祝福と目の覚めない悪夢   作:タラバ554

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2022/06/19 話数を間違えていたので修正



29話 試練と答え

「バーサーカー。天神、菅原道真公。ここに見参した」

 

相手の名乗りに頭が真っ白になる……今天神様言ったか?

思わず衛宮一行の方へ顔を向けると、向こうも概ね口を開けてたり眉根を寄せてる顔だった。

 

「あー、えっと……英雄王? ちょとシャレにならんのですがマジ?」

「フハハハハ! 大いにマジだ! 我と交渉の席に着くというのであれば神殺し位は最低限の『格』というものよ」

 

おっふ……そりゃ最古の王で権力って言葉を体現したような人物だから確かにそうかもしれんが……。自分がソレと交渉とか思う訳ないじゃん!

つーか神殺して……ヴァナの麒麟じゃ駄目? 駄目だよねぇ……変な笑いを出しながら天神様……菅原道真公を見る。

烏帽子に和服、腰に大小の太刀に足は具足装備。何かアンバランスに見えるが……バーサーカーだからそんなものかなと思い頭を戦闘に切り替える。

 

「死合の相手が学者……いや、今は教師と言うのか。中々皮肉の効いた相手よな」

 

そう言いながらバーサーカーは腰の太刀に手をかける。

自然と重心を落としフラットに動けるよう足に力を入れ相手の全体を見る。動きを見逃さない様に。

ゆったりとした所作、お手本の様な刀の抜き方に息をのむ。

抜き放った刀を両手で持つ。この一連の流れがまるで能を見ている様に思えてくる。

道真公がこちらへゆっくりと歩いてくる。動き出そうと思うが意思に反して体が動こうとしない。

道真公の間合いに入り両の手に握られた刀が逆袈裟懸けで振るわれる。刀はあっさりと俺の首を通過、抵抗なく落とされた首は転がり視界は落ちていく。

回転しながら落ちていく視界、それでも瞬き一つ出来ず地面が迫りくる。

 

首が落ちた瞬間。目の前には道真公。逆袈裟懸けに振るわれる刀。

 

「うっ、おおおおおおおおおおおおおおお!」

 

気合を入れ咆哮と同時に体が動き出す。左手のイージスで刀を弾き、その反動のまま距離を取る。

大量の冷や汗を流しながらエクスカリバーを前に出し左手で首を触る。確かに首は繋がっている……だがさっき見た光景は何だ?

荒い呼吸を整えながら考えを巡らせるが答えは出ない。そして相手は悠長に待つ事もしてくれない。

 

道真公の先ほどまでのゆったりとした所作はそのままに移動距離が大幅に上がる。動作だけを見ていると目測を見誤ってしまう。

間合いの外で刀を構えたと思えば既に間合いに入っていたり、振りかぶったと思ったら既に降りぬいていたり。

見た目の動きに騙されないように多少血を流しながらソレ等をいなしていくのだが……切られる度、何かがごっそりと削られる感覚がある。

体力でも魔力でも無い何かが切られる度に抜けていく。激しい運動で体温が上がっているはずなのに体の奥底の部分が冷えていく感じ。このまま攻撃を食らうのは非常にまずい。

 

「このっ【サンダーV】」

 

盾で受けながらのサンダーでの牽制、隙を生んでの反撃を目論んでいたが道真公は意に介さず返す刀をそのまま振り下ろしてくる。繰り出そうとしていた突きを刀との間に滑り込ませ受け流す。

道真公が攻撃を止めて刀を見ながら立ち止まったので離れて息を整えていると話しかけてきた。

 

「ふむ……お主、どれ程の命を蓄えておる?」

「は?」

「我が友である『死』を……幾度もその身に受け倒れておらんのは複数の命を宿しているのか?」

「言ってる意味が良くわからんけど……俺の命は一個だぞ」

「そうか……幾度体を切っても死なぬなら……やはり首を落とすか」

 

その言葉を言い終わると、目の前の道真公が掻き消えた。

 

そして再度見える首が落ちた時の光景。今度は後ろから首が落とされる。そして視界が暗転するとまた自分の首が斬られる直前に戻る。

先ほどの光景を避けるため全力で左へ倒れこみながら後方に向けて剣を振るう。

金属同士が当たる音が響く。併せて【ファイア】を牽制で顔へ放つが気にした素振りも無く追撃を仕掛けてくる。

派手に転がりながらATFを使った跳躍で追撃を避ける。空中で雷のクリスタルを砕き雷を補充、【リジェネV】にフィジカルエンチャント、更に対アーチャー戦で使った空中でのATFを利用した加速で更なる加速。

継続的な速度と軌道変更としては過去最高の速度で動き回りながら道真公へ迫る。

 

「まるで猫……いや、虎よな」

 

再度響く金属音。何度か打ち合ったにも関わらずケロリとしている表情を見るにやはり雷に対しての耐性が高い。直ぐに離れる。

速度を載せてる分、激突した時の力はこっちが上だが素の状態での力は向こうのが強い。バーサーカークラスってのが効いてるのか鍔迫り合いじゃ負ける。

雷速で空中を飛び回っている俺と道真公の視線が合う……一瞬とかではなく確実に此方を見ている。

 

「雷を纏う虎……雷獣か……概ね使い方は見た。雷の扱いに長けている様だが……私も伊達に天神と呼ばれてはおらん」

 

道真公が刀を上へと掲げると一瞬の光と音。それが落雷だと分かったのは道真公がその雷を身に纏っていたから……嘘だろ!? 見ただけで真似した!?!?

次の瞬間、勘で体を右へひねると左腕を脇から肩へかけて斬られる。痛みに顔をしかめながら右手のエクスカリバーを捻りの勢いで振りぬくが当たらない。

どうやって空中に居る俺の所までと思ったが俺が設置したATFを足場にして跳んでいる。というか俺より跳び方がスムーズだ、いくらバーサーカークラスでフィジカルが強いって言っても限度あるだろ!!!?

相手の理不尽さを噛みしめながら宙を跳びまわる。斬られた左脇を【ケアル】で繋ぐがまるで肩が外れた様に上手く動かせない。

技を盗まれ、体は負傷、純粋な強さは相手が上。ハードすぎる!

考えろ、考えろ、考えろ! 体を治すのが先か!? それとも攻めるのが得策か!?

 

「とりあえず【グラビデII】!!」

「む?」

 

空中を跳ぶ道真公にグラビデIIをかけて行動の阻害を行う。3割の移動速度ダウン!

これなら多少はと思った瞬間、危険を察知してATFを使い軌道を変えると下顎から頬にかけて斬られる。

 

「あっぶね!!」

 

全体の速度を落としても瞬発力までは落とせないって……サーヴァントまじえげつねぇ……。

冷や汗をかきながら兎に角デバフをかけながら相手の動きを見る。各種デバフをかけたおかげで動きが鈍りやっと視認出来た。

体に電気を流して底上げしてるんじゃなく、体の一部を雷そのものに変えて移動してやがる‼‼

フィジカルエンチャントの模倣とか思ったけど、そんなものじゃない。俺より使い方が張るかに上手い!

向こうのより有利なモノを見つけろ! その上で相手に不利を押し付けるには?! ……あった!

 

閃いた直後、直前まで周囲に設置していたATFを消す。その上で空中を跳ぶ道真公に対して魔法を放つが、道真公はそれを分かっていたと言わんばかりに宙を蹴ると跳ぶ方向を変えて見せた。

 

「嘘ぉ! 足場無いのに!? なんで?!」

「雷は空気を割いて飛来する。身に雷を宿しその速度を体現すればそう難しい事でも無かろう」

「んじゃ何で態々足場使ってたんだよ!!」

「楽だからの」

(楽の一言で他人の作った足場使ってたんかい)

 

そう思った事が一瞬の隙になったのか、後方に居たはずの道真公は刀の届く範囲にまで接近していた。

宙で体を捩じるも道真公の鋭い一閃は左脇から首にかけて走り。道中にある骨なぞ存在しないかの如く通り抜ける。自分の体の中を冷たく鋭い金属が通る感覚と肉を割かれる痛みと熱を感じながら体から力が抜けるのを感じる。

働く思考に意を反して体は動く事を止め地面に向けて落ちていく。

 

(あっ……これ死んだ)

 

斬られた場所から体に染み込む冷たさが今までと何かが違うと本能に訴えかけてくる。

今まで何度か見てきた走馬灯、思考に対して酷く時間が遅い。

 

訳が解らないままエヴァの世界に辿り着き、自殺を選んだらヴァナディールに辿り着き、がむしゃらに生きてある程度の満足を持って老衰したらFate世界。

 

(次があるかも分からないし、長い人生の終わりが道真公に殺されて終わりってのは流石に予想外だけど……世界は違えど日本の生まれ故郷の地で逝けるならソレも良いんじゃ……)

 

諦めが頭をよぎり周囲の時間が早くなり、落ちる視界に元生徒達が映る。

泣きそうな間桐桜とその後ろに立つライダーを見て、やっと感じていた既視感に思い当たった。

エヴァ世界で結ばれた家族の面影を二人に感じてたんだ。

 

思い至れば思い出がフラッシュバックしてくる、出会って、遊んで、喧嘩して、仲直りを切っ掛けに家族になって……、子供が出来た時は戸惑いと不安が、生まれた娘を見て、触れた時には涙と喜びが溢れた。

 

死に体だからこそ、自分が居なくなった先を考える。

このまま死んだら又何処かの世界に行くのか? それともコレで終わり? 残されたあの子たちは? 俺の中の奴らは?

こんな崖っぷちではない、既に崖から飛び降りた様な状態になってやっと自分を理解する。

俺はあの子たちに自分の家族を重ねて幸せを願ってるんじゃないか。

 

このままじゃ死ぬ。

 

―――あの二人は俺の家族じゃない。

 

何も出来ずに死ぬ。

 

―――関係は薄い赤の他人だ。

 

死んだら何も出来ない。

 

―――それでも。

 

それは駄目だ。

 

―――面影が見えるあの子達を。

 

死んでも死にきれない。

 

―――幸せにしてやりたい。

 

 

 

 

 

 

「―――~~~っっ‼‼‼‼」

 

 

 

形振り構わず、涙と血を流しながら声にならない叫びはある変化を起こした。

途端に有香の傷から溢れていた血は赤から青へ変わり、粘性を高め意思があるスライムの様に溢れ出るのを止めて体内へ戻りながら傷口を無理やり閉じていく。

自由落下を続けている足の先には虹色の光彩を放つATFが金属同士が擦れる様な音を上げながら何重にも重なり続ける。

頭から落ちていた姿勢をATFを引っかける様に出してあえてぶつかり足を地面に向ける。

地面へと激突する直前、地面との間に何重にも展開したATFで足場を作りソコへ着地という名の激突をする。

足は踏みしめるようにATFを捉え、上半身は衝撃を受け流す様に伏せる。

まるで虎が敵に襲い掛かる寸前の様な態勢。そして両足からは明らかに人の体から聞こえて来てはいけない音が周りに響く。肉が裂け、千切れ、砕ける様な音が離れている衛宮達の耳へと届く。

 

付けている防具で明確には見えないが裂けた太ももから覗く青い液体、士郎の目にはそこから更に白い物も微かに見えている。

 

下方で伏せる有香に追撃を加えるべく道真公が宙を蹴る直前、上を向く有香と目があった。

 

涙と血反吐を流しながら見ているが、その目が捉えているものは先ほどまでの『道真公』ではなく。障害として『人』を見る目。

道真公が嘗て藤原時平から向けられた視線と同種の視線に一瞬体が硬直してしまう。その瞬間道真公の体を通り抜ける様にナニかが通過する。

 

下から聞こえてくる轟音と両手首から感じる熱に溢れる血、それを見てやっと攻撃された事に気が付く。

雷を宿し、雷と同等の速度で動けるはずの道真公が知覚出来ない速度で攻撃された。自分の損害と相手の見せた手札から決着がすぐソコまで来ている事に気づき視界を上に向けれる。

はるか上空でATFを足場に有香が伏せている。豆粒の様に小さいソレを目を凝らして見ると道真公の刀と両手が粘膜と化した血液に包まれ、両手は端から溶かされている。

 

「道真公……あんた、邪魔だ」

 

血涙を流しながら細める目は充血し赤く染まるが、それ以上に光彩が怪しく紅く染まる。

 

「雷獣ではなく悪鬼羅刹の類であったか」

 

有香の喉から溢れた粘膜は体を伝い腕を包み、筋肉を模して形作られる。口から洩れる息は熱く外気温との差で白く曇り消えていく。

対する道真公は両手の先と獲物を失って尚、戦う意思を捨てておらず体を電に変えながら口を開く。

 

「ぶつ斬りにしてやる」

「東風こち吹かばにほひおこせよ梅の花 あるじなしとて春を忘るな」

 

一方は殺意を口に出し、もう一方は心を落ち着かせる為の和歌を詠む。

互いに戦いを終わらせる為の必殺を用意する。

ATFを踏み砕きながら音を飛び越えて道真公へ落ちていく有香。

有香の周囲には光の玉が、道真公の背後からは淡く光る梅の木が出現する。

 

 

 

「【ナイツオブラウンド】」

「宝具・飛梅」

 

 

 

手の無い腕を構え、背に梅の木を咲かせて殴りかかってくる道真公。

そんな男を1秒に満たない世界で首を、腕を、胴を、脚を、肩を、膝を、肘を。同時に出現する合計13の刃が道真公を守るように生える梅の枝ごと両断する。

跳ねた首に目線をやると瞳が黒く染まり満面の笑みを浮かべていた。端から溶けるように塵となりながら口を開く。

口だけ故に正確な言葉はわからなかったが良くない事だけは解った。

 

満身創痍で地面に激突する様に着地し道真公の体が全て塵へ変わったのを見届けた。

剣を杖替わりに立ち上がり少し後ろへふらついた時、背後から腹を貫かれる。

道真公に斬られた時の様な感覚に目の奥がちかちかと明滅する。

痛みの元を確認すると梅の枝が腹を貫き蠢いているので左手で枝を掴み動きを止める。エクスカリバーで枝を掃おうと右手を振り上げた所で別の枝が右手を襲う。

貫いた枝は絡まり、逃がさないと言わんばかりに動きを阻害し更なる枝を放ってくる。

左肩、右足、左脚、喉を貫かれ、それぞれが絡みつき肉を割きながら締め付ける。

魔法で対処を試みるが梅の木は魔法を受け付けず文字通り手が出ない、体に異物が入った状態では回復魔法もまともに使えない。

梅の枝は成長を続け俺の体を持ち上げ宙へ浮き自重で枝は更に深く刺さる。

俺から命を吸い尽くすかのように梅は成長を続け花を咲かせると俺を貫いている枝から体内に向けて何かが音もなく入り込み思考を侵していく。

 

 

 

自由を奪われ、体を縛られ、全身にくまなく入れ墨をほられる。断続的な痛みを感じながら只管耐える。

水のみを与えられ仕方なく飲むが水に入れられた何かで段々と思考が鈍ってくる。視界が揺れて意識が落ちる。

意識が戻ると目の前に迫る人、抵抗できない体、突き立てられる刃物、皮を割かれ、目玉を抉られ、舌を切られ、指を捥がれ、はらわたを抜かれ、首を落とされ。

俺から奪われたモノは祭壇へ捧げられ神への供物として捧げられた。

俺をバラした奴らが叫び声を上げ神へと祈りを願ってる。

焚いている香のせいで頭がトんでるのか、残った俺の体を喰い、犯してやがる。

神への供物として捧げられた? 何で俺が捧げられた? 無力なこの身に何をさせるつもりだった?

殺され、勝手に呼び出して、また殺されて……この世は何て理不尽なんだ。

 

世の中は狂ってやがる。

 

 

 

梅が消えたことで体に大きな穴を6つもこさえた俺は地面へ投げ出される。落下の衝撃でトリップしていた意識が戻った。

梅の木が消えた事で回復は出来るが流れ出る血が多すぎて魔法では間に合わない……いざという時のために取っておいた【女神の祝福】を使う。

瞬時に傷は癒されるが喉に入った血で咽ながら起きる。血を吐き出し辺りを見回すが道真公は居ない。

身に着けていたナイトAFは梅の枝に貫かれて穴が開いている状態。奪った道真公の刀は何故かゲイボルクへと変わっている。

ふらつきながら槍と防具を外して影へしまいながらノ……じゃない、英雄王へ向かう。

 

 

 

英雄王が満足したのか解らんが黄金のテーブルに椅子と杯で酒を飲む位には余興になったらしい。

 

「えーっと、英雄王。交渉の席に着くための格は得たって事で良い?」

「うむ、貴様が最後に見せた『アレ』はとても興味深い物だった。我との席に着く事を許そう」

「(アレ?) はー、んじゃ失礼してっと」

 

そう言いながら影から椅子を出して座る。血が足りないのか少々頭が揺れる。

 

「さて、勇者にして来訪者よ。貴様には二つの試練を与えるとして一つ目の試練を見事に超えた。

 故に二つ目の試練を与えよう。コレを超えることで貴様は真に道化から脱却するであろう」

「……そっか、ランサーの分は単純にランサーが戦いたいってだけだから道真公が試練の一つ目……もう体力使う試練は無理っす」

「ふん、そんな結末の見えたつまらん試練なぞ我が用意する訳が無かろう。たわけが」

 

そう言い放ち手持ちの酒を飲み干して杯を置いてこちらに目線を寄越す英雄王。

眼を細めながら試練の内容を切り出す。

 

「試練とは問だ。我の出す問に答えを示せ」

 

そう言うと一つの鎖を取り出してテーブルに置いた。

 

「我は嘗て唯一と言える時間があった。何者にも代えがたい満たされた時間だ。それを取り戻す為には何が必要だ?」

 

鎖を見る目は優しく、思いを馳せる顔はとても穏やかで……ってそんな事考えてる場合じゃない。

テーブルに出された鎖……これって明らかにエルキドゥですやん。話の流れ的にエルキドゥ取り戻す方法って事? えっ? 難題すぎる……。

 

「えっと……満たされた時間ね。それ自体は共感出来るけど方法……方法……」

 

鎖は……あれ? 本人じゃないんだよね? つまり魂的なモノはこの場に無いから俺が考えてる方法じゃ無理だし……。

あかん、血が足りなくて思考が回らん。

 

「あー、召還する?」

「ほう」

「んっと、あんたが何処まで俺の中を見渡してるか知らんけど……俺って元々この世界の観測世界から来てるんよね」

 

なんか後方からすっげー困惑と怒気を孕んだ視線を飛ばされてるけど無視無視。

 

「続けろ」

「んでまぁ、ここの神っつーか、違うな……創造主? うん、創造主が近いかな。その創造主ってこの世界を作った後に近似世界も作ったのよ。

 そこで座に居るというか登録されてる影法師を引き出すというか呼び出す術式が組まれて縁があるモノを呼び出すちゅー……」

 

あっ、やべ、意識落ちそう。

そう思った瞬間、周囲から現れた鎖で椅子ごと雁字搦めにされる。

 

「ぐえっ」

「戯け、我の試練の最中に意識を飛ばす等。不敬であろう」

「げほっ、えーっと呼び出す方法があってだ。英雄王の縁って信頼する武器に付ける位大事な名前ならソコにも繋がるかなーなんて」

 

赤い目がこちらを見透かす様に覗いてくる。暫く見られていたがやがて目線を逸らされる。

 

「貴様の過去は界を跨いでいるからか見づらくてな、見通す事は叶わんが所作からある程度は解る。……まさか観測世界からの来報とは思わなかったがな」

「んで、問の答えとしては本人じゃなくて記録……しかもデットコピーになるけどサーヴァントとして呼び出せるから……ワンチャン同じ時間を過ごせる?」

「なるほど」

 

俺の答えにある程度満足したのか睨む様に宙を見て試案する英雄王。

とりあえず造血剤とかポーションとか飲みたいんだけど……鎖で動けん。一切動けそうに無いので溜息を吐いて椅子に体を預ける。

 

「決めたぞ」

 

そう呟くと英雄王は椅子から立ち上がり両手を前へ差し出すと黄金の波紋と共に手が虚空に消える。引き出された手に握られていたのは聖杯と……土?

聖杯へ大事に土を入れテーブルへ置き、何をするのかと見ているとナイフで突然手のひらを傷つけ血を聖杯に垂らす。

英雄王の行動の意図が読めずに首を傾げていると杯を掲げて此方へ近づいてくる。

 

「貴様は一つ目の試練で武を、そして泥を被って魅せた。我が思っていた以上の結果だ。

 また観測世界からの来報。更には近似世界とそこにある技術の概要……おかげで『繋がった』ぞ」

「あのー、英雄王? 何をするつもりで?」

「何も、貴様が無自覚に行っていた事を後押しするだけよ」

「へ?」

「臆するな、下地は既に貴様の中にある、コレが一番無難かつ成功率が高い。それだけの事よ」

 

英雄王の左腕が俺の顎を掴み力を籠める。

 

「う”ぉ!?」

 

開いた口に無理やり突っ込まれる杯。

いや待て! 聖杯ごと口に入れようとするな! いくら何でもそんなデケェもんが入る訳ない!

 

「あががが!!!」

「えぇい! さっさと飲み下さんか!」

 

そう言い放つと英雄王が聖杯に蓄えられた泥を俺の口に注ぎ無理やり飲まされた。さらに聖杯を胸に押し込むと体の中に聖杯がずるりと入ってきた。

途端に体が重くなる。全身にまとわりつくだるさと眩暈。

高熱に魘され思考が出来ない時に似た感覚を感じながら意識が落ちる。

 

ソレを英雄王は眺める。目の前に居る人の形をした人の集合体を。

 

見渡せずとも予測は出来る。人が人としての枠を取り除こうと足掻き、辿り着いた末に転がり混んできた器、その器に注がれた人、人、人。

経験を経て器は磨かれ、凡そ鈍らだったモノは過程で不確かながらも芯を得る。

おそらくコレはいずれ聖杯と似たナニカへと至るモノ。それが願望器なのかシステムなのかはさしたる問題ではない。

肝心なのは今、コレに聖杯を加え利用する。

 

「さぁ、勇者にして道化よ。我を更に楽しませろ」

 

 

 

 

 




実に7か月ぶりの投稿!
圧倒的遅刻!

・・・すいませんでした。

医者に余命宣告されたりしましたが

どうにか仕事回して
趣味のゲームやったり動画作ったり
絵を描いたり小説書いたり
なんとか生きてます!

頑張ってこの小説を終わりまで持っていくヨ!
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