弱小!?海防艦娘と過ごすほのぼのとした日常(無人島編) 作:おしゅら職人
ちょっとレイテの方の船団護衛で忙しかったもので...
「何ですか、バカみたいな声出して。」
イロは無線の修理から帰ってきて早速挑発してきた。
「バカみたいな声ってなんだ!あれはだな、その...。」
正直びっくりして出したとは言いたくない。
「あれだ、変な咳だ。これ作ってて変な姿勢になってたからだ。」
そういって手に持っていた釣り竿(ぽい何か)を見せる。
「釣り竿ですか。私があくせくと働いてる間に自分は暇つぶしの道具作りですか。」
あれ?イロにはなんのための物なのか伝わってない?
「ちげえょ、これはこれからの生活に必要になると思ってだなぁ。」
「私に助けを求めさせている間の暇をつぶすためにですか?」
まずい、このままじゃサボってたって思われてる。
「ちげぇよ!もし食料が尽きたときのための道具作ってたんだよ!いくら非常食があるったって限りあるだろ?」
サバイバルにおいていかに釣り竿が大切がを説く。
長期にわたるサバイバル生活で生鮮食品が食べられるということは大きな力になる。
特に海では資源がほぼ無限にある魚などは利用できるかできないかで生死に大きく影響する。
まぁ、今回はそんなことには十中八九ならないと確信してるのだが。
「ひ、非常食が尽きたときですかぁ。」
イロは何やら不安そうな表情を浮かべる。
「だろ、それにこういうときお前みたいな艦娘は食事を自粛するということになっている。でもお前には無理だろ?」
前にうっかり食事の時間を忘れて訓練スケジュールを実行したら大騒ぎになったことがあった。その時には船乗りの唯一の楽しみは食事なんだだの、食事抜きになった乗組員の苦しみやら荒れ具合などをひたすら語ってきやがった。
一緒に抗議をしていたふれよも終わりの方ではそこまで言うの?って顔してたしな。
菓子もそうだがこいつは食い物に対しても執着が強い。
まぁ、それを指摘してもこいつは否定するだろうがな。
まったく、わがままな秘書艦様だぜ。
「というわけで我慢できないであろう、わが基地の秘書艦様のために用意したわけさ。」
「べ、別に、我慢できなくもなく......ないですけど。」
うん?否定しないのか?まぁいいが。
「そいで秘書艦様はご自分のお仕事は終えられたのでしょうか?」
「急に敬語で話されても気持ち悪いです、司令。」
気味悪そうな顔をして言う。そんなに気持ち悪いのか。
「せっかく人がたまにはいたわって気をつかってやったっていうのにその返事かよ。で、無線機の方は直ったのか?」
「そもそも司令は普段からイロたちへのいたわりの気持ちが足らないんですよ。さっきの言葉ももいたわりの気持ちが全然感じられませんでしたし。あと無線の方は基幹的な部品が壊れているみたいでした。」
「この島に上陸する前と全く変わらないのか。」
軽くため息をつく。
まぁ、そんなことであろうことは読めていた。
「あれ、司令。いつもみたいに理不尽に怒らないんですか?この役立たずの不良急造艦の落第娘、地獄に落ちろって。」
「いくらなんでもそんなこと言わんわ。てかこの島を見つけるまでずっと俺が修理してたんだぞ。それで直らなかったんだったらお前がちょちょっとで直せるわけないだろ。あと理不尽ってなんだ、大体お前が悪いんだろうが。」
「理不尽です、この間備蓄の醬油がなかったときとかひどかったです。醤油瓶にはあと一人分しかないのに自分の分を残しておけとか意味わかりません。」
「いや、そもそもあれは前の買い出しの時に頼んだのにお前が買い忘れたから起こったんだろ。お前が我慢するのが正しい。醤油なしで食べる刺身の味気なさを知れ。」
「そりゃあ、確かに買い忘れましたけどそもそも買い出しリストの決定が買い出し直前ですよ忘れても仕方がないでしょう。どーせ司令が仕事サボってたから遅れたんでしょう?」
「どうしてそんなことが言えるんだよ、もしかしたらほかの奴のせいかもしれないじゃないか。」
「うちの基地の補給を担っているのは誰か忘れてないですか?そしてその仕事を唯一妨害できる権力を持つのが誰かを。」
「う、ぐ。」
うちの基地の補給を担っている人間、それが誰かという意識をすると反論ができなくなる。
韮山事務官、基地のみんなは事務海佐と呼んでいる。
基地の施設管理、補給、経理などの自事務仕事をほぼ一手に仕切り、完璧にこなす。
それどころか通信、艦隊指揮、射撃などどうやって習ったんだよ、と言いたい技術を持っている上に並の自衛官より的確だったりするから意味が分からない。
基地の隊員たちの信頼も厚く、なんでも困ったらあの人に聞けばいいと頼られている。
ほんと何者なんだろう。
正直、彼さえいれば俺はいらないんじゃないかって思うぐらいだ。
そんな彼が買い出しリストを直前ギリギリに出すなんてことはありえない。
そしてその仕事の妨害をできる人物、基地のなかで最も権限のある人物がその原因だ。
いくら有能な人物であろうが上司には逆らえないし無視できない。
軍隊って悲しぃなぁ。
「何、他人事のような顔してるんですか司令。」
にゅっと下から覗き込むように俺の顔を見上げてくる。
「いやぁ、軍隊っていうものは悲しいなぁって思ってさ。」
「軍隊じゃなくて自衛隊なんじゃないんですか?」
「実態はなんも変わりはしないだろ。お前らもそう思ってんのは同じだろ。」
「まぁ、そうですねぇ。船団護衛をしない護衛隊とか護衛って名前を付けている意味があるのかなって時々思いますし。」
自分たちの抱えている負担を思い出したのか口をとがらしていた。
「さて、なんだか飯のことの話になったら腹が減ってきた。今から魚を釣るのはめんどくせぇから先に非常食から食おうぜ。」
そういってカッターを泊めてある方向へ向かおうとする。
「そ、そうですね。」
理由はよくわからないが歯切れの悪い返事だ。
特に気にせずカッターまで歩いていく。
さっきまで雲一つない青空に雲が増えてきた。
カッターに乗ろうとしたときに振り返るとイロはさっき話していた地点にいた。
「おい、さっさと来いよ。こんな時に一人で沖までカッター走とかはしたくねーよ。」
そう声をかけるが聞こえていないのだろうか、下の方を向いている。何か怪しい。
遠くから呼びかけてもらちが明かないのでカッターから降りてイロの方に向かう。
「おい、もしかして何か隠してるんじゃないか?」
「か、隠してなんかないですよ。何も、司令が怒りそうなことなんて何もないですよ。」
「俺が怒りそうなことなぁ。この状況からだとすると...。」
もしかして
「...盗み食い?」
「ぎくっ。」
わざわざ図星ですよっていう擬音をありがとう、そして帰ったらお仕置きだね。どうしてやろうか?
「ちなみに何を盗み食いしたんだ?」
怒らずに聞く、俺は優しいからな。見るものすべてがその笑顔に立ちすくむような素晴らしい笑顔で。
「そ、その、全部、です。」
「全部だぁ!!あれ、普通に腹が膨れるように3食喰っても2週間分はあったのにか!最後に交換したのって先月だよなァ。それを1か月もしないで食い切っただと!」
キレた。
実質なにもしないでいる漂流計画がパーだ。
計画の前提であった食料の備蓄が無くなったのは致命的だ。
「非常食ってなんのためにあるか知ってんのか?非常時に食うもんだぞ。非常時ってわかるか?お前の甘味不足になったときじゃないんだぞ。飯が食えるかわからないときなんだぞ!」
「だって司令が3時のおやつ禁止にするから。」
「アホ、あれは罰だ、俺の責任はねぇ。てかおまえおやつ抜きって言ってんのに裏でイミヤのパクって食ってたりしたろ!あいつ涙目になってたぞ。」
あのときは涙目を必死に隠そうとしてたのがあまりにも可哀そうだったので持ってたチョコをあげた。
「べ、別に要らねぇし。」とかいいながらしっかり抱えて隠してたのはなんだかほほえましかったなぁ。あれ溶けてそうだけど。
「だってヒグレはガード高いし、ふれよはすぐ食べちゃうんですよ!」
しょうがないじゃないですか!とでもいうような口ぶりで言い訳を話す。
「お前は我慢するということをしないのか!あとそもそも人から盗るな!」
とんでもない言い訳が出てきて頭を抱える。
こいつのお菓子に抱える情熱はイヨにも負けてないわ。
「はぁ、あれは食事だぞ、それをお菓子の代わりになるのか?」
「全然なりませんでした、おやつ抜きのストレスのせいかその代わりたくさん食べられましたね。」
「はぁ~~~。」
深いため息をつく。
あんだけ食ってその感想かよ。
今後のこいつへの指導方針とパーになった漂流生活についての計画をどうしようか頭を抱えた。
あとがきで今まで出てきた艦一覧でも
イヨ 第14號海防艦
イロ 第16號海防艦
イミヤ 第138號海防艦
ヒグレ 第190号海防艦
ふれよ 第204號海防艦
チポーラ シマロン級補給艦 一応サンガモン級航空母艦の改装前と同型 多分もう出てこない
ちなみに第14號は対馬と一緒で国府への賠償艦でした。
なお第14號はその後中共に鹵獲され武昌と名付けられ運用されてました。