次はもうちょい早くしたいが暫く忙しいので確約出来ない……。
出来る限り頑張ります。
2019/08/11 追記
セイバーの台詞の一部を変更しました。
キャスターの工房に戻り術式が続けられている奥へ静かに進むと、間桐桜の心臓……の周りが凄い事になっていた。
心臓は胸から30㎝程上に浮かび、ソレを取り囲む様に立体的に周囲を魔法陣が覆っている。キャスターの方を見ると部屋を出る時まで被っていたフードを外して大量の汗を流しながら心臓を睨んでいる。
手元の心臓を睨みながらこちらを見ずにキャスターが口を開く。
「戻ってきたのなら手伝う準備をしてくれるかしら」
「ん? 何か手伝える事があるのか?」
「この虫、忌々しい事に物理的に心臓に住み着いている以外にも霊的なパスにまで寄生して魔力を吸い上げてるのよ。更に心臓に何か別の異物を2つも埋め込んで……物凄く腹立たしい」
「……それはまた……」
「いくら私でも物理的に切り離すのと霊的に切り離すのを同時には出来ないわ。だから物理的な部分を貴方がやってちょうだい」
「えぇ……そんな繊細な作業は出来んぞ?」
「術式を続けろって訳じゃないの、もう直ぐで必要な工程を自動的に行う陣が完成するから魔力を注いで維持して」
「……魔力を流す割合は?」
「貴方がさっき外で使った魔力の1/10を20秒間隔で流して、多すぎても少なすぎてもダメ。一定間隔で一定量を流して」
「(エアロを20秒間隔で使う感じか)それなら多分いけるかな」
「消毒が済んだらこっちへ」
術式が始まる前にキャスターが用意していた陣の上に立ち魔力を少し注いで起動。所謂除菌の魔法陣らしく、汚れも落とせる。
事が済んだら絶対に教えてもらおうと頭の片隅にメモしながらメインジョブを【白魔導士】サポートジョブを【赤魔導士】に変えてからキャスターの隣に立つ。
「両の手で抱え込む様にして……私の手に重ねるように……そう、良いわ。最初はこちらからもサポートするから魔力を流してみて」
【ケアル】を使う感覚で両の手に魔力を留めると魔力が吸い取られるように抜けていく。まるでぬるま湯から手を引き抜くような感覚。
「悪くないけれど魔力が少し多い。もう少し抑えて」
多すぎるか……ならバフの『バファイ』とか『バエアロ』位でどうかな? と思いケアルよりも少し少ない程度の魔力を両手へ。
「……うん、良いわ。これを20秒間隔、魔力は持つかしら?」
「大分持つけど……素のままじゃ辛いから別のを併用して凌ぐかね」
「別の?」
「魔力回復促進って言えばいいのか? とりあえず……『朱と生命の泉』『対価と世界の法則の歪』『エーテルの輝きを此処へ』【リフレシュ】」
OK、20秒も間隔があれば間に『リフレシュ』を挟んでも問題ないな。後は集中力が続くかどうか。
「……思う所はあるけれど、今はそれは置いておきましょう。そのまま続けられるわね?」
「大丈夫、6時間位なら維持できる」
「結構。1時間以内に終わらせるから集中しておきなさい」
そう言うとキャスターは奇妙な言葉……早送り中の動画の様な声を上げながら体から溢れた薄っすらと光る青い帯を両の手に纏わせる。帯は腕の周りを動きながらやがて形を変え文字になり、文字の帯はキャスターの手を離れて間桐桜の心臓を包み込んでいく。
心臓を包んだ帯はそれだけにとどまらず心臓と胴をつなぐ血管、そしてそのまま体の中へ入り込み間桐桜の体は内側から胸を中心に青く発光しはじめた。あまりの変化に思わずキャスターへ問いかけたが「何も問題ないわ」の一言で質問を終わらせてくる。
口を噤み魔力を流す作業へ集中する。どの位そうしていたのか分からないが気が付けば間桐桜の体は余す所無く光っている。
「まるでUFOみてぇだな」
「無駄口を叩くのも良いけど魔力の供給は怠らない様にね」
「あいあい」
暫く魔力を流す事を続けていると結界から侵入があった事が分かる。どうやら虫の第二陣が進行してきたらしい。再び作業に集中しようとすると、いきなり光っていた彼女の体が細かく震え始め俺の両手に収まっていた心臓が突然肥大し始めた。
「おいおい! キャスター! これはどうしたらいい!?」
「そのまま魔力を維持してちょうだい。もうすぐこの子のパスと寄生虫を引きはがせる。そうなれば最後の仕上げを残すのみよ」
「ははぁ、さては虫の進行が来たのも焦って援軍を呼び始めたって事か?」
「おそらくそうね焦ってるのでしょうね。でも、ここまで陣と術を構築し終えてる以上、確実にこの虫は潰すわ」
言い切ったキャスターをよそに心臓はどんどん大きくなり遂にはサッカーボール位の大きさにまで膨らんだ。
まるで破裂寸前だと言わんばかりの膨張、心臓が鼓動しているかも怪しい程に張りつめている。物理的に支えている訳ではないのに命の重さだと主張するようなソレを抱える自分の両手がとても重く感じられる。
今まで幾つもの命を、動物を、亜人を、敵を、勿論人も……前の世界で当たり前の様に斬り捨てて来たモノがとても重たく感じられる。
日本に居るからだろうか。それとも少しの時間でも平和を体感したからか。
あの場所では当たり前だった事がココでは当たり前じゃなくて……、こんな人の命を支えてる場面だというのに考えてしまう。普通って何だっけ。
考えたくない。自分が如何に歪んでいるかを晒されている気分だ。首から下に嫌な汗が流れる。
雑念を振り払う様に目の前の作業に集中する。集中……集中……集中……………………。
「これで終わりよ」
キャスターがそう呟くと目の前の肥大した心臓が震え、表面が揺れたかと思うとまるで水の中から物を取り出すかの様に心臓から虫が引きずり出された。頭に人の顔が付いた虫。
人面犬なんて言葉があるが、まるでその虫版。見た目は尻尾が長いオタマジャクシで頭に人の顔があり頭は精々3~5cmだが尻尾が長く全長20cmはありそうだ。
こんなのが自分の心臓に住んでると想像したら思わず顔をしかめてしまう。そうやって虫を見ているとあろうことかその虫が啼いたかと思ったら人の言葉を喋りだした。
「カァァッ! 返せ!返せ!儂の躰ッ!!!!」
「虫になんて喋りかける趣味は無いのだけれど……それでもあえて言ってあげるわ。死になさい」
「儂のからっ………」
キャスターが指を鳴らすと同時に虫の頭は潰れ、尻尾は力なく重力に従い垂れる。潰れた頭からは何処にソレほど収まっていたのかと思うほどの血液が溢れて床に血溜まりを作る。
まるでゴミをゴミ箱へ投げ捨てるような、無価値な物を部屋の隅へ投げ捨てるような仕草で心臓に巣食っていた虫を放り投げるとキャスターは直ぐに間桐桜の心臓を俺の手から受け取り処置を始めた。
心臓を片手で支えたキャスターがもう片方の手を無造作に心臓へ突っ込む。中々にショッキングな絵面に面食らっていると何かをつかみ取ったキャスターはその手を心臓から引き抜いて見せた。
引き抜かれた手に握っていたものは3cm程の金属片と……リレイザーの小瓶!!!!
直ぐに虫へと視線を向ければソコにあったはずの死骸は無く血は工房の外へと続いている。
「キャスター!虫が生き返って外に出た!」
「何を……この小瓶っ!!!?」
キャスターが自分の手に収まっている物の正体を知って叫ぶと同時に、工房の外から断続的に大きな破裂音が聞こえてきた。
音を頼りに工房を出て向かう。するとソコにはアサシンと対峙している多数の虫が集まって出来た蜘蛛が居た。
ある意味予想していた事の為、迷わず魔法を唱える。
「『朱と生命の泉』『対価と世界の法則の歪』『エーテルの輝きを此処へ』【ファイア】!!」
蜘蛛の顔面を焼いたファイアだが直ぐに別の虫が集まり蜘蛛の顔を構築し始める。
それを好機と見たアサシンが長い刀を正眼に構えたまま蜘蛛へ近づいたかと思うとアサシンの姿が消え、先ほど居た場所から蜘蛛を挟んだ反対側へと移動していた。
アサシンが刀を振りぬいた所作から正眼に構えなおしながら蜘蛛へと向き直ると同時に蜘蛛の左半身にある脚が切り落とされて地面へと転がる。
一瞬の動きで複数の脚を切り落とすという離れ業を行ったアサシンは、それが当たり前だと言わんばかりに油断なく蜘蛛を見据えている。
「アサシン! 対になる形で位置取ってくれ!」
「心得た」
施術用の術衣をはぎ取り、影から両手杖を取り出す。
「まずは……『朱と生命の泉』『対価と世界の法則の歪』『エーテルの輝きを此処へ』支援四連!!【プロテアV】【シェルラV】【ストンスキン】【ヘイスト】」
淡い4色の光が俺とアサシンを包む様に渦を巻き体へ吸い込まれていく。アサシンが驚いた顔で視線を少しこちらに寄こしたが目線は蜘蛛から外れていない。
「アサシン! 今の俺は補助型だ! 戦力としての頭数にはしないでくれ!」
「承知」
小さく返答をしてアサシンは滑る様に地面を進み顔と脚が出来上がりつつある蜘蛛の左側の脚を再度、先ほどよりも深く切り落としていく。
俺はその動きに合わせて蜘蛛を中心にアサシンとは反対側へ。ついでに嫌がらせの様に蜘蛛の顔へ向けて『ファイア』を飛ばす。
「ふむ……体が軽い。奇妙な感覚よな……悪くない」
その一言と同時にアサシンの踏み込む速度がさらに鋭くなる。白魔導士じゃアサシンの動きについていくのがギリギリだ。
何度か蜘蛛を中心に互いの位置が入れ替わる様に動き回っていると蜘蛛がその身を震わせた、と思った瞬間その身が弾けた。
「む?」
「っいぃ?!」
思わずギョッとして足が止まった所に弾けて出てきた小さな虫の群れが俺とアサシンそれぞれに向かってくる。
虫一匹一匹の攻撃は何てこと無いが兎に角絵面が最悪だ。心象的にはゴキブリが集団で向かって来てるようなもので思わず逃げてしまう。
というかメイン白魔導士だと避けきれん。【ストンスキン】使ってるから多少のダメージは無効化されてるので今の所無傷だがこのままだとマズイ。
「だー! 鬱陶しい!!」
思わず手に持った杖で虫を掃おうとすると杖の動作に合わせて甲高い金属音が鳴る。
虫は群体の大半を潰され此方から一定の距離を取り俺を囲んでくるが、それよりも先ほどの音が気になった。試しに杖を再度振ってみる。
するとやはり金属音が聞こえる、目を凝らして見るととても薄くだがATフィールドが杖の先端に発生しているのが見える。
碇夫婦が協力してくれてるのだろう、ラッキーと考えながら杖を構えて虫の居る場所を薙ぐと、ATフィールドは虫の居る場所諸共をまるで地雷が爆発したかのような爪痕を残して虫を潰す。
「おぉ……便利~」
効果範囲と使い勝手が良いATフィールドに思わず感嘆の声を口走りながら杖を振るう。杖を振るう度に目に見えて虫が減っていくのを見て倒すのも時間の問題かと思った時、寺を覆う様に設置していた『シアリングワード』が異変を知らせて来た。
「アサシン! 結界が持たない! 虫を押しとどめる効果を停める前にキャスターに念話で連絡! 寺自体に防御用の魔術を展開して貰ってくれ!!」
「それなら心配はないわ。既に構築と展開は終わってる……虫は寺へ侵入出来ない。私の患者と総一郎様に虫ケラなんぞを近づけるものですか」
俺の声に答えるかの様にキャスターが中庭に上空から降り立つ。
「よし、じゃあ防衛は止めてアサシンの移動範囲の緩和だけを維持するように変更。『朱と生命の泉』『対価と世界の法則の歪』『エーテルの輝きを此処へ』変異せよ【シアリングワード】!!」
杖を地面へ突き刺し魔力を流すと寺の壁に押し寄せていた虫達がなだれ込んでくる。そしてソレを待っていたと言わんばかりにキャスターが杖を振るうと虚空から光の玉がにじみ出て虫に向けて閃光を放つ。
光は虫と地面を焼きながらほんの数秒で外周を一周するとキャスターの手元へ戻ってくる。上空にあった時は数メートルの大きさの光の玉はキャスターの手元に来る頃にはまるでビー玉程度の大きさにまで姿を変え手のひらの上で浮いていた。
合わせてアサシンもすでに動いていた。キャスターが操る光の玉から逃れた虫を的確に切り捨てて常に移動している。
「よし、キャスタ、バフをかけるぞ。支援四連【プロテアV】【シェルラV】【ストンスキン】【ヘイスト】」
「あら、ありがとう」
「前衛に後衛……んー、俺も前に出るかな。キャスター、俺が着替えてる間のアサシンのサポート宜しく」
そういってジョブを『白魔導士/赤魔導士』から『ナイト/戦士』へ切り替え影から武器と防具を取り出し着替える。
こうやって周りが戦ってる時にもそもそと着替えてるとどうしてもヴァナディールでの装備の切り替え技術をモノにできなかったのが悔やまれる。本当にアレはどうやって着替えてたんだろう。
鎧と具足を付け終えた時に後ろから大きな音と共にライダーがボロボロの姿で吹き飛ばされてきた。直ぐに駆け寄りライダーを抱えて後ろを見るとソコには虚ろな目をした間桐桜が立って居た。
「ライダー、こいつを飲め。ポーションだ。」
ポーションを飲んでよろけながら立ち上がるライダーを背に隠しながら手甲を付ける。
「んで? 何でお前さんのマスターはおこなの? 何かやらかした?」
「……桜の躰に虫が入りました」
「……は?」
ライダーの歯ぎしりが聞こえる。
「あの虫が! 目を離した隙に桜の躰を乗っ取りました!!」
「私が……何より桜を優先すれば防げたのに……っ!!」
そっかぁ……。あぁ……嫁に似た女が泣いてる……ムカつくなぁ。
「よし、んじゃ……やるかぁ」
右手にエクスカリバー、左手にイージスを構えて大きく息を吸い。気合を入れる。
「キャスター! アサシン! もう少し虫は任せるぞ!」
答えは聞かずに間桐桜に向けて走り出す。桜が右手を掲げると彼女の足元の影が勢いよく此方へ伸びてくる。
それを左へ跳躍する事で避けながらそのまま勢いを殺さず駆ける。彼女が右手を此方へ合わせて何かを呟いたかと思うと黒い渦の様なものが空中に現れソコから帯のようなモノが飛び出してくる。
此方にぶつかるのに合わせて『シールドバッシュ』を叩きこみ帯を弾く。追撃してくる帯をエクスカリバーで切り伏せて走る。彼女が下がろうとしているがソレを先読みして彼女の後ろへナイトの十八番は放つ!
「【ホーリー】!!!!」
「がっっ!!?」
唐突に背中に直撃したホーリーに対応できなかった彼女は此方へ向けて吹き飛ばされてくる。これを見逃すほど俺は馬鹿じゃない。冷静に飛んでくる彼女を見ながらエクスカリバーを逆手で左手に移して腰を落とす。
角度良し。距離良し。踏み込むと共に腰を捻り力を右手へ伝える。今必殺の……
「ギガトンパンチ!!!!」
「~~~~~っっぶぇ!!!!」
ただのパンチだが彼女の胃の辺りを正確に抉る様に拳を突き入れる。すると彼女の嗚咽と共に虫が吐き出される。直ぐ様ソレ等を踏み潰して彼女の様子を見ると目に光が戻っていた。
「おい、俺が分かるか?」
「せん……せい?」
「腹が痛むだろうけど我慢してくれな、全部終わらせたらちゃんと治してやっから」
「はい……」
「ライダー、今度こそ守ってやれよ?」
「えぇ……間違いなく」
「うっし、それじゃあ俺は虫退治でもしますかねぇ【プロテスV】【シェルIV】」
肩を回しながらアサシンとキャスターの方へ向かう。二人が戦っていた虫の群体はいつの間にやら巨大なムカデに姿を変えていた。
アサシンがムカデの脚を切り飛ばし、キャスターの光の玉が甲殻の一部を焼くが怪我の部分の肉が泡立ち傷着いた場所はものの数秒で元通りに復元。これは中々面倒な相手と見える。
「アサシン、キャスター。俺がお前らの盾になるからキッチリ決めてくれよ。【挑発】!」
俺が挑発のアビリティを発動させると、それまで相手していたアサシンやキャスターを無視するかの如くムカデが俺に向かって一直線に突っ込んでくる。
「【パリセード】」
ムカデの突進を受け、後ろへ押されると同時に右手に構えたエクスカリバーをムカデの顔に向けて突き入れる。刃は甲殻の抵抗が殆ど無くずぶりとその身に沈み込む。
痛覚があるのかムカデは顔を仰け反らせたかと思えばその勢いのまま体を俺へ向けて叩きつけてくる。多分怒っている。
この虫は俺に対して怒りを感じている、それはヴァナディールの冒険の最中何度も感じた感覚。
知ってるぞ、その無機質な瞳から怒気が俺に向けて放たれているのを。
もっと怒れ。もっと。
「おぉおお!! 【セプルカー】【神聖の印】【ホーリーIII】!!!!」
聖属性の光がムカデの顔を焼く。痛みに躰をくねらせながら此方へと執拗に攻撃をしてくる。
ソレ等を丁寧に受け止め、時にいなし、受け流す。
執拗に此方を攻めるムカデ相手に時々【挑発】を入れながら、頭の触覚を、足を、顎の一部を切り落とす。
その度にムカデは声を荒げ身を震わせ傷を癒して突撃してくる。アサシンとキャスターに都度指示を飛ばしながらムカデの注意を引くことに専念。
闘いが20分を超えようとする頃、ムカデの躰を斬った後ついに傷口が塞がらずに残り始めた。
「【挑発】!! からの【ディフェンダー】【ケアル】!!」
自分の体力を回復させながら観察していると、ムカデに付けた傷から奴の体液があふれ出し地面へまき散らされ刺激臭が立ち込めている事に気が付いた。ムカデとのやり取りも終わりが近いと見える……。
自爆して体液をまき散らされたらかなわんな……。
「キャスター、こいつが悪あがきをしないとも限らんから押し切るためにデカいのを用意してくれ! アサシンは俺と足止め!」
「心得た」
「注文が一々細かいのよっ!!!!」
キャスターが文句を言いながらも空中から光弾を放つ。単身で空中飛行とか凄いと思いながらムカデに『シールドバッシュ』を決めてスタンを取る。
スタンで足が止まったムカデにアサシンが剣を振るい脚を切り落としていく。一層刺激臭がきつくなるがこれでムカデの機動力が大分下がった。
後は注意しながら攻撃を往なしてキャスターの準備を待つ……と思っていたが背後の違和感に気づいて後ろを振り向くとライダーが別のサーヴァント2体と交戦していた。
頭に血が上る。怒りのままにアサシンに檄を飛ばす。
「アサシン! このクソ虫の残りの脚も切り落とせ!! 今すぐ!!!!」
「承知。秘剣"燕返し"」
ムカデを挟んで反対側に居たアサシンがムカデから距離を取り構えを変えた……かと思えば凄まじい速度で駆け抜け俺の隣へ現れた。すると斬られた事に今気が付いたかのようにムカデの残っていた脚がすべて切り落とされていた。
それを見て直ぐにライダーに向けて走る。
「てめぇ! 何やってんだコラァ!」
落ち着いて見ればコイツ遠坂のサーヴァント、それにアーサー王! 主人公ペアのサーヴァントが何で?! とりあえずライダーから離れろや!
「【フラッシュ】!」
「むっ!」
「くっ! これは!?」
『フラッシュ』で視界を奪われたアーサー王に対して駆け寄る勢い其のままにドロップキックをお見舞いし、もう一方にはドロップキックから起き上がる時に握った砂を投げつけ牽制してから【スウィフトブレード】を叩きこむ。
くそ、アーチャーなのに双剣で『スウィフトブレード』を捌くとかマジか! 一撃毎に武器を破壊するが次の攻撃を入れるまでには新しい剣を取り出して対応しやがる。やりづらい事この上ない!
一旦アーチャーから離れてライダーにケアルを掛けつつ、自分は『ヤグードドリンク』を飲みながらアーチャーと向かい合う。
「おいコラ、お前等生徒の所の奴だろ。本人達は高見の見物か?」
「そう言う貴様は何だ? 凛や衛宮士郎の教師だとは知っているが今の魔術やその武器や防具、それにあの時見せたアレ。とても一般人とは到底思えんが?」
「人には色んな事情があるんだよアーチャー坊や。後、俺は本来こんな事をするつもりも無ければ関わる事すらするつもりが無かったんだよ。この状況自体が想定外の事態だ」
アーチャーとにらみ合っているとドロップキックで吹き飛ばしたアーサー王がゆっくり歩いてアーチャーの隣へ立つ。
「少し待てアーチャー、そこの……名は?」
「初めまして……名前は中真有香。この聖杯戦争とか言う成功率0%の魔術儀式に巻き込まれて無職になった可哀そうな男だよ」
「中真有香、貴殿のその恰好を見た所騎士の様に見えるが何かの組織、あるいは軍に所属しているのか」
「いいや、所謂フリーって奴だ。装備に関しては気にするな。王様」
黙り込むアーサー王、そして隠れて双剣の一本を此方へ投げてくるが見えてるんだよ! イージスで投げられた剣を弾くと同時に後ろからライダーが飛び出しアーチャーへ接近する。
それに合わせて俺も前へ出る。アーサー王が俺の足運びから最適なタイミングで剣を振るがソコに合わせてイージスで防ぎ。エクスカリバーで切り上げる形で振るうとまるで急に相手の力が上がったと錯覚するように相手の剣の勢いが上がり、抑えているイージス事叩き切ろうとしてくる。
思わずエクスカリバーでも相手の剣を抑え込むがあまりの力に押しつぶされそうになり堪らず離れる。追撃に備えてアーサー王を見るが自分の剣をまじまじと見るだけで此方へ来る気配が無い。何かに戸惑ってる?
「かーっ、何だその力。この盾で受けたのに腕がちょっと痺れたぞ」
「……私の剣を受けて痺れたで済むその盾の頑強さを褒めるべきか、それとも貴方の技量の高さを褒めるべきでしょうかね」
「何か高評価貰ってるけど奇襲掛けた事は許さんから」
「そうですか、我々には我々の目的があるので衝突するのも仕方ないでしょう……ですが貴方にはどうしても聞きたい事がある」
「王様が俺に聞きたい事? 聞かなくても世間の事なら知ってるんじゃないのか?」
「貴方が持つその剣の事だ」
アーサー王が左手で俺のエクスカリバーを指さす。
「貴方の剣と私の剣がぶつかった時、この剣の結界がほどけ掛けた……結界を破るなら分かるがそうではなく……まるで抑え込む事が出来ない様に内側から解けそうになった」
「ほーん? で?」
「……その剣は誰の剣だ……星の聖剣であるこの剣が反応する以上、形こそ変わっているが私の知る者の剣であろう。であれば貴様は盗人という事になる。誰の剣を盗んだか答えてもらおう」
そう言い放つとアーサー王の全身から風が吹き荒れ目つきが変わる。思わず身構えたが次の瞬間、俺は後方へ吹き飛んでいた。
吹き飛ばされる直前に見えたのはアーサー王が俺の目前に踏み込み聖剣をイージスに叩きつける所だった。