祝福と目の覚めない悪夢   作:タラバ554

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6話 分岐

蟲爺の蔵を飛び出してどうにか間桐家の外へ。思いの外【フラッシュ】が効いたらしい。

逃げる為にナイト/シーフに切り替えたが【とんずら】は必要なかったか? しかし思いの外【とんずら】の速度が出てるような?

良く良く考えれば【ファイア】の威力も高めだったような気もする。

 

走りながら自分のアビリティや魔法の効果に少し疑問を感じながらも、走る速度は緩めない。

まだ家から出てほんの1キロ程、空も明るくなり始めたからこのまま駅まで走ってその足で電車に飛び乗ろう。

そう思っていた所で【とんずら】の効果が切れ、速度がガクンと落ちる。だが走る足再度力を入れて逃げようとした所で誰かに襟首を思いっきり捕まれた。

 

「ぐっへ!」

 

予想外の事が起きて思わず咽る。咳き込みながら後ろを見るとそこにはライダーが立っていた。

申し訳無さそうに手を出そうとして躊躇してる所を見ると悪いとは思ってるらしい。

 

「す、すみません。つい手が出てしまい……」

「っげほ。ああ、いいよ。それより何か用か? 急いでココから離れたいんだけど」

 

顔がほんのりと赤いのはさっきの失敗の所為か、それともヤル事ヤッタ俺と顔を合わせるのが恥ずかしいからか。あ、意識するとこっちまで恥ずかしくなる……平常心平常心。

しっかし……純粋に美人なんだよなぁ。確か女神の末っ子でメドゥーサなんだっけ?

自分がどれだけ彼女へ行為を繰り返したか等を棚に上げた思考をしていると、ライダーが折りたたまれた一枚の紙を渡してきた。

それを手に取り表裏を見てみるが特に何かが書かれてる訳では無い。これは何? と聞き返そうと顔を向けるとじっと此方を見ているので思わず黙ってしまう。

美人が無言でこっちを見るのって何か迫力があってつい黙ってしまうんだよね……。

 

「マスターからの伝言があります。困ったら其処へ……」

 

どういう事か聞き返そうと思ったが、ライダーは「それでは」と頭を下げて直ぐに跳んで行った。色々隠す気無いんかい……。ライダーにも俺って魔術師扱いされてるのかな。

貰った紙を一先ず内ポケットへ突っ込んで駅へ向かって走る。改めて自分の服を見るが……破れたズボンに穴の開いた上着、どす黒く染まって明らかにヤバイ感じが目に見える。

どこか……公衆トイレにでも入って着替えよう。幸い着替えは『持ち物』として持ってる。

 

着替えてみたらインナーや下着は物の見事に血で染まってた。まあ空中からスカイダイビング(パラシュート無し)して屋上へダイレクトアタックすれば当たり前か。

良く考えればダイレクトアタックした建物大丈夫かな……深くは考えないようにしよう。きっと妖精さんが何とかした。そう信じよう。

今後の事や移動先の事等、色々と考え事をしながら途中でタクシーを拾って駅へ。博多駅に着いたのでタクシーを下りて構内で切符を買おうと思ったが足が止まる。

 

嫌な予感がする……。

 

駅に入って直ぐに切符売り場へは行かず構内の売り場近くの飲食店に入る。注文した後、一面ガラス窓の席へ移動して人の流れを見る。

地下鉄から出てくる人、JRから降りてくる人、駅を通り抜ける人。

普段と変わりない様に見えるが1つだけ違う。『この駅から電車に乗る為に向かう人』が誰一人として居ない。

気がついた時には嫌な汗を流しながら人の流れを見ていた。

この駅を使う行為を禁止するって事は不特定多数に対して魔術をかけた? 効率的じゃないから人じゃなく土地に魔術を?

だとしてもソレが大多数かつ不特定多数の人間の無意識に働きかけて『普段とは違う交通手段を使う』って行動にさせたのなら……効果だけを見れば十分魔法じゃねーか。

こんな非常識な効果がまかり通る魔術を使う奴と思われたかと思うと頭が痛い。

そりゃヴァナディールの魔法や薬、技があれば特定の範囲、病気や毒、死に対しては強いが日常生活だと色々制限があるんだぞ。こういった術がある方がよっぽど凄いわ……。

 

自分の使えるモノと相手が使えるモノの差にゲンナリしつつ電車での移動は諦める。試しにバスはどうかと調べてみたが、県外へ行くバスへは誰も並んでない。魔術の規模ってどうなってんだ……。

残る移動手段はそれこそタクシーか、個人の車になってくる。

だが少し視点を変えてみよう。そもそもこの世界の騒動ってどの程度の範囲だった?

確か都市規模での災害クラスで其処から先へは広がらなかったような? うん? それは過去偏か? 現代偏だと違うんだっけ……?

あー、細かい所まで思い出せない! イライラしながらも近くのホテルで部屋を取って横になる。これからどうするか。

仮に被害範囲が都市部だけなら冬木市から離れて争い事の期間が過ぎるのを待つのも有りなんじゃないだろうか。イベントに関わらず安全圏でのんびり過ごす。あれ?

 

案外コレって良い案なのでは?

ふって湧いた考えだが悪く無い気がする。確かあの騒動って短い期間……それこそ1週間か2週間、1ヶ月も無かったはず。

 

「って事は……退職する必要無いじゃんか!!!! だー! やらかしたー!!!!」

 

ベッドの上でゴロゴロと転げまわりながら自分のポカに身悶えしながら頭を抱える。単純に暫く離れるだけで良かったじゃねーか!

何だか途端に力が抜けた。……ラーメンでも食べに行くか。

 

 

 

ホテル近くのラーメン屋に入ってとんこつラーメンを食べていると、携帯に着信があった。この番号知ってる人って職場の人位だけど……って、藤村さん?

 

「はい、もしもし。中真です」

『もしもし? 中真先生ですか?』

「藤村さんどうされたんですか?」

『どうされたんですか、じゃないですよ! 今日は出勤の最終日じゃないですか!!!! なのにこの時間になっても学校出てきてないし!』

 

…………………………あ~~~~~~~~~~~~~~っ!!!!

 

「す、すみません! ちょっとトラブルがあって今博多駅の近くに居まして……」

『?? 博多ですか? えっと……取り合えず今日出てこれるんです?』

「あ~~…………すいません、今色々と混乱していて……。昼過ぎには……15時位までに此方から電話しますので……」

『わかりました。じゃあ今度は忘れないようにお願いしますね』

「はい、すいません」

 

電話を切り、内ポケットへ携帯をしまう。と同時に盛大にため息を吐く。

完っ全に忘れてた。引継ぎ資料も渡してないし、このままとんずらは色んな意味でまずい!

っていうか車も学校に置きっぱなしじゃねーか! ファー!

お、落ち着け俺。取り合えずホテルへ戻ってノートPCから資料を送って……そこから出勤するか考えよう。

 

ホテルに戻って資料をメールで送ってから冷静に考えているが別に無理して学校へ行く必要も無いかな。というかあの街に居たくない。

でも車は家に無かったから学校か……結局必要だから行く必要があるのか。

嫌だなー。いっそレンタカーで……あぁ、でもまだ買って1年未満の車を置いて行くのは…………。

 

行くか。

 

気は乗らないが、流石に買ったばかりの車がスクラップになるのは勘弁願いたい。

という訳でホテルをチェックアウトして直ぐにタクシーを拾い冬木市へ。あ、ついでにライダーから貰った紙を見とくか。

四つ折りの紙を開いてみると其処には冬木市の何処かの住所が書かれてる。つまり此処へ行くと悩みが解消?

念のために携帯に住所を入力して調べてみる……住宅街?

 

 

 

時刻は午後14時、どうにか自宅に戻って来た。とりあえず一度学校へ行って、引継ぎ終わらせたら……あ~~~本気で色々気づくの遅れたなぁ。

辞職の必要無かったのに……ハァーーーーーーーーーー。テンション駄々下がりの重い体を引きずって学校へ行く。

到着後職員室で出勤手続き後に校長の所へ行き嘘八百で事情説明をして事なきを得た。校長室を出た所で藤村先生に捕まってしまった。

 

「中真先生大丈夫ですか? 物凄く体調悪そうですけど」

「あー、いえね。物凄くアホな事をしたと言うか、やらかしたと言うか……。今自己嫌悪で一杯なんですわ」

「はぁ……」

「しっかし、学校辞めたらどうすっかな」

「へ? ご家族の所に行くって話じゃなかったんですか?」

「あぁ、ソレ。実は嘘だってわかりました」

 

一瞬の間の後、彼女は盛大に息を吸い込んだ。

 

『えぇ~~~~~~~~~!!!!』

 

思わず両手を耳に当てる。この人の肺活量は本当に英語教師か疑いたくなる。

本当は体育教師です。と言われたほうがよっぽど納得出来るんだけど。ともあれ、大声の所為でドアの向こうから校長に怒られてしまった。

まったく、物騒な事さえなければ静かに暮らすだけなのに。何であんなことに巻き込まれなきゃいけないのか。

前の世界じゃ情勢的に静かにのんびりって雰囲気じゃなかったけれど、コッチの世界ではのんびりしても良い気がするんだよな。インターネットもあるし。

元が引き篭もり気質なんだからゆっくりしたい。具体的には2年位引き篭もってダラダラしたい。……貯金の残高10億とかにならないかな。

 

アホな事考えながらも粛々と引き継ぎを行う。学生の授業が終わる頃には引継ぎ業務も粗方完了した。

20時が過ぎる頃には書類も完了、肝心の車は屋根に穴が開いているものの問題無く動く。動く事を確認したら直ぐに車を停めて【スニーク】をかけて車から出る。

人の目が無い事を確認して車を【マイバック】へ【収納】する。手持ちの枠を整理して開けていたから即座に車は陰も形も消える。

目を瞑る事で【マイバック】に車が入っている事が分かる。

 

【スニーク】をかけたまま学校から出て、効果が切れたらそのまま普通に歩いて自宅へ向かう。無職となってしまった……。

自分の時間は確保出来るが、給料が入らないのが物凄く辛い。金銭的にもそうだがそれ以上に精神的に辛い。

ヴァナの世界なら敵討伐してりゃ遺品が手に入ったり、敵が奪った金品を持ってたりしたからどうにかなったが……現代社会じゃそうもいかないからな。

次の再就職に向けての考えを巡らせながらホテルへ向かう。間桐の爺に見張られてる可能性高いし。

駅近くのホテルまで来て何気なく周りのビルを見る。確かアニメ作品じゃ、こういったビルをヒロイン抱えて飛び回るシーンが無かったか?

確かツインテールの遠坂さん。

 

「案外近くに居たりして」

 

なーんて、と男のさびしい独り言を続けようとした所で後ろから声がかかった。

 

「今晩は、中真先生。今、お時間よろしいでしょうか?」

 

……サブカル世界だとフラグってやっぱあるんだろうか。

 




約3週間ぶりの投稿となります。
FGOは1.5部が出揃ったり、エレシュキガルの実装発表があったりと年末に向けてのイベントラッシュですが、皆さんはどうでしょうか?
アビーが欲しくて課金しましたが見事に引けませんでした。
エレシュキガルは頑張って迎えようと思います。
マーリンガチャの二の舞になりませんようにと神頼みしつつ、小説の話に戻りましょう。

この6話でライダーから受け取った紙に何処かしらの住所が書いてある描写がありましたが、実はまだ何処の住所か決めてません。
なので皆さんが「ココどうよ?」という場所があれば是非お願いします。
理由付けは……あれば添えてどうぞ。
無かったらこっちで適当にでっちあげますので。
では、次回もよろしくおねがいします。

次はエレシュキガル引いた後かな。
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