晒す事はなかった。

 しかし、同じ不死たちのように当たり前の事として流す訳でもなく、火防女(ひもりめ)を自称した老婆たちのように嘲笑うでもない。

 感性の違いか、はたまた不死人に抱く印象がこの時代では根本的に異なるのか、今まで出会ってきた者達とはまた違った反応であった。

 

 再度気まずそうになりながらも、何かしら含む物のある目で見つめてくる。

 不死を知らない訳ではないようだが、その目には恐怖も侮蔑も映らない。疑問と好奇の念、そして微かな憐憫を浮かべているようにすら見えた。

 

「ところで聞きたい事があるんだが、この辺りで西洋風の甲冑を見かけなかったかい?」

 

 話は切り替わる。

 どうやら先程の甲冑を探していたようだ。

 

 あれについての詳細は未だ不明だが……現段階では明け渡しても構わないだろう。今渡して問題が出ようと次に活かせば良いだけの話だ。

 そう考えながら、まず兜を、次に鎧を手元から出す。

 

「これの事か?」

 

「……間違いない、それだよ」

 

 一瞬、男の表情が強張り言葉を詰まらせる。

 この甲冑は男にとって何か特別思い入れのある物であったのかもしれない。

 それとも、これが何かしらの力を秘めた逸品であった為に関心を示したのだろうか?

 

 どちらにせよこれを己の所有物であると主張出来そうにない。

 憤りから敵対されるにしても、落胆の意を持ちながら許容されるにしても、明確なメリットが見えない。

 興味を(そそ)るような、魅力あるデメリットもない。

 

 ここで強情な態度を取り、心象を悪くさせるよりは素直に渡す方が得策と言えるだろう。

 

「今、何もない空間から取り出した風に見えたが、それも君の"能力"かな?」

 

「……そうかもしれない」

 

 ほう、と感嘆するように息を吐く男に対し思わず間の抜けた声が出かけるが、男の真剣な面持ちを確認し必死に抑える。

 

 出された防具と此方へ、交互に視線を送りながらの疑問。

 

 全くもって予想だにしなかった言葉に動揺する。

 

 一瞬何を言っているのか判別が付かなかった。

 顔を合わせる事なくやりとりを行っていたなら冗談として受け取っていただろう。

 

 だが違う。

 

 彼は本当に知らないのだ。

 

 一目見ればわかる。

 

 これは茶化すつもりで発言した者のする顔ではない。

 

 自らの知らない、未知にして埒外(らちがい)な力を目の当たりにした者のそれである。

 

 ソウルについての知識を持っていないとでもいうのだろうか?

 もしかすると、先程の反応も甲冑に向けてのものではなかったのかもしれない。

 

 ただ、ソウルの内から防具を取り出しただけ。

 獣や理性なき亡者でさえ活用する、技術とすら呼ばない単なる動作。

 一定以上の知恵ある存在が行える行動の一端であり、能力というには(いささ)か難がある。

 

 自身としては、道具の使用と大差ない、大した事のない行為だと認識していた。少なくとも、一般の人間であろうと当たり前に行う事の出来る行動を選択したつもりであったのだが……。

 

 困った事だ。これから先どのように行動すればよいか、まるで見当がつかない。これまで以上にこちらの常識が通用しないと考えても良いだろう。

 

 

 まあ、よくよく考えれば不思議な事ではないか。

 

 火の時代、1つの年代の内ですら、世界の法則は乱れ狂っていたのだ。

 たとえ世の根幹を成す概念であろうと変質し、失われる可能性は今までも十分にあったはずだ。時の流れ、火による差異がもたらす変革など、今更気にする事ではない。

 

 

 考えすぎか。

 

 小さく溜息を吐き、一旦思考を切り上げる。

 

 今後について、多少の不安はあるが特別心配がある訳ではない。先へ先へと、ただ進む事さえ出来るのなら、それだけで上等だろう。

 それより男の目当ての品を差し出す方が先だ。話はこちらから切り出すべきか。

 

「……で、どうする?」

 

 "能力"について聞き、何か考えるような素ぶりを見せる男に、少し間を置いて兜を突き付ける。

 

「渡せと言うなら譲るが」

 

「いや、君が手に入れたのなら何も言う事はない。ただ、少し聞いてみただけだよ。別に僕の物という訳でもないからな」

「最近この辺りに色々な物が打ち捨てられていてね……大半は既に回収していて、その甲冑も回収しようと考えていたのだけれど」

「君が拾った物だ。君の好きなようにするといい」

 

「……わかった」

 

 どうやら持っていて構わないようだ。読みは外れたが都合が良い。

 

 そうとなると試しに一式着込みたい所だが……人目につく場所での早着替えは控えるべきだろう。

 まだ、この男が特別物を知らないだけという可能性も残っているが、根拠の無い勝手な推測で決めつけるなど不用意が過ぎる。

 実際、完全に失われた訳でなくとも秘匿されているという可能性もある。

 

 大体着るだけならいつでも出来る。

 

 それに初めての地での旅は着慣れた黒革の装束でこなすと決めているのだ。今はいいだろう。

 

 それよりも……

 

「他にも回収したと言ったが、どのような物があった?」

 

「……武具、指輪、鉱石、とにかく色々な物があったな。特に変わった特徴もない物からかなり特殊な物まで、様々な種類の物が散乱してたんだ」

「こんな所……無縁塚でもないのに、それも一度に大量の物品が放り捨てられるなんて今まで見た事なかったんだが……全くもって驚かされたよ」

 

「なるほど、中々に魅力的だ」

 

 色々な物があったと言った。

 

 それも一箇所に。

 

 普通こういった野外でアイテムを取得する場合、大抵は人間などの亡骸、宝箱、または何かの残骸から得る事が多い。

 その上大量に落ちているとなると屍に限られてくる。おそらくは何かしら致死性の高い罠か強敵でも配置されていたのだろう。

 

 もしかすると、この男はそれらの障害を突破した強者なのかもしれない。

 この男自身が障害という可能性もあるが……

 

 ただ、放り捨てられていたとも言った。

 

 言葉通りに取るなら誰かが捨てていったのだろう。

 

 余ったアイテムを貯めておく事も売る事もなく、捨てる者はそれなりにいる。

 収集癖のあるこの身はせいぜい所持限界を超えた物を仕方無しに放置する程度だが、中には好んで放り捨てる者もいるのだ。

 

 確かに、捨てるという行為は何の生産性も伴わない訳ではない。時には所有者が気まぐれに放り捨てた(ぶつ)が、巡り巡ってそれを必要とする者の手に渡る事もあるだろう。

 

 それに加え捨てた物体は、時と場所によっては理解の域を超えるような、不可思議な現象を起こす事もある。

 

 例えば、ロードランの地では捨てた物が時空の歪みにより世界を巡るという現象があった。

 それだけでなく、誰かの手に渡る事もなく、幾度も時空を超え力を得たアイテムは、"精霊"と呼ばれたモノの一種に変異するという法則もあり、その奇怪さとユニークさから興味本位で捨てる者も多かった。

 

 ドラングレイグの地では打って変わって負の影響の強い現象が起こるようになっていた。

 廃棄物は世界を巡る事も変異する事もなくなったが、代わりに空間に対し影響を及ぼす力を得た。

 その力はアイテムを複数遺棄する事で初めて発揮される。

 所有物を幾つも捨て世界に固定すると、その空間に負荷がかかるようになるのだ。

 

 実際に、他世界に入り込んだ者がそれを利用し、その世界の主たちに対する嫌がらせ、もしくはせめてもの抵抗として行う事もあった。

 負荷が極まると、周囲に存在する者全てを緩慢な時空へと誘う、異常な環境が生まれるため、巻き込まれた者は廃棄物を撤去するまで苦労する羽目になる。

 意地の悪い真似ではあるが、品のない外道を相手取る際ならあまり労力をかけずとも一泡吹かせられるため悪くない手法かもしれない。俺の好みではないが。

 

 この地でアイテムの投棄はどういった意味を持つのか不明だが、物を捨てても上記のような特殊な事態が発生しないロスリックの地であっても、物を捨て置く輩は一定数存在したのだ。ここでも単純に誰かが捨てていったとしてもおかしくはない。

 

 だがそれ以上に興味を覚える。

 

 "無縁塚"についても気になるが、やはり関心は正体不明のアイテム群に向けられる。

 

「……それらの品々を見せてもらう事は可能か?」

 

 見たい。そして知りたい。

 

 どのような見た目か。どのような効果を持つのか。どのような情報を内包しているのか。どのような由来があるのか。

 

 新天地の物なのだから当然今まで見てきた物とは異なる可能性が高い。今までの経験上半分以上は未知の代物だろう。

 集める事で(えつ)(ひた)る訳ではないが、可能なら譲り受けるか購入するかしたい。

 今現在、自身にとってそれなり以上に価値ある情報源となるのは間違いないのだから。

 先程古道具屋と名乗っていたことを踏まえれば、おそらく交渉は可能だと考えられるが……無理なら今回は諦めよう。

 

「構わないよ。すぐそこの僕の店に置いてある。見る分には特に言う事はない」

「店内に一通り置いてあるから是非見ていってくれ。一部はもう商品として出しているから欲しいと言うなら代価が必要だけど……寄ってくれるかい?」

 

いいだろう(YES)

 

「随分と食い付きがいいな君……まあ、関心を持ってくれるのはありがたいが」

 

 許しが出た。

 

 思わず即答したのに対し、男は苦笑とまでは言わないが……控えめに呆れているようでいてどこか喜ばしげな表情を見せる。

 購買欲の高さを評価してもらえたようだが、正直に言えばこの男の望むような取引相手になれるかなど自分でもまだわからない。

 

 手持ちのソウルでは買いきれない可能性も、下手をするとソウルでの売買自体出来ない可能性もある。その時はどうにか物々交換に持ち込むしかあるまい。

 幸い、古い時代の遺物なら有り余る程に貯蔵している。所持している物の古道具としての価値など今まで考えた事もなかったが、質はともかく数だけは揃えられている自信がある。

 

 ここが、最初の火が生まれたばかりの時代、原初の神代でもない限り、右に出る者は殆どいないと考えていいだろう。

 

「……ところで、店はどこに?」

 

「なに、僕の店はすぐそこ、あの辺りだから安心してくれたまえ」

 

 そうか───そう一言呟き、おもむろに遠眼鏡を取り出して眺めてみる。

 

 なるほど、確かに木造らしき建造物が見える。

 一瞬、全体を垣間見てから遠眼鏡を収納すると何やら感心した様子の男が目に入った。

 

「便利なものだ……それにしても"遠眼鏡"か。珍しい」

「うちにも幾つか置いてあるが……ここでする話でもないな。じゃあ、行こうか」

 

 少々の物珍しさを感じながら、軽く頷き応答する。

 

 店売りの遠眼鏡というのは何気に初めてである。

 こちらの遠眼鏡はどのような代物なのだろうか?少し期待を膨らませながら男の後に続いた。

 

 

 

 実際に古道具屋、香霖堂は目と鼻の先と言ってもよい程に近場にあった。

 先程の開けた場所は店の裏手に位置していたようだ。

 先導され店の正面にまで回り込んできた訳だが、自身の目では見た事のない外観の家屋である事はわかった。

 多くの刀使いの出身地であった東国の建築物に似ているようにも思えるが、残念ながら大工ではないので明確な区別はつかない。

 

 現在、店に辿り着いた際に店主である森近霖之助から、店内を一度整理させてくれと言われたため大人しく待機している。

 暇潰しがてら店の外装を観察しているが、これはこれで悪くない。

 

 物珍しく、見ていて飽きないというのもあるが、好奇心だけで観察している訳ではない。

 別に何者かが隠れ潜んでいないか心配している訳でもないが、一見、何の変哲も無い家屋にも妙な仕掛けが隠されている場合もある。

 見逃して何か不都合が起こるのも気に食わないため、中に入る前に一旦確認しておきたかった。

 初めて訪れる場所であるからには気楽に行きたい所だが、どうせなら見逃しの無いようにしたい。

 

 繁々と店を眺めながらそんな事を頭の片隅で考えていると、カランカランと耳当たりの良い音を立て店の戸が開かれた。

 

「待たせてすまないな。さあ、入ってくれ」

 

 声に応じ、少々暗く感じる店内へと立ち入る。

 ついでに軽く見渡してみると、店主である森近霖之助とある程度予想していた通りの商品と(おぼ)しきアイテム群、そして、見た事どころか知識にすらない謎の物体が目に入った。

 

 先程までは、年代物の武具や置物といったオーソドックスな物品の他、何か珍しい物や変わった物が置かれているのだろうか……などと安直に考えていた訳だが、予想は良い意味で裏切られた。

 

 謎の物体は大小様々であり、文字らしき物が刻まれた複数の突起が付いた物体、鏡のように光を反射しながらもその内にどこまでも黒い暗闇を秘めたオブジェなど、見た目だけでは何なのか判断しづらい、何かよくわからないものばかりで非常に興味を唆る。

 

 それらの全く見当もつかない物の大半が共通して箱や板に見える形状である事も気になるところだ。

 

 長く生きてきた自負があるために驚愕もひとしおではあるが、見ただけでは何であるか予想すら出来ない物体というのは実際多いものだ。そういった未知の異物の発見も旅の楽しみなのは確かだ。

 最初に大きく年代を跨いだ頃、ドラングレイグで鉱石か鍵代わりかと思い込んで、雫石を手にした時は驚嘆したものだ。

 

 気を取り直し、また少し見回してみる。

 

 薄暗く埃っぽい空間ではあるが、個人的には神の都や偉大なる王の宝物庫よりも数段魅力的に見えた。……とは言っても、どちらも寂れ、(すた)れていた地域だったのだから比較対象として適切とは言えないが。

 

 早く手に取り調べてみたいというはやる気持ちはあるが、ここは店だ。売り物に勝手に手を出す訳にもいくまい。

 

 すぐに店の主へと向き直ると、対面した彼は仕切り直すように迎え入れた。

 

「いらっしゃいませ。ようこそ、香霖堂へ」












※解説のコーナーを設けましたが私の解釈は大体、ACID BAKERY氏の考察、考えがベースとなっている部分も少なくないです
自身でこうだと断定、希望している部分も一応ありますが、引用となるものもあるので、ソウルシリーズについてもっと知見を深めたいという方がいるなら是非彼の方のブログやTwitterを拝見していただきたい
こんな後書きなんかよりよっぽど面白いのでおすすめします

ついでに先に書いておきますが「一時の安息を得た世界」に関しての記述はその他の項目と異なり、原作のテキストに基づかない不確かな記述があります

※ここからは蛇足なので解説まで読み飛ばしてもらって構いません

ロスリック城に世界蛇像が置かれている事から、血の営みなんかも含めて旧体制時代(エンマ派)の行いには某口臭蛇の手が及んでいる可能性が高い+カアスがダクソ3開始直前まで関わっているのだから対になる彼の痕跡が残っていてほしい、という願望があったため王の探求者の名を出しましたが、実際のところ世界蛇像はカアスを模した物だという可能性も考えられます
こちらも作中のテキストでは明確な繋がりが見出せませんが、王子ロスリックの聖王着任後の火継ぎに対する遅延行為は亡者の王を見出すまでの時間稼ぎにもなる事を踏まえてカアス側と利害が一致しているため、何らかの協力関係を築いた可能性も一応あります
どちらにしろ裏づけとなるテキストが無さそうなので憶測で書きました許してくれ…許して…くれ…

また、本当は「深海の時代と小さな火たち」についての見解も載せたかったのですが文量が膨らみ過ぎて書くのがキツかったのでまた別の機会にします
現実の深海と熱水鉱床なんかの関係に置き換えられるんじゃないかと思ったんですが…やっぱりブラボと同じく現実の知識と結びつけようとすると面倒ですね…


ーーーーー



一時の安息を得た世界

ロスリックが国として当初から掲げていた目的、神族や王の探索者と呼ばれた蛇の見えざる手が入っていただろう計画に乗り、火の無い灰がはじまりの火を継ぐ者として薪となった結末。
その先に予想される世界。
その平穏が例え偽りの物であったとしても、救われる者がいるのなら価値はあるだろう。

やがて誰も救われぬ世界になるとしても


最初の火が簒奪された世界

亡者の国ロンドールの協力により幾重もの呪いを、死を重ね続けた不死の超越者───亡者の王を器とし最初の火を迎えた先にある、人間、もしくは蛇が台頭するであろう世界。
闇撫でと呼ばれた蛇は(呪い)を糧と見なしたのだろう。
呪いは火が強くなる程に強くなる。逆もまた然りと。
火の簒奪により変質した太陽は、暗い穴となってなお明るく、人の世を照らす。
その時代は永劫のものとなるだろう。

(火の炉)が機能し続ける限り


(最初の火が簒奪された世界)

火に惹かれた亡者が、ただ目先の熱に魅入られた世界。
****にとっては未知の結末。
ロンドールの名の下で行われた大義ある簒奪とは異なり、火を消し、看取る最中の火防女を凶刃にかけ、最初の火を奪い取るようにして胸に(いだ)く終わり。
その衝動的な行いは世界全てに多大な影響をもたらすだろう。
灰が狂気に身を委ねた先にあるのは破滅なのだろうか。
だが、原点を辿ればきっとそれは、最も人間らしい最期なのだろう。
人への羨望、あるいは愛の意志を持った人間性の闇は、愛を、ぬくもりを求めるようにして追いすがり、己のモノにしようとでもいうのか、命ごと奪い取ろうとする。
醜く悍しいそれもまた人間の側面であり、故に灰は焦がれたのだろう。
全ての計画を、願いを、希望を踏みにじる形で生じたこの結末は、誰にも望まれなかったが故に誰もが予想し得ない可能性を秘めた幕引きでもある。
誰も知らぬ未来は最良のものとなる可能性もあり得るのだ。

例え、それが薄汚い欲望から成ったものであろうと


小さな火たちに照らされている世界

瞳なき火防女に瞳を与えることで生まれる選択肢へ身を委ね、最初の火を火防女と共に人為的に消した先にあるだろう世界。
火が消えた世界は永遠に続く暗闇となるという。
それは、悍しい人食いであった薪が予見したという深海の時代なのだろうか。

この選択は、これまで火の時代の礎となり焼かれ灰と化した薪の王たちに対しての、また、再び火の時代が息を吹き返すことを夢見て終末に生きた者たちに対しての裏切りである。
対となる蛇たちがそれぞれ打ち立てた計画の元実行された選択とは異なり、計画性のない、暗い闇の中にただ希望を抱くような一種の逃避ともとれる愚行。
不確かなものを信じ自身の全てを、世界の命運すらベットにした賭けなど最早正気ではない。
だが、火防女はその先に小さな火たちを見出したと言う。

先が見えずとも、その暗闇はきっとあたたかい


惜別(2での名称)・惜別の涙(3での名称)

詠唱者が死に(ひん)した時、一度だけ踏みとどまらせる効果を付与するスペル。
死にゆく者の今わの際に、残してゆく者との別れの時間を与えるための奇跡。
そして、死を前にした戦士に、今一度反撃の機会を与える奇跡。
温かな優しさが生み出したであろうこの奇跡は、まさしく希望の光として人々の内に輝く。
故に、その希望を踏みにじるため、血に酔った人狩りは(みな)、薄い小さな刃を隠し持つのだ。


メッセージ

橙の助言ろう石により残される伝言(メッセージ)
目に見えない無数の世界、それらがわずかに重なり合う時、言葉は現れるという。
薄く光る(ろう)で描かれたメッセージは他世界に送られ、その世界のプレイヤーに情報を、或いは感情を伝えることができる。
メッセージが評価を受けることで書き込んだ者はHPを回復する。
時の流れの淀んだ地で不死人が互いに助け合うための手段であり、騙し合うための手段でもあり、また、感情を発露するための手段にもなり得る。


怪しげな壁

隠し扉。
殴ったり調べると隠し部屋や新たな通路が開ける。
ロードランやロスリックでは幻であるため殴る必要があり、ドラングレイグでは破壊式の幻?の壁も存在するが少なく、多くは仕掛けによって動作しているため調べて起動する必要がある。

余談
同系統の作品であるデモンズやブラッドボーン も殴れば開いたため、ダクソ2の仕様は独自のものだと思われ欠点として非難されることもあるが、実際はフロムソフトウェア・デモンズソウルの原点であるキングスフィールドの仕様に先祖返りしていただけなので個人的には好ましいと思っている。
初周は全て取り逃したが…


生命力

主にHPを司る能力値。
HPとは生きる力。気力を指す。
生物であるかないかに関わらず、ソウルを有する者全てが持ち合わせる。
「ダークソウル」において生あるものは気力が()つ限り形を失わず、また、死に至る事はない。
生命力溢れる者は、例え心臓を抉られようが、頭蓋を砕かれようが簡単には死なないだろう。
また、"冷気"への耐性に影響する。


力の喪失

この作品の主人公は、時をまたぎ舞台を移る際に、毎度、何らかの能力値が最低値まで下がる現象に見舞われている。
今回は生命力が非常に低い値となっているようだ。


情報の読み取り

この能力をダークソウル主人公が有してるかは定かではない。
が、それに近い何らかの能力を有していなければ、主人公が知る機会のなかった情報(鍵・アイテムの使用方法など)を知っているといった不都合な点が出る場面もあるため、この作品の主人公はアイテムから情報を読み取れる事になっている。


盗賊の短刀

幅の広い片刃の短刀。
斬りつけることを主眼した武器であり、盗賊や追い剥ぎなど、賤しいものたちが扱う。
****が好んで使う武器でもある。
同種の短刀のうちでただ一つ、15段階まで強化されたそれの柄には、同種の短刀と異なり何かが埋め込まれている。
残り香すら残らぬそれを覚えている者はいない。


喪失者

ある探求者が生み出した罪の1つ。
原罪の落とし子としてその身と世界を失った彼らは、他の不死が主となる他世界に寄る辺を求めるという。
ある時を境に、世界の主の命を脅かす闇霊としてドラングレイグ各所で現れ始めた。
亡者としての深度が進む程、不死の内に潜む死が、呪いが濃くなる程に力を増す大剣や鎌を扱う。


パッチ

ロードラン、そしてロスリックで出会うことになる、盗賊衣装に身を包む商人を装ったハゲ。
面の皮が厚い恥知らずの追い剥ぎだが、品揃えは悪くない。
気合を入れて蹴り落とした相手に銀猫(落下ダメージ無効)の加護を付与する不思議な足を持つ。
蹴りを得意とするため、どうしてもイラつくなら意趣返しに蹴りつけてやろう。
聖職者を酷く憎んでいる。
火の時代の行き着く(袋小路)では優れた戦士に成長、或いは退化した姿を見ることができる。
本質はお節介焼きのお人好しなのだろう。


ロイドの騎士

主神とされる神、ロイドの名の下に不死狩りを行なっていた者たち。
本来、人の世界では不死は呪われた化け物であり、それを狩るロイドの騎士は英雄ですらあったという。
シリーズ作中では最後まで相見える事はなかったが、彼らの護符はシリーズ皆勤賞を果たしている。
彼らの護符は多くの場合、不死同士の殺し合いの場でよく使われる他、ある神族(貪欲者)に対しても大きな効力を発揮する。


早着替え

ソウルシリーズでは着替えが早い。
主人公が装備を替える際、何かを外し、脱いで、付け替え、着替えるという描写が存在しないのだ。
「兜を被っている」状態から「仮面を付けている」状態などに即座に移行できるため、鎧甲冑を着ていた正統派な騎士が少し目を離した隙に、宝箱を被ったパンツ一丁の変質者になっていたりするのがごく稀に見られる。
作中で早着替えするNPCはブラッドボーンにはいたものの、ダークソウルでは見られなかったため主人公以外もできる技能なのかは不明となっている。


黒革の装束

なめらかな黒革の装束。
音を殺し、闇に隠れる後ろめたい盗人の装いとして知られる。
防御効果はあまり高くない。


精霊

時空の歪みの影響を受け、捨てたアイテムや失われた人間性が、ベイグラントと呼ばれるシステムの下で変異し生じる存在。
アイテムの精霊、人間性の精霊が確認されており、他の世界への繋がりがある場合、ごく稀に、世界をさまようそれに遭遇できる。
倒すことでランダムなアイテム、または人間性を得る。


世界の主(ホスト)

重なり合った世界のずれの中心にいる存在。
他世界と密接に繋がり合い、幾人もの不死人が関わり合う環境を形成した不死を指す。
ホストとも呼ばれる。
協力者・侵入者といった他世界の存在(クライアント)を招き入れ、助け合い、あるいは戦い合うといった形で触れ合う交流の場を提供する役割を持つ。
ホストは出会った不死たちと様々なものを共有し経験する事になる。
その経験は良くも悪くも得難いものであり、時に輝かしい思い出を残してくれるだろう。


遠眼鏡

使用により遠くのものを視認、または近くのものを詳細に見ることができるアイテム。
また、弓の照準と同じ仕様であるため、魔法や旧式のクロスボウの狙撃用外付け照準機として活用できる。
武器として扱われたドラングレイグ産遠眼鏡はまた別の性質を持っていたが、異質なその力は、ある時を境に失われたという。


雫石

ソウルが結晶化してできた石。
砕くことで穏やかに続く回復の効果を得られる。
鈍く輝く、ソウルの亡骸とも呼ばれるそれは、歳月を経るごとに輝きと回復の力を増す。
ダークソウルでは2作目の時代にのみ見られた。


ーーーーー



ロイド

法の剣を司る主神
グウィンの叔父とされる
白教の信仰対象であり、その名の下に行われる裁きの決闘は酷く恐れられたという
しかし、グウィンのルーツは火がもたらした闇にあり、本来なら"叔父"など存在しない
彼は何者なのだろうか
ダークソウル3の時代では、ロイドは傍系にすぎず、主神を僭称(自称)したのだとする論調まで存在するが、真相は不明

ある古い言葉(ウェールズ語)で灰色を表す

……ある世界(絵画)において、"灰"とは世界の真名であり、その名の由来となった英雄を指す言葉でもある
もし、その(お嬢様の絵画)世界が最初の火の物語(ダークソウル)に繋がるのだとしたら…
ロイドとは原初の神、創造神の片割れに位置する、真の神を指し示しているのかもしれない


蛇が追い求めた夢

死ぬ毎に人間性の闇を失い、無尽蔵に溜まり続ける呪いに蝕まれようと人であり続ける英雄が、最早人と呼べぬ常軌を逸した存在がもし存在するのなら、もしその身の内に火を内包したのなら、それに宿る(呪い)を薪にできたなら、火を絶やすことなく()の時代が到来するのではないか
そう、闇撫でのカアスは考えたのだろうか
新たな道を見出した蛇は、しかし道半ばで倒れた
彼がどのような世界を望んだのかを明確に知る術はない
小ロンドやウーラシールの顛末(てんまつ)を考慮すると亡者の時代は良いものとなるなど到底思えないかもしれない

だが、彼が導こうとした人間は皆愚かであった
蛇は人間の愚かしさを理解していなかったために、人を信じ過ぎたが故に失敗したのだろうか
結局のところ、人間自身から見ても度し難い、人の欲というものを考慮してしまえば彼を悪だとは断定できなくなる
もしかすると、主人公が亡者の王としての道を選んだ先には、これ以上にない程に良い時代が築かれるのかもしれない
何の確証もなく、もしあり得たとしてもロンドールが愚を(おか)さずに存続し続けることが大前提となるが…

存外、蛇の見た夢は

優しく、温かなものなのかもしれない
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