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「上層部の指令で新型の艤装が送られてきた」
「新型の艤装?」
提督の言葉に疑問を持つのは、栗色の長い髪と、赤い弓道着を纏った正規空母、一航戦の赤城。
現在、彼女は、提督からの呼び出しを受け、この執務室へとやって来ていた。
「ああ、何でも海上での行動を犠牲に、地上での行動と身体能力に特化させたものらしい」
一呼吸置いた後、提督は続けて話す。
「君も知っているだろう、地上の深海凄艦の事を」
「はい」
深海棲艦。現在、海を支配している異形、人ならざる者の事である。
名前の通り、海でしか活動しないはずなのだが、ここ数日、陸地で見つけたという報告が出ており、どの鎮守府も手をこまねいていた。
「君を呼んだのは、陸地の深海棲艦の討伐、ゆくゆくは指揮を任せたい」
「討伐……は、ともかく、指揮と言うのは?」
「艤装の開発者、確か博士と呼んで欲しいと言っていたな……。曰く、研究を重ねて、量産化、ひいては部隊の発足ためだとか」
「俺も協力したい所だが、海上での戦いもあるからな……」
提督は、椅子に座ったまま上を見て呟く。
「しかし提督、なぜ私を選んだのですか?」
赤城の問いかけに対し提督は、右手人差し指で1を作り言う。
「1つは、戦闘経験が多い」
続けて、中指を出す。
「2つは、人望が厚いそして……」
右手を広げ、赤城に向けて微笑む。
「君が一番信頼できるから」
「フフッ。提督らしいですね」
「では、早速だが工廠で明石と博士に会ってほしい。そこから詳しい話を聞いてくれ」
「了解!」
背を伸ばし、素早く右手を額の方へ持って行き敬礼のポーズをとった。
さっそく、工廠にやって来た赤城を待っていたのは、開発を担当し艦娘でもある明石、白衣の男性、長い髪を左頭部に纏めたサイドテールに大人びた顔つき、青い弓道着を着た空母、加賀の三人だった。
「ああ、赤城さん、来てくれましたね!では、早そ……」
「やーやーやー、君が赤城君かぁ!」
明石の台詞を途中で遮り、白衣の男性が二人の間に入る。
男はさらに語る。
「そこの二人から特徴を聞いていたんだが、やはり想像通りの美人!ただ、少し顔にあどけなさが残るかな」
「え……えっと、貴方が博士ですか?」
「如何にも! 私はこういう者だ!」
そう言うと男は、一枚の名刺を差し出した。
「あ、どうも」
赤城は名刺を受け取るとそれを見つめる。
「見ての通り、私にもちゃんと名前がある。しかし、まあ、気軽に博士と呼んでくれたまえ。いやむしろ、呼んで欲しいかな」
「はい、ではよろしくお願いしますね、博士」
赤城は満面の笑みで返した。そして、加賀が口を開く。
「それで、博士。貴方が用意したという新型の艤装というものはどこにあるのかしら」
「そういえば、加賀さんはどうしてこちらに?」
「艤装のメンテナンスに来た所をそちらの博士に赤城さんの事を教えてほしいと頼まれまして……」
「折角だし、君も艤装を見ていくかい?」
「まぁ、そうさせてもらうわ」
加賀達のやり取りが終わると明石は、レンガほどの大きさの機械を持ってきた。
「では、赤城さん、こちらが艤装となっております!」
「……これが?」
艤装とは、本来大きな主砲を手に持ったり、背負ったりする物のはずなのだが、差し出されたのは、小さな機械一つ、赤城が声を失うのは当然なのかもしれない。
「彼女も最終調整に協力してくれたんだ。さぁ、早く見せてくれ!」
「腕に当てるだけでいいですよ!」
「え、えぇ……」
二人の鬼気迫る勢いに押され、赤城は機械を左腕に当てる。すると勢い良くベルトが飛び出し、彼女の腕にガッチリと固定され、体が一瞬こわばる。
「後は、電源を上げて、起動ボタンを押せば装着できますよ」
「へぇ……凄い……」
赤城も警戒心がなくなったのか腕に巻かれた装置をまじまじと見つめる。
そして、言われた通り電源を上げる、すると力強い太鼓の音色が発せられ、響く。
「こ、これは!?」
「待機音だ!さぁ、起動を!」
博士は、赤城の疑問をすぐに返すと装着を促す。
「は、はい。これ……でしょうか?」
恐る恐る、起と書かれたボタンを押す、すると……
「え!?」
赤城の目の前に、赤く半透明の一着の服が浮かび上がる、それは形からして可愛らしく特に、スカートが短く、フリフリとしていて、下には、靴と靴下、上には、蝶々結びの赤いリボンが二つ。
服の出現と共に、近くいた博士と明石が離れると……
「きゃ、きゃあ!」
服が赤城目掛けて、水平移動をして、驚きのあまり、顔を両腕で塞ぐ。
「博士、やりましたね!」
「おお、素晴らしい!」
「……え?」
二人の歓喜に赤城は恐る恐る自身の姿を見る。
そこには、先程の服一式をまとった自分がいた。
「こ、これがですか?」
「ああ、ここまで来るのにどれだけ時間を掛けたか……」
「すいません」
感激している博士に対して、加賀が声をかける。
「服装が変わっただけで、装備が見えないのですが?」
「質問か……いいだろう!」
「は、はぁ」
博士の目の色の変わりようから、質問を間違えたと思う加賀を無視し語り始める。
「まず、この装備に艤装は必要がない!なぜならこれは、装着者の身体能力を大幅に上げるのだからな!さらに、持ち運びにも良し!主砲で施設や森林を破壊する事がない!これこそ至高!まだ、これ以外にも……」
「あ、あの」
「質問かい!?」
「なぜこの格好を……?」
「私の趣味だ……やはり、魅力があるものが着けると違うな……!」
「そうですか」
博士の迫真の語りに困惑していた加賀だったが、趣味と聞いた瞬間、呆れてなのか真顔になった。
「それでは、次はどうすれば?」
「ではまず……」
明石が言いかけた所で、工廠に設置してあるレーダーが音を鳴らしだした。
明石はレーダーを確認すると言う。
「深海棲艦を捕捉!場所は……内陸部の町!?」
この鎮守府から内陸の方には、大きな町があるのだが、なんとそこに深海棲艦が現れたのだ。
「赤城君!体の調子は!?」
「問題ありません!」
「行くのだ!今の君なら町に走りで行くのも容易いはずだ!」
「は、はい!」
「赤城さん!気を付けて!」
「ご武運を!」
親指を立てて見送る明石の激励を最後に赤城は工廠を飛び出し、鎮守府の門も抜け、町へ向けて走り出した。
この時赤城は、どれだけ全速力で走っても息切れしない体に驚きつつ、自分の恰好を忘れていた。
一方、町では、逃げ惑う人々と避難勧告を促す艦娘であふれていた。
「何だあれは!?」
一人が、指を指して叫ぶ。
それに合わせ、皆、指した方を向きざわめく。
当然である、コスプレをした女性が全速力で深海棲艦の方へ走っていくのだから。
「見つけた!一航戦赤城、参ります!」
異形の前に立ち塞がり、名乗り上げる赤城。
幸い、相手は軽巡ホ級と駆逐イ級が二体。
油断さえしなければ勝てる相手だ。
「……!」
ホ級は部下二体に指示を出すと赤城に襲い掛かる。
しかし、これを避けると右の拳に力を込める。
「はっ!」
掛け声ともに、パンチを放つとイ級は小さく爆発して消滅、しかし、残ったもう一体が赤城にかみつくが。
「これぐらい!」
一瞬で振りほどくと、右手をまっすぐに伸ばし、チョップを当てる。
するとイ級は、真っ二つになり爆破、消滅した。
残されたホ級は赤城の強さに驚き、恐れ、悪あがきと言わんばかりに主砲を撃った。
「!?」
しかし、赤城はそれを受け止めていた。
さらに、その主砲を相手に向けて返した。
ホ級は爆発するが倒すまでには至らず、大きく怯む。
そこへ、赤城は近づき腰を落とし左手を前に突き出し、右手に拳を作る。
「はぁ!」
渾身の一撃を受けホ級は、爆発、消滅した。
「すごい……これが……艤装の力……」
銭湯後、自身の両手を見て呟く赤城。
そこを人々が囲む。
「コスプレ?」
「ふざけている訳じゃないんですよね?」
「カワイイ~」
「す、すいません!」
人々の台詞から今の恰好を思い出した赤城は顔を真っ赤にして、顔を隠して、人混みをかき分け、鎮守府へ帰って行った。
鎮守府へ戻った赤城は早速博士に物申す。
「あ、あの~博士」
「何かな?まさか不備が!?」
「い、いえ不備はないです!ただその……見た目を変えてもらえないかなと……」
「うん、無理」
「そ、そんなぁ~」
赤城の叫びが工廠に響いた。
あらすじの通り日曜8時に更新していきますのでよろしくお願いします。