祝福と目の覚めない悪夢   作:タラバ554

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28話 前座

「えっと……大宰府? 冬木じゃなくて?」

『はい、太宰府天満宮に居ます』

「……何をしてる?」

『ぱっと見は……観光の様に見えます』

 

あまりの事に視界が揺れる。

 

「そっか……頭が痛いけど一度接触してみないとさっぱり分からんな」

『迎えに行きましょうか?』

「いやぁ……見張っててくれ、近くまで行ったら連絡する」

 

携帯を切って椅子の背にもたれかかる。ただでさえ疲れていた頭が理解出来ない事に悲鳴を上げている。

 

「キャスター、悪いけど授業はここまでにしよう。ランサー、それにアサシンと出るからここの守りを宜しく」

「えぇ、分かったわ。精々頑張りなさい」

 

右手を振りながらアサシンと一緒にホテルの部屋を出る。まずはランサーと合流、そのまま電車で移動、集合場所は駅で良いか。

行動内容を決めてから携帯のアドレスからマクレミッツの番号を呼び出す。

 

「もしもし、マクレミッツさん? ノリマロが見つかったからランサーを寄こしてくれ。こっちは地下鉄、電車と乗り継いで行くから天神で合流させてくれ」

 

暫く電車に揺られながら本を読む。天神駅でランサーと合流して電車を乗り継いで大宰府へ移動。対応をランサー達と話してみたがあのびっくり箱みたいな奴が相手なので大雑把にしか方針が決めれない。

対応としては取り合えず話が出来るなら話をして、無理なら戦闘。そんな大雑把な方針だけ打ち立て、自分の地頭の悪さを悔やみつつも電車は進む。

大宰府についてライダーと合流、なんとも微妙な感じなので全員それぞれ現代の服を着た状態で現界して名物の梅ヶ枝餅とお茶を片手に移動する。

 

「それで、ノリマロは何処に居るの」

「先ほど太宰府天満宮へ移動しました」

 

ノリマロの思考が全く読めねぇ……色々考えつつバスで移動する。暫くして天満宮へ着きバスを降りると、ソコにノリマロが居た。

 

「よく来たな、この我が貴様が来るのを待っていてやったのだ。感謝しろよ?」

「テメェ、何企んでやがる」

「っは! 犬には分からんか」

「どうやら今すぐあの世へ行きてぇらしいな!」

「はいはい、取り合えず他のお客さんも居るんだから場所移そうぜ」

 

正直思考が止まったがランサーが熱くなってくれた事で冷静になれた。バス乗り場から少し離れた自動販売機で飲み物を買ってギルガメッシュも含め全員に渡す。

取り合えず全員でギルガメッシュの話を聞く。直接のやり取りは俺がすることに。

 

「そんで、アンタ何で冬木じゃなくて大宰府に居るんだよ」

「そんなもの留まる理由がなくなったからに決まっている」

「……理由?」

「言峰だ。あ奴は今の世にしては中々面白い奴でな、我の暇つぶしには丁度良かった。故にあの場所に留まっていたのだが……」

「成程。ツレが居なくなったから土地を離れたって感じか」

「そんな所だ」

「やる事無くなったから観光?」

「ふん、直に下々の生活を感じるのも王の責務というやつだ」

 

飲み物を一口飲んでから再び口を開く。

 

「それに次の観察対象である貴様もあの町を出るのだろう? ならば尚の事土地に拘る理由は無い。精々我の聖杯を回収する位か」

「いや、何で俺が観察対象やねん」

「我が気づいてないとでも思っているのか? 貴様並行世界からの来訪者であろう」

 

思わずギョっとする

 

「しかも近似世界ではなく、全く別の並行世界。恐らく魔術等が発達した世界からの来訪者。でなければ我との戦闘で見せた魔術行使の説明が付かん。

 それに貴様の中に居る雑種共もそうだ。

 殆どは雑種の集まりだが何人か人でありながら人の形を捨てた……いや、元から人の形をしていないのか……、興味深い奴を何人か腹の中で飼っているな?」

 

思わず眉を寄せる。

 

「別に飼ってる何て意識はねぇよ。勝手についてきただけだ」

「ほう? その割に上手い事使っているではないか」

「あのな、使える者は全部使ってじゃないとおめーに対抗なんて出来ないだろ。つーか全部投入して倒されてるこっちの身にもなりやがれ」

「っは! あそこまで手心を加えてもまだ足りんか? 少なからず我が認めた者がそれでは我の沽券に関わる」

 

瞬間、ノータイムで射出される剣。

目の前10cmで甲高い金属音と共に何重にも重なる橙色の壁。壁と拮抗する剣が数秒間火花を散らして弾かれる。

 

「唐突に仕掛けるのは止めてくんない? 当たってたら死んでるんだけど」

「日和る貴様が悪い。強者ならばそれ相応の振舞というものがあるであろう、何故そうしない」

「……はーっ、とことん見透かしてくるよな、お前。やり難いったらありゃしない」

 

ギルガメッシュから目を逸らして首をかく。チラリと目を合わせれば周りは俺の反応を伺ってるし、ギルガメッシュも真面目な顔で見てる。

嘘を吐く場面でも無いし偶には本音を吐露しておくか。

 

「良いか? まず大前提を言っておく。俺は元々が一般人だ。

 平和な世の中で戦争を知らず、争いも少なく、仕事を熟して金銭を稼ぐだけの身だった。それが気が付けば知らない世界に居た。

 何の前触れもなく、知人も、数少ない友人も、家族すら居ない世界にだ。その時点で頭がおかしくなりそうだったが色々あって何とか持ち堪えた。

 だが失敗した。現実逃避をした結果、失敗をしたんだ。

 結果、まあ迷子になった。そこでやっと現実と向き合った。

 幸い迷子になった先は自分を磨くには丁度良くてな、延々と鍛錬の日々だ。少なからず自己満足出来る位には強くなった……だけどその程度だ。

 アソコじゃ俺は精々『それなりに強い』って部類でしかない。そんな奴が強い相手と戦うなら相手を油断させて隙を突くしかない。

 だったら普段から自分を弱く見せてた方が楽だろ。

 と言っても俺からしてみりゃお前含めてサーヴァントは全員強すぎるから弱く見せる必要すら無いけどな」

 

一気に言いたい事言って缶に口を付け中身を飲んでいるとギルガメッシュが高笑いを始めた。

 

「貴様、言うに事をかいて『一般人』か! ハハハハハハ! 魅せ方で道化かと思ったがそもそもの思考からして道化とは、我を笑い殺す気か」

「いや、何が其処までツボってるか分からんが真面目に答えたつもりなんだけど?」

「まっ、真面目! マジメと来たか、っくくく、っはーっ、いや久々に笑わせてくれる。うむ、中々飽きぬ見世物よ」

 

ナチュラルにディスって来やがってこの野郎。思わずジト目になる。

 

「しかし何だな、貴様は在り方と思考の乖離がその様な生き方として現れているのか……面白い事には変わりないが……そのままではつまらん」

 

先ほどまでの雰囲気から一転、背筋を駆けあがる様に肌が粟立つ。

 

「場は我が整えてやろう、貴様に試練を与える。試練を乗り越えたら、我との交渉の席へ着く事を許そう」

 

そう宣言するギルガメッシュの顔は先ほどまで馬鹿笑いしていたのが信じられない程に透き通った自分に自信があり確かなモノを積み上げた事のある人物の顔だった。

 

「おい、ちょっと待て」

 

口を挟んできたランサーが俺に話しかける。

 

「オメーはコイツの試練とやらに乗るのか?」

「んーーー、出来れば避けたいってのが本音だけど受けないともっと面倒になるだろ。

 どんな状況でも殺傷能力がある武器を大量に持ち出して無差別攻撃が出来る奴だぞ? ソレを回りに向けられたら俺は困らんが士郎君がコレに突貫するじゃん。

 それは元教師としちゃ……ちょっとなぁ」

「ほお、貴様はあの小僧の為に我の試練を受けると?」

「……知り合いが不幸になるのはもう見飽きたからな、そろそろ周りが幸せになっても良いだろ。その為にある程度の実力は付けたつもりなんだし」

 

そう言うとランサーは白け顔、ギルガメッシュは笑い、ライダーとアサシンは困った様に笑っている。

えっ? 何この反応。

 

「理由自体はふざけているが実力は見せている。ならば我が用意する試練を受ける資格はあるとしよう。

 三日後にまた此処へ来い。あぁ、貴様の中身、それに貴様の人間性をさらけ出す覚悟をしておけ。

 雑種共が来ても構わんが試練を受けるのは貴様一人、手出しは一切許さん」

 

そう言い放ち手に持った飲料を飲み干して缶を投げ捨てる。直ぐに背を向け神社のある方へ進んでいく。

するとランサーもギルガメッシュが進む方へ歩いていく。

 

「アイツが何するつもりか知らねえが監視位は必要だろう。俺が張り付いておくからオメーらは一度戻れ」

「んっ、じゃあ頼む。ライダー、アサシン、一度戻ろう」

 

ランサーにギルガメッシュの監視を任せて再び冬木に戻る。

 

 

 

「よう、コレで俺の方は約束を守った。次はテメーが守る番だ」

 

そう言いながらランサーがギルガメッシュへ奇妙な形をした鋸と鳴動する肉片そして聖杯を投げ渡す。

鋸の名は『クルッジ』元は巨人ウルリクムミを倒すのに使用された工具であり天地を切り分けるのに使用された。

この切り分けるという部分を利用しギルガメッシュはランサーを使い、聖杯の中身を切り離し持ってこさせた。

 

「貴様を動かさずとも結果は変わらなかった様だがな」

 

道化の発言を思い出し笑いをしながらソレ等を受け取ったギルガメッシュは鋸と聖杯を蔵にしまい、片方の手で肉片に圧を掛ける。

 

ぶちゅり

 

そんな音を立て潰れた肉からは墨汁を濃くした様な光を飲み込む黒が溢れ、地面へ吸い込まれていく。

 

「さて、残り三日。存分に準備をするとしよう。

 ランサー、貴様も少しは働いてもらうぞ」

 

肩を竦めるランサーをチラリと見ながらギルガメッシュは蔵を開く。例え周囲に人が居ようと彼等はソレを認識出来ない。

日常の直ぐ横で非日常が蠢きだす。神話に彩られた様々な道具がその真価を発揮し人知れず異界が造られていく。

 

「神の残り香、異なる世界の来訪者、悪意に生命の泥。如何様な結果になるか……イレギュラーが入ったこの世界の更なる先、貴様は最高の依り代になってくれるだろう? 勇者よ」

 

 

 

ホテルに戻って三日という準備期間の事を考える。試練って何だ?

十中八九ドンパチだろうと改めて手持ちの道具を見直す。リレイザーに装備各種、ポーションが幾つか。

だが戦って勝って……それってノリマロの性格考えるとそれで済む訳が無いと思う。

アイツが試練云々言ってるのって単純に欲求不満だから……という事はアイツの欲求を満たせばそれで丸く収まる?

何か引っかかってる気がしてホテルで唸っていると電話が掛かってきた。

聞けばどうやら探し人が見つかったらしい。3日しかない。直ぐに動こう。

 

 

 

3日後、大宰府に全員が揃った。

 

 

 

儀式の参加者全員で大宰府に向かうとランサーが出迎えてくれた。

 

「よう、こっちだ」

 

ランサーの案内で境内を進み、鳥居を潜ると同時に違和感を覚える。

辺りを見回せば薄い霧に包まれており、地面は少し濡れていた。

 

「結界ね」

 

凛の呟きに納得しながら辺りに視線を飛ばしていると金の粒子が集まり人型を形成、古代の王が降り立つ。

 

「良く来た、貴様には二つの試練を与える。見事乗り越え、我との交渉の席へついて見せろ」

「おっと、俺の方が先約だって事。忘れてるんじゃねーだろうな」

「っち、分かっておるわ。さっさと済ませろ」

 

二人のやり取りを困惑しながら見ているとランサーが手に持った槍を此方へ向けて来た。その行動に問いただすマクレミッツ。

 

「ランサー! 何を!?」

「悪ぃなマスター、俺が望んだ闘争はこの後じゃぁない。『今』『此処』でこそ本気のコイツとやれる」

 

ランサーの眼が本気だと言ってる。こういう目をする奴はヴァナディールで何度も見て来た。

理由は様々だけど自分の意思を絶対に曲げないタイプ。まさか此処でそんな目で見られるとは思ってもみなかった。

 

「ダメ元で聞くけど今じゃないと駄目か?」

「おうよ。時間は『今』場所は『此処』でなけりゃオメーさんは本当の意味で本気にならねーだろ」

「この闘いの先じゃ駄目なんだな」

「おう」

「何に置いてもやりたいと」

「おう」

「そう……じゃぁ、やるか」

「応!!」

 

「ちょっと待ちなさい!」

 

気合を入れたのに凛に止められた。

 

「何だよ嬢ちゃん、折角やる気になってんのに止めるなよ」

「私達の目的はそっちのギルガメッシュなのよ、ランサーとソイツが戦う必要無いじゃない」

「はっ! そもそも俺の願いは闘争だ。なのに聖杯戦争では闘争は望めずサーヴァント同士での争いもピンと来る奴がいねぇ。

 例外は後ろのコイツ位かと思ってたが……サーヴァントじゃなくても歯ごたえがあるコイツが居る。いや、むしろコイツの方が何が出てくるか分からないワクワク感がある。

 魔術師である嬢ちゃんにゃ分からんだろうが、これは戦士としての闘いだ。

 

 俺に此処まで言わせておいて尚この闘いを阻むなら……嬢ちゃんから先に涅槃へ送るぜ」

 

ランサーの気迫に思わず一歩後ろへ下がる。

 

そんな二人のやり取りを横目に桜と士郎にナイトのAFを付ける手伝いをお願いしている。

 

「なぁ、今更だけど本当にランサーとやるのか?」

「アレが会話で止まる様な類に見えるか?」

 

ランサーと凛のやり取りをチラリと見た士郎が首を振る。

 

「だろ? だからしょうがないさ。アイツの時代の価値観からみれば今回の決闘染みた事も特別な事じゃないんだろう」

「あの……先生なら大丈夫と思いますが気を付けてくださいね」

「んー、生徒に心配されると期待は裏切れんな~……んで? 士郎君は何でそんなに不満げなのよ」

「いや……別に不満って訳じゃないんだ。ただランサーと戦う必要は無いんじゃないかなって、話せばわかるだろうし……」

「君さ、病気の自覚ある?」

「へ? 病気?」

「やっぱ自覚無いか……桜ちゃん、君この子に惚れてるなら士郎君の精神疾患を治す所から始めな。じゃないと……アソコに居るアーチャーみたいになるよ」

 

呆けている士郎君を他所に桜ちゃんに士郎君の病気の詳細を伝えておく、アーチャーが何か頭抱えてるけどさっきの会話聞こえてたのか?

何だかんだで装備を取り付けるのは終わったのでまだ言い合ってる二人の元へ。

 

「はいはい、ソコの二人はイチャイチャしない。当事者の俺がやるって言ってるんだから子供に凄むんじゃねーよ」

「何だよ、少し位は俺がやる気を見せても良いだろうが」

「そーいうのはね、子供相手に見せるんじゃなくて俺に対して見せりゃいいだろ」

「んなっ! 何でアンタはやる気満々なのよ!」

 

凛の大声に対して大きく踏み込み剣を振り下ろす。剣の軌道は凛に当たる様なモノじゃなかったがアーチャーが前に出て双剣で防ぐ。

金属同士のぶつかり合う甲高い音で流石の凛も口を閉ざす。

 

「教え子を殺すつもりか?」

「当たらんのは目に見えてたでしょ。それでも防ぐ辺りは心配性なの直って無い……というか直さなかった結果かね」

「貴様っ」

 

剣を退けてランサーに向き直る。

 

「審査員もソコに居る事だし、そろそろ始めるか」

 

そう言いながらギルガメッシュを指さす。

 

「っは! 我に貴様らの闘いの裁定をしろと?」

「どうせ見てるだけじゃ暇だろうし、見届け人としちゃ最高だから良いだろ」

「性格は兎も角、格としちゃ一級品だからな……」

「ふん。良かろう、試練の前の前座として相応しいか、この我自ら裁定を下してやる。存分に足掻くが良い」

 

開けた土地、霧で少し湿る土の匂い、少し流れる風が木々を揺らし葉の擦れ合う音が耳に届く。早朝に野原を散歩した時の様な匂いに身体に入った余分な力が抜ける。

冷たい空気を胸一杯に吸い込むと頭が冴える。戦う前の独特の高揚感を覚えながら視線をランサーへ。

互いの距離は15メートル程で動き出して接触まで数秒かかるのが普通だが、あのランサーなら一瞬で距離を潰してくる。

待ちの姿勢は相手にアドバンテージを渡すようなものなので仕掛けるなら此方から。

ランサーの全身を俯瞰して見ながら口に出さず自分へバフを掛けていく。ジョブの縛りも外して反動が体へと還ってくる。

正直な所、ランサーとの戦闘は短期決戦にしたい……けどそう上手くは行かないだろう。どう考えても此方が格下。

ヴァナディールでの戦闘経験は周りの誰かと共闘する事が殆ど。個人対個人というのはほぼ無く、個人対群れが過半数を占める。

当然此方が群れで相手が個人。それに対して向こうは個人戦、しかもゲリラ戦のスペシャリスト。

いくら考えても此方の分が悪い。

 

なのでごちゃごちゃ考えない。

 

闇の王の討伐戦に補給部隊で指名され、あちらの軍に目を付けられ延々追い廻された時。生き残る事だけを考えて手段を択ばなかった時の様に。

 

何も 考えず 本能のままに。

 

 

 

衛宮士郎がその時目にしたのは有香の全身から立ち上がる湯気とバチバチという電気が走る音。そして次の瞬間には轟音と共にランサーと有香が視界から消えた。

 

 

 

有香の取った手段は至極単純。最初から全開のパワープレイ。

各種バフに加え奥の手の一つである【フィジカルエンチャント】も使っての速攻。

大きな違いはフィジカルエンチャントで雷属性を体に付与しても負荷が殆ど無い事。予測ではあるがバルディエルが残した『起源』とやらのお蔭と思ってる。

間延びした体感時間の中で影から雷のクリスタルを目の前に投げ出し体当たりで砕く、溢れ出る雷を余す所無く身に纏い雷速でランサーの後ろへ回り込む。

 

真後ろからの切り下ろし。その一撃が入ると思った瞬間にランサーの身体は反転し石突きがエクスカリバーの刃を捉える。

力で押し切るが、ランサーの動きの方が早く避けられる。この速度でも追い付けないとかバグじゃないのかと疑ってしまう。

離れない様に前へ、リーチ差があるので兎に角離れない。常に動きながら相手へ追い縋る。

 

左からの横薙ぎ、ランサーからの突きをスライディング気味に避けながら全身のバネを使い切り上げ、勢いを乗せたままジャンプを行い全体重を乗せねじ伏せる様に力を込めた袈裟懸けを行うがランサーの技巧によって弾かれる、弾かれるとは微塵も思っておらず体制を崩してしまい左肩を抉られるが避ける動作を利用しリスク承知の左回転からの発勁を込めた裏拳を叩きこみ右の剣をランサーへ向けて突き入れる。

だがランサーはソレを屈みこみ避けるがソコに対して潜り込んだランサーの頭目掛けての膝蹴りを放つ。

どれか一つでも決まればそのまま流れで持って行けた連撃を悉く対処していくランサー。

 

横薙ぎを上半身のスウェーで避け間合いを潰しながら顔面に向けて槍を突く、寸前で避けられた槍を即座に戻し下から来る剣を槍で受け右へと流し浮いた有香の下へと潜り込み正中線へ向け槍を繰り出そうとした所を上からの攻撃で止められる。

戦闘感がここだと全身に巡る力を使い剣をはじき返し体制を崩させ左肩を抉る。そのまま腕を捥ぐつもりで回転を掛けるつもりが抉るよりも先に相手が例のバリアを足場に回転をする。

不意の動きに対処を誤り相手の盾を利用した裏拳を思わず槍で受け止めると槍を通して両手に麻痺が来る、やらかした! と思ったが止まらない攻撃に思わず笑みが零れる。迫りくる剣先を槍で逸らし、飛んでくる膝蹴りを腕を交差させクロスガードにして受ける。

 

ランサーは膝蹴りを受けたオマケだと言わんばかりに後ろへ跳びながら有香の顎を蹴り上げる。

 

対して有香は鼻血が流れるのを無視、【ケアル】で無理やり直して前へ。

攻撃を継続しつつ【雷精霊召喚】を行い周囲にエレメントが漂い始める。場の状況がマズイと判断したランサーが場所を移す為に跳ぶ。

それをATFを利用しての跳躍で先回りして叩き落とす。攻撃の瞬間ランサーの「げっ!」という声が聞こえたが攻撃自体はキッチリ防御はされた。

 

ギルガメッシュ戦の焼き増しの様に雷を剣に流し込みながらATFを利用して地面へ落ちていく。雷で出来た光の柱が轟音とオーロラと共にランサーが居る場所へ出来上がる。

決め技としては良い手札だが一度見せていた事、そしてランサー相手には距離が開き過ぎていたのが仇になった。手ごたえが無く視線を辺りに飛ばしランサーを見つけた時には既に向こうの準備が整っていた。

ランサーが投擲の構えで右手に持つ槍から朱色のオーラが溢れ出す。

 

「『刺し穿つ死棘の槍(ゲイ・ボルク)!!!!』」

 

ランサーの手から離れた瞬間、空気を切り裂きソニックブームを発生させながら此方へ進む。

確実に来る死のイメージ、ソコから発生する恐怖、そして恐怖以上にこのままでは負けてしまうという事実に怒りが湧いてくる。

槍が此方へ届くまでのコンマ数秒以下の時間【とんずら】のアビリティを発動させる。飛んでくる槍以上の速度でバックステップで下がりながら槍の速度に合わせる。

そこからは槍を屈服させる闘い。槍を弾くと直ぐに軌道を変えて此方へ向かってくる槍を只管迎撃する。

時に槍を踏み台にして距離を取り、空中では雷精霊を潰して雷を補充し、弾き切れない時はATFを使い穂先を避け続ける。

そして溜まった雷を全開にして剣を振り下ろし槍を地面へ縫い付けた上で左手でゲイボルグを掴み取る。

 

槍がガタガタと動きクーフーリンへ戻ろうとするがソレを視線を注ぎ【あやつる】を使う。一時的なバインド状態となりその場に留まる槍。

ランサーが驚き徒手空拳で身構える。

 

「いくぞランサー。雷と共に」

 

影から出した雷のクリスタルを潰し溢れ出るエネルギーを取り込む。取り込んだ雷を呼び水にして自分の胸の奥から湧き上がる物を感じる。

一歩を踏み出すと足が踏みしめる先は10メートル程先になる、一歩の距離が途轍もなく広がりその動作も素早く視界に移る風景がビデオの早回しの様に映る。そんな中でランサーの姿だけははっきりと捉える事が出来る。

ランサーとの距離は50メートルも無い、数歩で縮まる距離。空気を掻き分けながら湧き上がるエネルギーが腕を通して剣へと伝わる。

あと一歩でランサーの目の前、剣への供給が限界を超え雷光が溢れ体の奥から雷鳴が鳴り響く。

 

「【ナイツオブラウンド】」

 

エクスカリバーを装備する事で使える固有WSを自分の言葉をトリガーに発動させる。言葉と共に剣へと雷とは別種の光が溢れ出す、同時にランサーの周囲へ十数個の光球が浮き上がり周囲をランダムに旋回する。

勢いを殺さず最上段からの振り下ろしをランサーへと叩きこむ。

ランサーの眼はソレを鮮明に捉え有香が剣を振り下ろす速度と寸分違わぬ速度で素手で剣の腹を受け、逸らす。体に流れ込む雷に例え体を焼かれようと、意地で反撃の挙動を見せようとする。

 

と同時に

 

全ての光球から同時に有香が行ったのと同等の威力が込められた斬撃が、雷が様々な角度からランサーの鎧と肌を割く。

 

 

 

視界を覆う雷光と轟音が晴れた時に見えた光景は息を荒く立ち尽くす有香と、焼け焦げ血を流しながらも満足気に不適な顔で笑うランサーだった。

槍がランサーの手元に戻り、戦闘の再開かと思えたがランサーが背を向ける。身体が解ける様に金の粒子を立ち上らせながらランサーはギルガメッシュへ問いかける。

 

「さぁて、どうだ? オメーの裁定とやらは」

「ふん、前座としては及第点だな。だが最後の技は悪くなかったぞ、ランサー」

「イヤミかよ、槍を堕とされ空手の苦し紛れを技とはな」

「っは! 精々座で精進するのだな。 前座ご苦労、では取り決め通り貴様の身体を使わせてもらおう」

 

そう言ったギルガメッシュがランサーに向けて蔵から取り出した金の杯を押し込む。そしてランサーの足元から湧き出す黒い液体。

 

「ランサー!」

 

思わず声が出た。その言葉にランサーが首を傾け此方を見る。

 

「何時か何処かでまたやろう! 次は俺がきっちり勝つ!」

「あぁ、またな」

 

笑ったランサーを一気に取り込む液体。時折黒の中に赤い明暗を繰り返す点が覗くソレはランサーの全身を覆い、彼の持つ槍さえも覆ってしまう。

暫くランサーの形を保っていた液体は収縮と膨張を繰り返して遂に形を崩し小さな塊となってしまう。

 

それをポーションを飲みながら眺めている。

やがて小さな塊から影が立ち上がる。

烏帽子に和服、剣を携えた黒い影。

 

「さて、此処からは我が用意した試練を与える。貴様の中身は知らんが身体の方はこやつの氏子であろう、我と交渉の席に着きたければ神殺し位の箔を付けよ」

 

ギルガメッシュが言い終わると人影を覆う黒が消えていき、中から人が現れる。

 

「バーサーカー。天神、菅原道真公。ここに見参した」




お疲れ様です。

(原)作中大活躍のランサーと戦わないとか無いわー。
という我儘から生まれた回でした。

今更ですが冬木が福岡にある設定はFGOの地球儀(カルデアス?)の光点の位置から設定を持ってきてます。
そして福岡で神様っていうと天神様。

じゃあコレしか無いでしょ。という安直ではありますがオリサーヴァントとして出張ってもらいました。
次回は……年内に出せるように頑張ります。

それでは次のお話でまたお会いしましょう。
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