祝福と目の覚めない悪夢   作:タラバ554

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お久しぶりです。
約4か月振りの更新となります。

何パターンか書いてコレかなーってのを選びました。
何か降って来なければこのままラストまで行きたいと思います。
もう暫くお付き合いください。


27話 舞台

影から取り出したタオルで汗を拭いてから衛宮宅の居間で雑に横になる。精神的な疲れから手が震える。

気だるさを感じながらも意図的にゆっくり呼吸をして力を抜く、暫くそうしていると部屋へ葛木とキャスターが入ってきた。

 

「中真、大丈夫か?」

 

まともに返事するのがしんどいので目線を投げ右手を上げて答える。

 

「ふむ……お前は意外と精神的に脆いな」

 

何も答えず上げた右手で目元を遮る。今は色々考える事をしたくない。

暫くそうしていると葛木が唐突に提案してきた。

 

「以前酒の席でした約束を覚えているか?」

 

少し考えたが、ぱっと思い出せなかったので右手を目元から外して発言を促す。

 

「手合わせをするという約束をしたのを覚えていないか? 気分転換になるのなら相手になろう」

 

不器用な友人の誘いに思わず笑みが零れる。折角なのでその気遣いに乗っかろう。

 

「そだな、やるか」

 

寝転んでいた体制から一気に立ち上がって葛木に向き直ると珍しく口元を緩めて微笑んてやがる。そんなに手合わせ嬉しいかね?

あと口には出さんがキャスター、その恍惚とした表情と溢れそうな鼻血は止めて。

 

 

 

衛宮宅の庭先でシャツとジーパンに無手で葛木と相対する。始める前にリレイザーを投げ渡す。

 

「んじゃ、ルールはこの家のモノを壊さない。範囲は庭の中。相手が負けを認めるか一回死んだら終わり。手加減無用って所で」

「ああ、構わない」

 

お互いにリレイザーを飲み干して構える。葛木は左手を前にした半身で右手は握り、左手は逆に開いている。

その所作から掴みも使ってくる事が伺える。対して俺は右手は自分の顎付近、左手は腹の前というちょっと独特な構え。

ヴァナディールで染みついたモンク特有の構えで自分より体格が良い相手だとこの構えが一番しっくりしていたが……人相手だとちょっと厳しいか?

 

じりじりと間合いを図っていると葛木が先に仕掛けて来た。

 

接近からの左、そこに合わせて自分の左を当てかち上げる。空いた左脇に狙いを定めて捻りの効いた右が来る。足を使い左を下げながら右の掌底を当てる。

停めた右手がビリビリと痺れる。

 

「ふむ、初手はやはり止められてしまうか」

「いやいや、ちょっとビックリした。初手で行き成り決めに来るんかい」

「? 手合わせとはそういうモノだろう?」

「……まぁいいか」

 

ちょっとズレた葛木の返しが笑いを誘う。

笑った直後に葛木の右手首を取り上げながら身体を潜り込ませる。狙うは葛木が狙ったのと同じ、右わき腹!

予想通りに足を使って迎撃に来たので左腕と肩を使い防ぎ、そのまま体当たりの要領で左肘を葛木に当てながら踏み込むと同時に葛木の右腕を引っ張る。

肘鉄を狙ったがその前に葛木が放つ左の打ち下ろしが頭を揺さぶり右腕が外されてしまった、だが踏み込みの勢いは止まらない。無理やり肘鉄を入れてフリーになった右で腹を狙う。

 

空気を引き裂いた右が肉を打つ感触が無く、打撃音だけが空しく庭に響き渡る。

葛木はいつの間にか左半身から右半身の構えに入れ替え構えも変えていた。

 

「っち、今の避けるか~、やっぱ上手いな」

「……肝が冷えるな」

 

顔に貰った左で出た鼻血を吹き出して息を整える。少し間合いを外して葛木に集中する。

まるで俺と同じような手の位置で両手を開いて左半身……正直やりづらい。試しに接近して葛木の右腕を取りに行く。

多分両利きになるよう訓練したであろう左右どちらでも使える動き。腕に入る力が右腕のソレと遜色が無くパワー負けしてしまう。

かといって右手で取りに行っても今度は葛木の左手がこちらを狙っている。数手、手首を取れないか試すが無理そうなので動きを変える。

 

どっしり構える型から重心を上半身に移す、足に重さを乗せず移動しながら葛木の様子を見る。構え方に変化なし、であるなら此方から仕掛ける。

 

葛木の周囲を回る動きから一気に接近し胴体狙いの左足の蹴り。それを右手で巻き取り足の破壊を試みる葛木だが予測通り。

相手の右手を支えにしてカニばさみの要領で右足で葛木の頭を狙うが意趣返しと言わんばかりに肘鉄で脛を狙われた。思わず出てくる涙を目じりに貯めながら拾った砂利を葛木に投げ脱出する。

 

(もっと……頭をからっぽに……)

 

再度体制を整えて今度は低く駆ける。間合いに入る直前に踏み切り膝蹴り、を防がれからの両手で拳を握り叩きつける。

打撃は成功したが俺の両手を割る様に葛木の右アッパーが鼻を捉え勢いよく鼻血が飛ぶ。痛みと熱さを感じ地面に倒れ込みながら手を支えにして足払いをかけるが躱されそのままストンプに繋げられてしまう。

あまりにも強力で肺の空気が一気に持って行かれる。息が出来ないキツさの中、ストンプを行ってきた右足首を圧し折る。

地面を転がり泥だらけになりながら息を整える。相手を見ると全く諦めた様子の無い眼。

それに釣られて頭の中と心のもやもやが空っぽになっていく。

 

 

 

どれ位やりあってたのか分からないが気が付いたら庭で転がってた。多分死んだなと感覚的に思って視線を彷徨わせればキャスターに治療されながら膝枕されてる葛木が居る。

力を抜いてぼけっとしてたらラランサーが話しかけて来た。

 

「よう、良い死合いだったな」

「おー、見てたのか?」

「マスターもお前のお蔭で一段落したからな。何なら俺ともやるか?」

 

答えをどうするか思案しているとバタバタと廊下を走る音が聞こえ、家主の声が飛んできた。

 

「中真さん! じいさんとアイリスフィールさん、それに遠坂達の母親が!」

「三人がどうした」

「全員起きた!」

「は?」

「どうしたらいいんだ!?」

「三人とも目を覚ました?」

「ああ!」

 

直ぐに立ち上がり走る。三人が寝かされていた部屋の襖を勢いよく開けると母親に抱きしめられる子供二組とソレを見る父親の姿があった。

全員確かに起き上がってる、起き上がってるが……何か変だ。確率で言えばそりゃ両方助かる目はあったが両方ともが助かるなんて思ってなかった。

違和感を感じてるが救われた事自体は良い事だ。

 

「そっか……賭けに勝ったか。おめでとう」

「それはこっちの台詞さ。じいさん達を助けてくれてありがとう」

 

そう言って頭を下げてくる士郎君。

 

「『朱と生命の泉』『対価と世界の法則の歪』『エーテルの輝きを此処へ』【イレース】」

 

イレースが発動し光の粒子が降り注ぐ。衰弱はしてるが間違いなく治ってる。

 

「治ってる。間違いなく……」

「あぁ、じいさんも、アイリスフィールさんも、遠坂の母親……葵さんも! 全部アンタのお蔭だ。ありがとう」

 

良い事なんだ。人が救えたから良いじゃないか。

大丈夫、笑えるさ。

大人なんだから。

 

「んっ。おめでとう」

「あぁ! ありがとう!」

 

 

 

自分の状況と比べるのは止めろ。

 

 

 

 

 

 

―――――――。

 

 

 

 

 

 

あれから三人にケアルをかけて家族水入らずの時間を過ごしてもらっている。その間、キャスター組同伴でランサーからギルガメッシュに関しての情報を仕入れる。

 

「つまり、ギルガメッシュは生きてる?」

「あいつは受肉してるからな。マスター無しでも顕現してられる、俺はさっきキャスターに本来のマスターとラインを戻してもらったから平気だが本来サーヴァントはマスターの魔力で動くから、マスターやられた時点で詰みだ」

「(何かへその緒みてぇだな)それで? 肝心のノリマロは何処に居るん?」

「(ノリマロ?)さぁな。やりあってる途中であの砂漠が消えたんで離脱してからは知らね」

「結局生きてるってのが確定情報になっただけか」

 

居間で茶を飲みながらキャスター、ランサー、葛木を交えてギルガメッシュ対策を考える。

元々はマスターの言峰を公的機関で捕まえて身動きが取れない間に聖杯の解体とか考えてた。だが準備が整う前に遭遇と流れで戦う事になり結果惨敗。

今度こそ準備を整えて事に及ばないと俺がしんどい。出力不足とはいえ使徒の一人を殺す人間って何だよ。某ロボゲーのなんちゃら不敗じゃねぇんだからソコは負けとけよコンチクショウ!

そんな愚痴を零しながらも話は進む。

 

「で、実際の所アイツとはどうやり合う腹積もりだったんだ?」

「答えて上げたら?」

「……ランサーの元マスターを警察に捕まえて貰った所で儀式の根底にある聖杯を解体するつもりだった」

「っは? 言峰のヤローを警察に?」

「おう」

 

ランサーが一瞬ぽかんとして笑い出す。

 

「ぶははっははっはあ、っは! くっくっく。そりゃ悪くねーけどよ、お前アイツが警察何かに捕まる様に思えるか?」

「捕まえられなくても良かったんだよ。聖杯へちょっかい出す時間さえ取れればソレで良かったんだ、本来はな」

「だが……私とキャスターが動く前に監督官達はお前に奇襲をかけて来た」

「っそ、少なくとも1日以上は時間が取れると思ってた。葛木達なら1日あれば目途も立つだろうからと思ってたんだけど……というか俺の予想だと狙われるのって衛宮・遠坂組だったのに何で俺だったんだ? 今回の儀式にほぼ関係ない人間ぞ?」

「オメーはソレ本気で言ってんのか?」

「いや、事実じゃんか。正直巻き込まれただけだぞ?」

 

ランサーが呆れた顔で溜息を吐く。

 

「サーヴァントとやりあえる人間とか絶対アイツの興味引くに決まってるじゃねーか。しかも何度やっても生き返るし」

「貴方が持ってる道具は効果だけを見ればギルガメッシュが財として持っていてもおかしくないものね」

「えぇ……」

 

心底嫌だ。逃げたいのにロックオンされてるとか気持ち悪ぃ。

 

「つーか、折角なら俺とも死合しようぜ。どうせ生き返れるんだろ?」

「……全部終わったらな。少なくとも今はやりたくねぇ。さっき葛木ともやったし」

 

ここ数日色々あってヴァナのノリになってるなぁ。この騒動終わったらリレイザー作る材料がこっちにも有るのか探さないと……。

 

「それにしてもお前何であんな道具持ってるんだ?」

「私も興味あるわね」

「あん?(そうか、こいつ等には言ってないか)……面倒」

「はー? そこはちゃんと言っとけよ」

「別にいいだろ、疲れたからちょい横になる」

 

そう言って部屋の隅へ移動してゴロンと横になり眠り始めた。それを眺める英霊2名とマスター1名。

 

「しかしこの戦争もどうなるのかね。まぁ、元からめちゃくちゃなのは知ってたがアイツの登場で盤面は完全にひっくり返されたからな」

「貴方の願いは闘争なのでしょう? 事が終わった後とはいえ願いが叶うのなら良いじゃない」

「まぁな、俺としちゃ第一印象だと本命はセイバーだったんだがコイツとの二度目の邂逅からは予想外にコイツが粘ったからな」

 

マクドナルドでの有香との戦闘を思い出しながらランサーが語る。周りにある物を何でも使って勝ちを拾いに行くスタイルはランサーも生前行ったので何処かしら共感を抱く部分があるらしい。

そしてソレに食いついたのはキャスターではなく葛木であった。

 

「ほう……中真はそんな闘い方も出来るのか」

「おう、コイツが色々獲物を使えるって事言ってたしお前さんは居なかったから知らんだろうが竜種まで呼び出してたぜ」

「はぁ!? どういう事よ?」

「そのままさ、幼体だが竜と一緒に槍を振るってたぜ」

 

魔法に幻想種、短縮呪文かつ極省のリソースで引き起こされる効果。自分の知っている魔術との乖離にある程度は理解していたがキャスターの理性が悲鳴を上げる。

そんなキャスターを見ながら葛木は思案顔。竜を伴った中真との戦闘をシュミレートしているようである。そこから三人で中真に関するアレコレを話、日は暮れていく。

 

 

 

身体を揺さぶられ目を覚ますと衛宮、遠坂、葛木、ランサーのマスター、セイバー、ランサー、キャスターがテーブルを囲い。更に藤村大河が自分の肩をゆすぶっていた。

 

「ん……藤村先生?」

「おはようございます。と言っても、もう夕飯の時間ですけど」

 

眠気眼で頭をかきながら大きく欠伸をしてから改めて目の前の光景を見る。聖杯戦争関係者+サーヴァント+一般人という訳が分からない集団。

全員が食卓を囲んでおり、ぼけっと眺めていると藤村さんに手を引かれてテーブルの一角に座らされる。

 

「士郎! 早く号令!」

「藤姉、テーブル叩くなよ……それじゃ、全員揃ったって事で、いただきます」

『いただきます』

 

回ってない頭で取り合えず周りに倣って「いただきます」を唱和する。

頭空っぽで目の前に置かれた味噌汁をすすると程よい塩分と吸い物の暖かさが身体の芯に移り目が覚めていく。

続いて焼き鮭をほぐしてご飯と共に口へ運ぶ。鮭の強い塩気と炊き立てご飯の甘さが口の中で混ざり合い、舌を通して目覚めを促す。

飯の旨さにもくもくと食事を取りご飯を三杯も完食し満腹感と共に幸福感で胸が満たされる。寝る前までささくれ立っていた心が満たされた気がする。

この段階になり漸く周りの音に耳を傾ける余裕が出てくる。藤村さん中心に話している内容は精々世間話。

やれ出身地だ、何の仕事をしてるか、何処で出会ったのか等々。葛木中心に弄られてる。

士郎君が渡してくれた急須から茶を注いで啜る。藤村さんと葛木が微妙に噛み合いそうで噛み合ってない会話をしながらキャスターが士郎君に料理教わってる。葛木が旨いって言ったからなぁ。

でもってセイバーとランサーはご飯を食べ続け、その横で遠坂とランサーの本当のマスター。バゼット・フラガ・マクレミッツさんが小声で談笑中。

談笑って言っても中身は聖杯戦争の事っぽいので適度に聞き流す。因みにこの場に居ない面子は蘇生された人達と一緒に食事中。

正直このまま儀式終了としてしまいたい。そう思う反面、出来ないんだろうなという漫然とした感覚が同時にある。

頭が痛くなり湯飲みを置いて壁へもたれかかる。

 

 

 

 

「中真さん! 飲んでますかー!?」

「……藤村さん、流石に生徒のお宅で飲酒はいかがなものかと」

「良いの良いの! それより! 中真さんは何でシロウの家に? というか葛木先生も」

「あぁ、葛木の婚約者のキャスターさんとセイバーさんが知り合いらしくて、んで、連絡取って見たら近くに居るって言うもんだから折角なら飯でもって。

 後は外国人のノリというか……気が付いたら士郎君の家で飯って話に」

「はー、じゃあハイっ!」

 

渡されたのは恐らく藤村の晩酌用ビール。彼女はすでに出来上がってる様で顔が赤く目も半開き。

 

「(押しが強ぇ、しかも500ml)あー、じゃあ1本だけ」

「おっしゃー! 士郎! 追加の1本!」

 

我が物顔で士郎君からビールを受け取る藤村さんに一つ考えが頭に過る。一言断って士郎君の近くへ行き小さい声で聴いてみる。

 

「藤村さんってここによく来てるの?」

「藤姉は毎日来てますよ。大体朝晩一緒に飯食ってから学校へ」

「そっか(毎日……あれ? もしかして)」

 

手招きして台所へ移動し更に小声で聴く。

 

「もしかして切嗣さんと面識ある?」

「あ”」

 

嫌な予感が的中。

 

「もしかして葬式にも立ち会ってる?」

 

冷や汗をかきながら顔を上下に振る士郎君。oh……どうしたものか。

取り合えず向こうに連絡しようとした所で藤村さんが士郎君をインターセプト。

 

「所で士郎。さくらちゃんは? 今日は居ないの?」

「あー、サクラはちょっと席外してるんだ。遠坂、少し様子を見て来てくれないか」

「! ええ、良いわよ」

 

如何にかやり過ごした所でフォローの意味を込めて藤村さんの所へ。

 

「いやー、藤村さん唐突に仕事辞めちゃってすいませんでした。色々引継ぎに協力してもらって助かりました」

 

そう言って頭を下げる。

 

「何言ってんですか! 新しい門出なんですから協力位しますよ!」

「それでもですよ。 本当に助かりました。 課題は色々ありますけど……何とかなるでしょ」

「けせらせら! って奴ですね!」

 

豪快に笑いながら肩を叩かれる。裏表の無い彼女の性格なので本心から言ってる事が分かる分……良心が痛む。

次の職に関する話や引っ越しの話、世間話を少しして連絡先の交換などをしていると話題は別の人物へ移る。

 

「それにしても葛木先生の婚約者……キャスターさんでしたっけ? 初めて見ましたけど美人さんじゃないですか! 何処で捕まえたんですか~?」

「そういや俺も出会いは聞いた事無かったわ、飲み屋じゃ大体惚気だし」

「キャスターとの出会いか? ……夜の公園で、彼女が弱ってた所を助けたのが切っ掛けだ」

「夜の公園で美人を! ちょっとドラマチックじゃないですか! ソコん所詳しく!」

 

酔っ払いの興味の矛先が葛木に向いたのでそっと席を立つ。

士郎君に一声かけてから居間を出て蘇生した人達が居る部屋へ移る。

 

 

中に入ると晩飯を終えた面々がそれぞれ話をしている様で襖を開けて2部屋を繋げてあった。

 

「あ、先生」

「『元』先生でしょ、桜」

「うぃっす、ちょい経過を見に来たわ」

「この子達がお世話になっている様で……」

「いえいえ、こちらこそ」

 

そう言ってまずは葵さんの様子を見る。幾つかの質問をしてまだ体調が優れない様なのでケアルを掛けておく。

改めて遠坂姉妹と母親を見比べる。……何かしら違和感を覚えるがその正体が一向に分からん。

取り合えず何かあれば直ぐに連絡を入れてくれと言って、今度は衛宮一家の方へ。

 

「ユウカ、貴方から見てお母様とキリツグはどう?」

 

心配そうに此方を見上げてくるイリヤを横目で見ながら意識は衛宮夫妻へ。

あの外道神父の関心が向いていたこの夫婦は身体をいじくり廻されている。何らかの仕掛けがあっても可笑しくないんだけど今の所ソレも無い……何か見落としてる様な気がするんだけど分からん。

 

「身体は多分大丈夫なんだと思う……。けど何だろう……ずっと違和感は感じてるけど正体が一向に分からん」

「まだ治療が必要って事?」

「ご本人的にはどうです?」

「僕もアイリも、不調って感じじゃないけどな」

「えぇ、魔術回路が上手く起動しない位かしら、キリツグは?」

「そういや試してなかったな……確かに、起動しない……というか回路に流す魔力が湧いてこない」

 

本人達は意外と問題ない様だがイリヤの方が取り乱していた。

正直魔力が湧かないだとか魔術回路がとか言われてもさっぱり分からん俺は蚊帳の外で話は進んでいく。

 

どうやら衛宮夫妻は元々あった魔術回路というものが使えなくなっているらしく、魔術が使えないとの事。

魔術師としては致命的らしいが渦中の二人は全く意に介していない。というのも既に一度死んだ身なので思う所はあれどソレ位は許容範囲の様だ。

 

「だって……ねぇキリツグ?」

「そうだねアイリ。イリヤ、僕たちは魔術師としての生は終わりも同然だけど……イリヤの親としてまた生きていけるんだ」

「私の親として……」

「そうよイリヤ。私は前の聖杯戦争で小聖杯として、キリツグは呪いに侵され。人としての死を迎えた所を言峰綺礼に鹵獲されてからは死後を弄ばれた。

 とても辛い時間だった……何より貴女を残して逝ってしまう事が。その時が来た後で痛感したわ……。もっと貴女を愛している事を伝えられなかったのかって。

 それがこうして貴方と又話が出来るのよ。これ位で済むなら安いものよ」

「お母様……」

 

これ以上この場に留まるのは無粋だと思い部屋から退室する。部屋を出て柱に『シアリングワード』を書く、特定の人物以外が襖を開けられないという効果だが無いよりマシだろう。

問題は残ってると思うけど家族が戻ったのなら乗り越えられるだろ。後は……亡霊対策か。

 

 

 

その日は経過を見る為に全員で衛宮宅に泊まり、床に就いた。

翌日、キャスターにこの世界の魔術と彼女の知る知識を座学として教えてもらい飲み込んでいく。素の頭じゃ無理だが俺の『中の人達』は有能だ。

何せ文字通り億単位の人間の頭がある。知識を無理やり飲み込み昇華していく。

凄まじい量の知識を叩き込みながらヴァナディールで一時期世話になったあの女性を思い出す。容姿は全く似てないが魔法、魔術というモノに対しての姿勢はよく似ている。怒らせるとおっかない人で基本ですます調なのに偶に出てくる「よござんす!」ってのが頭に残るんだよな……。

魔術を教わるのに平行してランサー、ライダーにギルガメッシュの偵察を頼んでる。

正直枷になっていた言峰綺礼が倒れた状態のノリマロ野郎は何をするか全くわからんのでめちゃくちゃ不安だ。

普通に考えたら回復→補給→活動って形なんだろうけど……アレがセオリー通り動く訳ないしどうしたもんか。

 

 

 

予想に反して何事も無く1週間が過ぎた。

二日目までは衛宮宅に泊まっていたが三日目には遠坂葵、衛宮夫妻と共にホテルへ移動。

以降は缶詰状態でキャスターから魔術を叩き込まれ続けて少し知恵熱が出そうになっている。

そして今日、ライダーから電話が来た。

 

『ユウカですか?』

「ライダー、何か進展があった?」

『はい、見つけました』

「それで、ノリマロ野郎は何処に?」

『それがその……』

「どうした?」

『冬木には居ません……ギルガメッシュは今、大宰府に居ます』

「……はぁ?」




最近は低体温症とか熱中症なんかでダウンしましたが、何とか生きてます。
ストレスなんかに負けない!
皆さんも色々お気をつけ下さい。
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