変身空母 赤城   作:作者アアアア

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十五話 加賀、翔鶴、横須賀に行く

 私達は今、何処かの森を彷徨っている。

 

「はぁ……はぁ……」

 

 彼女も息が絶え絶えになっている。それもそのはず、この子は加賀をねじ伏せた後、当てもなく只々歩き、時々現れる地上棲艦を倒す以外の事をしていないのだから。

 心配になった私は聞いた。

 

「瑞鶴、そろそろ休んだら?」

「必要、ない……!」

 

 全然聞かないなあ。

 

「でも……ね?」

「いらないって言ってるでしょ!」

 

 ここで、死なれたら困るのよお!

 

「強者にも休息は必要でしょ?」

「戦い続けていればいつかは……!」

「いつ?」

「いつか!」

 

 やっぱりあいつか……。

 

「加賀も倒したし、仕上げにあがりましょう」

「仕上げ?」

「今度こそ翔鶴を殺すの」

「……」

「分かる?あの時翔鶴、お姉さんは加賀の味方をしたの、最後の邪魔者である彼女を消せばもう誰も瑞鶴に逆らわない。欲しかった力と最強の称号が貰えるのよ?」

「……そこまでしなくてももう、持っている……!」

 

 くっ……二回も自我を奪ったのは、やりすぎたかしら……。

 いえ……翔鶴さえいなければ、全て上手くいくのに……。

 まあ、彼女の外見は徐々に私に似てきているからもう長くないでしょう。

 体が得られる。これほど素晴らしい事はないわ。

 

「う……あぁ……」

 

 そう言うと、瑞鶴は木の根に足を引っかけ、顔から派手に転ぶと動かなくなった。

 嘘!?ここで!?誰かー!

 また操る?いえ、意識がないと操れないし……。

 あっ……そうだ。最初からこうすれば良かったんだ。

 私は、一か八か、彼女の腕に巻かれた装置の電源を付けた。けたたましいエレキギターの音が響く。

 一般人……一般人こい……!

 

 

 

 森の別のエリア、現れた三体の地上棲艦に対峙するのは、三人の艦娘。

 一人は柿色のセーラー服に黒のスカート、白いマフラーとツーサイドアップの髪をなびかせている。

 もう一人は、似た服装に、頭の後ろに大きな緑色のリボンをつけており。

 最後の一人は、二人の間に立ち、得意げに腕を組む。

 そして、三人の共通点は、艦種は軽巡洋艦、腕にあの量産型の艤装を巻いてある事だった。

 中央に立つ彼女を筆頭に、艤装の電源を上げる、それぞれ、口笛、竹笛、ボーカル付きの可愛らしい曲が流れだす。

 センターの彼女は踊るようにステップをとりつつ一回転して艤装を起動させるとすかさず右手でピースを作り顔まで持って行き、ポーズを取る。

 

「変身!那珂ちゃん、オンステージ!」

「変身!」

「変身……!」

 

 両端の二人、神通は艤装が巻かれた左腕を腰に当て、右手で起動させると、ゆっくり右手を前に突き出し、川内は、艤装を起動させると、目を瞑り両手を広げる、そのまま腕を動かし、体の前で小さな円作るように動かすと左手を右手首に添え、人差し指と中指を立てた右手を顔の前に構えると目を見開き叫んだ。

 三人の体が光ったかと思うと、三人の服装が一気に変わる。

 更に、目の前に、一丁の銃が現れた。

 三人は迷わずそれを手に取ると地上棲艦に向けて発砲する。

 ある程度打つと、川内、神通は銃身とグリップを掴み、曲げる。

 棒の様な形にすると、銃口部分から刃が飛び出す、神通は刀を持つ様に、川内は逆手に持つと相手に突撃していった。

 

 

 

 これまでにない新兵器の効果もあって、すぐに決着はついた。

 

「ようし、お疲れー!」

「んー!はぁ!」

 

 那珂は体を大きく伸ばし、川内は銃剣を手元で器用に回しつつ言う。

 一方、神通は自分達の拠点である鎮守府に連絡していた。

 その時、三人の耳にエレキギターの音が微かに聞こえてきた。

 

「……?今の聞こえた?」

「うん」

「どうするんですか?」

「良し!私が見てくる。神通は取りあえず提督に伝えといて」

「大丈夫ですか?」

「大丈夫、大丈夫」

 

 そう言って、川内は森の中へと消えていった。

 

 

 

「もしかしたら、この辺りにはもういないのかもしれません……」

 

 一方、赤城は、地上棲艦との闘いの合間に、失踪した瑞鶴の捜索を行っていた。

 神妙な顔で地図を見つめる、その時、蒼龍と飛龍が現れる。

 

「赤城さん、調子はどうですか?」

「何かわかりましたか?」

 

 その問いに赤城は何も言わず、首を横に振った。

 

「そうですか……」

「……翔鶴は?」

「私は……大丈夫ですよ……」

 

 音もなく工蔽に現れた翔鶴の姿にさらに空気が重くなる。

 今の彼女は髪も荒れ、瞳は真っ赤になりくまもでき、足取りもおぼつかない。

 

「赤城さん……手伝いますよ……」

「翔鶴、何度も言うけど……今は体を休めてください……」

「あの子は……瑞鶴は私の唯一の肉親なんです……あの子まで居なくなったら私は……」

「翔鶴……」

 

 その時、地上棲艦の出現を伝える警報が鳴り響く。

 

「だああ!こんな時に!」

「皆さん!場所は一ヶ所ですが、かなり数が多いです!」

「……全員出動ですね……」

「え、でも翔鶴は?」

「それは、私にお任せください!」

 

 赤城は、少し考えて飛龍、蒼龍、加賀の四人での出動を決める。

 翔鶴をどうするのか聞いた蒼龍に答えたのは、リエだった。

 

「リエさん!よろしくお願いします……」

「はい!皆さんも頑張って!」

 

 赤城は、携帯電話を取り出し加賀に連絡を取りつつ飛龍、蒼龍と共に、現場へ向けて走り出した。

 リエはそれを見送ると、翔鶴に近づく。

 

「翔鶴さん、大丈夫ですか」

「いいえ」

「そうでしょうね」

「今……私はどうしたら……」

「本当は分かっているんじゃないんですか?」

「え?」

「全ての元凶は加賀さんだって」

「そ、それは……」

「だって、加賀さん、捜索にも消極的ですし」

「加賀さんにも、何か考えがあって……」

「その考えで、皆さんの命を奪おうとしているんですよ!きっと!」

 

 反論できずに、しどろもどろになる翔鶴、そこへ、吹き込む様に加賀への悪意を伝える。

 翔鶴は、ただ頭を抱えるしかなかった。

 

 

 

「はああああああああ!」

 

 海岸、赤城は、現れた地上棲艦に途中で合流した加賀と共に、キックを放った。

 赤城の片足、加賀の両足を使ったキックは、地上棲艦を貫き、爆破させる。

 

「これで全てですか?」

 

 残党が現れる気配を感じないと加賀は去ろうとしたが、それを飛龍が止める。

 

「加賀さん!待って下さい!」

「何かしら」

「加賀さんは……今何をしているんですか?」

「調査よ」

「一体何の!?」

「……瑞鶴を襲った現象よ」

「げ、現象?なぜ、そんな事を?それに現象って……」

 

 飛龍が言いかけた所で、蒼龍の艤装に連絡が入る。

 

「もしもし」

「蒼龍?今その場に全員いる?」

「うん」

「それじゃあ、三人にも伝えて、提督が話があるから執務室に来てって」

「翔鶴は?」

「我々から、伝えておきました」

「分かった」

 

 明石からの連絡を切ると蒼龍は三人に話の内容を伝えた。

 

「提督の話?」

「取り敢えず行ってみましょう」

 

 赤城を先頭に四人は鎮守府へと戻っていった。

 

 

 

「皆、よく集まってくれた」

 

 提督の呼びかけに、集まった五人、提督は続けて言う。

 

「瑞鶴が見つかった、何でも別の鎮守……」

 

 そう、言いかけた瞬間、翔鶴が目を見開き、提督に掴みかかった。

 

「瑞鶴は!瑞鶴はどこにいるんですか!?」

「ちょ、翔鶴!落ち着いて!」

「……横須賀だ」

「横須賀!?」

 

 揺さぶられつつも放った、提督の一言に驚きを隠せない五人だった。

 

「よ、横須賀って……ここから、かなり離れているわよ!?」

「一週間近く歩いて、横須賀……無茶しすぎでしょ……」

「何でも、近所で行き倒れていた所を保護してくれたらしい」

 

 飛龍、蒼龍の驚きを聞きつつ、提督はさらに続けて言う。

 

「加賀、翔鶴。横須賀まで彼女を迎えに行ってくれないか?」

「!」

 

 提督の提案に再び驚く加賀、翔鶴。

 しかし、二人からでた言葉は意外なものだった。

 

「提督、加賀さんは連れて行かなくても良いではないでしょうか?」

「はい、ここは翔鶴だけで十分かと……」

「これは、上官命令だ!反論は一切受け付けない」

 

 普段は見せない強気な態度に体をこわばらせる五人、提督はさらに言う。

 

「報告は以上だ。加賀と翔鶴は出発の準備が出来次第、俺に言ってくれ」

 

 五人は何も言えずただ、立っているしかなかった。

 

 

 

 

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