夢を見る不死   作:粗製の渡り鳥

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この作品では幻想郷の地理を話の都合に合わせて滅茶苦茶にしています
できるだけ原作に寄せた作品にしたい気持ちはありましたが…無理でした。許してくれ…許してくれ…
そしてこの話では、ある種の生理的嫌悪感を抱きかねないネタ・セクハラ染みた行為が描写されています。
苦手な方は読み飛ばしていただきたい。
ダクソ2の鍋島テキストまで尊重したい一フロム好きとしては、直視せず避けて通る道を選ぶことができませんでした。
本当に申し訳ない




第6話:かわ炙り

『妖怪の山』

 

 ある川の岸辺。

 

 半裸の男が1人、奇妙な()き火の前でへたり込み、項垂(うなだ)れる。

 竿状武器(ポールウェポン)を用い、不恰好に組み上げた物干し場。その粗雑な構造物の下には、数本の松明(たいまつ)が突き立てられ辺りを照らす。

 吊り下げられた衣服が灯りに鈍く照らされ、含んだ水気に不審な光沢を映していた。

 

「……」

 

 水に濡れ、"一向に乾く気配のない"衣類を前に男は困り果て……熱に火照る異形()を軋ませ、半ば逃避する形で数刻前のやりとりを思い返す。

 

 

 

 

 

『申し訳ない』

 

「いえ……その、お気になさらず」

 

 青いドレスの女は、どこか疲れた様子で人面の声に応答する。

 

 不躾が過ぎた。

 張り詰める程の警戒、全く信用していない者の手前だと言うのに、些か配慮に欠けていたようだ……悪戯に刺激するような真似をしてしまったことを自覚する。

 攻撃はしていない、前もって禁じられた行動を起こした訳でもないが、この土地で通常不可能だろう真似を行ったのだ。不可解に思うのも無理はない。

 ドラングレイグ、ロスリックでもその土地で入手や習得、否、(まみ)えることすら不可能な武具や魔法を用いた場合、良い反応などされるものではない。

 自身と近い境遇にあるだろう理から(ネジの)外れた不死人からは、不可思議な……罵倒を意味するだろう思念のようなものが送られてきたケースすらあった。

 それぞれの時代に定着していた者たちはそう問題としないでくれたが、こういった真似も控えた方が良いかもしれない。

 

「……もうひとつ謝りたい。どれだけ殺したか……殺した数は答えられない」

 

「そんなところだと思っていましたわ」

 

「故に数えきれない程に、としか答えられない。正確な数を覚えていないからだ」

「記憶している範囲で答えるにしても、問題がある」

 

「……」

 

 女は口を閉ざす。

 何を望むか。女が、この地が人にどうあれと望むか。提示されなくては郷に従うことすらできない。

 ならば

 

「お前の言う殺しの基準がわからない。……獣や虫、植物や竜は除くべきか、死霊、石、亡者は人の数に入るのか、聞かせてくれ」

 

「……んー?」

 

 静かに聞くばかりであった女は唐突に目を伏せ、目頭を抑えて険しい顔で考え込む。要領を得ないと困っているのだろう。

 確かに、(こす)い言い回しだ。

 きっと適切ではない。

 だが誠実に対応しては、いらぬ混乱が生じてしまう

 

「申し訳ない。……ずるい問答だった」

 

「ふ、ふふ……謝る必要はありません。私の質問が意地悪でしたし。それに今の言葉で十分……納得できましたわ」

 

 十分……か

 

「いいのか?」

 

「はい。これ以上は聞きません。私は、ただ通りすがっただけの仙人ですからね。あまり聞かれたい内容でもないでしょ?……うから」

 

「……伝わったなら、それでいい」

 

 一瞬、素顔が見えた気がしたがまた隠れてしまった。やはりまだ信じるに値しない相手と捉えているのだろう。

 少しして、女はふっと笑う。

 

「少し、ホッとしています」

 

「……」

 

「あなたがどういったものか、正直まだわかりません……現代まで封じられてた線もありでしょうか?引きこもっていたのかもしれませんけれど」

「ただ、些か常識に欠けるとしても、私や近しい者にとって不利益な存在ではないと、そう思えました」

 

「そうか」

 

 女は知ってか知らずか、知らぬ者を煙に撒くためのそれを受け入れてくれた。

 変容する生命、人間(小人)の一人として、"人間"には分け隔てなくありたいが故のごまかしだったが、あえて乗ってくれたとみなすべきか。

 感謝は……声にし伝えるなど無粋だろう。

 

「しかし、匂いはもう少し気にした方が良いかもしれませんね。危険な香りは抑制できたようですが、方向性は違えど乞食より臭うのは問題かと」

 

「すまなかった」

 

「そうですね。替えの服でもあれば……」

 

 替え、替えの服か。

 あるにはあるが……

 

「……」

 

 確かに、用意はある。

 まさか洗浄して尚臭うとは……かけ流しだけでは足りないか。おそらく己本体の洗浄も必要であったとは思うが、衣服だけでも替えるべきだと言いたいのだろう。

 ならば着替えるという択をとるべきだ。

 今、ここで。

 

「……確認したい。すまないが、手伝ってはもらえないだろうか」

 

「匂いの、ですか?ふふっ、いいですよ?」

 

ありがとう(Thank you)

 

 感謝を込めて人面を放る。

 これ以上、言葉など飾る必要はない。

 では着替えるとしよう。

 人面が声を発すると同時に、ロードランで入手しソウルの内に秘めたっきりの、未使用の盗人一式に切り替える。

 

「…………?匂いだけ変わりましたね。一体何を……」

 

「同様の物は何着か備えがある。今新品に切り替えた所だが、どうか」

 

「……まあ良いでしょう」

 

 未使用の黒革の装束は余りある。

 この一式は、己の記憶を確固たるものとした時期以降のものだ。

 これまでの渡りで記憶力が低下しなかったおかげで覚えていられた。

 最も着込んだ未強化の一式で巡りたかったが、この際拘りは抜きだ。

 

「んー……さっきの浄化した服の方がマシ、かもしれません。混沌とした匂いではなくなりましたが、死臭が強すぎます」

 

「そうか」

 

 持ち主の気の影響でしょうか──そう(こぼ)す女に捕捉を入れる。

 

「古い死体から入手した物だ。おそらく前の持ち主の名残だろう」

 

「あーそういった経緯なら仕方ありませんね」

 

 けどその匂い、私は嫌いじゃないですよ──事もなげに女は言う。……どうやらこちらでも死体漁りは問題ないようだ。

 だが少々、気落ちする。気にしたことはなかったが、死も臭うのだな……。

 

「こちらはどうだ」

 

「あら、また着替えたのですか?お早いことで」

 

 次の一式の確認を促すと、今度は臭いがより薄いのか、先程より近づいてくる。

 

「」

 

 何かしらの臭いを察知したのだろう。近寄っていた女は刹那の間に離れていた。

 仮面のような笑みだ。

 目を伏せた満面の笑顔。

 何故か、女に似つかわしくない妙な圧力を感じた。

 

「これはずっと昔、ある梯子(はしご)職人から購入した物だ……先程より反応が強いな。何故だ」

 

「いえ、お気になさらず。ただ、先程までとは異なる、その、想定していなかった類いの臭いだったもので、つい」

 

 ……汚物や呪いの類いではないということか。

 

「では、こちらの方がマ「さっきの方がよかったです」……ではなかったか。申し訳ない」

 

(……ギリガン)

 

 思いがけず不意を打ってしまったことを詫びる。

 ドラングレイグの盗人の装束。これはいつかの超常的な梯子男から購入したものだが、何かが女の気に障ったようだ。

 思い返せば、彼は臭気の強い場に居座りがちであったような気もする。

 汚染された大地に(そび)え立ち、毒物を()み上げるために設立された塔。ネズミの領域やロクでもないモノ溢れる地下空間に通ずる大穴の淵。既に己の嗅覚はまともでないために意識こそしなかったが……売り物にそれら由来の異臭がこびり付いていても不思議ではない。

 

 もう1組、ロスリック産の物も用意するべきか迷い……やめる。

 引き合いに出さなくともよいだろう。

 次を提示できるだけの自信は、既に欠片も残ってなどいなかった。

 

「もう、最初に浄化した服でいいじゃないですか?あれならしっかり洗濯するだけで不審者感も抑えられそうですし……」

 

「洗濯」

 

「もう人ざ……なんですか?」

 

「洗濯といったか」

 

 

 洗濯。

 洗浄の真似事などではない。

 大多数の人間にとっての日常、(せい)の原風景。

 遠く忘れ去ったろう、己の未知。

 

 

 

 

 

 そうして女──青娥娘々(セイガニャンニャン)と名乗った者に、近場で井戸代わりに使える水場はないか尋ね、勧められた山へと赴いた訳だが……

 

「……」

 

 程なくして辿り着いた川辺。

 "知識"を頼りに、万全を期し新品の一式を対象とし聖水瓶を取り入れながら行った手洗いを主とする洗濯。

 形だけの模倣ではあったが、過不足こそあれ最低限の水準を満たすことはできた……そう思いたい。

 

 しかし

 

「……」

 

 おかしい。

 遅すぎる……これは。

 時間は十分に経過しているはず。

 だというのに、(うるお)いが全く失われない……水気とはこうも保たれる物だったか?これも差異の一種とするなら……ならばどうする?

 いや、まだ余計な試行錯誤をする段階ではない。そもそも、青娥娘娘の助言を全うしたとも言い切れまい

 彼女は言っていた……風通りの良い場所で焚き火に当てる、そうすればより早く乾くと。

 

 水に火を……か。

 覚えている限りでは、水に濡れた状態で焼かれたとして、今まで乾きが早まったような経験は皆無だ。

 この地では異なるのかもしれないが、実証は難しいだろう。松明を筆頭に武具の火はあまり役に立たず、己の一部に等しいせいか直に呪術で焼こうが変化は見られなかった。

 近場に火葬場や溶岩のような火の手もないため、環境も頼れない。

 ぬくもりの火は少なからず効果があるように感じられたが、あまりに遅すぎて誤差でしかない。

 

 他には何がある?

 火の当て方、火の……

 

「………………!」

 

 考えが巡る中、遂に天啓(てんけい)を得る。

 危険だがやる価値はある。

 これで手違いを起こし、死んだとしても……まあ、そう悪くはない。

 火に当てるとはおそらく……

 

 静観をやめ、立ち上がり準備を始める。

 右手にタリスマンを持ち出し、篝火を生じさせた時のように下準備を行い、万が一に備え生命を活性化させる。

 連続して呪術の火に持ち替え、ダメ押しにぬくもりを放ち、継いで術を詠唱。

 熱が渦巻く。

 呪術の火から生じた、激しく燃え盛る炎。

 その煌めきを、己へと深く突き立てる。

 "身を焦す炎"

 選んだのは、己に火を宿し、自身共々周囲の者を焼く呪術。

 

「……」

 

 今、己が試せる中で最も効率的な脱水法。

 

 それは───

 

 己自身が火となることだ











AC6、素敵でした
エルデンdlcも待ち遠しいですね…

人によってはだいぶ不快だろうこの話のネタは、今後の懸念点として個人的にどうしても気になったのでここで解消させてもらいました
黒革(盗人)一式じゃなければ触れずに済んだろうと思いますが、この主人公の背景を考えると盗人が最も適していたために見なかったことにせずぶち当たりました。
すまねぇ


ーーーーー



乾く気配

不死人の世界(ダークソウルの舞台)では、濡れた状態の解除は大抵数十秒で済むのが常識であった。
この地ではどうやら異なるようだ。
男は法則の違いを理解してなお、自身の常識に縛られた。


死臭
不死人たちにとって、おそらく特別取り上げる程の物ではない。
仮に各アイテムの解説が不死人の所感だとするならば、そう捉えていいだろう。
死に続けた先朽ち果て、年月を経た亡者が纏う汚らしいボロ切れ、その残り香でようやく触れる程の鈍麻。
そこかしこに死体が捨て置かれた地を彷徨うのだ。
死の臭いになど、当てられるべきではない。
嗅ぎ取れぬならそれでよい


ギリガン

ドラングレイグの地にて渡し屋の名で知られた肥満気味の梯子職人。
独特な構えを持つ二刀流の使い手。
類稀な梯子作製技能と常識を持つ。
寵愛の女神に愛されて(製作陣の玩具にされて)いたのか、合計4つの奮闘(ムービー)を見せる他、他登場人物と異なる個性を持つようだ。
技への敬意からか、致命の一撃であろうとあえてノーガードで受け入れる度量の持ち主。
ロスリックの地でも最期までその在り方は不変であったようで、灰の方(3主人公)もまた敬意を払い(面白がってか)その作法を模倣したという。
また、謎の臭そうなアイテムを売っている。
きっと、皆疲れていたのだろう。


身を焦がす炎

自らの身体を炎に包み、近寄るものを焼き尽くすドラングレイグの呪術。
当然ながらそれなりの危険を伴い、燃えている間はHPが減少する。
効果範囲は非常に狭い。
拳のリーチにすら劣るため、至近距離でも相手への密着を常に意識しなければならない。
攻撃手段として用いるには正気を失う必要があるだろう。
しかし、灯りとしての適正も多少持ち合わせており、足元を僅かに照らす。
火の光を異様に嫌い、松明の使用を固く禁じる者たちとも分かり合える、節度ある照度を誇る。
一見、使い物にならないゴミのように見えるが、ドラングレイグ産松明と異なり水に強い点は十分に長所となり得る。
時間経過と自身に付与する魔法などの上書きでしか消火できない特性から、暗所の水場であれば(わら)よりは(すが)りがいがあるだろう。
加えて瀕死に至るまで追い詰めた敵への追撃、油に塗れた渓谷への放火、ネジが何本か外れた不死同士でのコミュニケーションでは明確な役割を持てるため、使い道はある部類。
惜別(死に際に持ち堪える手段)がドラングレイグより重宝されていたロスリックであれば、あるいはもう少し輝けたかもしれない。
また、無知で理性的な不死へのこけおどしに使える。
死に体でなければ恐るるに足らずとも、人は異常を恐れるものだ。


ーーーーー



竿状武器

あるいは長柄武器
槍や薙刀、斧槍を始めとした長物
長柄の鎌や(くわ)といった農具も含まれる
おそらく竹竿も含まれるだろう
デモンズソウルでは槍を含まない長柄武器を指す
ダークソウルではひとまとめに斧槍とされ、用いられなかった
何故だろうか、他世界に干渉するメッセージにおいて武具の呼称としては最も好まれたという


不可思議な思念

ファンメール
ある種の思考の持ち主にとって、それは攻撃の道具である
誰の"駒"でもなかったろうこの不死は、火の異常に触れたからだろうか、いつしかそれを受け取る資質を手に入れたという
だが、自らの声を届ける術は持たなかったようだ


"人間"には分け隔てなくありたい

この不死は、人間の形から外れてしまったなれの果て、あるいは人のなり損ないをすら、全て人間として見ていたいようだ
多くは人間の可能性の産物であったからだろう
小人は皆、本来は無秩序な生であったのだから
枷と共に生きていようと、その末裔には変わりない
であれば───


死体漁り

きっと問題になるだろう


身を焦がす炎

自らを焼きつくして得られるものになど
縋るべきではない
我欲からであれば良い
だが、それが他者への献身だというのなら
それはきっと、いつか呪いになる
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