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「はぁ! せい!」
街の近くの岩場、六人は、大量に現れた地上棲艦と乱闘を繰り広げていた。
およそ50体はいるが、殆どが駆逐艦、軽巡洋艦のため特に問題なく、更に瑞鶴が新たな力を得たこともあり余裕で殲滅は進み、残った数は片手で数えられるほどになった。
ここまでは優位に進んでいた。
「赤城さん! やっちゃって!」
リーダー格のル級を取り押さえた飛龍が叫ぶ。
「はい!」
そこへ、赤城がジャンプキックを放つため、ル級の方を向き、腰を落とした。
その時、「邪魔!」と瑞鶴が赤城を突き飛ばし、ル級目掛けてジャンプをすると、宙で拳を握り、相手の脳天に向けて落とす。瑞鶴が迫ってきた所で、飛龍は手を離し、二人から逃げる様に跳んだ。彼女のパンチは直撃し、ル級は頭を押さえて悶える。そこへ、瑞鶴は更に頭を掴み、地面に叩き付けると、軽く蹴って仰向けにすると、腹や顔を力強く踏みつけ始めた。
「痛たた……」
「赤城さん!」
予想外の横やりに、突き飛ばされ、尻もちをついた赤城、そこへ、二体のホ級が囲む。しかし、すぐさま現れた加賀が手刀で二体を切り裂いた。ホ級は真っ二つになり爆破。ル級も、瑞鶴のえげつない猛攻に耐え切れず爆散し、塵となった。
「楽勝、楽勝」
「瑞鶴……」
これまでの彼女では考えられない言動にかける言葉が浮かばない翔鶴。一方、瑞鶴は楽しそうな雰囲気を出しつつその場を離れようとした。
「待ちなさい」
しかし、加賀はそれを許さなかった。瑞鶴の手首を掴み問い詰める。
「あんな滅茶苦茶な戦い方、私は教えていません」
「我流だけど?」
「そう。上司を突き飛ばしてでも出しゃばるのが、貴方のやり方なのね」
「アイツ相手なら、一人で十分だし」
「はぁ……今の貴方には協調性が全くないわ。この調子なら、赤城さんと相談して外れてもらいます」
「嫉妬? 後輩に先を越されたかってそんな事するんだ?」
今の煽りに、流石に憤りを感じた加賀は、抑揚を変えず言った。
「私が五航戦如きに嫉妬するわけないでしょう。特に愚者には」
「何ですって!? あんた、どんだけ人の足元見れば気が済むの!?」
加賀の手を振り払い、殴ろうとした。
その時、「瑞鶴! 止めて!」翔鶴の一言に一瞬、手を止める瑞鶴。
「ちょ!? 瑞鶴、それはマズイ!」
「抑えて! 抑えて!」
飛龍、蒼龍もまた瑞鶴を押さえ、加賀から引き離す。
「はぁ……気分が悪いわ」
瑞鶴は二人を払い、変身を解くとそのまま去って行ってしまった。
「加賀さん、大丈夫でしたか?」
「ええ……」
「瑞鶴……どうして……」
彼女の落ちぶれっぷりに五人の間に重い空気が流れた。
問題の日から六日前、瑞鶴のドレスが黒と灰色に染まった日の翌日。
「では、これから性能テストを行いますね。瑞鶴さんは、位置についてください」
「はい」
大淀の指示に従い、テストに参加する瑞鶴。結果は、これまでの記録を塗り替えてしまい、見学に来ていた六人の内五人を唖然とさせていた。
「わ、私の最高記録が……」
「お、おぉもぅ……」
蒼龍、飛龍と順に呟く。
「わぁ~、凄いです!」
唯一、唖然していなかった助手のリエは、笑顔で嬉しそうに答えた。
「でもどうして、急に姿が変わったんでしょうか?」
「きっと、瑞鶴さんの強い想いが奇跡を起こしたんですよ!」
「感情で強くなったという事? にわかに信じられないわ」
「思いや強さは時に常識では考えられない、不思議な事を起こすんです!」
赤城、加賀の疑問を感情論で片付けると、瑞鶴は手を振りつつ一行の方へ叫んだ。
「翔鶴姉ぇ!」
「ふふふ……」
翔鶴は、瑞鶴のはしゃぐ姿に微笑みつつ、水入りのボトルとタオルを持って走っていく。
「はい、どうぞ」
「ん、ありがと」
瑞鶴は、変身を解くと、ボトルとタオルを受け取った。
「お二人は、とっても仲が良いんですね!」
いつの間にか翔鶴に付いて来ていた、リエが言う。
「ええ、瑞鶴は私の可愛い妹ですから、大事にしていきたいんです」
「わ、私の目の前で言うかな? 普通」
翔鶴の告白に顔を赤らめる瑞鶴。
「姉妹で艦娘かぁ……いいなぁ……」
姉妹の仲睦まじい様子を三人は遠くから見ていた。ここで、一人いない事に気づいた飛龍は加賀に聞く。
「あれ、赤城さんは?」
「提督と話がしたいと、執務室に行ったわ」
「艤装が強化される現象か……」
「はい」
執務室にて瑞鶴の身に起きた異変を話す赤城。
「提督、博士との連絡は取れないでしょうか?」
「それが、ここ数日電波の調子がおかしいんだ。今は、明石が調べているが、直るのは先になりそうだ」
「なぜ……」
「ただ、幸いにもレーダーは生きているそうだから、探すのは問題ないらしい。兎に角、今言えるのは、彼女の様子を見て、場合によっては止める事だ。頼んだぞ」
「了解!」
赤城は敬礼を取った。
それから数日間、赤城は瑞鶴の様子を伺い始めた。
普段は大人しいが、戦闘中は人が変わった様に残酷な仕打ちも平気で行うようになっていき、やがてそれは、日常生活にも及んでいった。
それは、問題の日から二日前の出来事だった。
「あんたを倒す」
「何を言っているの?」
訓練中だった加賀と瑞鶴。そんな中彼女は、唐突に加賀に挑戦状を叩きつけた。
「文字通り、で、私が勝ったら、もう二度と指図を受けない。負けたら何でも聞く。これでどう?」
「はぁ……下らない事を言っていないで素振りでもしたらどうなの?」
そう言って背を向けた瞬間、瑞鶴は加賀の後頭部に向けて殴りかかった。
気配を感じた加賀は、すぐさま振り向き、拳を受け止めた。
「錯乱でもしたのかしら?」
「もう少しだったんだけどなぁ……」
「……もう一度言います。素振りでもしていなさい」
そう言い残すと、訓練所から去って行った。
問題の日から翌日。
赤城と加賀は自分達の部屋で、瑞鶴の今後について考えていた。
「私はすぐにでも外すべきだと思います」
「でも、私は瑞鶴を信じたいです。あの子、翔鶴と一緒にいる時は大人しいのよ」
「しかし、一度、戦場から離すべきです」
残す派の赤城と外す派の加賀が、意見を述べ合う。そんな中、赤城は疑問をぶつけてみる。
「加賀さんって、どうして彼女の前では厳しい態度をとるのですか?」
「……翔鶴と瑞鶴。通称、五航戦と言うのは知っていますか?」
「はい」
「私は先代の五航戦お二人と約束をしました」
「先代……確か、私も色々と教わりました。引退際には、人々の盾になれと言う言葉もいただきました」
「ええ、私はその時、自分達の名前を継ぐ者が現れたら、今度は君が導いてほしい。と約束しました」
加賀は窓の外を眺める。
「一目見た時に分かりました。二人は私を越える。と、だからこそ真っ当に強くなって欲しいんです」
「加賀さん……」
加賀の心中を知った赤城は一つの提案を出す。
「では、こうしましょう。今の言葉を瑞鶴の前で言うんです。後はその後の行動で決めましょう」
「え……今の事を言うんですか?」
「確かに、加賀さんは口下手でシャイなのは、私も知っています。大丈夫ですよ! 私と話していると思って話せば!」
「それは、無理があるのでは……?」
その時、赤城の携帯電話が鳴り出した。赤城は出る。
「私です。赤城です」
『あ! 赤城さん!』
声の主である明石は続けて言う。
『地上棲艦が現れました! 場所は廃工場と海岸です! 廃工場には飛龍、瑞鶴。海岸には蒼龍、翔鶴が行っています』
「分かりました! 廃工場に加賀さんを向かわせます。私は海岸に行きます」
『よろしくお願いします!』
そう言って、通話を切ると、話を聞いた加賀と共に、艤装を手に取ると、現場へ出動した。
海岸へ駆けつけた赤城は、数体の地上棲艦と交戦する蒼龍、翔鶴の元へ走りながら叫んだ。
「変身!」
ドレス姿に変身すると飛び蹴りを放つ。駆逐艦達をねじ伏せていき、戦艦タ級だけになる。翔鶴は助走つけると、高く飛び、宙で態勢を整えると二本の足を突き出し、踵を当てる様にキックを放った。翔鶴のキックを受けたタ級は、爆発、消滅した。一方、廃工場に着いた加賀もまた三人で地上棲艦と戦っていた。ここでも瑞鶴のラフファイトが目立っていたが何とか全滅させたその時、事が起きる。
「ず、瑞鶴、話があるのだけど……」
「ウオオオオオオオオオオオオッ!」
瑞鶴が雄叫びを上げたかと思うと突如、加賀に襲い掛かってきた。咆哮に怯んでいたからなのか、加賀は瑞鶴の初撃を受けてしまう。身の危険を感じた飛龍は艤装の通信機能を作動させて叫んだ。
「瑞鶴が! 瑞鶴がおかしくなった!」
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