祝福と目の覚めない悪夢   作:タラバ554

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21話 延命

衛宮士郎が体の痛みから目を覚ました時、激しい爆発音が聞こえてくる。音を頼りにその方向を向けばセイバーとアーチャーはランサーとバーサーカーに追い詰められていた。

味方であるはずのバーサーカーに攻撃されている事に動揺し急に立ち上がろうとして体から来る痛みで立ち上がる動作は途中で止めてしまう。

 

「いっ! ……~~っつ」

「先輩、起きたんですね。無理に立ち上がらないで下さい」

「桜……遠坂は」

 

声をかけられソチラへ視線を向けると遠坂を膝枕している桜が居た。柔和な笑みを浮かべまるで日常の中に居る様に。

余りにも普段と変わらない表情に思わず思考停止してしまうが直ぐにセイバー達の事を思い出し桜へ問いかける。

 

「その、遠坂は大丈夫なのか? それにセイバー達は何でバーサーカーと戦ってるんだ?」

「姉さんは気絶してるだけです。バーサーカー……正確にはイリヤさんですが、あの神父にご両親を人質に取られてる様です」

「イリヤの両親って……母親に……俺の爺さんも?」

「聞いてた限りでは先輩のお父様も……」

 

士郎が絶句していると彼目掛けて綺礼から剣が投擲されるも桜の影が士郎を庇う様に伸びて重い金属音を立てて剣を弾く。弾かれた金属音で我に返り音のした方を見ると言峰綺礼が居た。

 

「やはり君の影は手持ちの武器では抜けぬ様だな」

「ええ、貴方みたいな人って私嫌いなので……全力で防ぎますね」

 

両者とも笑みを浮かべているが眼だけは笑っておらず相手の隙を探し出し抜こうと鋭い眼をしている。英霊に立ち向かうのとは別種の緊張感に士郎は固唾を飲み込みながら立ち上がる。

 

「どうした少年。何か言いたそうだが」

「爺さんが生きてるって本当か」

「……衛宮切嗣。君の養父は死んでいる、死んでいるが肉体と魂は紐づけたまま活動出来る状態にしているな」

「何だよそれ」

「肉体的には死んでいるよ。ただ思考し会話する事は出来るがね」

「嘘だ! 爺さんの葬儀だって、火葬だってしたんだ!」

「あぁ、葬儀の事か。アレなら顔を変えた死体を用意したよ。今は似たような場所で夫婦共々保管しているよ」

「お前……!」

 

綺礼の言葉で士郎の心臓が跳ね上がる。思考がまとまらず落ち着かない。呼吸は浅く、手のひらを何度も握る事で冷静さを取り戻そうと試みるがうまくいかない。

士郎達が手をこまねいている間にもサーヴァント同士の争いは過激さを増していく。屋根の上、道路、時には電線を使い立体的な挙動で戦場を変えながら攻防を繰り返す。

だが発勁を覚えた事によりランサーが有利だった所へバーサーカーが言峰側に加わった事により、ランサーがセイバーへ先行して攻撃し防御が崩れた所にバーサーカーが追撃を行うという連携を取った為、アーチャーの援護があるとはいえ徐々に傷が増えていく。

如何にかセイバーが聖剣により防御を行ってもその上からバーサーカーの剣はセイバーの鎧を剥がしていき至る所がひび割れてしまっている。これまでの戦闘中に負った右腕の怪我と、ランサーの発勁の効果により防御がワンテンポ遅れてしまっている。

徐々に追い詰められている事を自覚しながらも手が無いセイバーはもどかしく思いながらランサーの槍を捌き、バーサーカーの剣をあえて受け、コレを足場として離脱、アーチャーの援護を受けつつ屋根の上へ合流を果たす。

 

「セイバー、このままではジリ貧だ。状況を変える必要がある」

「アーチャーそれは判るが……ランサーの攻撃が厄介だ。武器で受けているのに手に痺れが伝わる、僅かな時間だがバーサーカーと戦うにはかなりの枷だ」

「だろうな。まったく戦闘思想の異なる武術の極みと言えるモノを少し受けただけで自分のモノにしてしまうなんて……才能というのは恐ろしい」

「敵を褒めた所で戦況は変わらないぞアーチャー、何か手はあるのか」

「ある……が、少しの間援護が出来なくなる」

「分かりました。では時を稼ぎましょう」

「頼む」

 

『I am the bone of my sword.』

 

アーチャーは構えていた弓を消し、詠唱を始める。同時にセイバーは頭上からランサーに向けて突撃を仕掛ける。

セイバーの鋭い振り下ろしを槍で受け流し横に飛びながらランサーは笑う。

 

「あのいけ好かねぇ奴との相談は終わりか!」

 

直ぐ様その動きに対応しながらセイバーが吠える。

 

「貴方程の人が何故あんなマスターに従うのか!?」

「っは! こっちにも色々あんだよ!」

 

追撃を受け止め薄闇の中で火花が飛び散りセイバーがそのまま押し切ろうとした時、横合いからバーサーカーが迫る。舌打ちと共に魔力を放出しその場から離脱すると直前までセイバーが居たアスファルトは轟音と共に柔らかいパンをむしり取った様に破壊された。

ランサーはそんな味方のバーサーカーに溜息を吐いて悪態をつく。

 

「は~~~。コイツが居たんじゃサシでの戦いすら出来やしねぇ、あのマスターもお節介な事をしてくれるぜ」

 

ランサーが悪態をついている間にもバーサーカーの猛攻は止まらず、セイバーが避けて移動する度にセイバーが居た場所はバーサーカーの剣で斬られ、抉られ、粉々になっていく。

このままでは面白くない、こいつ等とやるのも悪くないが自分が満足できそうなのはあの人間だ。アイツと戦うのは面白かった、わくわくするのだ。

思わず口角が上がるのを自覚しながら何かを仕掛けようとしているアーチャーを睨む。

 

「だからよぉ、さっさと仕掛けを動かしな。アーチャー」

 

アーチャーの練り上げた魔力が周囲を満たし、一帯の世界を言葉の終わりと共に書き換える。

 

『So as I pray, UNLIMITED BLADE WORKS.』

 

 

 

■ ■ ■ ■ ■

 

 

 

固有結界の中、有香の体を操るイロウルとバルディエルは目の前の男を脅威と認識し今使える全力で対抗していた。砂の地面を浸食しながら駆けまわり、時にATFを足場に空を駆けながら金色の男に攻撃を仕掛ける。

だが男へ接近する事は叶わず虚空が揺らめき、揺らぎから高速で射出される武器に動きを阻まれる。それを周囲に刺さっている剣を傷口から伸ばした粘液で掴み取り迎撃に使う。

以前の躰なら単一で人類の作り出した化学兵器とタメを張れる程の頑丈さがあったが今の躰ではソレも叶わない。だから以前と同じ行動をしていてはまた負けてしまうとイロウルとバルディエルは『思考』した。

一つの躰に使徒が複数入る。更には思考をし考えを共有するという以前の使徒では出来なかった行動を行った二人はある結論に至った。

 

『器を生かす事を最優先とする』

 

この思考にたどり着いてからの行動は早かった。イロウルとバルディエル、そして常に影に潜り込んでいたレリエルと協力し自分たちの本体を使った総力戦である。

バルディエルの粘液を体の至る所から出し地面に突き立てられた武器を絡めとる、ソレ等をイロウルが浸食、武器の性質を理解しバルディエルとレリエルへ共有。更に粘液を体に纏わせ、疑似的に以前の躰を模倣する。

ギルガメッシュは使徒達が成す事をあえて余裕を持って眺める。目の前の人であって人でない彼等が成す事を余裕の笑みを浮かべて待ち構える。

1分も経たぬうちにバルディエルの粘液は全身を覆い、有香の体は二回り程の大きな粘液の塊となった。

 

砂塵が吹く大地にゆらゆらと前後に揺れる3メートルを超える人型の粘液の固まり。唐突に前後の揺れは止まり、砂煙を残してギルガメッシュの視界から消える。

 

それでも尚ギルガメッシュは焦らず、分かっていたと言わんばかりに彼の右後ろに盾が展開されバルディエルの一撃を防ぐ。甲高い金属音を響かせながらまたバルディエルが砂埃を残して視界から消える。

人という種が肉眼で追える速度を超え、更に英雄と言えど簡単には捉えられない速度で動き回りあまつさえ多数の粘液で絡めとった武器を使った攻撃をギルガメッシュは余裕の表情を崩さず悉くを防いでいた。

 

「人の姿を捨てた人よ、貴様の芸は高速移動と挟撃のみか? その程度はどの時代の人間もやっていたぞ。もっと我を驚かせる事は出来んのか?」

 

その一言を聞いたからなのか、それとも元々そうするつもりだったのか、仔細は判らないがバルディエルはギルガメッシュと距離をとって腕をだらりと下ろし粘液の触手を広げ中腰でギルガメッシュと相対した。

直ぐ様ゲートオブバビロンが展開され宝具が射出されるとソレに対抗するかのように青に染まった宝具が粘液から射出され空中で宝具同士がぶつかり爆発が起こる。粘液から射出された宝具はギルガメッシュが放った宝具や固有結界に突き立てられた宝具。

共通しているのは青く染まっている事、宝具の所有権がギルガメッシュから剥奪されている事。この事実に少なからず驚きはしたが『二度目』の為ある程度予想はしていた。

 

「ククク、まさかこの我から盗む愚か者が二度も出てくるとは……一度目は雑種だったが……良かろう、寛大な我が許す。全力で来るがいい下郎」

 

その宣言から今までは精々100程度の揺らぎだったのが数倍に規模を変える。天で回転を続ける歯車にまで届くような黄金の揺らぎ、そこから覗くあらゆる武器の切っ先の全てがバルディエルを捉えている。

ソレに応えるかのようにバルディエルのむき出しの粘液だった躰を覆う様に青の金属が覆い隠していく。これを『内側』から見ていた碇ゲンドウは青い零号機を思わせる姿に絶句していた。

金属の正体はイロウルが侵し取り込んだ宝具でありその神秘すら己のモノとしたイロウルの鎧とも言うべき防具。更に影に潜んでいたレリエルがバルディエルの体表を包み黒のボディに青の外部装甲といったカラーリングに染まる。

 

「ほう? 我の宝物をその様な形に変えるか……痴れ者め」

「■■■■■■■■■■――――――――――――――――――――――!!!!!!!!」

 

バルディエルの咆哮が轟いてからの動きは先ほどまでの獣染みた動きとは違っていた。咆哮と共に空中にあらゆる角度で現れたATF。コレを己の手足と粘液の触手をバネとし飛び回るバルディエル。

勿論ギルガメッシュも展開したゲートオブバビロンから雨の様に宝具を降らせ本体を狙うと共に足場であるATFを崩しにかかる。だがバルディエルもただ飛び回るだけでなく伸ばした粘液の先や口から青く染まった宝具を撃ち出し、時には手足を伸ばして直接攻撃をも加えていく。

斬り、殴り、時に体当たり等、縦横無尽に砂の地平と空中を駆ける様をギルガメッシュは悠々と捌いていく。そして本体である有香はソレを内側から眺めていた。

 

 

 

■ ■ ■ ■ ■

 

 

 

ぼんやりと目を覚ますとずっと昔に帰れないと思った見慣れた天井、ぼけっとしながら前を向けばソコは自宅の居間でテーブルに備え付けられた椅子に座っていた。

そして当然の様に碇ゲンドウが居る。

 

「目が覚めたら自宅だった件」

「おかえり……と言うべきかな?」

「ゲンドウさん、ただいま……なのか?」

 

くらくらする頭を摩りながら直前の事を思い出そうとしていると横からユイさんが麦茶を出してきた。

 

「どうも」

「いいのよ。ここは貴方のお家なんだから」

 

ユイさんの一言にトータル1世紀以上帰れ無かった場所なので今更感があるし、自分の中という事もあって返答に困るが『まあ良いか』と頭を切り替える。出された麦茶を一口呑んで外から聞こえるセミの音と暑さで自分が直前まで何をしていたのかさっぱり思い出せない。

 

「んー、俺ってなんでココに居るんでしたっけ?」

「記憶の混濁と痛みの損失……ユイ、どう思う?」

「大体それで合ってると思うわ、あなた。有香さん、貴方こっちに来る直前に文字通り針鼠みたいになってたのよ」

「ハリネズミ?」

 

そう言われて思い出したのは自分に迫りくる多数の宝具。全身から嫌な汗が溢れるのが自分でも感じられる。顔に掌を当てながら大きな溜息を吐く。

 

「まじか……ヴァナでもあんな目には会わなかったぞ」

「あら、でもハリネズミみたいになった事はあるんでしょ?」

「ん? ……あぁ、サボテンダーのカクトロットラピッドか……あったなぁ~、捌くでサボテンダーと戦ってた時のリンクで食らった【針万本】顔に刺さった針を抜いていく作業が地味~に痛くてな」

「それに比べたら刺さった数は少ないでしょ」

「笑いながら言っても説得力無いですよユイさん。それに針と武器じゃ被害が違い過ぎるわ」

 

口に手を当てて微笑んでるけどこの人本当に分かってるのか? 流石に針と武器じゃダメージが違い過ぎるっつーか普通に死ぬぞ。

あれ? そもそもココに俺が居るという事は誰かが俺の体を使ってるのか?

 

「えーっと、今俺の体ってどうなって……というか誰が使ってます?」

「それならイロウルとバルディエルが使っている」

 

そうゲンドウが言うと手元にウィンドウを表示させて此方へ投げて来たので受け取るとソコには戦ってるギルガメッシュと俺っぽいのが居るのが見て取れる。俯瞰映像なので全体が見れるのは良いが移動が速すぎて良く分からんのと、俺(?)が全身粘液塗れなのは何故?。

 

「何これ?」

「『彼等』は器である君の蘇生を最優先とした、コレには君の中に居る我々も同意している。

 全身の傷をパルディエルが塞いで出血を止め、君を貫いて蘇生の邪魔をしていた武器をイロウルが浸食して支配権を剥奪、その武器をレリエルが回収。

 蘇生を行おうとしたが効果が出る前に対峙している男が更なる攻撃を始めたので蘇生の為に排除を試みている最中だ」

 

ゲンドウさんの説明を受けて頭が痛くなる。奥の手出したのに足止めと時間稼ぎも出来ずに終わるとかマジかい。

というかギルガメッシュさん強すぎませんかね?! いや、俺が足止め出来んのはまだ分かる! でも使徒3体(?)と同時に戦って尚優勢とか嘘やろ?

改めてウィンドウに表示されているモノに目をやるが……どう見てもギルガメッシュが優勢です。

ATFで立体的に動き回りながら触手で辺りに突き刺さってる武器を投げたり、殴ったり切ったりしてるけどあの人高笑いしながら全く問題なさそうなんですが……。あ、粘液の一部が斬り飛ばされた。

コレに勝つとか衛宮士郎どんだけ? いや、まじで。やっぱ主人公って凄い(白目)。

現実逃避しているとユイさんがニコニコしながら書類を渡してきたので受け取る。流れで書類に目線を落とすとソコに書かれている題名は『S2機関生成計画書』。

 

「えっと……ユイさんコレは?」

「今回こんな事になったでしょ? 前の世界で貴方が蘇生薬『リレイザー』を大量に作って在庫がダブついてるからまだ大丈夫だと思うけれど何れソレも尽きる。だから身の安全っていうのはとても大事なのよ」

「ええ、それは判りますが……」

「でしょ? いざという時に私達や使徒達の協力が得られるけれど私達はATFが使えるけれど貴方の様にJOBと呼ばれる異能は無いから精々体を動かす程度だし、使徒達はそれぞれの異能があるけどある意味一芸特化で貴方程汎用性が無い。其の上S2機関が無いから細々としか動けないみたいなのよ」

 

めっちゃ早口で捲し立てられて思わず言葉が止まってしまった。というか近い。めっちゃグイグイ来る。

 

「いや、分かりますけどS2機関って作れないでしょ? アンタらの世界でも作れなかったのをどうやって……」

「大丈夫! 私達の世界では無理でも貴方の体は私達の世界とは別物で抗生物質もまた別! 既存の科学では物質的な物に囚われていた私達だけれどLCLとなった後にアナタに吸収された私達は魂とも呼ばれるモノへと変換されてココに居るしこの場所の物質というのがそもそも……」

 

―――――10分後

 

「だーっ! 分かった! S2機関の生成? やっていいですからちょっと落ち着いて下さい!」

「あらそう? 折角面白い話をしていたのに」

 

殆ど息継ぎも無しに延々と喋るし目線を一切逸らさないわ……こえーよ。原作で書かれて無かったけどこの人の性格ってこんな感じなのか?

ゲンドウさんを見ると顔を青くしてウィンドウ出してじっと見てる。ソレに倣って俺もさっき渡されたウィンドウに眼をやると眼を放していた隙に俺の体は青い鎧に覆われていた。

というか見た目が零号機ってどういう事?




思ったように話が進まない21話目
リアルの事情もあってなんかもやーっとした感じで上手く話が練れませんでしたが1か月も開いたので取り合えず投稿
次投稿するまでには就活終わらせて頭スッキリさせて投稿したいです
就職決まったら投稿ペースが上がるはず(きっと

はい、作者のそんな愚痴はここまでにして、内容に関して少し。
感想で使徒によっては詰むのではという話が出てましたがS2機関無いのでそんな出力出ません。
今回S2機関のフラグ立ちましたが……使うかは全く未定です。フラグを立てただけっていう。
何かあった時にこの設定を生かせれたらと思ってます。
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