祝福と目の覚めない悪夢   作:タラバ554

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2020年もよろしくお願いします。


16話 切っ掛け

セイバー陣営の『the勘違い☆ 桜を取り戻せ!』騒動の翌日。結局間桐桜を引き渡すことは叶わないままアーサー王にはお引き取りしてもらった。

あの後再確認の為にレリエルへ問いかけたら本人の声まで聞こえるし……俺の体って本気でどうなってんの?

取り合えずアーサー王には無理やり納得して貰って翌日……つまり今日、セイバー陣営の本拠地。しろう君宅にお邪魔する事になっている。

 

昨日斬り飛ばされた腕はキャスターに補助して貰って『ケアル』を何重にもかける事できっちり繋がった。その時にキャスターの魔術を見せてもらったんだがまるで精密機械を扱う様に見えた。

エネルギーに当たる魔力を土地や自分から抽出しソレを元に魔術を組み、基盤となる魔法陣を書いてそこへ様々な魔術を上乗せする。見た感じ魔法陣はスターターキットの様な扱いで其の上に個々人が使用する魔術がある……と思う。

俺がヴァナディールで覚えた魔法よりも難易度が高い分、柔軟性に特化。その分扱いが個人の資質に左右される技術体系になってるんだと思う。

寝る前に少し試したけど正直扱いが難しいから覚えるとなると数年単位でやらないと無理そう。単純な外傷に関しては『ケアル』を使った方が早いけど今回みたいな寄生虫なんかには魔術の方が向いてるっぽいから覚えたいな。

一応『ポイゾナ』や『ウィルナ』はあるけど、一度感染してからじゃないと使えないのがなぁ……予防が出来るなら尚良いんだけど。

 

そんな事を考えながら昨日は葛木の勧めで寺に泊まり、治療してから就寝。住職達は死んで時間が経っていなかったので全員蘇生してある。

因みに血みどろで凄惨な事になっていた和室はキャスターが魔術で綺麗にしてくれてた。ああいった便利な技は是非とも覚えたい所。

 

朝食を取って色々と情報を整理し終わりお昼過ぎに寺を去る事にした。キャスターは聖杯戦争を降りる事に賛同してくれたし、色々と情報を渡しておいたから暫く葛木と一緒に冬木を離れてくれるそうだ。

ちょい前の職場の同僚達には負担を強いる事になるがそこは仕方ないと思うことにした。人手が足らなくなる事が重なるなんてのはよくある話なのできっと彼等なら頑張ってくれるだろう。

ライダーと並んで歩きながら互いの過去を話す。互いの家族の事、住んでた場所の事、食事や趣味等。

話を聞く事で妻と彼女が別人だという事を改めて確認しながらバス、電車といった公共機関を乗り継いでライダーが置いてきた俺の車がある場所まで到着した。

いざ運転しようとすると彼女が運転したいと言ってきたので運転を任せてノートPCを取り出し、Excelを起動して起きた事を時系列で並べていく。

 

この世界のヤバさに気づいたその日の夜にシンジ主導でライダーに拉致られて一晩に数回致して、翌々日には教職を辞める準備をして離職願いを出したらその日の晩にランサーとアーチャーの戦闘を目撃。

巻き込まれて殺害されるもリレイザーで九死に一生を得て冬木から逃げ出す直前に色々妨害されて逃げ回ってたら、又ランサーから殺されたと思ったらライダーに浚われ間桐家にご招待されて虫爺が出て来たが如何にか逃げ出した。

そっからこの聖杯戦争が俺の知ってる通りに動くならそんなに長い期間じゃないから態々職を辞める程じゃない事に気づきながらも後の祭りだと思って諦めて、色々ありながらも引き継ぎが終わったその夜に遠坂さんから襲撃されたと思ったら自宅に戻ってたり。

キャスターにファミレスでばったり会うが世間話で乗り切って車で県外へ脱出。その日の夜にライダーが風呂へ突撃して来た所で思う所があって聖杯戦争への横槍を入れる事を決定。

朝になって冬木に戻り間桐桜を救い出す仕込みをしてから葛木と連絡を取って寺へ。その日のうちに間桐桜を家から離す事に成功したのでそのままライダーに連れてきてもらい治療を開始。

なんやかんや有りながらも寄生虫の除去と蟲の駆除が完了。アーサー王とアーチャーの襲撃もどうにか撃退して翌日……つまり今日は経緯と間桐桜の安否説明と……。

 

一通り書き出してみて何だが……怒涛の一週間だな。この一連の出来事がたったの一週間で起こってるってのが凄いわ。

溜息を一つついてから頭を切り替えてこの後起こる可能性がある物を覚えている限りリストアップしてみる。

 

・傲慢王がアーサー王を寝取ろうと画策する

・筋肉モリモリマッチョマンが主人公をコロコロするが自前で蘇生(?)

・間桐桜のヤンデレ(?)

 

大きく分けてこの3つか? 1つ目と3つ目はそんなのがあったなー位だしエロルートは全然分からん。最悪こっちに被害が無いなら無視しちゃうのもアリか。

ついでにドローンから送られてきてる映像データを見てると何処か違和感がある。しばらく眺めていたが違和感の正体が見えてこないので複数の興信所から上がって来た報告書に目を通す。

報告書の内容と映像を照らし合わせながら裏付けを取っているといつの間にか衛宮宅へ着いていた。全く揺れることが無かったからめっちゃ集中してた……ライダーの運転技術の高さを改めて噛みしめながらPCを閉じて影に放り込んでから車を降りる。

ずいぶんしっかりしたお屋敷に思わずため息を吐いているとライダーがさっさと門を潜ってしまったので、慌てて後を追って玄関まで進むと既にインターホンを押してた。聞こえてくる声とライダーがやり取りをしてくれているので任せてしまおう。

セイバー組に行う説明内容をもう一度頭の中で纏めながら暫く待っていると玄関が開き、赤毛の青年が出迎えてくれた。

 

「えっと……こんにちは。ライダー、それと……中真先生……元先生?」

「こんにちは、シロウ」

「こんにちは。先生はもう止めちゃったから中真で良いよ。衛宮士郎君……で良いんだよね?」

「はい。それで……中真さんが桜の現状を説明してくれるってセイバーから聞いてるんですけど」

「うん、ちゃんと説明するけど……その前に君の後ろに居る子を如何にかして欲しいかな」

「へ? 後ろ?」

「お久しぶりね。中真、元、先生?」

 

士郎君が後ろを振り返ると彼の後ろから俺を睨みつけている遠坂凛が仁王立ちしている。衛宮君が出迎えに来た直ぐ後に奥から出てきて俺を睨んできた。

多分間桐桜の件以外にもホテルでのやり取りが原因だろうけど……喧嘩腰で来るかぁ……。若いなぁ。

 

「あの夜ぶりかしら、元先生?」

「あぁ、ホテルで君に気絶させられて以来だね。大分びっくりしたけど……まあこの際過去の事は水に流そうか」

「ええ、そうね……取り合えず上がったら? 桜の事、きちんと説明してくれるのよね?」

「勿論。その為に来たんだ」

 

私怒ってますと言わんばかりに厳しい目つきで此方を睨んでいた遠坂さんが家主ほっぽいて上がる許可をだしたのはちょっとびっくり。一応視線を衛宮君の方へ向けて確認すると快く迎え入れてくれた。

靴を脱いで玄関から上がると綺麗に拭きあげられた廊下を通り障子を開けて居間へ通された。するとそこには白シャツにロイヤルブルーのプリッツスカートを着用したアーサー王が鎮座していた。

思わず足を止めて数秒程凝視してしまったが、なかった事にしてテーブル周りに置かれている座布団へ。

 

 

 

アーサー王の対面に座り、衛宮、遠坂、ライダーが座った事で早速話を切り出す。

 

「さて、それじゃ先ずは間桐桜さんに関してで良いかな?」

「ああ、桜が今どうしているのか教えてくれ」

「結論から先に言うとこの場に居る」

「どういう意味だ?」

 

士郎君が怪訝な顔で此方を見てくる。居ない人間が実は居るとか言われりゃ当然か。

証明する為に立ち上がって全員が見える位置に移動してから影へ手を突っ込み、ノートPCを取り出して見せる。

 

「先生もある意味君たちと同じ、普通では無い側の人間で間桐桜さん……もっと言えば遠坂凛さんの妹さんは今、先生の影の中に居るよ」

「……それは脅しって訳? 貴方を倒すと桜は取り戻せないって事?」

「遠坂さん……何で君はそんなに喧嘩腰なの? 前会った時も先生魔術師じゃないって言ってるのに不意打ちで意識刈り取るし、挙句先生を部屋に連れ込んで日焼けしたガタイの良いあんちゃんと二人して俺に何かしようとしてたし」

「んなっ、何でそんな誤解される様な言い方するの! っていうか実際魔術師じゃない!」

「だから、魔術師じゃないっつーの。全部が全部教えはしないけどちゃんと説明するから座りなさいな」

 

本人も気づかない内に腰が浮いている。熱しやすく視野が狭い。若いから当たり前っちゃ当たり前だけど大丈夫かいな。

見かねた士郎君がお茶と羊羹を出してくれた、お茶請けまで常備してる高校生かぁ……流石主人公だな。とか思ってたら士郎君から質問が飛んできた。

 

「なあ、中真……さん。桜が遠坂の妹ってどういうことだ?」

「ん? え? もしかして聞いてない?」

 

士郎君の反応に思わず登坂さんを見ると、観念したように肩をすくめてからため息交じりに彼女達の関係性を士郎君に話しだした。

 

「言ってなかったけれど、桜と私は姉妹。私が姉で、桜が妹。あの子は小さい頃に間桐へ養子に出されたのよ」

「全然知らなかった……信二の奴も何も言わなかったし、桜だって……」

「別に言いふらす様な事でも無いでしょ。知ってるのは家族位だと思ってたんだけど……何で貴方は知ってるのかしら?」

 

咎める様に此方を睨みつけてくる。隠す事でもないので堂々と答えるが。

 

「あのさ……ウチの学校の先生は全員知ってるぞ? 君達姉妹の事」

「へ?」

「だって普通に考えたら不自然過ぎるだろ? 遠坂、間桐、両家共に子供が居て、どちらも経済的に何も問題が無い。世間一般的に考えればそのまま自分の家で育てるはずの所を態々養子に出すなんて何かしらの事情があるなんて事は大人なら直ぐに気が付く。

 君達二人の事は大人たちの間では所謂公然の秘密になっていて、君達姉妹の事は結構な大人が目を見張ってるよ? だからあの日も普通の大人として対応してたのにあんな事するし……全部君のせいでは無いけどおかげで退職ですわ」

 

当人しか知らない秘密と思っていた事がまさか大人が当たり前の様に知っていった事に頭が真っ白になっている様なのでさらりと退職理由の一旦を遠坂さんになすりつけつつ話を元に戻す。

 

「ちょっと脱線したから話を戻すけど、間桐桜さんは俺の影の中に居る……でもって今は影の中に居る奴と意気投合してるみたい」

「?? 他にもあんたの影の中に人が居るのか?」

「んー……大体そんな感じかな。昨日だって本当は直ぐに影から出して王様に渡すつもりだったけど本人が出てこないもんだから仕方なく無理やり帰ってもらったしね」

「へぇ、影の中に人を入れる魔術って初めて見たな。遠坂、こういう魔術ってやっぱ珍しいのか?」

「……」

「遠坂?」

「え? ああ、えっと影の中に人? うーん、触媒の内部容量を拡張するとかならあるけど自分の影をそうするってのは珍しい……のかも」

「そうなのか。じゃあ取り合えず桜を出してもらうか」

「あ、ごめんだけどソレは無理」

「へ?」

「俺が今日説明に来たのはその辺が絡んで来るんだけどさ、本人が出るの拒否してるんだわ」

 

士郎君と遠坂さんが訝しんで此方に目線を向けているが無理なものは無理。便宜上は俺の影に入ってるって事にしてるが実際はレリエルの影(というか本体)に取り込まれてるから出す出さないの主導権はレリエルにある。

その辺りは別に話す必要が無いので本人が出るのを拒絶しているという部分だけを伝えると、当然ながら間桐桜の安全に関する質問が出た。その質問が来るのは想定済みなのでライダーの方を向くとライダーが此方を見ながら頷いた。

 

「シロウ。それにリン。私、ライダーのマスターはサクラです」

 

そこからはライダーと衛宮、遠坂ペアの質疑応答が続く。桜は安全なのか、本当に影の中に居るのか、いつ戻ってくるのか等々。

彼等のやり取りを眺めながら視線を感じて顔を動かすとアーサー王がこっちを見ていた。暫く見つめ合ったが美人に正面から見られると居心地が悪い……。

目をそらして茶を啜っているとアーサー王が質問をしてきた。

 

「中真有香。貴方に質問があります」

「間桐桜に関する事です? それならライダーが「いいえ」……」

 

食い気味に返答が来たことで逸らしていた目をアーサー王へ向ける。

 

「柳洞寺でのあの戦い。貴方との交戦を止めて目的であるサクラを優先させる事は出来たはずでした……ですが、貴方が持つあの聖剣を見たら……考えがまとまらなかった。

 何故私を『王様』と呼んだのか。一目見た時から私の直観が貴方の持つ剣を私の物だと告げて来たのか。その瞬間から頭の中を……いや、心が掻き乱される様だった。

 正常な判断が出来なくなった。思わず貴方の語った剣の入手経路を否定し、その剣は部下の物だと言い張らないと心が張り裂ける程に……。剣を持たない貴方に対しては直ぐ様否定する様な……心が掻き乱される様な事は無い。

 だから教えて欲しい。貴方の持つあの剣は何か、ずっと心に引っかかるこの疑問を解いて欲しい」

 

そう言うとアーサー王が頭を下げて来た。しかもいつの間にか横の会話が止まってこっち見てやがる。

どうしよう……コレは正直予想してなかったぞ……。どこまで話すべきなんだこれ。

うーん、メリットとデメリットを考えてもどっちも特に無い……かな? ライダーやキャスター、アサシンに話した時点で秘密は漏れてる訳だし別に話しても良いんじゃね?

 

「っま、良いか。OK、教えるよ」

 

正直美人にああいう顔されるのって心が痛いんだよね。ソレに剣の中に居るアーサー王も話したがってたし。

 

「あの剣の名前はエクスカリバー。王様、あんたの持ってる剣と同じなのさ」

「―――――!!!!」

「ちょっと待ちなさい!」

 

アーサー王の顔が青くなると同時に遠坂さんが話に割って入ってきた。

 

「色々と言いたい事、聞きたい事があるのはこの際置いておくとして、何であんたがエクスカリバーを持ってるのよ! 現存しないはずの聖遺物を持ってるなんておかしいでしょ!」

「そんな事言われたってアレは間違いなくエクスカリバーだぞ。俺が知り合いと一緒になって約20年かけて復元したエクスカリバー、本人もそう言ってるし」

「復元したぁ!? そんなホイホイ復元できるものでもないし、大体エクスカリバーの欠片だけでも一体どれだけの値段がすると思ってるのよ!」

「へぇ、やっぱ高いんだ」

「当ったり前でしょ! 仮に欠片でも豪邸が建つわよ!」

「ふ~ん、まあ値段の話は置いとくとして」

 

遠坂さんが喚いているが無視する。士郎君、そのまま彼女を押さえておいてくれ。

 

「改めて言うけど俺が使ってる剣はエクスカリバーで、あんたが持ってる剣と同じ名前だし同一存在かもしれない。但しこの世界のエクスカリバーじゃない」

「どういう事でしょうか……」

「んー、俺自身の身に起きてる事だけど何とも複雑怪奇で説明が難しいんよ。なので王様同士で語ってもらうのが早いと思う」

「王同士……ですか?」

「という訳でエクスカリバーさんや」

 

その一言で【マイバック】からエクスカリバーを取り出すと途端にアーチャーが遠坂さんの後ろに剣を構えて現れた。そんなアーチャーを無視しながら剣をアーサー王へ手渡す。

 

「ほい。そいつ、所謂インテリジェンスウェポンだから話してみたら良いんじゃない? その中に王様居るし。ああ、でも男のアーサー王ね」

 

渡された剣を手に取りながら目を見開いているアーサー王。語りかけてる最中なのだろう、感情が顔にありありと出てる。

そんなアーサー王を眺めながら茶を啜っていたら肩を誰かに捕まれた。顔を向けると感情の抜け落ちた遠坂さんがソコに。あ、士郎君が向こうで倒れてる。ライダーさん、そのまま介抱してあげてください。

 

「ねえ、気付いてしまったわ。貴方さっきこの世界のエクスカリバーじゃないって言ったわよね? それに20年……どう考えても貴方の実年齢と計算が合わないと思うんだけど。どういう事か説明してもらいましょうか」

「何で君がそんなに食いつくんだよ……まぁ出鱈目な事言ってる様に聞こえるかもしれないけどさ」

「そうじゃないわよ! あんたが話した事が本当なら並行世界から来たって事じゃない!」

「おん? 並行世界?」

「そうよ! 魔術師の求める魔法の1つ! 第二魔法『並行世界の運営』その一端じゃない!」

「????? 第二ってことは他にも魔法ってあんの?」

「そこから!? あんた本当に魔術師なの?!!?」

「だから魔術師じゃねーし、そんなの知る訳ないじゃん」

 

凄い勢いで捲し立てて来た遠坂さんの両肩を抑えながら座らせる。後、唾を飛ばすな、唾を。いくら美少女顔とはいえ親しくない奴から唾飛ばされても嬉しくねえ。

そっから魔法に付いて遠坂さんが語りだした。

第二魔法『並行世界の運営』

第三魔法『天の杯(ヘヴンズ・フィール)』

第五魔法『魔法・青』

第一は既に世界から消失し、第四は魔術師の間でも不明、第六魔法は使い手が現れると世界に根本的な改変が加わるんだとか。魔術師が根源と呼ばれるものへ到達し習得を目指す、それが魔法。

それを使っているのなら魔術師じゃなく何なのか、と遠坂さんはヒートアップ。

 

「そんな事言われても俺が使ってるのは魔術じゃなくて別世界で魔法ってカテゴライズされてる技術だし、それに第三魔法? 魂の物質化ってのも嫌な事に心当たりあるから案外この世界で魔法って呼んでるだけなんじゃないの?

 それに青魔法って俺は普通に使うぞ? まあこっちの魔法・青ってのと同じって事は無いだろうけど」

 

遠坂さんが陸に上げられた魚みたいに口をぱくぱくさせてるのを見つつアーサー王へ目をやると大分穏やかな表情になっていた。遠坂さんが隣でギャーギャー喚いてるのを聞き流しながら眠気を噛みしめているとアーサー王の腹が盛大に鳴った。

家主の士郎君が『飯にしようか』の鶴の一声で何故か俺も含めて昼飯へと発展。焼き鮭と大根入りの味噌汁は旨かった、さすが家事万能主人公。

食事が終わって満腹になった所で不貞腐れた遠坂さんを放って士郎君と話す。

 

「っで、結局桜は何時帰ってくるん……ですか?」

「あー、別に敬語を無理に使わなくても良いよ? 俺はその辺拘って無いから」

 

身構えてた士郎君はテーブルに頬杖着いて座る俺を見て、一度宙を見上げて頭を掻いた。軽い溜息の後に敬語を取っ払い、素の言葉で話し始める。

 

「じゃあお言葉に甘えて。率直に聞くけど桜を何時頃渡してくれるんだ?」

「うーん、俺も出来れば今直ぐに引き渡したいんだけど中の奴と桜さんがすっげぇ意気投合してるみたいでさ……せめて一言本人から声を」

 

と言ってたら例の音叉の様な音と共に「それ位なら」との意思が飛んできた。何かに太ももを捕まれたので直ぐ様自分の下半身へ視線をやると影から出て来た両手ががっしりと俺の太ももを掴んでる。

無言で士郎君を手招きして現状を見せるとギョッとしていたが俺が片方の手を両手で持つと何か察してくれたのかもう片方の手を持ってくれた。二人して引っ張り上げると影からずるずると這い出てくる遠坂次女。

 

「桜!」

「ただいまです。先輩」

 

一気に二人の世界に入ってるな……両手繋いで見つめ合って。良いんだけどね、ここ士郎君の家だし……でも後ろに居る長女には気を付けなくて良いのかね士郎君。

 

「衛宮君?」

「え、あ、遠坂」

「はぁ……取り合えずお帰りなさい、桜」

「はい、ただいまです。姉さん」

 

明るく笑顔で返答する間桐桜にきょとんとする遠坂さん。あれ? 桜さんってあんなに明るい感じだっけ?

どうやら俺が疑問に感じてる事は遠坂さんや士郎君も同じの様でアレコレと桜さんに質問してる。そんな二人の反応が面白いのか彼女は笑いながら説明を始めた。

間桐家に引き取られて間桐厳戒に魔術師として強制的に訓練させられた事。その影響で髪や瞳の色まで変わった事。とても辛く苦しかった事。

昨日の学校帰りに公的機関から家庭内暴力の疑いありとして保護され、その先でライダーと合流した事。そこから先は意識を落として治療を受け、気が付けば俺の影の中に居た事。

 

「尤も、ライダーと合流した後の出来事に関しては影の中に居る方に教えてもらったんですけど」

「あいつの影の中に居るってどんな奴よ」

「人を指さすんじゃないよ、遠坂のお嬢さん」

「うーん、凄いの一言に尽きますよ。レリエルさんって言うんですけど、属性が私と同系統みたいで色々教わってる最中です」

「レリエルって……夜を司る天使の名前よね。属性が同じ?」

「はい。私の属性ってレリエルさん曰く『虚数』らしくて扱い方を教わってるんです」

「……はい???」

 

そこから遠坂さんが又ギャーギャー言い始めたので士郎君と桜さんに任せてアーサー王の隣へ席を移す。

 

「王様よ」

「あ、えっと……」

「ああ、まだ無理に剣返さなくても良いから。どう? 剣のアーサーと話して」

「何と言うか……まだ頭を殴られた様な衝撃が収まってません。でもある程度心の整理が出来ました」

「ふーん。それなら良いんじゃない?」

「……ふふっ、本当にアーサーが言う通りですね」

「ん? ソイツなんか行ってた?」

「えぇ、貴方の事は気分屋で感情的な空の様だと」

「それは褒められてるのか貶されてるのか……」

「誉め言葉かと」

「そういう事にしとこうか」

 

俺と対話していて笑顔が出るって事は本当に疑問は解決したらしい。適当に話していたら改めて謝罪された。

 

「先ほどは取り乱してすみません」

「いや……まあ色々あるだろうし良いよ」

「その、簡単に言ってしまうと嫉妬していたんです」

「『嫉妬』?」

「『アーサー』で無い誰かが『エクスカリバー』という剣を持っているという事実が私には受け入れられなかった。しかも『エクスカリバー』は持ち主を認めて振るわれている。

 聞けば貴方は自分で復元して使っている。つまりソレは私の様に仕組まれて手に入れたものではなく、剣自身に貴方が認められているという事に他ならない。

 それがどうしても認められなかった。頭の片隅では実は分かっていたと思うんですが、あの時は嫉妬で心が理解する事を拒んでいました。

 最初の一撃も思わず強張った体が動かせず食らってしまいましたし」

「あー、アレね。あのドロップキック。やけにアッサリと食らうなーとは思ったけどそういう……」

 

あの時のやり取りを思い返しながら自然と戦法に対しての評価とかやり方に関する話題へシフトする。だって他に話題らしい話題って無いからね!

そんな話をアーサー王としてたら途中からアーチャーも話に入ってきた。皮肉屋が俺のアーサー王モドキ戦法をめっちゃ揶揄って来たがソレにやられたのお前やんけ。

ついでにライダーも一緒になって闘い方に関してあーだこーだと話していたらマスター3人の方は話が一段落したらしい。

どうやら桜さんは今晩士郎君宅に泊まって色々と話をする事になったらしい。別に無理に影に潜る必要は無いんじゃないかと提案したがまだレリエルに教わる事があるとかで明日にはまた影へ潜るつもりなんだと。

色々面倒になってきたので其れで良いやと了承し、明日また伺う事にしてライダーと一緒に衛宮宅を出た。

 

 

 

ライダーと車に乗り込んでホテルに向かいながら今の状況を改めて整理してみる。

 

「協力関係にあるのは剣、弓、術、騎、殺、ってことは残りは槍、凶?」

「そのはずです」

「何でだろ……すげぇ嫌な予感がするんだけど」

「フラグですか?」

「違うと思いたい」

 

一抹の不安を抱えたままホテルに戻り暫く部屋で情報整理を行っていたら電話がかかってきた。出てみると相手は言峰神父。

とりあえず白を切る。

 

「もしもし? 何方ですか?」

「おや? 私の事を調べてる人間が私の事を知らないとは可笑しな話だ」

「……(クレーマーの電話対応みてーだな)いたずらなら切りますよ?」

「切っていいのかね? 君の元生徒達が大変な目に会うとは思わないのか?」

 

それを聞いて即座に通話終了のボタンを押す。直ぐに警察へ通話。

 

「もしもし? 実はとある人から電話越しに脅迫されて……最近色々物騒だったのでレコダーに記録してたんです。本当に役に立つ日が来るなんて……えぇ、それで自分が先日教職を辞したんですがそこの生徒に被害が出るぞと脅されて……えぇ、相手は教会に住んでる言峰神父って人なんですが……」




多数の感想を寄せられたアルトリアの心情をちょっとだけ書けた気がします。
本当はもっと心理描写出来ればいいんですけどね。
難しい。

今年も精進していこうと思います。
本年もご愛読宜しくお願い致します。
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